8 / 14
誘う
しおりを挟む
翌日目が覚めた美加はまずスマホを確認した。
誰かから連絡がきているかの確認ではなく、大翔の連絡先が入っているかどうかの確認だ。
「入ってる……夢じゃなかったんだ」
つぶやいて両手で自分の頬を包み込んだ。
朝っぱらから頬が火照って仕方ない。
これが自分が頑張った結果なのだと思うと今すぐにでも麻子に知らせたい気持ちになる。
だけど主婦の朝は忙しいのだ。
美加は麻子へ連絡を入れるのをグッと我慢して、ベッドから下りたのだった。
☆☆☆
美加の怒涛のような報告を聞き終えた麻子は目を輝かせていた。
そして美加の頭をなでて「よく頑張った!」と感動した様子で言う。
ちょっと大げさだとも思うけれど、不器用で初な美加の恋を一番近くで見守ってきた麻子にとっては感慨深いものがあったのだ。
「美加が1人で連絡先を聞くことができるなんて……成長したんだね」
うっうっとハンカチを目頭に当てて泣くふりをしてみせる麻子に美加が笑う。
だけど、大げさでもなんでもなく本当に昨日は良く頑張ったと自分でも思っている。
少しは自分を褒めてもいいのかもしれない。
「ここから先はあの3人衆に負けないようなことをしてもいいと思うんだよね」
ふと我に返った麻子が真剣な表情でそう言った。
「え?」
3人衆とは大翔に尽きまとているあの子たちのことで間違いなさそうだ。
派手で、常に大翔にベタベタくっついているのを思い出すと胸の奥がムカムカしてくる。
「今までよりも密着できるようなラブハプニングがあってもいいと思うんだけど、どう?」
「どうって言われても……」
今までだって何度か体が密着するようなことがあった。
どちらも美加が大翔を支える形だったけれど、それじゃダメなんだろうか?
感じたことをそのまま口に出すと、麻子が「チッチッチッ」と人差し指を顔の前で左右に揺らした。
「今度は相手から美加に触れさせるべきだよ。そっちの方が意識しやすいと思うし」
「相手から私に?」
だけどそれってどうやればできるんだろう。
自分で転んだふりをして、相手に助けてもらうとか?
それこそあの3人衆がやっていそうな手だなぁと思う。
「ラブハプニング6、教えて欲しい?」
グイッと近づいて聞いてくる麻子に美加は顔を寄せて「お願いします」と、答えたのだった。
☆☆☆
麻子が考えてくれたラブハプニング6はできなくはないけれど、まずは自分自身が頑張らないといけないものだった。
「無理だよ、そんなことできない」
必死になって左右に首を振る美加に対して麻子は非情に「やるしかないでしょう?」と言い放ったのだ。
せめてなにか手伝ってもらおうと思ったけれど、それも拒否されてしまった。
麻子が言うには、昨日自力で大翔との距離を縮めた美加にんらできる。
とのことだった。
「って、言われてもぉ……」
昼休憩の少し前、美加は廊下でうろうろと歩き回っていた。
ラブアプニング6を実行するためにはまず自分から大翔に声をかけないといけない。
だけどこういうときに限って、大翔はなかなか営業部から出てこなかった。
もしかしたら外回りに行っているのかもしれない。
そんな不安がよぎったそのときだった。
「羽川さぁん。今日は私の作ったお弁当食べてくださいよぉ?」
という声が聞こえてきて美加は咄嗟に柱の陰に身を隠した。
営業部から出てきたのは大翔と3人衆のうちの1人だった。
今もまだしつこくお弁当を作ってきているようで、大翔は困ったように眉を下げている。
「今日も社食にする予定なんだ」
大翔は大股で歩いてどうにかその子を振り払おうとしているが、ベッタリとくっついて歩いて振り払えない。
なかなかしつこい相手のようで美加も歯噛みした。
ただでさえ今回はハードルが高いのに、あの子がいたら余計に接近しずらくなってしまう。
どうしようか……。
考え込んだ時、美加の耳にカッカッとヒールの音が聞こえてきた。
相変わらず高いヒールを履いていて、その音が廊下に響いているのだ。
パッと閃いた美加は意識をヒールに集中させた。
そして『折れろ』と念じる。
次の瞬間なにもない場所でポキッと小さな音がしてヒールが折れてしまった。
「キャア!」
彼女は大翔にすがりつく暇もなく、可愛そうなくらい派手にこけてしまったのだ。
隣にいた人が突然悲鳴を上げてこけたことで大翔は驚いて呆然としてしまっている。
そのタイミングで美加はパッと飛び出した。
「すごい声が聞こえましたけど、大丈夫ですか?」
心配するふりをしながら女に声をかける。
幸い足首をひねったりはしていないようだけれど、派手にこけたことで顔が真っ赤に染まっている。
「な、なんでもないわよ!」
心配してかけつけた美加へ向けてそう叫ぶと、壊れたヒールを握りしめて営業部へと戻って行ってしまったのだった。
その様子を美加と大翔はその場で見送る。
と、そのとき昼休憩を告げるチャイムがなり始めた。
絶好のタイミングだ!
美加は小躍りしてしまいそうになる気持ちをグッと抑え込んで、大翔を見上げた。
「あ、あの……良ければ今日は外で食べませんか? この近くにおすすめのパスタ屋さんがあるんです」
美加は緊張する声でそう言ったのだった。
☆☆☆
ひとまず第一関門は突破というところか。
麻子が考えたラブハプニング6でえは、まずは美加が大翔を食事へ誘わないとできないことだったのだ。
さすがに無理だと否定したものの、どうにかなってしまった。
今、テーブルを挟んで目の前に大翔が座っていることが信じられないことだった。
ただ、失敗したことと言えば周りには昼休憩のOLたちの姿があって、大翔がすごく注目されているということだった。
初めてふたりで外食するから少しいい場所に、と思ったのが失敗だった。
「あの人どこの会社の人だろうね。すっごいイケメン」
「そこのデザイン会社じゃない? ほら、一緒にいる人制服着てるからわかるよ」
そんな会話があちこちから聞こえてくる。
ちなみに美加のことをよく言っている子はもちろん誰もいない。
ずーんと落ち込んでいると、大翔がメニュー表から顔を上げて「僕はこれにするよ」と、ペペロンチーノを指差した。
「午後から外回りはないから、たまにはガツンとしたものを食べたくてさ」
それでもサイドメニューにちゃんとサラダを選んでいるから、健康に気を使っていることがわかる。
美加は無難にクリームパスタを注文することにした。
注文をとりにきた女性店員も大翔を見て目をハートにさせているのがわかった。
やっぱり、誰がどう見ても大翔はカッコイイんだということを再認識させられてしまう。
営業で外回りの多い仕事だから、外にどれだけのライバルがいるだろうか。
想像するだけで果てしなくて美加は盛大にため息をつきたくなった。
大翔の前だから、もちろん我慢するけれど。
「パスタ好きなんだね」
「え?」
大翔の言葉で現実に引き戻された。
「ほら、前も食堂で食べてただろ」
大翔のお茶をこぼしたときのことだ。
まさか覚えてくれているとは思っていなくて美加は驚いてしまう。
「覚えてたんですね?」
「もちろん。他のここたちが騒いでる間に、羽川さんだけがハンカチを出してくれたからね」
あのときのハプニングはうまく行っていたみたいだ。
嬉しくてつい、頬が赤く染まっていく。
「それにすごく照れ屋」
すぐに指摘されて美加は「もうっ」と、頬を膨らませた。
すぐに顔が赤くなることはコンプレックスに感じていたのだけれど、今回のことは少し好きになれそうだった。
でも、これで食事をして終わりじゃない。
今回の最大の難関、ラブハプニング6が待ち受けているんだから。
気合を入れ直して椅子に座り直すと、女性店員が水とおしぼりを持ってやってきた。
「失礼します」
と、声をかけて大翔の前にグラスを置く。
続けて美加の前にグラスを移動させ……『落とせ』強く念じた瞬間、グラスが店員の手から離れて美加のブラウスに水がかかっていた。
「きゃっ」
小さく悲鳴を上げて立ち上がったのは、水の冷たさに驚いたからだった。
胸元にかかった水に店員が慌てふためきタオルを取りに走る。
「大丈夫?」
大翔が咄嗟の行動でおしぼりを手に取り、美加の胸元へ押し当てていた。
もちろんこの行動に深い意味はない。
胸元を拭いてくれようとしていただけだ。
だけど大翔の指先が美加の胸の膨らみを感じて、一瞬硬直した。
「ご、ごめん!」
美加の胸に触れてしまった驚きて固まっていた大翔が真っ赤になって手を引っ込める。
美加も顔を赤くしながら左右に首を振った。
「大丈夫です。ありがとうございます」
ペコペコとお互いにお辞儀をしながら謝罪と礼を繰り返し、目を見交わせてプッと笑い出した。
今の光景を客観的に見てみたら、とても滑稽だったことだろう。
やがて店員がタオルを持って戻ってきて、事なきを得たのだった。
☆☆☆
「その様子だとラブハプニング6もうまく行ったみたいね」
会社に戻ってきた美加を見て麻子はすぐに声をかけてきた。
美加は夢でも見ているような気持ちで頷く。
水がかかった胸元はまだ冷えているのに、大翔に触れられた場所でもあるから熱く熱を持っている。
「これで相手も美加のことを意識すると思うよ。少なくても今日1日くらいは」
「今日1日だけ?」
あれだけ色々と頑張ったのに効果が薄すぎないだろうか。
不服を顔に出していると麻子がグイッと顔を近づけてきた。
「相手はあの稲尾大翔なのよ? 女の色気だってきっと慣れてるに決まってる。あんたのいいところはうぶなところなんだから、それを忘れちゃダメよ」
うっ……そ、そうなんだ。
麻子の威圧的ともいえる態度にたじろぎ、美加は素直に頷いたのだった。
誰かから連絡がきているかの確認ではなく、大翔の連絡先が入っているかどうかの確認だ。
「入ってる……夢じゃなかったんだ」
つぶやいて両手で自分の頬を包み込んだ。
朝っぱらから頬が火照って仕方ない。
これが自分が頑張った結果なのだと思うと今すぐにでも麻子に知らせたい気持ちになる。
だけど主婦の朝は忙しいのだ。
美加は麻子へ連絡を入れるのをグッと我慢して、ベッドから下りたのだった。
☆☆☆
美加の怒涛のような報告を聞き終えた麻子は目を輝かせていた。
そして美加の頭をなでて「よく頑張った!」と感動した様子で言う。
ちょっと大げさだとも思うけれど、不器用で初な美加の恋を一番近くで見守ってきた麻子にとっては感慨深いものがあったのだ。
「美加が1人で連絡先を聞くことができるなんて……成長したんだね」
うっうっとハンカチを目頭に当てて泣くふりをしてみせる麻子に美加が笑う。
だけど、大げさでもなんでもなく本当に昨日は良く頑張ったと自分でも思っている。
少しは自分を褒めてもいいのかもしれない。
「ここから先はあの3人衆に負けないようなことをしてもいいと思うんだよね」
ふと我に返った麻子が真剣な表情でそう言った。
「え?」
3人衆とは大翔に尽きまとているあの子たちのことで間違いなさそうだ。
派手で、常に大翔にベタベタくっついているのを思い出すと胸の奥がムカムカしてくる。
「今までよりも密着できるようなラブハプニングがあってもいいと思うんだけど、どう?」
「どうって言われても……」
今までだって何度か体が密着するようなことがあった。
どちらも美加が大翔を支える形だったけれど、それじゃダメなんだろうか?
感じたことをそのまま口に出すと、麻子が「チッチッチッ」と人差し指を顔の前で左右に揺らした。
「今度は相手から美加に触れさせるべきだよ。そっちの方が意識しやすいと思うし」
「相手から私に?」
だけどそれってどうやればできるんだろう。
自分で転んだふりをして、相手に助けてもらうとか?
それこそあの3人衆がやっていそうな手だなぁと思う。
「ラブハプニング6、教えて欲しい?」
グイッと近づいて聞いてくる麻子に美加は顔を寄せて「お願いします」と、答えたのだった。
☆☆☆
麻子が考えてくれたラブハプニング6はできなくはないけれど、まずは自分自身が頑張らないといけないものだった。
「無理だよ、そんなことできない」
必死になって左右に首を振る美加に対して麻子は非情に「やるしかないでしょう?」と言い放ったのだ。
せめてなにか手伝ってもらおうと思ったけれど、それも拒否されてしまった。
麻子が言うには、昨日自力で大翔との距離を縮めた美加にんらできる。
とのことだった。
「って、言われてもぉ……」
昼休憩の少し前、美加は廊下でうろうろと歩き回っていた。
ラブアプニング6を実行するためにはまず自分から大翔に声をかけないといけない。
だけどこういうときに限って、大翔はなかなか営業部から出てこなかった。
もしかしたら外回りに行っているのかもしれない。
そんな不安がよぎったそのときだった。
「羽川さぁん。今日は私の作ったお弁当食べてくださいよぉ?」
という声が聞こえてきて美加は咄嗟に柱の陰に身を隠した。
営業部から出てきたのは大翔と3人衆のうちの1人だった。
今もまだしつこくお弁当を作ってきているようで、大翔は困ったように眉を下げている。
「今日も社食にする予定なんだ」
大翔は大股で歩いてどうにかその子を振り払おうとしているが、ベッタリとくっついて歩いて振り払えない。
なかなかしつこい相手のようで美加も歯噛みした。
ただでさえ今回はハードルが高いのに、あの子がいたら余計に接近しずらくなってしまう。
どうしようか……。
考え込んだ時、美加の耳にカッカッとヒールの音が聞こえてきた。
相変わらず高いヒールを履いていて、その音が廊下に響いているのだ。
パッと閃いた美加は意識をヒールに集中させた。
そして『折れろ』と念じる。
次の瞬間なにもない場所でポキッと小さな音がしてヒールが折れてしまった。
「キャア!」
彼女は大翔にすがりつく暇もなく、可愛そうなくらい派手にこけてしまったのだ。
隣にいた人が突然悲鳴を上げてこけたことで大翔は驚いて呆然としてしまっている。
そのタイミングで美加はパッと飛び出した。
「すごい声が聞こえましたけど、大丈夫ですか?」
心配するふりをしながら女に声をかける。
幸い足首をひねったりはしていないようだけれど、派手にこけたことで顔が真っ赤に染まっている。
「な、なんでもないわよ!」
心配してかけつけた美加へ向けてそう叫ぶと、壊れたヒールを握りしめて営業部へと戻って行ってしまったのだった。
その様子を美加と大翔はその場で見送る。
と、そのとき昼休憩を告げるチャイムがなり始めた。
絶好のタイミングだ!
美加は小躍りしてしまいそうになる気持ちをグッと抑え込んで、大翔を見上げた。
「あ、あの……良ければ今日は外で食べませんか? この近くにおすすめのパスタ屋さんがあるんです」
美加は緊張する声でそう言ったのだった。
☆☆☆
ひとまず第一関門は突破というところか。
麻子が考えたラブハプニング6でえは、まずは美加が大翔を食事へ誘わないとできないことだったのだ。
さすがに無理だと否定したものの、どうにかなってしまった。
今、テーブルを挟んで目の前に大翔が座っていることが信じられないことだった。
ただ、失敗したことと言えば周りには昼休憩のOLたちの姿があって、大翔がすごく注目されているということだった。
初めてふたりで外食するから少しいい場所に、と思ったのが失敗だった。
「あの人どこの会社の人だろうね。すっごいイケメン」
「そこのデザイン会社じゃない? ほら、一緒にいる人制服着てるからわかるよ」
そんな会話があちこちから聞こえてくる。
ちなみに美加のことをよく言っている子はもちろん誰もいない。
ずーんと落ち込んでいると、大翔がメニュー表から顔を上げて「僕はこれにするよ」と、ペペロンチーノを指差した。
「午後から外回りはないから、たまにはガツンとしたものを食べたくてさ」
それでもサイドメニューにちゃんとサラダを選んでいるから、健康に気を使っていることがわかる。
美加は無難にクリームパスタを注文することにした。
注文をとりにきた女性店員も大翔を見て目をハートにさせているのがわかった。
やっぱり、誰がどう見ても大翔はカッコイイんだということを再認識させられてしまう。
営業で外回りの多い仕事だから、外にどれだけのライバルがいるだろうか。
想像するだけで果てしなくて美加は盛大にため息をつきたくなった。
大翔の前だから、もちろん我慢するけれど。
「パスタ好きなんだね」
「え?」
大翔の言葉で現実に引き戻された。
「ほら、前も食堂で食べてただろ」
大翔のお茶をこぼしたときのことだ。
まさか覚えてくれているとは思っていなくて美加は驚いてしまう。
「覚えてたんですね?」
「もちろん。他のここたちが騒いでる間に、羽川さんだけがハンカチを出してくれたからね」
あのときのハプニングはうまく行っていたみたいだ。
嬉しくてつい、頬が赤く染まっていく。
「それにすごく照れ屋」
すぐに指摘されて美加は「もうっ」と、頬を膨らませた。
すぐに顔が赤くなることはコンプレックスに感じていたのだけれど、今回のことは少し好きになれそうだった。
でも、これで食事をして終わりじゃない。
今回の最大の難関、ラブハプニング6が待ち受けているんだから。
気合を入れ直して椅子に座り直すと、女性店員が水とおしぼりを持ってやってきた。
「失礼します」
と、声をかけて大翔の前にグラスを置く。
続けて美加の前にグラスを移動させ……『落とせ』強く念じた瞬間、グラスが店員の手から離れて美加のブラウスに水がかかっていた。
「きゃっ」
小さく悲鳴を上げて立ち上がったのは、水の冷たさに驚いたからだった。
胸元にかかった水に店員が慌てふためきタオルを取りに走る。
「大丈夫?」
大翔が咄嗟の行動でおしぼりを手に取り、美加の胸元へ押し当てていた。
もちろんこの行動に深い意味はない。
胸元を拭いてくれようとしていただけだ。
だけど大翔の指先が美加の胸の膨らみを感じて、一瞬硬直した。
「ご、ごめん!」
美加の胸に触れてしまった驚きて固まっていた大翔が真っ赤になって手を引っ込める。
美加も顔を赤くしながら左右に首を振った。
「大丈夫です。ありがとうございます」
ペコペコとお互いにお辞儀をしながら謝罪と礼を繰り返し、目を見交わせてプッと笑い出した。
今の光景を客観的に見てみたら、とても滑稽だったことだろう。
やがて店員がタオルを持って戻ってきて、事なきを得たのだった。
☆☆☆
「その様子だとラブハプニング6もうまく行ったみたいね」
会社に戻ってきた美加を見て麻子はすぐに声をかけてきた。
美加は夢でも見ているような気持ちで頷く。
水がかかった胸元はまだ冷えているのに、大翔に触れられた場所でもあるから熱く熱を持っている。
「これで相手も美加のことを意識すると思うよ。少なくても今日1日くらいは」
「今日1日だけ?」
あれだけ色々と頑張ったのに効果が薄すぎないだろうか。
不服を顔に出していると麻子がグイッと顔を近づけてきた。
「相手はあの稲尾大翔なのよ? 女の色気だってきっと慣れてるに決まってる。あんたのいいところはうぶなところなんだから、それを忘れちゃダメよ」
うっ……そ、そうなんだ。
麻子の威圧的ともいえる態度にたじろぎ、美加は素直に頷いたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
社長は身代わり婚約者を溺愛する
日下奈緒
恋愛
ある日礼奈は、社長令嬢で友人の芹香から「お見合いを断って欲しい」と頼まれる。
引き受ける礼奈だが、お見合いの相手は、優しくて素敵な人。
そして礼奈は、芹香だと偽りお見合いを受けるのだが……
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在
一緒にいるのに 言えない言葉
すれ違い、通り過ぎる二人の想いは
いつか重なるのだろうか…
心に秘めた想いを
いつか伝えてもいいのだろうか…
遠回りする幼馴染二人の恋の行方は?
幼い頃からいつも一緒にいた
幼馴染の朱里と瑛。
瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、
朱里を遠ざけようとする。
そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて…
・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・
栗田 朱里(21歳)… 大学生
桐生 瑛(21歳)… 大学生
桐生ホールディングス 御曹司
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる