【優秀賞受賞】賭けから始まった偽りの結婚~愛する旦那様を解放したのになぜか辺境まで押しかけて来て愛息子ごと溺愛されてます~【完結】

Tubling

文字の大きさ
19 / 46

父様 ~レブランドSide~


 翌日、アルジェールの体調が良くなったか確認しにカタリナの家へ行った時、お外で遊ぶアルジェールの姿を見付けて駆け寄った。

 「アルジェール!もう体調はいいのか?」
 「レビィ!」
 
 息子は顔を輝かせてこちらに駆けてきた。
 私のズボンに顔を埋め、スリスリと頬擦りしてくる……自分の子供はなんと愛おしい存在なのだと実感する。
 
 「具合はどうだ?」
 「だいじょぶ!とってもげんきよ」
 「それは良かった。母様は中か?」
 「うん!いま、ごはんつくってるの」
 「そうか。母様の料理、美味しいもんな。アルジェールも好きだろう?」
 「うん!」

 すっかり元気になったようだな。
 ヘルツさんという医師はなかなかに優秀だ……王都に引っ張って行きたいくらいに。
 息子の専属医師でもいいな。
 そんな事を考えていると、息子が私に木の棒を持ってくる。

 「これ!」
 「どうするのだ?」
 「きしごっこするの!」
 「それはいいな。打ち合いというわけか……かかってこい、アルジェール!」
 「うん!」

 私は息子から受け取った木の枝を持ち、息子の木の剣(棒)を受けた。
 しかしどうして、なかなかの太刀筋で斬りかかってくる。
 まだ4歳にも満たないというのに……素晴らしいな。
 才能のある者を目の当たりにすると、自然と鍛えたくなってしまうのは職業病かもしれない。

 私は勝ち過ぎず、負け過ぎず、互角の戦いを心掛けて一緒に木の剣を振った。

 「レビィ、つよいね!!きしさま、すごい!」
 「フッ。アルジェールも凄いぞ。これなら騎士になれそうだな」
 「やったー!」
 「そんなに騎士が好きか?」
 「うん!きしさまになりたい!」

 息子はキラキラとした表情で返してきた。
 自分の子供に己の職業になりたいと言われるのは嬉しいものだな。
 
 「それはやはり母様を守りたいからか?」
 「うん!とうさまがいないから、ぼくがかぁさまをまもる!」
 「……カッコいいな、アルジェールは」

 息子が高い志を持って愛する家族を守ろうとする姿に、昔の自分が情けなくなってくる。
 本来はカタリナを守るのは私の役目だったはずなのに全く守れず……家族での生活が出来ていないのは全て私の責任だ。
 息子の体を抱き寄せようとした時、カタリナが家の中から出てきた。

 「アル?そろそろ中に入りましょう。まぁ!レブランド様もいらしてたのですね」
 「カタリナ、おはよう。アルジェールの体調が気になって来たんだ」
 「昨日はありがとうございました。大変助かりましたわ」
 「いや、体調が良くなって安心した。何かあればすぐに駆け付けるよ」
 「ふふっ」
 
 昨日、二人で過ごした事で、少しカタリナとの距離が近づいた感じがする。
 それは私の願望かも知れないが、そうであってほしいと願わずにはいられない。
 カタリナとアルジェールを眩しく見つめていると、息子が突然こちらに振り向き、私の方へ向かってきた。

 「ねぇ、レビィ」
 「どうした?」
 「ぼくのおねがい、きいてほしいの」
 「アルジェール、だめよ」
 「いいんだ、カタリナ」
 「もう……レブランド様はアルに甘すぎます」

 母親の顔で私に注意してくる彼女も可愛いな。
 私にお願いをしたいと言ってくるアルジェールも可愛すぎて、ここが天国なのではないかと思ってしまう。
 愛する者のお願いなら何でも聞いてあげたくなるというものだ。

 「アルジェール、なんでも言ってくれ」
 「ほんと?!わーい!!じゃあ、ぼくのとうさまになって!」
 「「え……」」

 私とカタリナはほぼ同時に声を発した。
 これにはどう答えていいか分からず、カタリナの顔を見る。
 しかし彼女は首を横に振り、父親だと伝えないでほしいと目が訴えていた。

 「アルジェール、別のお願いではダメか?」
 「やだっ!レビィがいいんだもん……レビィはとうさまだもん…………」
 「アルジェール、レブランド様はジグマリン王国の騎士様だから」
 「う――……」
 
 だんだんとアルジェールの大きな瞳に涙が溜まっていき、やがて決壊して大粒の涙が零れ落ちていく。

 「レビィはいなくならない!!!」
 
 アルジェールは叫んだ後、全速力で森の方へと駆けて行った。

 「アル!!!」
 「アルジェール!!」

 カタリナの家の裏は木々が生い茂っていて、森というより林になっていた。
 私の足なら間に合う!
 体が反応し、すぐに息子を追いかけた。
 なかなかの足の速さだ……しかし足場は悪いし転んだら怪我をしてしまうだろうから早く追いつかなくては。
 そう思い、ぐんぐんスピードを上げた。

 「アルジェール!!!」

 私の声が聞こえているはずなのに、全く振り向く事なく無我夢中で走っている。
 怒られると思っているのかもしれない。
 林の先に何があるか分からないので、少し焦りのようなものが生まれてくる。
 あと少し……林の向こうが見えてきた瞬間、アルジェールの腕を捕まえる事が出来た……!

 「待つんだ、アルジェール!!」
 
 息子の腕を引き、その場で抱き寄せて地面に滑り込んだ。
 ちょうどそこは林を抜けた先だったが、周りの景色に驚き、心臓が速くなっていく。

 「この先は崖だったのか……」
 「レ、レビィ……」
 「下を見てはいけない。すぐに戻ろう」
 「うんっ」

 アルジェールは私の腕の中で崖を見て、顔を青くしながら震えてしまう。
 私はそんな息子を抱きかかえながら、背中を摩った。
 少しでも彼の恐怖が落ち着くように……それにしてもこの林の奥が崖になっていたとは。
 アルジェールは林の中で遊んだりはしなかったのだろうが、寸でのところで捕まえる事が出来て良かった。
 そこへ家から駆けてきたカタリナがようやく追いつく。

 「アル!!無事で良かった!!!」
 「かぁさま……ごめんなさい……」
 「私の方こそごめんなさいね、アルジェール……この先は絶対に行かないと約束して」
 「うん」
 「よかった……本当に…………」

 カタリナの瞳から涙がとめどなく流れてくる。
 私は彼女を抱き寄せ、アルジェールと三人で抱き合った。
 
 「皆が無事で良かった」
 「レブランド様……」
 「レビィ、かっこよかった!さすが、ぼくのとうさま」

 私とカタリナは顔を見合わせて吹き出した。
 どうしても私と親子がいいらしい。
 これはもう伝えるしかないのだろう。彼女の顔を見ると頷いたので、アルジェールに真実を話した。

 「そうだ、私が君の父様だよ」
 「わぁぁぁやっぱり!!かぁさま、とうさまがきてくれた!」
 「そうね」
 「わーいっ!!」

 アルジェールは地面に下りると、両手を上げて喜びを爆発させた。
 これほどまでに喜んでもらえるのは父親冥利に尽きるというもの。
 ようやく息子に父親だと伝える事ができた……この先も息子にとって良い父親であろうと固く誓ったのだった。

あなたにおすすめの小説

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。

真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。 一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。 侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。 二度目の人生。 リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。 「次は、私がエスターを幸せにする」 自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。

ふまさ
恋愛
 いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。 「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」 「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」  ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。  ──対して。  傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。

完菜
恋愛
 王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。 そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。  ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。  その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。  しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。 7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。 だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。 成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。 そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る 【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

跡継ぎが産めなければ私は用なし!? でしたらあなたの前から消えて差し上げます。どうぞ愛妾とお幸せに。

Kouei
恋愛
私リサーリア・ウォルトマンは、父の命令でグリフォンド伯爵令息であるモートンの妻になった。 政略結婚だったけれど、お互いに思い合い、幸せに暮らしていた。 しかし結婚して1年経っても子宝に恵まれなかった事で、義父母に愛妾を薦められた夫。 「承知致しました」 夫は二つ返事で承諾した。 私を裏切らないと言ったのに、こんな簡単に受け入れるなんて…! 貴方がそのつもりなら、私は喜んで消えて差し上げますわ。 私は切岸に立って、夕日を見ながら夫に別れを告げた―――… ※この作品は、他サイトにも投稿しています。

寡黙な貴方は今も彼女を想う

MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。 ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。 シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。 言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。 ※設定はゆるいです。 ※溺愛タグ追加しました。

【書籍化決定】アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました