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重なる想い 1
レブランド様がアルジェールを救ってくれた姿を見て、自分と重ね合わせてしまう。
自分にとって彼は出会った時からヒーローで、嫁いだ後も変わらなかった。
そして今も同じような姿を見て、変わらぬ想いが溢れてくる――――
涙する私をアルジェールごと抱きしめてくれるレブランド様。
きっとこの気持ちはこの先も変わらないのだろう。
ならば、自分の中の「不信感」と闘わなくてはならない。
いつまでも目を逸らしてばかりはいられないから。
アルジェールにも彼の存在を知ってほしい。
「そうだ、私が君の父様だよ」
「わぁぁぁやっぱり!!かぁさま、とうさまがきてくれた!」
「そうね」
「わーいっ!!」
アルジェールは素直に喜びを爆発させ、両手を上げて走り回った。
そんな息子を空高く抱き上げ、慈しみの表情を向けるレブランド様。
私は彼に真実を聞かなくてはならない。
そう思い、家の中へと誘ったのだった。
「アルジェールは眠ったのか?」
「ええ、病み上がりでしたし、全速力で走って怖い思いもして疲れたのでしょう。ぐっすりお昼寝です」
「そうか。まだ本調子ではないのだな」
「あと数日は様子を見ようと思います」
私はお茶を淹れてレブランド様へと差し出し、椅子に腰をかけた。
「レブランド様、アルジェールを助けてくださって、本当にありがとうございます」
「君が頭を下げる事ではない。父親として当然だ」
レブランド様は少し父親という言葉を使うのを躊躇っているようにも見える。
きっと私に気を遣っているのね。
「そうですね、レブランド様はアルジェールの父親ですものね」
「……カタリナ?」
「レブランド様、あの夜、私が聞いた事を覚えていますか?」
「もちろんだ……”賭け”の話だろう」
「そうです。今聞いたら、真実を話してくださいますか?」
私の言葉にレブランド様は目を見開き、少しの間固まってしまう。
けれどすぐに真剣な表情に戻り、小さく頷いた。
「ありがとうございます」
たったそれだけの事なのに、涙が出そうなほど嬉しい。
やっとあの時から、時間が動き出す予感がする。
レブランド様は椅子ごと私のすぐ横に座り、私を抱き寄せた。
「すまない、あの時すぐに話していれば、このような事にはならなかったのに」
「いえ……あの時、私も嫌な言い方をしました」
「君が悪い事など一つもないよ。素晴らしい夜だったし」
「そ、そうですか……」
あの夜の事をそんな風に言われると、恥ずかしくなってしまう。
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「レブランド様が?」
「恥ずかしい話だが、君が縁談を受けてくれた時から浮かれっぱなしだった。それほど嬉しかったからだ」
「どうして……」
私はほんの少し期待する気持ちを抑えながら聞き返した。
レブランド様は私に視線を移し、柔らかい微笑みを向ける。
「君と出会ったあの夜は、私にとって特別な夜だった。ほとんど一目惚れだったんだ……どうしても君を手に入れたかった」
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レブランド様が一目惚れって。
私を――――
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それであの夜、すぐに伝えてはくれなかったのね――――
「鬼神」とも呼ばれて恐れられるお方が、私に嫌われるのを恐れたなんて思いもしなかった。
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