【完結】賭けから始まった偽りの結婚~愛する旦那様を解放したのになぜか辺境まで押しかけて来て愛息子ごと溺愛されてます~

Tubling@書籍化&コミカライズ

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ヴェローナ様

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 結婚式の時と同じ……いえ、少し痩せられたかしら。
 控えの間に来た時と同じように取り巻きを数名連れて、こちらにやってきた。
 何も語らずとも私たちの間には緊張感が漂い、自然と顔が強張っていく。

 「お久しぶりです、カタリナ様。そしてレブランド」
 「お久しぶりです、ヴェローナ様」
 「ヴェローナ、謹慎が解けたか」
 「ええ。お父様が、王家主催の舞踏会から社交界に復帰していいと仰ってくださいましたの」
 「…………」
 
 レブランド様の表情は厳しいのに、ヴェローナ様は恍惚とした表情で微笑んでいる。
 その表情を見て悟った。
 彼女の中であの頃から時間は止まったままで、何一つ解決はしていないのだと。
 そしてこちらに向き直ったヴェローナ様は、扇で顔を隠してはいるものの、物凄い威圧感と冷えた眼差しを向けている。
 ちょうどレブランド様からは見えないように。
 
 私自身、自国で蝶よ花よと育てられた王女ではないから、このような目を向けられるのはすでに沢山経験済みだった。
 かつてのお姉様達と一緒……私を蔑み、陥れようとする目。
 唇をギュッと結び、彼女の目を見据えた。
 そして何と言葉をかけられるのかと身構えていた、次の瞬間、

 「カタリナ様、あの時は大変ご無礼をいたしました」
 「「?!」」

 突然頭を下げるヴェローナ様に、私と旦那様は驚き顔を見合わせてしまう。
 どういう心境の変化なの?
 周りの取り巻きの女性たちも慌てていて、「ヴェローナ様!」「どうなされたのです?!」などと彼女の行動に動揺している。
 
 「ヴェローナ様、お顔をお上げくださいませ!私は大丈夫ですので」
 「いえ!」

 突然手をガシッと捕まれる。
 その力が振り払えないほど強くて、恐怖心から背筋が粟立つ。
 
 「カタリナ様が大丈夫でも、私が自分を赦せませんの!どうか謝罪を受け取ってくださいませ!」

 ヴェローナ様は瞳を潤ませ、最大限に謝罪して見せた。
 とても深い謝罪に受け入れないわけにはいかない……ここで嫌な態度を見せた方が立場が苦しくなる。
 私は彼女の手をそっと握り返した。

 「ええ、もちろんですわ。あなたの謝罪を受け入れます。どうぞお顔をお上げくださいませ」

 出来る限り余裕の表情を作り、言葉を返した。
 その時のヴェローナ様の歪み切った笑みが脳裏に張り付いていく。

 「嬉しい!レブランドも色々とごめんなさいね、これからまた幼馴染としてお話してくれると嬉しいわ」
 「……それは君次第だ」

 レブランド様の返事を聞き、嬉しそうにヴェローナ様は去って行った。
 少しお話しただけなのに、魂を削られたような疲労感。
 
 「大丈夫か?カタリナ……」
 「え、ええ。少し驚いただけですわ」
 「何事もなかったように話しかけてきたが、まったく反省はしていないようだな」

 ヴェローナ様はレブランド様には見えないように敵意を見せていたのに。

 「驚きました。レブランド様も分かっていらっしゃったのですね」
 「君の表情を見ていたら分かる。皆の前だから承諾したが、誰もいなければ剣を突き付けていたかもしれない」

 私は彼の気遣いが嬉しくて、思わず顔が緩んでしまう。

 「ふふっ。それは危険ですわ」
 「私にとっては君の安全が第一だからね」
 「ありがとうございます」
 
 私たちが2人で話していると、そこへ先日アルジェールの誕生日会で知り合ったご夫人たちやレブランド様のご友人たちが、こちらへ向かって歩いてきてくれたのだった。
 
 「カタリナ様!お会い出来て嬉しいですわ」
 「先日は大変お世話になりました」

 アイリーン様とオーロラ様が声をかけてくれて、その場の雰囲気が変わっていく。
 きっと分かっていて声をかけてくれたのよね。
 とても優しくて聡明なお友達が出来て嬉しい。

 「こちらこそ、ありがとうございます!私もお会いできて嬉しいですわ」
 「会場は案の定お二人の噂で持ち切りでしたわ!」
 「私も何度お二人の仲の良さをお話しようと思ったか……!根も葉もないものばかりで呆れてしまいます」

 アイリーン様は噂好き、オーロラ様はとてもサバサバしていて、ハッキリと物事を口にする性格に見える。
 オーロラ様なら面と向かって行ってしまいそうね。
 想像すると少し笑ってしまうけれど。

 「ふふっ。お二人とも、私たちの事を考えてくださって本当に嬉しい。今日はお二人と会えるから楽しみに来ましたの」
 「嬉しい!」
 「あちらでお話しましょう」

 友人に誘われたのでレブランド様の方を見ると、眉を下げながら頷いている。
 こういうところがとても可愛い私の旦那様。

 「少し向こうでお話してきますわね」
 「ああ。戻ってきたら踊ろう」
 「はい!」
 
 私は最愛の旦那様に返事をして、ひとまずその場を後にしたのだった。

 
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