【完結】賭けから始まった偽りの結婚~愛する旦那様を解放したのになぜか辺境まで押しかけて来て愛息子ごと溺愛されてます~

Tubling@書籍化&コミカライズ

文字の大きさ
38 / 46

噂話

しおりを挟む

 ホールのすぐ近くにあるサロンに行くと、かなりの人がいるものの空いてる席があったので皆でそこへ座る事にした。
 すると、すぐにひそひそ話が聞こえてくる。

 「あの方がカタリナ様?」「ずっと療養していたと言うじゃない」「今さら戻ってきてどういうおつもりかしら」

 やはりあまり歓迎されていない声が多く、少し視線が落ちてしまう。
 それほどレブランド様が人気があるという事なのでしょうね。
 その妻がこれほど社交界に顔を出さず、貴族との交流も蔑ろにしていたのですもの。
 言われても仕方ないわ。
 レブランド様にも沢山迷惑をかけてしまっていたに違いない。
 
 「カタリナ様、気になさる事はありませんわ!」
 「そうですわ。仕方ない理由がおありだったのですもの、あーだこーだ仰る方が無粋というもの。ここには下品なお方が多いのかしら」

 少し俯いている私を心配した2人が、言葉をかけてくれる。
 友人ってとても心強いものなのね……自国にいた時は庇ってくれる人などいなかったから。
 こういう時に味方になってくれる人がいる有難さに、胸が温かくなる。

 「お2人とも、ありがとう。友達って素晴らしいですわね……私は幸せ者ですわ」
 「私もですわ!」
 「私もです!フェミーナもご子息の事が大好きで、また会いたいと毎日話しているのです」
 「まぁ!アルジェールもなんです!二人は相性が良いのかもしれませんわね」

 私たちが子供の話で盛り上がっていると、どこからともなく息子の陰口が聞こえてくる。

 「本当に閣下のお子なのかしら」「出産に立ち会っていないという噂もある」「不義のお子だったとしたら大変な醜聞ですわね」

 咄嗟に立ち上がり、扇を広げて噂話をしている方達の方へ視線を移した。
 私自身の事なら何を言われてもいい。
 でも息子の事となると話は別だわ。
 しかも不義の子だなんて……到底許せるものではない。
 あの子を見ればすぐにレブランド様の子だと疑う方はいないでしょうけれど、そうでなくともこのような事を言われる筋合いなどないわ。

 「やはりここには下品な方が多いようですわね」

 私の言葉に奥の方にいる貴族女性たちが、声を大にして反論してくる。

 「なによ、閣下をお支え出来ない妻なんて必要ないのではなくて?」
 「ほんと、いてもいなくても変わらないなら早く身を引いて差し上げればいいのに……図々しい!」
 
 何も知らないのをいい事に言いたい放題。
 こんな茶番に付き合う意味はないわ。
 これが相手がお姉様たちだと、ここから何をされるか恐怖でしかなかったけれど、この方達が何かをしてくるとは思えない。
 貴族女性は噂話が好きだものね。
 そう思って振り返ろうとした瞬間、ヴェローナ様が立っていた。

 「どうなさいましたの?カタリナ様、お顔の色が悪いように思いますが」
 「ヴェローナ様……」

 全く気配に気付かなかった……!
 彼女は私の両肩に手を置き、顔を覗き込んでいる。
 その目がまるで笑っていないので、背筋が粟立っていく。
 
 「皆様、カタリナ様は療養から帰られたばかりなのですから、気遣って差し上げないと」
 「お心遣いに感謝しますわ、ヴェローナ様。でももう体は大丈夫ですので」
 「いいえ!甘く見てはいけません!ここで悪化してはレブランドが心配するでしょうし」

 彼女の言葉や態度に呑まれてはいけない。
 レブランド様の名前まで……どういう風の吹き回しかと思っていたら、彼女の手が私の手を握ってくる。

 「さぁ、カタリナ様。こんなところにいてはいけませんわ。ゆっくり休める場所に移動しましょう?」

 だめ、このまま一緒に行動してはだめよ。
 そう思うのにどう言葉を返せがいいかが浮かんでこない。
 無下にもできない状況で固まっていると、力強い腕が私を引き寄せ、大好きな人の匂いに包まれる。

 「カタリナ、待ちくたびれたので来てしまった」
 「レブランド様!」
 「「閣下!」」
 「レブランド!!」

 ヴェローナ様も皆も、レブランド様の登場に面を食らっている。
 サロンに来るような人ではないもの……私自身も驚いて動揺してしまう。

 「レブランド様、お待たせしてしまいましたか?」
 「ああ、待ちくたびれた。君がいないと昼も夜も明けられないからな、私は」
 「レ、レブランド様……」
 
 旦那様はロッジェから戻ってから、愛情表現を率直に表すので時々恥ずかしくてどう返していいか分からない時がある。
 でも今はそれがとても嬉しい。
 もしかしたらヴェローナ様の声が聞こえて来てくれたのかもしれない……彼の心遣いに先ほどまでの怒りと恐怖が落ち着いてくる。

 「レブランド様、ありがとうございます。私は大丈夫です」
 「君が大丈夫ならいいが……そろそろ私の妻を皆に見せたい。ダンスを踊りにいこう」
 「はい!」

 私たちのあとに、オーロラ様とアイリーン様も続いてくる。

 「待って、レブランド!」
 「……ヴェローナ、カタリナの事は感謝する。君も舞踏会を楽しむがいい」
 
 レブランド様は私の腰を引き寄せ、優しく微笑みながら寄り添ってくれた。
 そんな彼の存在に、私の心は安心感に包まれたのだった。

 「ふふっ」
 「どうした?」
 「私は本当に幸せ者だなと思ったのです」
 「そうか。それは私の方だと思うが」
 「レブランド様がそう仰ってくださる事が幸せなのです」
 「では幸せ者同士、踊ろうか」
 「はい!」

 私は彼の肩に手を置き、手を取り合って音楽に合わせてステップを踏んでいった。
 私たちに対しては色々な見方があると思うので、深く考えないようにしよう。
 噂したい人にはさせておけばいい。

 私はこの時、レブランド様がいてくれる安心感から、様々な人の思惑が動いているとは、全く気付いていなかった。
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

王子様への置き手紙

あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯ 小説家になろうにも掲載しています。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。 昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。 逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。 でも、私は不幸じゃなかった。 私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。 彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。 私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー 例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。 「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」 「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」 夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。 カインも結局、私を裏切るのね。 エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。 それなら、もういいわ。全部、要らない。 絶対に許さないわ。 私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー! 覚悟していてね? 私は、絶対に貴方達を許さないから。 「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。 私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。 ざまぁみろ」 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

二人の公爵令嬢 どうやら愛されるのはひとりだけのようです【書籍化進行中・取り下げ予定】

矢野りと
恋愛
ある日、マーコック公爵家の屋敷から一歳になったばかりの娘の姿が忽然と消えた。 それから十六年後、リディアは自分が公爵令嬢だと知る。 本当の家族と感動の再会を果たし、温かく迎え入れられたリディア。 しかし、公爵家には自分と同じ年齢、同じ髪の色、同じ瞳の子がすでにいた。その子はリディアの身代わりとして縁戚から引き取られた養女だった。 『シャロンと申します、お姉様』 彼女が口にしたのは、両親が生まれたばかりのリディアに贈ったはずの名だった。 家族の愛情も本当の名前も婚約者も、すでにその子のものだと気づくのに時間は掛からなかった。 自分の居場所を見つけられず、葛藤するリディア。 『……今更見つかるなんて……』 ある晩、母である公爵夫人の本音を聞いてしまい、リディアは家族と距離を置こうと決意する。  これ以上、傷つくのは嫌だから……。 けれども、公爵家を出たリディアを家族はそっとしておいてはくれず……。 ――どうして誘拐されたのか、誰にひとりだけ愛されるのか。それぞれの事情が絡み合っていく。 ◇家族との関係に悩みながらも、自分らしく生きようと奮闘するリディア。そんな彼女が自分の居場所を見つけるお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※作品の内容が合わない時は、そっと閉じていただければ幸いです。 ※執筆中は余裕がないため、感想への返信はお礼のみになっております。……本当に申し訳ございませんm(_ _;)m

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。

真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。 一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。 侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。 二度目の人生。 リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。 「次は、私がエスターを幸せにする」 自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

処理中です...