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呼び出し
しおりを挟む「レブランド様は相変わらずダンスがお上手ですわ」
「君も素晴らしいよ。出会った時のダンスを思い出すな」
「ええ……あの時も本当に楽しかった」
建国祭の国賓として招かれ、彼とダンスをした夜……今思い出しても素晴らしい思い出。
出会って間もなかったけれど、レブランド様は私のヒーローでダンスもとても上手で。
自分が達人になれたのではと錯覚するくらい、素晴らしいリードだったのを思い出す。
「君は本当に楽しそうだったな……そんな君に恋をした」
「レブランド様……」
「ずっとこの時間が続けばいいと思ったよ。今その願いが叶っている……夢のようだ」
「私もです」
今は夫婦として王宮で踊っている。
想像もしていなかった未来。
でも自国で塔に軟禁されている時も、ずっと願ってやまなかった未来。
こうしてここに立つまで、長い時間がかかってしまったけれど……その幸せに酔いしれながら、二人で三曲ほど踊ってダンスから抜け出した。
「大丈夫か?カタリナ」
「はい……はぁ……はぁ……やっぱり体力は、つけないとですわね……ふぅ……っ」
「ふははっ。あの時と同じだな」
「もう……笑いごとじゃありません!」
ダンスを抜けると、途端に周りに人が集まってきて、沢山の方々が声をかけてきてくれた。
国賓として訪れていた時にご挨拶した事がある方も多く、皆と挨拶をしながら会話をしていく。
社交界は戦場と言うから、ここでレブランド様の妻としてしっかりと人脈を築いていく必要があるわ。
ここにいる方々は私たちを歓迎してくれているみたい。
安堵しながら二人で周りの方々と会話をしていると、その人々の中にいたご夫婦が、突如私たちに頭を下げた。
「閣下、カタリナ様!今日は娘のご無礼をお詫びに参りました!」
「ザックハート伯爵か。夫人まで」
この方達がヴェローナ様のご両親?
初見だけれど、伯爵も夫人もとてもやつれて見える……子供の事って胸が痛むものね。
私も親になったから、彼らの気持ちが痛いほど分かる。
ヴェローナ様とは関わりたくはないけれど、ご両親はとても善良な方達に見えるわ。
「カタリナ様っ、娘が本当に失礼な事を……辛い想いをさせてしまって申し訳なくて……」
「お顔をお上げください。私達は今幸せですので。こうしてお声をかけてくださっただけで、十分ですわ」
「感謝します……」
伯爵夫人が消えてしまいそうなほど弱っているように見えたので、それ以上は何も言う事もなく、夫婦は下がっていった。
子供の事で振り回されてしまうのは、少し同情してしまうけれど……私にはどうする事も出来ない。
ヴェローナ様の様子を思い出し、あの両親の苦労はもう少し続きそうな予感が頭をかすめるけれど、今は考えないようにした。
するとそこへ、第一騎士団のバイロン様がやって来て、レブランド様に耳打ちをする。
旦那様の表情を見ていると、少し驚いた表情の後、厳しい顔つきに変わったので何かあったのだと伝わってきた。
「カタリナ、少しホールを出る。ここで待っていてくれ」
「分かりましたわ」
「すまないな」
申し訳なさそうに私の頬を撫でる彼の手が離れていく。
お仕事だもの、名残惜しいとは言えないわね。
バイロン様とホールを後にする後ろ姿を見守ってから、また周りの方々と会話をしていった。
そこにオーロラ様とアイリーン様も加わって、またしても女子会のように盛り上がっていく。
「閣下はカタリナ様の事が本当に大事なのですね!ダンスを踊っているお二人にうっとりしてしまいましたわ」
「お恥ずかしい限りで……」
アイリーン様はこの手のお話が好きらしくて、「恋はいいですわよね~~」とうっとりしている。
自分の子供の恋にも興味深々で、フェミーナ嬢のお相手も今からリストアップしているのだとか。
舞踏会でも変わらず自分の気持ちに正直な姿を見ていると、自然と顔が緩んでしまう。
そこへオーロラ様の熱弁が始まった。
「閣下は漢気溢れるお方ですから、騎士団の方々からも憧れの的です。私が男性に生まれていれば、閣下のもとでご指導いただきたいですもの」
「ふふっ。オーロラ様ならすぐに隊長にまで上り詰めそうです」
「そう言っていただけて嬉しいです!」
彼女は本当に女性にしておくのが勿体ないほど、旦那様のように気概のある女性だわ。
私はオーロラ様に憧れと尊敬の念を持っていた。
自分にないものを持っている方って魅力的だもの。
「カタリナ様、失礼いたします」
私達が盛り上がっているところに突然声をかけられたので視線を向けると、そこには騎士団の方が立っていた。
「何かございました?」
「王太子殿下が閣下とカタリナ様のお二人にお話があるとの事で、お声がけさせていただきました」
「まぁ!でも生憎レブランド様は今いらっしゃらなくて……」
「閣下は後程いらっしゃるとの事ですので、先にお部屋へご案内いたします」
「分かりましたわ」
私はアイリーン様とオーロラ様に挨拶をして、その場を後にした。
後ろをついて行きながら、王宮の中を眺める。
素晴らしい造りね……母国とはくらべものにならないほど、豪華で美しいわ。
私の国は資源が豊かだったけれど小国なので、城はそれほど大きくはなかった。
王太子殿下は私とレブランド様との仲を取り持ってくださったり、アルジェールにプレゼントをくださったり、本当に良くしてくださるわ。
レブランド様の事をとても信頼しているに違いない。
直々に呼び出されたという事は大事な話なのよね、きっと。
「こちらです」
突如騎士の方の声で我に返る。
どうやら色々と考えている内に客間に辿り着いていたようで、部屋の中で待つように言われ、騎士の方は部屋の片隅で待機していた。
お茶まで用意されているわ。
私はソファに座り、乾いた喉を潤す為にお茶をいただく事にした。
すると扉が開かれたので、すぐにソファから立ち上がり、カーテシーをして視線を少し上げる。
「ふふっ。あなたに頭を下げられるなんて、とても気持ちがいいものね」
「どうしてあなたが……!!」
部屋に入ってきたのは殿下でもレブランド様でもなく、ヴェローナ様だったのだ。
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