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旦那様の怒り
しおりを挟む残酷表現がありますので、ご注意ください!<(_ _)>
~・~・~・~・~
「レブランド!こ、これは……っ!」
ヴェローナ様も思わず押し黙ってしまうほどのレブランド様の表情……怒りで誰の声も聞こえていないような感じがする。
「レブランド様!!」
私は力の限り彼の名前を叫んだ。
でも彼の表情は依然として厳しいままで、一言だけ呟く。
「カタリナ、目を瞑っていてくれ」
男性達の手が緩んでいたので、両手で目を覆った。
するとすぐに周りから、何かが斬られる音と断末魔のような声が聞こえてくる。
「ぎゃっ!!」「ぐあぁぁ!!!」「お許しをを!!」「たすけっ……っ!!」
やがて室内にはうめき声だけが響き、私は恐怖から手を離す事が出来ない。
そんな私を大好きな人の腕が包み込んだ。
「カタリナ、もう大丈夫だ」
「レブランド様……!!」
彼の服にしがみ付くと、涙が溢れてきそうになる。
レブランド様は私の頭を撫でながらソファへ座らせると、ヴェローナ様に向き直った。
「ヴェローナ、これはどういう事だ?」
「レブランド……私はカタリナ様が男性と遊んでいるから諌めようと……!」
「苦しい言い訳だな。ならばなぜカタリナの手が、これほど血まみれなのだ?」
「それは……私のせいでは……っ」
レブランド様は気付いていたのね。
手で顔を覆ったから顔にも血が付いているのかもしれない。
そして床に倒れている騎士を無理やり起こして、尋問を始める。
「お前に指示をしたのは誰だ?」
「ヴェ、ヴェローナ様です……協力すれば、騎士団の中の地位も閣下にとりなしてくださると……!」
「お、お前!!でたらめな事を!!!」
「他には?」
「ひっ……カタリナ様に睡眠薬を……入れました…………眠ったら、私たちで好きにしていいと……」
「ゲスだな」
レブランド様はその騎士を足で踏みつけ、肩に剣を何度か突き立てた。
「ぐあぁぁぁぁあああ!!!」
「カタリナの受けた恐怖に比べれば生温い。ヴェローナ、もう一度聞く。カタリナに何をした?」
「わ、私は…………っ!」
「その辺にしておけ、レブランド!」
その声に皆が扉の方へ視線を移すと、そこには王太子殿下が立っていた。
「夫人が怯えてしまうだろう。それに証人が死んでも厄介だ、ここにいる者は生かしておいてもらわなくては困る」
「殿下…………しかし……」
「異論は認めないぞ」
殿下の言葉に冷静さを取り戻したのか、レブランド様は剣を鞘に収めた。
私はその様子を見てホッと胸を撫でおろす。
旦那様が怖いという気持ちよりも、自分のせいで彼が手を下す姿を見たくなかったから。
周りをよく見ると、私を襲った男性たちは腕を斬り落とされたりとかはしているけれど、致命傷を与えているわけではなさそうだった。
「さて、ヴェローナ嬢。あなたにもじっくり話をきかなくてはな」
「殿下!私は彼らの仲間ではありませんわ……!!」
「睡眠薬はテーブルの液体を調べれば分かるだろう。これだけ証人が転がっているのだ、言い逃れが出来ると思うか?」
「私の言葉を信じてください!!」
「信じたいのはやまやまだが、取り巻きの女性たちからも言質は取れている。『カタリナ様を消しに行ってくる』と」
「皆が私を陥れようとしているのですわ!!!」
「ほう……それは私もそなたを陥れようとしているという事か?それともそんな事も分からぬ阿呆だと言いたいのか?」
「ひっ!ち、違います殿下!!!」
「私の名を騙り、このような事を起こした事は到底看過できない。連れて行け」
扉から衛兵が沢山入ってくる。
命はあるものの、レブランド様によって斬られた男性達が、衛兵に抱えられて連行されていく中で、ヴェローナ様だけが抵抗していた。
「いやよ!離しなさい!!私を誰だと思っているの?!!ザックハート伯爵家の令嬢なのよ!」
「構わん、早く連れて行け」
「殿下!ご慈悲を!!レブランド!助けてっ!!!」
「ヴェローナ、これからは悔い改める事だけを考えろ。達者でな」
「いやぁぁぁああレブランドォォォオオ!!!」
ヴェローナ様は衛兵に引きずられるように連れて行かれ、だんだんと声が小さく聞こえなくなっていった。
こんな結末しかなかったのかしら……ご両親もまた胸を痛めるに違いないと思うと、解決したのに心が晴れない。
そこへ、殿下が呆れたように言葉を発した。
「まったく、騒々しいな。これだけ証人も証拠も揃っているのだ、すぐに刑は確定するだろうが」
「殿下、来てくださって感謝します。殿下がお声がけしてくださらなかったら、ヴェローナをどうしていたか」
「戦場の時のような顔をしていたからな。夫人の前なんだ、気を付けろ」
「はい」
「では私は戻る。この事はホールにいる人々には広まっていないので安心しろ」
「殿下!色々とご配慮くださって感謝いたします!」
私は去り行く殿下の背中に向かって声をかけたのだった。
本当に来てくださって良かった……殿下が去って行き、室内は静寂に包まれる。
でも、愛する人はなかなかこちらを向いてくれない。
きっと怖い想いをさせたと思っているに違いない。
私は彼に寄り添い、声をかけた。
「レブランド様、来てくださってありがとうございます」
「カタリナ……怖い想いをさせてすまない」
「いいえ、助けてくださったのに、怖いと思うなんてあり得ません」
私は出会った時と同じ言葉を返した。
夜の庭園で襲われていた私を助けてくれた……あの時も怖くはないのか?と驚いていたわね。
あの時も今もレブランド様は私のヒーロー。
旦那様も私の言葉を思い出しているのか、表情がとても穏やかになっていく。
「そうだった。君はそういう人だったな……」
「そうです」
「ではその手を手当しに医務室へ行こう」
「はい!」
彼は私を抱き上げ、急ぎ足で医務室へと駆けて行った。
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