【完結】ままならぬ僕らのアオハルは。~嫌われていると思っていた幼馴染の不器用な執着愛は、ほんのり苦くて極上に甘い~

Tubling@書籍化&コミカライズ決定

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新たな学生生活の幕開けと幼馴染との再会

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 四月。桜の花びらが舞い散る春、県の進学校へ無事入学を果たした僕は、真新しい制服に袖を通し、意気揚々と登校した。

 入学式では新入生代表挨拶を務める。


 「新入生代表挨拶、1年1組、高嶺亮」

 「はい」


 名前を呼ばれた僕は、緊張しながらも予め用意しておいた文章をしっかりと読み上げた。

 今日この日の為にサラサラの真っ黒な前髪を目の下辺りで切り揃え、新しく新調した分厚い眼鏡を着用し、自分の素顔を大衆に晒す事のないように細心の注意を払う。

 中学では散々揶揄われたこの目を、高校では絶対に晒すわけにはいかない。

 大丈夫、誰も気にしていない。

 見られていない。

 完全な装備が全てを隠してくれたおかげで無事に読み終え、ホッと胸を撫でおろして自分の椅子へと戻った。

 こうして大役を務めあげた僕の入学式は無事に終わった。

 翌日、晴れて高校デビュー出来る事に喜びと期待で胸の高鳴りを抑えつつ、自分のクラスへと入っていく。


 「高嶺!おはよう」

 「おはよう、宝森」

 「雫でいいって言ったのに」

 「じゃあ僕のことも亮でいいよ」

 「やった!」

 
 入学式の時から気軽に話しかけてくれたのが、この宝森雫という男子だ。

 くせ毛がふわふわしていて少し可愛い見た目だけど話すと男前で、身長は僕と同じくらいなのにキリッとした表情がカッコいい。

 一見するとスポーツをやっているようにも見えるくらい日焼けしていて、体も筋肉質な感じだ。

 出席番号で前後という事もあり、席順も前後なので必然的に話すようになった。

 そして何より――――


 「乙女爛漫春恋2やったか?!今回も色んなルートがあってめちゃくちゃ面白いよな!!」

 「もちろん!海人ルートを今攻略しようと思っているんだけど、なかなか手強くて……」


 雫はなんと、乙女ゲーム仲間だったのだ。

 小学校の時に女子の友人から乙女ゲームを借りた僕は、勉強の息抜きにプレイするとどっぷりどハマりし、今もなお継続中である。

 僕がスマホで乙女爛漫春恋2(略して乙春)の公式HPを見ているところを雫に見られ、お互いに乙女ゲームが好きな事が発覚したのだった。

 嬉しい…………高校って最高か。

 中学の時は本当に自分の容姿、特に大きな目を揶揄われ、身長もなかなか伸びないし、いじめられたりもして学校へ行くのが憂鬱で仕方なかったのに。

 この高校は県でも有数の進学校だ。

 僕をいじめていた人間は来ていないはずだし、あまり一緒の中学の人はいないから、安心して通える。

 何よりこの高校を選んだのは、生まれた時から仲良しで育った幼馴染がこの高校を進学先に選んでいたからだ。

 中学では僕が中学受験をした為に一緒に通う事は叶わなかったので、久々の再会となる。

 アイツは何組なんだろう……入学式の時に名前を探してみたけれど、時間がなくて見つけられなかったんだよな。

 僕のクラスは特進クラスで、高校入試で優秀な成績をおさめた者が通うクラスだ。

 アイツも小学生の時は物凄く頭が良かったから、このクラスでもおかしくはないと思っていたのに、このクラスにはいない。

 
 「はぁ……探してみよっかな」

 「? 誰をだ?乙春2に出てくるキャラクターか?!」

 
 休み時間にポツリと呟いたひと言を聞き逃さず、雫は食いついてくる。

 
 「違うよ、幼馴染がここに入学しているはずなんだ。ほとんど生まれた時からの付き合いで小学校まで凄く仲良くしてたから、会いたいなって」

 「へぇ――……って生まれた時から?!」

 「誕生日も1日違いなんだよ。母親同士も親友だし、産院も一緒」

 「そんなことあるんか……」

 
 でもアイツのお母さんは小学生の時に亡くなってしまい、必死に慰めてたっけ……その時の事を思い出して懐かしさに浸っていると、雫からまたしても疑問が飛んでくる。
 

 「本当に入学してんの?」

 「ああ。アイツのお父さんに会う機会があって、そんな話が出たから詳しく聞いたんだ。家も近所なんだよ」


 アイツの家は父子家庭だったけど、おじさんは2年前に再婚したって言ってたはず。

 中学時代は僕も勉強三昧で引きこもりがちだったし、全然アイツと顔を合わす事がなかったけど……次第に連絡も返ってこなくなり、アイツの家にも行きにくくなってそのまま――――

 3年間でどんな感じになっているのか、凄い気になるし、単純に会いたい。
 

 「探してみたらいんじゃね?俺も付き合うよ!亮の幼馴染なら俺も仲良くなれそうだし」

 「ありがと。ホント雫って男前だよね」

 「お前くらいだよ、そんな事言うの」

 「いや、そんな事ないよ」


 互いに謙遜し合っていると、クラスの男子に雫が呼ばれ、その中に自然と溶け込んでいく。

 やっぱり言った通り、雫って凄いな。

 僕なんか未だに中学時代を引きずって、素顔もまともに出せないし、なるべく隠し通したいと思っているし、あんな風にすぐ人と打ち解ける事も出来ない。

 せっかく中学時代から解放されたっていうのに、心は解放する事が出来ないなんて……まぁ徐々に頑張ろう。

 とにかく近い内に他クラスに行って、探してみよう。
 
 そうこうしている内にお昼の時間がやってくる。

 僕はお弁当で雫は学食という事で、2人で学食へと向かったのだった。


 「凄い人……」

 「こっちで発券するみたいだ。ちょっと行ってくる!」
 

 1年生だし、初めての学食なので全く勝手が分からない……僕も学食の日があるだろうから、雫のやり方を見ておこう。

 それにしてもメニューが沢山ある。

 頼んだ学食を運ぶ人を見て、ボリュームも凄いんだなと驚くばかりだった。

 今度は僕も学食にしようかな……高校生って感じでいいかも。

 
 「雫!席取っておくから!」


 僕の声に雫が手を振って応えた。

 これだけ人がいたら座るところがなくなってしまうし、先に座っておこう。

 そう思って移動すると、ちょうど2人分の椅子が空いているのを見つけ、そこに腰を掛けた。

 良かった――――ホッと胸を撫でおろす。

 隣りの人がちょっと金髪が入っていて、ガラが悪そうでドキドキしてしまう。

 チラリと視線を泳がすと、耳にも沢山のピアスが見える。

 ツーブロックで凄く体格が大きく、肩が触れそうになるのが気になるけど、座れないよりはいいよね。

 自分が165cmもないので、隣りの人が余計に大きく感じるのかもしれない……185cmくらいはありそう。

 まだ雫は並んでいるし、とにかく先にお弁当を広げておこうと、ランチバッグからお弁当を出している時に、隣りに座っている集団の話している内容が耳に入ってきてしまう。


 「ははっ、お前、また遅刻したの?!入学式も遅刻だし、やる気ねー」

 「チッ、うるせー。放っとけ」

 
 ひぇ~~まだ入学してまもないのに堂々と遅刻してくるなんて。

 でもこの高校は県でも偏差値トップの進学校だから頭は良いはずなのに、なんでこんなにやる気を失くしてるんだろう。


 「さっそく生活指導のセンコーに目をつけられてやんの。おい、久楽結人!!その髪とピアスはなんだ!って」

 「「ぎゃははっ」」

 「るせーな、飯食ってる時くらい静かにしろや」


 久楽結人…………結人?

 その名前は僕が探していた幼馴染の名前だ。

 心臓がバカみたいに高鳴り、口から心臓が飛び出そうなくらい緊張してくる。

 まさか、そんな…………恐る恐る隣りに座る柄の悪い人を見てみると、小学生の時の面影を残した幼馴染がそこに座っていたのだった。


 「結人?……お前、結人なのか?」

 「あ゙?」


 僕の言葉に物凄い睨みをきかせて返事をしてくる。

 でも直後に目を見開き、また睨んだかと思うと、直ぐに顔を背けた。


 「誰?」


 仲間の一人が結人に聞くと、彼はぶっきらぼうに「知らね」とだけ返す。

 そんなわけない。

 結人は声も変わっちゃってるけど、僕はそれほど大きく声変わりしていない。

 見た目は変わったけれど、結人にはあの頃の面影があるから、絶対に本人だ。


 「結人、僕だよ。高嶺亮だよ!小学校までずっと一緒だっただろ?!」


 結人の肩をつかんで必死に声をかける。

 ゆっくりとこちらに振り向いた幼馴染は、思い切り冷え切った表情をしていて、その目には僕へも情など何もなく、ただただ鬱陶しそうにポツリと言葉を発した。


 「っせーな。誰だ、お前。触んじゃねぇよ」


 目の前の現実を受け入れられない僕は、ようやく会えた幼馴染の変わってしまった態度に、立ち尽くすしかなかった。
 
 僕の手を払い退けてまた背を向けた結人は、黙々と学食を食べ始める。

 結人の友人の一人が僕に「人違いなんじゃね?」とだけ返し、また皆で話し始めた。

 そんな…………絶対人違いなんかじゃない。

 でもこれ以上食い下がっても迷惑をかけるだけだし、ひとまずは大人しくしよう。

 この学校にいる事が分かっただけでも良かったし、まだ時間はあるんだから……沈んでいた気持ちを何とか持ち直していると、雫が学食を持ちながら戻ってきたのだった。


 「亮~~お待たせ!遅くなってごめん!やっと戻れたー」

 「雫、大変だったね。時間もないし、早く食べてしまおう」

 「そだな、いただきまーす!」


 僕たちが食べ始めたと同時に隣に座っていた結人が立ち上がり、学食を持ってスタスタと去って行ってしまう。


 「おい、結人。待てよ~~」


 結人の友人たちが彼の背中を追いかけて行く……僕はアイツの姿を目で追っていたけれど、結局目が合う事はなく、後ろ姿を見送るしかなかった。


 「はぁ……」

 「どした?さっきの人、すげーヤンキーだったけど。でも顔面は強いな。知り合い?」

 「……例の幼馴染」
 
 「ええ?!あのガラの悪いのが?!!」

 「シ――ッ!」


 大声を出す雫の口を抑えてどうにか落ち着かせると、雫が「ごめん」と呟いた。

 とりあえずお昼ご飯を口に放り込み、その話は放課後にでもする事にしたのだった。
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