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19 せまりくる変化
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「え? これを着るの?」
キャティに手わたされたのは、修道服だった。
「はい。この服でしたらベールで頭を覆うので、少しはお顔をかくすことができると思って……」
黒のシンプルなワンピースドレスに着替え、髪をベールでかくす。ちょっと小柄だけれど、未成年の修道女もいるので、シャルナ大神殿の修道女といっても通用しそうになった。前ボタンなのも、メイドに着替えを手伝ってもらわないですむから気楽だ。
「念のため、部屋も移ります。こちらへ」
『順応の義』に失敗してから、色々なことが変わろうとしている。儀式に参加した一部の貴族から、私にたいしての疑いの声があがってしまったからだ。過激思想の人物が神殿内に侵入する可能性があるため、身を守るために離宮を離れることになった。頼りのアラン様は、王宮に行ったまま、まだ戻ってきていなかった。
――案内された場所は、他の建物から少し離れた森林庭園のなかにある一軒家。2階建てで全部で8部屋。1階の一部屋だけは洗面所だった。各部屋に大きめのベッドと小さなテーブル、衣装戸棚が備えつけられている。
「夜は寝にくる者がいますが、昼間はこの建物を使う者はいません。ゆっくりお休みください」
食堂とお風呂場とかがない、トイレ共同の寮みたい……通されたのは、1階の一番奥の部屋。窓の外を眺めると、建物の裏手に井戸が見えるほかは、背の高い森林庭園の樹木が見えるだけだった。
離宮は人の目が多かったから、人けのないこの場所は少し落ちつく。ベッドに、ころりと横たわると、疲れていたのかそのまま眠りに落ちてしまった。
「――あっ……あんっ……ああ~」
「……?」
なに? 誰? どこからか、聞こえてくる物音に目が覚めた。どれぐらい寝ていたのだろう? 窓の外は暗くなっている。昼間はととのえられた姿に気にならなかった森林庭園の樹木は、今は月明かりも届かない深い暗闇を作りだしていた。
「ああ~っ……はっ、はぁん」
え? 隣の部屋? これは、この声は女の嬌声だ――隣の部屋から艶かしい声と、息づかいが聞こえる。ここ、壁が思ったより薄いんだ。やだ、隣の部屋の人、恋人でも連れこんでいるの? 聞きたくなくて耳をふさぐ。
「キャー! あはははっ! ここよ~!」突然、2階から人を呼ぶ声。
不思議に思って、そっと窓辺へより外のようすをうかがうと、数人の下男とおぼしき人物が、樹木のかげからあらわれた――? なに? なんなの?
あらわれた人たちは、建物のなかに次々と消えていく……ほどなくして、甘い声があちらこちらから聞こえだす。
――キャティはなんて言ってた? 確か『夜は寝にくる者がいる』だ! ここは、睡眠じゃなく、閨を共にするための場所――ラブホテルのようなところなんだ!
扉の前で人の声がした。
「あれ? おまえ約束してないの?」
「おお、相手が誰かわからんほうが燃える! 俺は1階が性にあってるんだ」
「魔力の低いやつとか、好みじゃない相手だったら、抱き損じゃねーか。じゃあな、その部屋の醜女によろしく」
階段をあがっていく音と、扉の取っ手がガチャガチャっと鳴る音。
――鍵は、初めからついてない……一気に寒気が走る。
――扉が開くのと、窓から飛び出したのは、ほぼ同時だった。あとは森林庭園をより闇の深いほうへと走りつづけた。
どれだけ走ったろう……大きな木のうろに身をかがめ、朝を待つ。夜着に着替えもせず眠ってしまったのが幸いした。黒い修道服は暗闇のなかに私の姿をかくしてくれた。
「――アラン……様……早くきて……助けて」自分にとって、唯一助けてくれそうな名前をそっと呼んでみる。暗闇からは、なんの返答も返ってこなかった……
キャティに手わたされたのは、修道服だった。
「はい。この服でしたらベールで頭を覆うので、少しはお顔をかくすことができると思って……」
黒のシンプルなワンピースドレスに着替え、髪をベールでかくす。ちょっと小柄だけれど、未成年の修道女もいるので、シャルナ大神殿の修道女といっても通用しそうになった。前ボタンなのも、メイドに着替えを手伝ってもらわないですむから気楽だ。
「念のため、部屋も移ります。こちらへ」
『順応の義』に失敗してから、色々なことが変わろうとしている。儀式に参加した一部の貴族から、私にたいしての疑いの声があがってしまったからだ。過激思想の人物が神殿内に侵入する可能性があるため、身を守るために離宮を離れることになった。頼りのアラン様は、王宮に行ったまま、まだ戻ってきていなかった。
――案内された場所は、他の建物から少し離れた森林庭園のなかにある一軒家。2階建てで全部で8部屋。1階の一部屋だけは洗面所だった。各部屋に大きめのベッドと小さなテーブル、衣装戸棚が備えつけられている。
「夜は寝にくる者がいますが、昼間はこの建物を使う者はいません。ゆっくりお休みください」
食堂とお風呂場とかがない、トイレ共同の寮みたい……通されたのは、1階の一番奥の部屋。窓の外を眺めると、建物の裏手に井戸が見えるほかは、背の高い森林庭園の樹木が見えるだけだった。
離宮は人の目が多かったから、人けのないこの場所は少し落ちつく。ベッドに、ころりと横たわると、疲れていたのかそのまま眠りに落ちてしまった。
「――あっ……あんっ……ああ~」
「……?」
なに? 誰? どこからか、聞こえてくる物音に目が覚めた。どれぐらい寝ていたのだろう? 窓の外は暗くなっている。昼間はととのえられた姿に気にならなかった森林庭園の樹木は、今は月明かりも届かない深い暗闇を作りだしていた。
「ああ~っ……はっ、はぁん」
え? 隣の部屋? これは、この声は女の嬌声だ――隣の部屋から艶かしい声と、息づかいが聞こえる。ここ、壁が思ったより薄いんだ。やだ、隣の部屋の人、恋人でも連れこんでいるの? 聞きたくなくて耳をふさぐ。
「キャー! あはははっ! ここよ~!」突然、2階から人を呼ぶ声。
不思議に思って、そっと窓辺へより外のようすをうかがうと、数人の下男とおぼしき人物が、樹木のかげからあらわれた――? なに? なんなの?
あらわれた人たちは、建物のなかに次々と消えていく……ほどなくして、甘い声があちらこちらから聞こえだす。
――キャティはなんて言ってた? 確か『夜は寝にくる者がいる』だ! ここは、睡眠じゃなく、閨を共にするための場所――ラブホテルのようなところなんだ!
扉の前で人の声がした。
「あれ? おまえ約束してないの?」
「おお、相手が誰かわからんほうが燃える! 俺は1階が性にあってるんだ」
「魔力の低いやつとか、好みじゃない相手だったら、抱き損じゃねーか。じゃあな、その部屋の醜女によろしく」
階段をあがっていく音と、扉の取っ手がガチャガチャっと鳴る音。
――鍵は、初めからついてない……一気に寒気が走る。
――扉が開くのと、窓から飛び出したのは、ほぼ同時だった。あとは森林庭園をより闇の深いほうへと走りつづけた。
どれだけ走ったろう……大きな木のうろに身をかがめ、朝を待つ。夜着に着替えもせず眠ってしまったのが幸いした。黒い修道服は暗闇のなかに私の姿をかくしてくれた。
「――アラン……様……早くきて……助けて」自分にとって、唯一助けてくれそうな名前をそっと呼んでみる。暗闇からは、なんの返答も返ってこなかった……
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