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23 欲を孕んだ熱い眼差し
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甘い匂いがする……これは、なんだっけ。……以前、嗅いだことがあるような……
「ああ……いいわ。気持ちいい……もっとして……気持ちいいの……」
――また、女の嬌声だ……なんか、なれてきちゃったな。
「あら? 気がついた」
腫れて全部は開かない、重いまぶたをあげる。――キャティ?
「リオ、あなた気絶しちゃうんだもの。しかたがないから私の離宮に連れてきてあげたわ。死なれちゃうのは、困るしねぇ~……ん~っ……」
男と舌を絡めあいながら、キャティは私をチラリと見た。全裸のキャティがいる場所は――離宮の私のベッドだった場所……? 円柱形に吊り下げられたレースの天蓋に見覚えがある。豪華なダブルベッド、ランプの形、サイドテーブルに置かれた冠水瓶……みんな、見覚えがある。
そこにキャティと数人の男が全裸で絡みあっていた。私が転がされている床に散らばる服から、衛兵や修道士のようだった。
ここは、アラン様が私に治療魔法をかけてくれていた場所だ! 初めて体験した骨折の痛み……純粋な恐怖。その原因はアラン様。
彼のかくしきれない欲を孕んだ熱い眼差しが怖かった……だから、その視線に気づかないふりをしつづけた。――私の心をかき乱した、その原因はアラン様。
――治療のたび、ふれる彼の唇が……どこまでも優しく、どこまでも意地悪に私を翻弄した場所――やめて、やめて、思い出を塗り替えないで……
「ア、アラン……さ……ま……は?」アラン様がいないか? 室内に視線を泳がせた。
「黙りなさい! 役立たずの異邦者が、シャルナの軍神を気安く呼ぶなんて許さないわよ!」
キャティが目をつりあげて怒鳴った。
「アラン様は、あんたが『順応の義』に失敗してから、ここにお戻りになってくださらないのぉ~。私、ずーと待っているのに……きっと王宮の貴族たちに足止めされているんだわ。憎たらしぃ! 私のアラン様を返せって文句言いたいわ」
アラン様が戻ってきていない……?
「あんたが、聖女になれない役立たずだから! アラン様に捨てられたのよ!」
アラン様が私を捨てた……?
「本当に役立たず! アラン様のそばにいられそうだから、お世話係になったのに! アラン様の気をひくために、あんたに優しくしてやったのに、計画が狂っちゃったじゃない! アラン様がラキアに赴任されてきたときから狙っていたのよ。アラン様を射止めれば、私は貴族よ! ……さぁ、あなたたち、もっと私の魔力を高めなさい! アラン様に釣りあうように!」
高らかに宣言し、彼女に侍る男たちに命令した。いっせいに男たちの節くれだった手が、キャティの滑らかな肌の上を這いずりまわった。途端、キャティの口から高い声があがる。
――嫌だ、こんな女にアラン様をとられたくない……アラン様は私の護衛騎士だ! 自分にも、こんなにも醜い独占欲があったなんて……なんて醜い。
――彼は紳士的だった。少なくとも、こんな淫らな狂った世界のなかで、彼の私にたいする対応は、とても紳士的だった。……と、今なら思う。
「――あ、あなたは……アラン様に……釣りあわない」
部屋にただよう甘い匂いで頭が割れるように痛い。思考が鈍る……
「言ってくれるじゃない! 私、知っているのよ! リオ、あんたアラン様に接吻しか、してもらえていなかったくせに!」
キャティが勝ち誇ったように笑う。
「知らないだろうから教えてあげる! アラン様は、そりゃあ~もぅ~、たくさんの浮名を流した床上手よ! 精悍なお顔、たくましい体は魅力的! 王都にいるあいだ、尻軽貴族女が毎日、彼をとりあってたわ! ラキアまで彼の情事のうわさや艶聞は届いてた」
うっとりと語るキャティ――そうね。彼のキスはとても気持ちいいもの。経験豊富だと思っていたわ。――嫉妬しない――と、言ったら嘘になる。だけど、この世界で生きるには純粋ではいられない。
彼の経歴が物語っている。平民から騎士爵まで登りつめるためには、きっとたくさんの情事があった。……でも、少なくとも私の護衛騎士になってからは……私のそばにずっといてくれた。女性を抱きに行く素振りなんてなかった。
だから、彼のあの私を見つめる欲を孕んだ熱い眼差しを信じる。彼は私のことが好きだって信じる。私のところに帰ってきてくれたなら、きっとあなたを受けいれるから……だからアラン様、早くきて……
「ああ……いいわ。気持ちいい……もっとして……気持ちいいの……」
――また、女の嬌声だ……なんか、なれてきちゃったな。
「あら? 気がついた」
腫れて全部は開かない、重いまぶたをあげる。――キャティ?
「リオ、あなた気絶しちゃうんだもの。しかたがないから私の離宮に連れてきてあげたわ。死なれちゃうのは、困るしねぇ~……ん~っ……」
男と舌を絡めあいながら、キャティは私をチラリと見た。全裸のキャティがいる場所は――離宮の私のベッドだった場所……? 円柱形に吊り下げられたレースの天蓋に見覚えがある。豪華なダブルベッド、ランプの形、サイドテーブルに置かれた冠水瓶……みんな、見覚えがある。
そこにキャティと数人の男が全裸で絡みあっていた。私が転がされている床に散らばる服から、衛兵や修道士のようだった。
ここは、アラン様が私に治療魔法をかけてくれていた場所だ! 初めて体験した骨折の痛み……純粋な恐怖。その原因はアラン様。
彼のかくしきれない欲を孕んだ熱い眼差しが怖かった……だから、その視線に気づかないふりをしつづけた。――私の心をかき乱した、その原因はアラン様。
――治療のたび、ふれる彼の唇が……どこまでも優しく、どこまでも意地悪に私を翻弄した場所――やめて、やめて、思い出を塗り替えないで……
「ア、アラン……さ……ま……は?」アラン様がいないか? 室内に視線を泳がせた。
「黙りなさい! 役立たずの異邦者が、シャルナの軍神を気安く呼ぶなんて許さないわよ!」
キャティが目をつりあげて怒鳴った。
「アラン様は、あんたが『順応の義』に失敗してから、ここにお戻りになってくださらないのぉ~。私、ずーと待っているのに……きっと王宮の貴族たちに足止めされているんだわ。憎たらしぃ! 私のアラン様を返せって文句言いたいわ」
アラン様が戻ってきていない……?
「あんたが、聖女になれない役立たずだから! アラン様に捨てられたのよ!」
アラン様が私を捨てた……?
「本当に役立たず! アラン様のそばにいられそうだから、お世話係になったのに! アラン様の気をひくために、あんたに優しくしてやったのに、計画が狂っちゃったじゃない! アラン様がラキアに赴任されてきたときから狙っていたのよ。アラン様を射止めれば、私は貴族よ! ……さぁ、あなたたち、もっと私の魔力を高めなさい! アラン様に釣りあうように!」
高らかに宣言し、彼女に侍る男たちに命令した。いっせいに男たちの節くれだった手が、キャティの滑らかな肌の上を這いずりまわった。途端、キャティの口から高い声があがる。
――嫌だ、こんな女にアラン様をとられたくない……アラン様は私の護衛騎士だ! 自分にも、こんなにも醜い独占欲があったなんて……なんて醜い。
――彼は紳士的だった。少なくとも、こんな淫らな狂った世界のなかで、彼の私にたいする対応は、とても紳士的だった。……と、今なら思う。
「――あ、あなたは……アラン様に……釣りあわない」
部屋にただよう甘い匂いで頭が割れるように痛い。思考が鈍る……
「言ってくれるじゃない! 私、知っているのよ! リオ、あんたアラン様に接吻しか、してもらえていなかったくせに!」
キャティが勝ち誇ったように笑う。
「知らないだろうから教えてあげる! アラン様は、そりゃあ~もぅ~、たくさんの浮名を流した床上手よ! 精悍なお顔、たくましい体は魅力的! 王都にいるあいだ、尻軽貴族女が毎日、彼をとりあってたわ! ラキアまで彼の情事のうわさや艶聞は届いてた」
うっとりと語るキャティ――そうね。彼のキスはとても気持ちいいもの。経験豊富だと思っていたわ。――嫉妬しない――と、言ったら嘘になる。だけど、この世界で生きるには純粋ではいられない。
彼の経歴が物語っている。平民から騎士爵まで登りつめるためには、きっとたくさんの情事があった。……でも、少なくとも私の護衛騎士になってからは……私のそばにずっといてくれた。女性を抱きに行く素振りなんてなかった。
だから、彼のあの私を見つめる欲を孕んだ熱い眼差しを信じる。彼は私のことが好きだって信じる。私のところに帰ってきてくれたなら、きっとあなたを受けいれるから……だからアラン様、早くきて……
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