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57 ジリオの日記2
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――16歳。最悪の『成人の義』だった。
2年ぶりに再会した愛しいピジュは、輝くばかりに可愛らしく成長していた。僕の『成人の義』に参列してもらい、それから彼女に皇都のカフェや僕がすごした学園を案内する予定をたてていたけれど……学友たちが彼女を見る目が嫌だった。「君もエバンティスか?」と、皇族の1人が彼女の手を取ったときは、殴りたくなった。学友たちが、憎い敵になった。彼らは7歳のピジュに、ギラギラとした欲望の目をむけていた。吐き気がする。僕のピジュを見る目をくりぬいてやりたい。
ピジュをすぐ馬車に乗せ、セフィロース領の伯爵邸へ送った。『成人の義』が終わったら、僕は伯爵位を授かりジリオーラ・エバンティス侯爵令息から、ジリオーラ・エバンティス・セフィロース伯爵になる。
僕の所領となるセフィロース領をはやくピジュに見せたいから! とつたえたら、彼女は「ふふふっ楽しみ」と笑って馬車から手を振ってくれた。さっさと『成人の義』を終わらせて、ピジュに会いにいこう。
――そう思っていたのに……気持ち悪い……気持ち悪い……気持ち悪い……気持ち悪い……
僕の『成人の義』を誰よりも楽しみに待っていた……と、その女は言った。聖者が交わした『約定の証書』により、エバンティス血族は皇族の魔力を高めるために、協力することになっている……と、真っ赤な唇で笑った。
僕が血族魔法を使ってしまわないように……口には、さるぐつわ。手足はベッドの手摺に結ばれ固定された。
甘い匂いのする香が気持ち悪い。小瓶の液体をかけられた肉棒が熱い。自分の意志とは関係なく屹立したそれを、皇太后は一晩中、貪った。
祖母と同じ年齢の女が、自分の上で腰を振るのを、泣きながら我慢した。
やめて、助けて……と、心が悲鳴をあげていた。僕の愛しいピジュが『成人の義』で皇族に犯されている姿が脳裏にチカチカと点滅して見えた。
ダメだ! ピジュだけは守らないと! 嫌だ! 僕の天使だ! 僕だけのものだ! ピジュをどうやってこの運命から救えるのか? エバンティスをこんな呪いの渦中に置いたファリアーナ神を、『契約』で縛った聖者を恨んだ。
――なぜ? 魔力を高める方法が体液の交換なのですか? なぜ? 快楽をともなうほうが、より多く魔力を高めることができるのですか? なぜ? 魔力の強い者のほうが、相手の魔力をより高めてあげられるのですか?
愛の女神ファリアーナ神よ、なぜ愛する心を必要としてくれなかったのですか?
慈愛の女神ファリアーナ神よ、なぜエバンティス血族に、慈愛の手をさしのべてくださらないのですか……
ボロボロになった僕がたどりついたセフィロース領の伯爵邸……ピジュが待っている……はやく会いたい……でも、汚れた僕を無垢なピジュが受けいれてくれるだろうか?
会いたい……でも、会えない……会いたい……ピジュが庭園で花冠をつくって遊んでいるようすを、木のかげにかくれて、のぞき見た。
嗚咽が漏れ、泣き声をピジュに気づかれないよう、手で口をふさぐ……口……? あっ……体中、どこもかしこも穢された僕だけれど、口だけは……さるぐつわに守られている。歓喜に体がふるえる。ピジュに捧げられる汚れていない唯一の場所!
ピジュに愛を誓い。花嫁になって! と懇願する。口づけだけは、接吻だけは君だけのものと誓い、ピジュの口づけだけでも僕に捧げて! と、切望した。僕への愛の証が欲しくて、必死にピジュにお願いした。
ピジュは、僕の天使は口づけだけじゃなく、彼女のすべては僕のものだと言ってくれた! 僕以外のだれにも接吻は許さないって、誓ってくれた!
花畑のなかで、愛を誓い初めてピジュに接吻した。ふたりで交わした約束。まねごとの婚約の儀。ピジュは、汚れた僕の体を無垢な接吻で浄化してくれたんだ。
ピジュの『成人の義』まで、あと9年。どうしたらこの呪われた血族の運命からピジュを守れるだろうか? 泣いている場合じゃない。ピジュを守るために、僕はもっとしっかりしないといけない。
――ピジュに護衛をつけ、つねに守らせることにした。
――血族の仕事をこなすたびに、私の心が疲弊していく……日に日に暗くなる私の慰めになるのならと、父はピジュをそばに置くことを許してくれた。
私が皇都に血族の仕事をしに行くとき以外は、セフィロース領にピジュを呼びよせられる。そばにいられる。嬉しい! 愛しいピジュ! 君がそばで笑ってくれるなら、どんなことにも耐えられる。
愛するジリィへ
セフィロース領から帰る馬車のなかで、このお手紙を書いています。さきほどお別れしたばかりだというのに、もう寂しくてたまりません。ずっと一緒にすごしたいと思うのは、わたくしの我がままですか?
つぎにお会いできる日が、はやくくるよう、ファリアーナ神にお祈りしています。
――あなたのピジュより
――皇都の公爵邸にラズ侯爵が訪ねてきた。どうせならピジュに会いたかった。でも皇都での汚い私をピジュに見られたくはない……
ラズ侯爵から、素晴らしい提案! ピジュに血族の仕事をさせないよう、ピジュの『成人の義』が終わりしだい、『婚姻』を結び、血族の仕事の相手を選ぶ権利を私に譲ってくれるという! 私は配偶者の権限でピジュをよその男の閨に送ることを拒否できる!
ラズ侯爵は、私が血族の仕事を嫌っているのを知っていた。私の好みにあうようピジュを男の欲望から遠ざけて、育てていると言った。私の好み? 私の好みはピジュだよ! ラズ侯爵はいったいなにを言っているのだろう? でも、ラズ侯爵の提案はすばらしい! まさに求めていたことだ!
これでやっと安心できる。ラズ侯爵は、他のエバンティス血族にピジュが血族の仕事をすることなく、私の花嫁になることを了承させるため、いくらかの金品が必要だと言ってきた。いくらでもわたそう! それぐらいのことでピジュを守れるなら安いものだ。
この日から、ピジュに『成人の義』で着てもらう婚礼衣装を考えはじめた。
ラズ侯爵にわたす金品を調達するために、領地の経営と父の仕事の補佐、両方を目まぐるしくこなしていく日々がはじまった。
ああ、幸せだ! ピジュが私の花嫁になる日、彼女の『成人の義』が楽しみだ!
2年ぶりに再会した愛しいピジュは、輝くばかりに可愛らしく成長していた。僕の『成人の義』に参列してもらい、それから彼女に皇都のカフェや僕がすごした学園を案内する予定をたてていたけれど……学友たちが彼女を見る目が嫌だった。「君もエバンティスか?」と、皇族の1人が彼女の手を取ったときは、殴りたくなった。学友たちが、憎い敵になった。彼らは7歳のピジュに、ギラギラとした欲望の目をむけていた。吐き気がする。僕のピジュを見る目をくりぬいてやりたい。
ピジュをすぐ馬車に乗せ、セフィロース領の伯爵邸へ送った。『成人の義』が終わったら、僕は伯爵位を授かりジリオーラ・エバンティス侯爵令息から、ジリオーラ・エバンティス・セフィロース伯爵になる。
僕の所領となるセフィロース領をはやくピジュに見せたいから! とつたえたら、彼女は「ふふふっ楽しみ」と笑って馬車から手を振ってくれた。さっさと『成人の義』を終わらせて、ピジュに会いにいこう。
――そう思っていたのに……気持ち悪い……気持ち悪い……気持ち悪い……気持ち悪い……
僕の『成人の義』を誰よりも楽しみに待っていた……と、その女は言った。聖者が交わした『約定の証書』により、エバンティス血族は皇族の魔力を高めるために、協力することになっている……と、真っ赤な唇で笑った。
僕が血族魔法を使ってしまわないように……口には、さるぐつわ。手足はベッドの手摺に結ばれ固定された。
甘い匂いのする香が気持ち悪い。小瓶の液体をかけられた肉棒が熱い。自分の意志とは関係なく屹立したそれを、皇太后は一晩中、貪った。
祖母と同じ年齢の女が、自分の上で腰を振るのを、泣きながら我慢した。
やめて、助けて……と、心が悲鳴をあげていた。僕の愛しいピジュが『成人の義』で皇族に犯されている姿が脳裏にチカチカと点滅して見えた。
ダメだ! ピジュだけは守らないと! 嫌だ! 僕の天使だ! 僕だけのものだ! ピジュをどうやってこの運命から救えるのか? エバンティスをこんな呪いの渦中に置いたファリアーナ神を、『契約』で縛った聖者を恨んだ。
――なぜ? 魔力を高める方法が体液の交換なのですか? なぜ? 快楽をともなうほうが、より多く魔力を高めることができるのですか? なぜ? 魔力の強い者のほうが、相手の魔力をより高めてあげられるのですか?
愛の女神ファリアーナ神よ、なぜ愛する心を必要としてくれなかったのですか?
慈愛の女神ファリアーナ神よ、なぜエバンティス血族に、慈愛の手をさしのべてくださらないのですか……
ボロボロになった僕がたどりついたセフィロース領の伯爵邸……ピジュが待っている……はやく会いたい……でも、汚れた僕を無垢なピジュが受けいれてくれるだろうか?
会いたい……でも、会えない……会いたい……ピジュが庭園で花冠をつくって遊んでいるようすを、木のかげにかくれて、のぞき見た。
嗚咽が漏れ、泣き声をピジュに気づかれないよう、手で口をふさぐ……口……? あっ……体中、どこもかしこも穢された僕だけれど、口だけは……さるぐつわに守られている。歓喜に体がふるえる。ピジュに捧げられる汚れていない唯一の場所!
ピジュに愛を誓い。花嫁になって! と懇願する。口づけだけは、接吻だけは君だけのものと誓い、ピジュの口づけだけでも僕に捧げて! と、切望した。僕への愛の証が欲しくて、必死にピジュにお願いした。
ピジュは、僕の天使は口づけだけじゃなく、彼女のすべては僕のものだと言ってくれた! 僕以外のだれにも接吻は許さないって、誓ってくれた!
花畑のなかで、愛を誓い初めてピジュに接吻した。ふたりで交わした約束。まねごとの婚約の儀。ピジュは、汚れた僕の体を無垢な接吻で浄化してくれたんだ。
ピジュの『成人の義』まで、あと9年。どうしたらこの呪われた血族の運命からピジュを守れるだろうか? 泣いている場合じゃない。ピジュを守るために、僕はもっとしっかりしないといけない。
――ピジュに護衛をつけ、つねに守らせることにした。
――血族の仕事をこなすたびに、私の心が疲弊していく……日に日に暗くなる私の慰めになるのならと、父はピジュをそばに置くことを許してくれた。
私が皇都に血族の仕事をしに行くとき以外は、セフィロース領にピジュを呼びよせられる。そばにいられる。嬉しい! 愛しいピジュ! 君がそばで笑ってくれるなら、どんなことにも耐えられる。
愛するジリィへ
セフィロース領から帰る馬車のなかで、このお手紙を書いています。さきほどお別れしたばかりだというのに、もう寂しくてたまりません。ずっと一緒にすごしたいと思うのは、わたくしの我がままですか?
つぎにお会いできる日が、はやくくるよう、ファリアーナ神にお祈りしています。
――あなたのピジュより
――皇都の公爵邸にラズ侯爵が訪ねてきた。どうせならピジュに会いたかった。でも皇都での汚い私をピジュに見られたくはない……
ラズ侯爵から、素晴らしい提案! ピジュに血族の仕事をさせないよう、ピジュの『成人の義』が終わりしだい、『婚姻』を結び、血族の仕事の相手を選ぶ権利を私に譲ってくれるという! 私は配偶者の権限でピジュをよその男の閨に送ることを拒否できる!
ラズ侯爵は、私が血族の仕事を嫌っているのを知っていた。私の好みにあうようピジュを男の欲望から遠ざけて、育てていると言った。私の好み? 私の好みはピジュだよ! ラズ侯爵はいったいなにを言っているのだろう? でも、ラズ侯爵の提案はすばらしい! まさに求めていたことだ!
これでやっと安心できる。ラズ侯爵は、他のエバンティス血族にピジュが血族の仕事をすることなく、私の花嫁になることを了承させるため、いくらかの金品が必要だと言ってきた。いくらでもわたそう! それぐらいのことでピジュを守れるなら安いものだ。
この日から、ピジュに『成人の義』で着てもらう婚礼衣装を考えはじめた。
ラズ侯爵にわたす金品を調達するために、領地の経営と父の仕事の補佐、両方を目まぐるしくこなしていく日々がはじまった。
ああ、幸せだ! ピジュが私の花嫁になる日、彼女の『成人の義』が楽しみだ!
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