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56 ジリオの日記1
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誘ってきたのはリオのほうだったはずなのに、すっかり興味がほかへ移ってしまったリオをじと目で見つめ、リオが『聖者の手記』の解読をしている横で、『ジリオの日記』を手に取った。『ジリオの日記』は神聖文字で書かれていたため、リオは読むことができない。
レディ・ピアディからの手紙が、ところどころに丁寧に貼りつけてあるこの日記の内容を、俺は生涯、リオに語ることはないだろう……ただ、レディ・ピアディへのあふれる愛が綴られている……と、伝えるだけだろう……
――9歳の誕生日。父上が、すばらしい誕生日プレゼントを送ってくださった! 僕に婚約者ができたんだ! ピアディ・エバンティス・ラズ侯爵令嬢! 数週間前に産まれた赤ちゃんだ!
最初、父上に「婚約者が決まった。会いに行っていい」って、言われたときは、勝手に決めるなよ! って、ムッとしたけれど……会いに行って本当によかった。
僕と同じ銀髪は顔のまわりでキラキラ光っていた。まだよく見えていないって侯爵夫人が言っていたけれど、奇麗なローズピンクの瞳で僕をジッと見つめてくれた。
ちっちゃい手で僕の指をにぎり、パクッと口にいれちゃったんだ! ラズ侯爵はあわてていたけれど、背筋がゾクゾクするような感動が全身をかけめぐった。
僕のものだ! この小さいレディは僕だけのお姫様!
ラズ侯爵に、僕の婚約者を誰にもさわらせないで! ってお願いしたら、お世話係以外にはさわらせないって、約束してくれた。本当は連れて帰りたかったけれど、ラズ侯爵が約束してくれたから、まかせることにした。
ピジュって愛称で呼ぶことにした。この愛称も僕だけが呼べるものだから、他の人は呼んじゃダメだ!
可愛いピジュ、僕の婚約者になってくれてありがとう! 君をこの世界に、僕のところへ贈ってくれたファリアーナ神に感謝します。
――14歳。今日から学園の寮にはいる。しばらくピジュに会えなくなるのは寂しい。5歳の彼女は、いっちゃヤダと泣いて馬車に居座った。本当に可愛い! このままさらってしまいたいけれど、学園を卒業したら、僕は伯爵位をもらえる。婚約者のピジュを、そばに呼びよせていてもいい身分が手にはいるから! だから待っていて! やわらかいほっぺに口づけを送り、お別れをした。馬車のなかで、少し泣いた……
だいすきなジリィへ
ジリィにあえなくて、さみしいです。
ジリィが送ってくれたご本、まいにち読んでます。
王子様はジリィみたいでドキドキしました。
王子様にあいされるお姫様みたく、なりたいです。
――ピジュより
――学園での生活は退屈だ。僕のピジュがそばにいないだけで、なんて色あせた世界なのだろう……入学当初から貴族令嬢がまとわりついてくるようになった。うっとうしい。
――「エバンティスなのだから『成人の義』のあと相手しろ」と、狂った女が言いにきた。これが皇女だって? その目がギラギラと欲望にまみれていて気持ち悪い。
物陰にひっぱりこまれ、尻や股間をさわられたり、僕の手を強引に自分の胸に押しつけたりしてくる狂った女たち……彼女たちは口々に、僕が「エバンティスだからだ」という。
わたしの王子様ジリィへ
あたらしいご本、ありがとうございます。
すてきな王子様に愛されるお姫様が、うらやましく思えて、少しだけくやしいの。だって、わたしはわたしの王子様に会えないんですもの……
ジリィがお勉強、がんばっているのにワガママなことを考えるわたしは、悪い子ですか? わたしもご本のお姫様のように、ジリィに愛されるお姫様になれるよう、がんばります。大好きジリィ。
――ピジュより
――学友に「上級生が魔力を高めるのを見せてくれるから、見に行こう」と、誘われた。肌を重ねあわせるあれだろ……人のを見て、なにが楽しい? ことわったが、むりやりひっぱって行かれ、上級生の寮の部屋の、しかも汚い衣装戸棚のなかに押しこめられた。
湿気取りの隙間から覗いた他人の情事は、気持ちのよいものではなかった。上級生がバカみたいに腰を振る。男の尻を見ていてなにが楽しい? 女はやたらアンアン騒いでいた……
学友が「『成人の義』をむかえたら、婚約者とあれができるんだぜ」と言った言葉が脳裡を焼いた。幼いピジュが僕の下で喘ぐ? 僕がピジュを抱く? 興奮した。ズボンの前を肉棒が押しあげ、下履きを汚す。
隣の学友も、前をくつろげ肉棒を取りだし、自分でしごいていたから、僕の痴態もさして問題にならないだろう……ただ、天使のような僕のピジュを穢してしまった、うしろめたさと、ピジュを抱きたいという欲望が、僕の心にドロリとした熱を残した。
大好きなジリィへ
お元気ですか? 今回送っていただいたご本、お姫様と王子様の婚姻のようすがとってもすてきで、うっとりしてしまいました。ふたりが将来を誓い接吻を交わすところが、いちばんすてきだと思いました。わたしも、わたしの王子様と幸せになりたいです。
あなたのお姫様にふさわしくなれるよう、わたしもがんばります。
――ピジュより
――父上から、エバンティス血族の仕事を聞いた……嫌だピジュしか欲しくない。
――学園の授業が終わると、皇都の侯爵邸へかよう日々。父から説明される聖者の血の弱まりと、エバンティスの血族魔法。エバンティスが繁栄をつづけるため必要な外交手段。血族の次期当主としての責任……聖者の血の力を取り戻すために選ばれた婚約者、僕のピジュ。
外交を優位に進めるための手段……女の喜ばしかたの閨教育。
これは、花嫁のピジュを気持ちよくするために必要なことだ! ピジュのための講義だ! 血族の男の経験談だけでなく、女の経験談も語られる……
嫌だ! ピジュにこんなことをさせたくない。ピジュ、ピジュ、ピジュ……
わたしのジリィへ
明日、皇都へ向けて出発します。
このお手紙が届くのが、はやいかしら? それとも、わたしが到着するほうが、はやいかしら? はやく会いたくてしかたがありません。
ジリィの『成人の義』楽しみにしています。
――ピジュより
レディ・ピアディからの手紙が、ところどころに丁寧に貼りつけてあるこの日記の内容を、俺は生涯、リオに語ることはないだろう……ただ、レディ・ピアディへのあふれる愛が綴られている……と、伝えるだけだろう……
――9歳の誕生日。父上が、すばらしい誕生日プレゼントを送ってくださった! 僕に婚約者ができたんだ! ピアディ・エバンティス・ラズ侯爵令嬢! 数週間前に産まれた赤ちゃんだ!
最初、父上に「婚約者が決まった。会いに行っていい」って、言われたときは、勝手に決めるなよ! って、ムッとしたけれど……会いに行って本当によかった。
僕と同じ銀髪は顔のまわりでキラキラ光っていた。まだよく見えていないって侯爵夫人が言っていたけれど、奇麗なローズピンクの瞳で僕をジッと見つめてくれた。
ちっちゃい手で僕の指をにぎり、パクッと口にいれちゃったんだ! ラズ侯爵はあわてていたけれど、背筋がゾクゾクするような感動が全身をかけめぐった。
僕のものだ! この小さいレディは僕だけのお姫様!
ラズ侯爵に、僕の婚約者を誰にもさわらせないで! ってお願いしたら、お世話係以外にはさわらせないって、約束してくれた。本当は連れて帰りたかったけれど、ラズ侯爵が約束してくれたから、まかせることにした。
ピジュって愛称で呼ぶことにした。この愛称も僕だけが呼べるものだから、他の人は呼んじゃダメだ!
可愛いピジュ、僕の婚約者になってくれてありがとう! 君をこの世界に、僕のところへ贈ってくれたファリアーナ神に感謝します。
――14歳。今日から学園の寮にはいる。しばらくピジュに会えなくなるのは寂しい。5歳の彼女は、いっちゃヤダと泣いて馬車に居座った。本当に可愛い! このままさらってしまいたいけれど、学園を卒業したら、僕は伯爵位をもらえる。婚約者のピジュを、そばに呼びよせていてもいい身分が手にはいるから! だから待っていて! やわらかいほっぺに口づけを送り、お別れをした。馬車のなかで、少し泣いた……
だいすきなジリィへ
ジリィにあえなくて、さみしいです。
ジリィが送ってくれたご本、まいにち読んでます。
王子様はジリィみたいでドキドキしました。
王子様にあいされるお姫様みたく、なりたいです。
――ピジュより
――学園での生活は退屈だ。僕のピジュがそばにいないだけで、なんて色あせた世界なのだろう……入学当初から貴族令嬢がまとわりついてくるようになった。うっとうしい。
――「エバンティスなのだから『成人の義』のあと相手しろ」と、狂った女が言いにきた。これが皇女だって? その目がギラギラと欲望にまみれていて気持ち悪い。
物陰にひっぱりこまれ、尻や股間をさわられたり、僕の手を強引に自分の胸に押しつけたりしてくる狂った女たち……彼女たちは口々に、僕が「エバンティスだからだ」という。
わたしの王子様ジリィへ
あたらしいご本、ありがとうございます。
すてきな王子様に愛されるお姫様が、うらやましく思えて、少しだけくやしいの。だって、わたしはわたしの王子様に会えないんですもの……
ジリィがお勉強、がんばっているのにワガママなことを考えるわたしは、悪い子ですか? わたしもご本のお姫様のように、ジリィに愛されるお姫様になれるよう、がんばります。大好きジリィ。
――ピジュより
――学友に「上級生が魔力を高めるのを見せてくれるから、見に行こう」と、誘われた。肌を重ねあわせるあれだろ……人のを見て、なにが楽しい? ことわったが、むりやりひっぱって行かれ、上級生の寮の部屋の、しかも汚い衣装戸棚のなかに押しこめられた。
湿気取りの隙間から覗いた他人の情事は、気持ちのよいものではなかった。上級生がバカみたいに腰を振る。男の尻を見ていてなにが楽しい? 女はやたらアンアン騒いでいた……
学友が「『成人の義』をむかえたら、婚約者とあれができるんだぜ」と言った言葉が脳裡を焼いた。幼いピジュが僕の下で喘ぐ? 僕がピジュを抱く? 興奮した。ズボンの前を肉棒が押しあげ、下履きを汚す。
隣の学友も、前をくつろげ肉棒を取りだし、自分でしごいていたから、僕の痴態もさして問題にならないだろう……ただ、天使のような僕のピジュを穢してしまった、うしろめたさと、ピジュを抱きたいという欲望が、僕の心にドロリとした熱を残した。
大好きなジリィへ
お元気ですか? 今回送っていただいたご本、お姫様と王子様の婚姻のようすがとってもすてきで、うっとりしてしまいました。ふたりが将来を誓い接吻を交わすところが、いちばんすてきだと思いました。わたしも、わたしの王子様と幸せになりたいです。
あなたのお姫様にふさわしくなれるよう、わたしもがんばります。
――ピジュより
――父上から、エバンティス血族の仕事を聞いた……嫌だピジュしか欲しくない。
――学園の授業が終わると、皇都の侯爵邸へかよう日々。父から説明される聖者の血の弱まりと、エバンティスの血族魔法。エバンティスが繁栄をつづけるため必要な外交手段。血族の次期当主としての責任……聖者の血の力を取り戻すために選ばれた婚約者、僕のピジュ。
外交を優位に進めるための手段……女の喜ばしかたの閨教育。
これは、花嫁のピジュを気持ちよくするために必要なことだ! ピジュのための講義だ! 血族の男の経験談だけでなく、女の経験談も語られる……
嫌だ! ピジュにこんなことをさせたくない。ピジュ、ピジュ、ピジュ……
わたしのジリィへ
明日、皇都へ向けて出発します。
このお手紙が届くのが、はやいかしら? それとも、わたしが到着するほうが、はやいかしら? はやく会いたくてしかたがありません。
ジリィの『成人の義』楽しみにしています。
――ピジュより
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