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旅立ち
まだ見ぬ地へ
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「白、起きなさい」
(母さんか————もう死んじゃったから、これは夢か)
そんなことを思い、目頭が熱くなる。
「夢じゃないわよ、ほら、時間がないんだからこっち向きなさい」
(夢じゃない?)
そう思い、目を開ける。目のうちに溜まった涙がでてくる。
そこには輪花がいた。
「母さん?」
「ふふっ、そうよあなたの“お母さん”だけど……そういえばいつぶりでしょうね、そんな風に呼ばれるの。もうここ何年か、おい、みたいな感じだったから新鮮ね~」
笑いながらも、皮肉じみた口調で言ってくる。やっぱりお母さんだ。
「なんで母さんが?確かにもう———」
白は母親の死を確認した。あんなに冷たくて硬くて、生きているはずがない 。
死んじゃったんじゃないの?その言葉の前に輪花が喋り出す。
「ええ、死んだわ。もう、大変だったのよ。職場着いたら、なんか頭が痛くなって、でも私、頭痛持ちだからいつも通りかなって、でもいつの間にか気を失うくらいになっちゃって、あっという間に死んじゃった」
「もしかして俺のせい?
俺が母さんを怒らせたから、悲しませたから、母さんに負担をかけたから、脳出血なんて起こったの?
母さんがいなくなって初めて、自力じゃ生きていけないことに気づいたんだ。
そうだ、こんな風に喋れてるんだし、もう一回会えたりするのかな?」
「はぁ、別に言っておくけどあんたのせいで死んだなんてことはないわよ。
もしそんなこと言ったらとっくのとうに死んでいるじゃない。
気にしなくていいのよ。
と言うか、そんなに心配してくれるなら、もうちょっと優しくしてくれてもよかったんじゃないかしら?
まぁいいわ。もう私と白は会えないわ。当たり前よね。私はもう死んじゃったんだから。
でも、今、なんで会えているかというと、わたしにもわからないのよ」
「どういうこと?」
「ん~、なんかね、誰かに呼ばれた気がしてね、気づいたらここにいたって感じ。そしたら白がいきなり現れびっくりしたのよ。しかも寝てるし」
「うっ」
「でもね、呼ばれた時、誰かに言われたの「息子と話せるのはせいぜい5分だ」って」
「それじゃあ」
「えぇ、もうすぐのはずよ」
「そうか、そうだよね。普通だったら会って話せることなんてないんだから」
「寂しいけどね」
(死んだはずの母さんと会えたんだ。
もっとずっと話していたいけど、あと少しでもう一生会えなくなる)
そう思い白は深呼吸をする。そして一つ一つ言葉を紡ぎ、気持ちを伝える。
「そうだね、悲しいし、寂しい。けど、これからちゃんと生きていくよ。
お母さんの分も生きる、なんて月並みな、恥ずかしい言葉は言わないけど、生きていく。お母さんがやってくれたこと全部を一人でやるのは大変だろうけど、それでもしっかり生きるよ。
———うん、これで僕からの宣誓は以上で終わりかな。
お母さんもなんかある?」
「そうね~、特にそれと言って宣誓なんてないわ。だって死んでるんだもん。今後の目標なんて意味ないわ。
でもこれだけは言わせて。
朝はちゃんと起きるのよ。
ちゃんと歯も磨いて、朝ごはんも食べて。
身だしなみもしっかりとしなさい。
まだ彼女なんていないだろうけど、もし出来たらちゃんとわたしに報告しなさい。あ、これはお墓がある前提だけど、お墓作ってくれるわよね?」
だんだんノイズがはさまってくる。
リミットがもうすぐ来るようだ。
「あとは、お金の管......理はしっかりしなさい。..........銀行の番号は........洋服ダンス........の後ろにあるひっそり.....とした棚の中に一通り........書いてあるわ。
無駄遣いし......ちゃダメよ。
そうそう、体には気をつけ.........なさい。体は資本と.....も言うわ。勉強なんてものは..........後回し、健康第一よ」
「全然これだけ、って量じゃないよ」
「ふふ、ごめん......ね。
でも、もっとあなたが........成長する姿を........見ていたかった
もっと........料理も作ってあげ........たかった
未来のあなた........の家族の........ことも見たかったわ。
それと、勉強........ばかりさせ........ちゃったけど、一緒に旅行とかも........行けばよかったわね。
もっと........子供らしいことをさ.........せてあげればよかっ........たとも今になって思うし」
「……」
「私........だけ喋っちゃっ......てごめんなさいね。
ねぇ、最後に....アレ、言って....くれ....ない?」
「アレって?」
「「お母さん」って。
最初........聞いた時、すごく........嬉しかったの。だから..........ね、一回で........いいから、お願い」
「……お母さん」
沈黙が流れる。もう、聞こえなくなったのではと心配になったその時。
「あり.......がとう」
輪花の嗚咽混じりの声が聞こえてきた。
(よかった、伝わって)
そう思ったのも束の間、輪花は光の粒子となってどこへともなく消えてゆく。
母親の死を受け入れようと、無理に自分の感情を抑え込んでいた白。自分のせいで死んだと自責し、母親への今までの対応を後悔しするも、失ったものは帰ってこない。そう考え、考え詰めて、崩壊しかけていた心が、本来ではありえない、死者との会話という形で癒えて行く。
白は泣きに泣いた。しかし彼が病院で見せた狂ったような泣き方ではなく、今まで無視をしようと努めていた後悔や自己嫌悪、そして一時的にだか母親と話すことができたという安心感、嬉しさが一気に押し寄せ、まるで崩壊したダムのように流れる涙を堪え切れない、そんな泣き方だった。
------------------------------------------
「もういいかい?」
全ての涙を出し切り、白の気持ちの整理もついた頃、ずっと聴いてても飽きないような、聞くもの全てを魅了すると言っても過言ではないような声が響いた。白の声でも、ましてや輪花の声でもない。しかし白にはこの声の主が誰のものなのか分かる気がした。否、分かってしまった。
そして一息ついて答える。
「あなたという存在が、喋れると思っていませんでした」
そう言いながら、声のする方へ目を向ける。そこには一人の男性が立っていた。
「……どういう意味だい?」
その声には特に怒気など込められておらず、興味と驚き、そして好奇心が垣間見えるようなものだった。その様子に白は確信を得る。だが、目の前にいる者へ向かい確認をする。
「いきなりすいませんでした。さっきまで取り乱していたのを落ち着くまで待ってもらっていたのに。それで一つお聞きしたいのですが、あなたは“神”と呼ばれる存在ですか?」
「私が死者と会うとき、彼らは皆、口を揃えて言うよ、「神だ」とね。事実お前と、母親を合わせたのも私の采配だ。」
「そうなんですか、ありがとうございます。お陰で目が覚めました。」
「そうか、それは良かった。で、だ。そんな私をお前は神ではないという。それはなぜだい?」
「私の意見を述べてもよろしいでしょうか?」
「私が質問しているんだ。いいに決まってる」
「では、お言葉に甘えて。私は“神”は存在はすると思いますが実在はしない、そう考えています。というのも、私たちが神と呼んでいるものは、古くから抗えない自然災害や疫病などを抑える、または防ぐために私たちが「想像」してできたものだと考えています。「創造」ではないのでお気を悪くなさらぬよう。そうしてできた「信仰」ですが、それの最低限の条件は“神”が実在しないことだと思うのです。もし“神”が実在したら、つまり直接会話ができ、見ることができ、触ることができたなら、それは“神”などではなく“偶像”だ」
白の考えを聞いたその男性が、目を細めて彼に問う。
「では今、お前と話している私はその“偶像”だといいたいのかな?」
「いえ、ここは少なくとも地上ではない、どこか別の場所なのでそうですね、“偶像”ではなく“象徴”というのはどうでしょうか?」
「……お前、分かってて言ってるな?」
「分かっているなんて、滅相も無い。ただ、そうではないかなと、予測はできました」
その男性はしばらく白を見つめると、降参したように話し出す。
「はぁ、正解だ。私はお前達には「ウロボロス」と呼ばれる存在だ。よく分かったな」
「ありがとうございます。でもよくわからないことがいくつか。お尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「いいぞ、答えられる範囲で答えよう」
「では一つ目、なぜ輪廻転生を司ると言われているあなたが、母親ではなく、私のそばにいるのでしょうか?」
「後で話そうと思ってたのだかな。今回、その転生をお前がすることになった、と言えばわかるか?」
「それは一体なぜでしょう。僕はまだ死んでないはずですが」
「生きる気力を失って部屋で死にかけていただろう。覚えてないのか?そもそも、この空間に来れる時点で、死んでるか、もしくは死にかけているんだよ」
「そんな……」
輪花とあって、生きる活力を得た白は、目が覚めたら当然、一からやり始めようと意気込んでいた。なのに、生きる、と母親に宣誓した手前、やっぱ死んでました、では笑い話にもならない。
そんなことを白は思ってると、ウロボロスが白の考えを読んでいたかのように口を開く。
「わかっている。だからお前を転生させると言ったんだ。」
「そう……ですか。本当に、ありがとうございます。もう一度、生きられるチャンスをくださって」
「おう、気にすんな。んで、いきなり本題に入るが、お前の転生先は決めてある。今から言い過ぎても面白く無いから、多くは語らないが、一言でいうと「努力が必ず実を結ぶ世界」だ。どういう風に実を結ぶかは、行ってからのお楽しみだな」
「それだけで十分ですよ」
「そして、これがこれから行く世界の、お前の情報だ。
おっと今見るなよ、新しい世界が味気なくなっちまう」
「そんなことはないと思いますが……わかりました。行った後見てみます」
「よし、それでいい。じゃあもう準備はできているから、行ってくるといい。また今度な、って言っても次会うときは、新しい世界で死んだときか」
「そうですね、出来るだけ死なないようにしますが、また会えるのを楽しみにしてます。」
「おう」
ウロボロスが何かの動作をした。その途端
視界が入れ替わり始める。そろそろ時間のようだ。白はウロボロスを見てお辞儀をする。そしてもうすぐ異世界へ、という時になって、ウロボロスが問いかけてきた。
「なぁ、さっきわからないことが複数ある、みたいな言い方してたが、もう大丈夫か?」
「ええ、もう大丈夫ですよ。ウロボロスは自分の尻尾を食べている姿をしているものだと思っていたので、あなたと見比べて混乱してただけですから」
「お前、自分が失礼な人間だということをよく噛み締めながら生きるんだぞ。これは忠告であり、警告だ」
「はい、わかりました」
そうして、白は異世界へ旅立った。
———————————————————
Dです
ノイズをどのように表現するかで、ピリオド連打という方法になりました。三点リーダと、ピリオド連打とで、フォントの関係上、紛らわしくて仕方ないです。もし見にくかったりしたら申し訳ございません。何かいい手はないですかね?
(母さんか————もう死んじゃったから、これは夢か)
そんなことを思い、目頭が熱くなる。
「夢じゃないわよ、ほら、時間がないんだからこっち向きなさい」
(夢じゃない?)
そう思い、目を開ける。目のうちに溜まった涙がでてくる。
そこには輪花がいた。
「母さん?」
「ふふっ、そうよあなたの“お母さん”だけど……そういえばいつぶりでしょうね、そんな風に呼ばれるの。もうここ何年か、おい、みたいな感じだったから新鮮ね~」
笑いながらも、皮肉じみた口調で言ってくる。やっぱりお母さんだ。
「なんで母さんが?確かにもう———」
白は母親の死を確認した。あんなに冷たくて硬くて、生きているはずがない 。
死んじゃったんじゃないの?その言葉の前に輪花が喋り出す。
「ええ、死んだわ。もう、大変だったのよ。職場着いたら、なんか頭が痛くなって、でも私、頭痛持ちだからいつも通りかなって、でもいつの間にか気を失うくらいになっちゃって、あっという間に死んじゃった」
「もしかして俺のせい?
俺が母さんを怒らせたから、悲しませたから、母さんに負担をかけたから、脳出血なんて起こったの?
母さんがいなくなって初めて、自力じゃ生きていけないことに気づいたんだ。
そうだ、こんな風に喋れてるんだし、もう一回会えたりするのかな?」
「はぁ、別に言っておくけどあんたのせいで死んだなんてことはないわよ。
もしそんなこと言ったらとっくのとうに死んでいるじゃない。
気にしなくていいのよ。
と言うか、そんなに心配してくれるなら、もうちょっと優しくしてくれてもよかったんじゃないかしら?
まぁいいわ。もう私と白は会えないわ。当たり前よね。私はもう死んじゃったんだから。
でも、今、なんで会えているかというと、わたしにもわからないのよ」
「どういうこと?」
「ん~、なんかね、誰かに呼ばれた気がしてね、気づいたらここにいたって感じ。そしたら白がいきなり現れびっくりしたのよ。しかも寝てるし」
「うっ」
「でもね、呼ばれた時、誰かに言われたの「息子と話せるのはせいぜい5分だ」って」
「それじゃあ」
「えぇ、もうすぐのはずよ」
「そうか、そうだよね。普通だったら会って話せることなんてないんだから」
「寂しいけどね」
(死んだはずの母さんと会えたんだ。
もっとずっと話していたいけど、あと少しでもう一生会えなくなる)
そう思い白は深呼吸をする。そして一つ一つ言葉を紡ぎ、気持ちを伝える。
「そうだね、悲しいし、寂しい。けど、これからちゃんと生きていくよ。
お母さんの分も生きる、なんて月並みな、恥ずかしい言葉は言わないけど、生きていく。お母さんがやってくれたこと全部を一人でやるのは大変だろうけど、それでもしっかり生きるよ。
———うん、これで僕からの宣誓は以上で終わりかな。
お母さんもなんかある?」
「そうね~、特にそれと言って宣誓なんてないわ。だって死んでるんだもん。今後の目標なんて意味ないわ。
でもこれだけは言わせて。
朝はちゃんと起きるのよ。
ちゃんと歯も磨いて、朝ごはんも食べて。
身だしなみもしっかりとしなさい。
まだ彼女なんていないだろうけど、もし出来たらちゃんとわたしに報告しなさい。あ、これはお墓がある前提だけど、お墓作ってくれるわよね?」
だんだんノイズがはさまってくる。
リミットがもうすぐ来るようだ。
「あとは、お金の管......理はしっかりしなさい。..........銀行の番号は........洋服ダンス........の後ろにあるひっそり.....とした棚の中に一通り........書いてあるわ。
無駄遣いし......ちゃダメよ。
そうそう、体には気をつけ.........なさい。体は資本と.....も言うわ。勉強なんてものは..........後回し、健康第一よ」
「全然これだけ、って量じゃないよ」
「ふふ、ごめん......ね。
でも、もっとあなたが........成長する姿を........見ていたかった
もっと........料理も作ってあげ........たかった
未来のあなた........の家族の........ことも見たかったわ。
それと、勉強........ばかりさせ........ちゃったけど、一緒に旅行とかも........行けばよかったわね。
もっと........子供らしいことをさ.........せてあげればよかっ........たとも今になって思うし」
「……」
「私........だけ喋っちゃっ......てごめんなさいね。
ねぇ、最後に....アレ、言って....くれ....ない?」
「アレって?」
「「お母さん」って。
最初........聞いた時、すごく........嬉しかったの。だから..........ね、一回で........いいから、お願い」
「……お母さん」
沈黙が流れる。もう、聞こえなくなったのではと心配になったその時。
「あり.......がとう」
輪花の嗚咽混じりの声が聞こえてきた。
(よかった、伝わって)
そう思ったのも束の間、輪花は光の粒子となってどこへともなく消えてゆく。
母親の死を受け入れようと、無理に自分の感情を抑え込んでいた白。自分のせいで死んだと自責し、母親への今までの対応を後悔しするも、失ったものは帰ってこない。そう考え、考え詰めて、崩壊しかけていた心が、本来ではありえない、死者との会話という形で癒えて行く。
白は泣きに泣いた。しかし彼が病院で見せた狂ったような泣き方ではなく、今まで無視をしようと努めていた後悔や自己嫌悪、そして一時的にだか母親と話すことができたという安心感、嬉しさが一気に押し寄せ、まるで崩壊したダムのように流れる涙を堪え切れない、そんな泣き方だった。
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「もういいかい?」
全ての涙を出し切り、白の気持ちの整理もついた頃、ずっと聴いてても飽きないような、聞くもの全てを魅了すると言っても過言ではないような声が響いた。白の声でも、ましてや輪花の声でもない。しかし白にはこの声の主が誰のものなのか分かる気がした。否、分かってしまった。
そして一息ついて答える。
「あなたという存在が、喋れると思っていませんでした」
そう言いながら、声のする方へ目を向ける。そこには一人の男性が立っていた。
「……どういう意味だい?」
その声には特に怒気など込められておらず、興味と驚き、そして好奇心が垣間見えるようなものだった。その様子に白は確信を得る。だが、目の前にいる者へ向かい確認をする。
「いきなりすいませんでした。さっきまで取り乱していたのを落ち着くまで待ってもらっていたのに。それで一つお聞きしたいのですが、あなたは“神”と呼ばれる存在ですか?」
「私が死者と会うとき、彼らは皆、口を揃えて言うよ、「神だ」とね。事実お前と、母親を合わせたのも私の采配だ。」
「そうなんですか、ありがとうございます。お陰で目が覚めました。」
「そうか、それは良かった。で、だ。そんな私をお前は神ではないという。それはなぜだい?」
「私の意見を述べてもよろしいでしょうか?」
「私が質問しているんだ。いいに決まってる」
「では、お言葉に甘えて。私は“神”は存在はすると思いますが実在はしない、そう考えています。というのも、私たちが神と呼んでいるものは、古くから抗えない自然災害や疫病などを抑える、または防ぐために私たちが「想像」してできたものだと考えています。「創造」ではないのでお気を悪くなさらぬよう。そうしてできた「信仰」ですが、それの最低限の条件は“神”が実在しないことだと思うのです。もし“神”が実在したら、つまり直接会話ができ、見ることができ、触ることができたなら、それは“神”などではなく“偶像”だ」
白の考えを聞いたその男性が、目を細めて彼に問う。
「では今、お前と話している私はその“偶像”だといいたいのかな?」
「いえ、ここは少なくとも地上ではない、どこか別の場所なのでそうですね、“偶像”ではなく“象徴”というのはどうでしょうか?」
「……お前、分かってて言ってるな?」
「分かっているなんて、滅相も無い。ただ、そうではないかなと、予測はできました」
その男性はしばらく白を見つめると、降参したように話し出す。
「はぁ、正解だ。私はお前達には「ウロボロス」と呼ばれる存在だ。よく分かったな」
「ありがとうございます。でもよくわからないことがいくつか。お尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「いいぞ、答えられる範囲で答えよう」
「では一つ目、なぜ輪廻転生を司ると言われているあなたが、母親ではなく、私のそばにいるのでしょうか?」
「後で話そうと思ってたのだかな。今回、その転生をお前がすることになった、と言えばわかるか?」
「それは一体なぜでしょう。僕はまだ死んでないはずですが」
「生きる気力を失って部屋で死にかけていただろう。覚えてないのか?そもそも、この空間に来れる時点で、死んでるか、もしくは死にかけているんだよ」
「そんな……」
輪花とあって、生きる活力を得た白は、目が覚めたら当然、一からやり始めようと意気込んでいた。なのに、生きる、と母親に宣誓した手前、やっぱ死んでました、では笑い話にもならない。
そんなことを白は思ってると、ウロボロスが白の考えを読んでいたかのように口を開く。
「わかっている。だからお前を転生させると言ったんだ。」
「そう……ですか。本当に、ありがとうございます。もう一度、生きられるチャンスをくださって」
「おう、気にすんな。んで、いきなり本題に入るが、お前の転生先は決めてある。今から言い過ぎても面白く無いから、多くは語らないが、一言でいうと「努力が必ず実を結ぶ世界」だ。どういう風に実を結ぶかは、行ってからのお楽しみだな」
「それだけで十分ですよ」
「そして、これがこれから行く世界の、お前の情報だ。
おっと今見るなよ、新しい世界が味気なくなっちまう」
「そんなことはないと思いますが……わかりました。行った後見てみます」
「よし、それでいい。じゃあもう準備はできているから、行ってくるといい。また今度な、って言っても次会うときは、新しい世界で死んだときか」
「そうですね、出来るだけ死なないようにしますが、また会えるのを楽しみにしてます。」
「おう」
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「なぁ、さっきわからないことが複数ある、みたいな言い方してたが、もう大丈夫か?」
「ええ、もう大丈夫ですよ。ウロボロスは自分の尻尾を食べている姿をしているものだと思っていたので、あなたと見比べて混乱してただけですから」
「お前、自分が失礼な人間だということをよく噛み締めながら生きるんだぞ。これは忠告であり、警告だ」
「はい、わかりました」
そうして、白は異世界へ旅立った。
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Dです
ノイズをどのように表現するかで、ピリオド連打という方法になりました。三点リーダと、ピリオド連打とで、フォントの関係上、紛らわしくて仕方ないです。もし見にくかったりしたら申し訳ございません。何かいい手はないですかね?
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