病弱な僕と正反対な君

蒸しケーキ

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体育祭05

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 午前の部が終わり、午後の部に入ろうとしていた。僕は放送をしなくてならなかったので、早々にお昼ご飯を済ませ、本部に向かっていた。その道中、応援団とすれ違う。当然その中には颯君もいた。

 「!?唯!!さっきはごめんな。断り切れなくて、、、」

 「ううん。あれは仕方ないよ。」

 と僕ははにかむ。

 「それに、次は颯君の応援合戦見れるでしょ??それだけで十分だよ。」

 「おう!しっかり見ててくr「はいはい。もう行きますよ。ここでいちゃつかないでくださーい。」

 颯君は水野君に腕を引っ張られながら、準備に入っていった。たぶん水野君は気を遣ってくれたんだな~。時刻は13時を回り、午後の種目がスタートする。放送、緊張するなぁ。先生からの合図は受け取ると、僕は短く息を吸いパチッとマイクのスイッチを入れる。

 「まもなく午後の種目が始まります。生徒の皆さんは指定された自分のクラスに戻ってください。」

 「ただいまより、応援団による応援合戦が始まります。応援団の皆さん。よろしくお願いします。」

 マイクのスイッチを切ると少し緊張が解けた。この調子なら大丈夫そうだ。

 ドンドンドンという大きな太鼓の合図を皮切りに、続々と応援団の人たちが入場する。応援団が登場した途端に、あちらこちらで黄色い声援が上がる。皆、筋骨隆々でたくましい体をしている。先頭に立っている団長の筋肉は一際目立っており、ボディビルダーにも引けを取らない肉体美だ。皆が団長に注目している中、僕はすぐに颯君の姿を見つける

 「か、かっこいい。」

 思わず口から言葉が溢れてしまう。恐らくサッカーで鍛え上げられた体は洗練されており、団長とはまた違った肉体だ。もちろん腹筋も割れており、思わず僕は見てはいけないようなものを見てしまった気分になり、ドキドキしてしまう。

 申し訳ないことに、肉体美に見惚れてしまい、応援の内容が頭に入ってこなかった。団長。ごめんなさい。

 午後からの種目は午前中とは打って変わり苛烈を極め、激しい種目がメインだ。騎馬戦では藤崎先輩が大将を務めており、他クラスの相手を諸共せず蹂躙していた。正直恐ろしいと思ってしまった。有馬先輩もリレーに出場していて、見事なごぼう抜きを見せ、1位ではなかったものの2位と健闘していた。有馬先輩はその後女子に囲まれていた。

 颯君も騎馬戦に出ていたのだが、本部にいたため3年生の姿しか見ることができなかったのが残念だった。しかし、最後のリレーは直接見ることができるのでそれだけでも良かったと思う。

 リレーはクラス数が多いため、勝ち抜け方式で行われる。自分のクラスは決勝まで進むことができたため、僕は自分のクラスで見られることになった。決勝戦ということもあり、各クラスのボルテージは最高潮に高まり、緊迫した空気が漂っている。

 「一条!任せたぞ!!」

 「はぁ~っ、私、走らないのにこっちまで緊張してくる、、」

 「みんな頑張って!!応援してるよ~!!」

 あちこちから歓声が聞こえ始める。僕は自分のクラスの席に着くと

 「お!唯!こっちこっち~」

 「水野君、お疲れ様。リレーこっちまで緊張してきちゃうよね」

 「唯もお疲れ。ほんとな。ほら颯に声かけてやんな。あいつ、あぁ見えても緊張してっから。」

 「え、えぇ~でも、、、」

 「恥ずかしがらずにさ!!おーーーい!!はーやーてー!!」

 颯君がこっちの方を向き、目が合った。僕は咄嗟に

 「颯君!頑張って!」

 と自分でもびっくりするような声を出していた。颯君は任せろと言わんばかりに、拳でグータッチのサインをする。僕もそれに便乗して同じくグータッチをした。

 「うん。これであいつも頑張れそうだな。」

 「まもなく、最後の種目、クラス対抗リレーが始まります。皆さまどうぞ生徒たちの有志を最後まで見届けてください。」

 「いちについて!!よーーーーい!!!」

 その瞬間、時が止まったような感覚になる。一瞬みんなの動きがスローモーションになったかと思うと

 パァンッ!!!!
 
 大きなピストルの音が鳴り響き、リレーが始まった。リレーは、男女が交互になりながら走ることになっており、男子はトラック1周、女子はトラック半周となっている。颯君は、というとアンカーを務める。決勝戦ということもあり、団子状態が続いている。いつ誰が抜け出すか分からない状況だ。

 しかし、アクシデントがここで起こる。颯君の前の走者の女の子がバトンを渡す直前で転んでしまったのだ。会場からは悲鳴が上がる。なんとかギリギリでバトンを渡すと、颯君が全力で走る。颯君も有馬先輩に負けず劣らずのごぼう抜きを見せる。会場もだんだんと盛り上がりを取り戻し、皆が颯君を応援していた。僕も全力で颯君にエールを送った。

 結果は3位だった。しかし、会場は静まることなく、バトンを転んでも尚渡した女の子と最後まで全力で走り抜いた颯君たちを讃えていた。これにて、体育祭は幕を下ろした。クラスに戻ると、始めの宣言通り、先生からアイスが配られた。そしてクラスは颯君の話題で持ちきりで、男子と女子に囲まれていた。僕は会場の撤去作業が残っていたため、グラウンドに戻る。あ、そういえばご褒美ってなににしよう、どうしようかと悩む。そしてなによりも何事もなく終わって良かったと。

 、、、そう思っていた。本部や会場の撤去を行っていると

 「ねぇさっき、リレーで転んだ女の子いたじゃん??」

 「あぁ~安藤さんね。めっちゃ痛そうだったよね、」

 「そうじゃなくって!!あの二人、できてるかもよ、、、」

 「えっ!?そうなの!!なに!!どういうこと!?」

 「さっき保健室まで一条君が安藤さんのこと運んでてね、そのあとキスしてたのよ!!」

 それを聞いた瞬間、事実がどうであれ、頭を鈍器で何度も、何度も殴られたような感覚に陥る。今まで浮かれすぎていたのかな。どうして終わりが来ることを忘れていたのだろうか。捨てられても、必要とされなくなったらいなくなることも覚悟していたはずなのに、、、それに二人を、安藤さんと颯君を見たときに不覚にもお似合いだなと思ってしまった。そうだよね、こんな貧相で可愛くもない、おまけに身体も弱いし、愛想もない平凡な男よりも、正反対の性格で可愛い女の子の方がいいってなるに決まっている。

 さっきまであんなに晴れていた空に黒い雷雲が広がり、次第に雨を降らした。僕はこれが雨なのか、それとも泣いているのか区別がつかなかった。

 

 

 

 
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