17 / 31
二人は
しおりを挟む
体育祭が終わると、あの一件をきっかけに元々モテていた颯君だったが、それに拍車がかかり、放課後決まって女子から呼び出しを受け、告白をされるという現場を何度も目撃している。颯君からは
「俺が唯以外見るはずがない。安心しろ。」
とは言われたものの、安心できるはずもなく、毎回その現場を目撃するたびに胃がひっくり返るような気分になる。そのため、ここ最近は食欲もほとんど沸いてこず、あまり体調が良くない日々を送っていた。
ある日の放課後、今日は部活動がある日だったので僕はいつも通り帰りの支度を済ませ、302教室に向かおうとする。3階に行ってすぐのこと。どこのだれかは分からなかったが、今、一番聞きたくなかった噂がまた僕の耳を貫通する。
「一条君。あのリレーで倒れた子と付き合ったらしいよ。」
「えぇ~?それやっぱほんとなの?」
「絶対そうだよ!だって私今日、二人で話してるところ見たもん!!」
「あー、あとなんか、保健室でキスしてたみたいなことも言われてたもんね~。」
その刹那、無理して心に蓋をしていた感情が一気に流れだし、ダムのように決壊していく。目の前が真っ白になる。辛い、苦しい、消え去りたい。なにも考えることができない。僕はただ茫然とそこに立ち尽くすしかなかった。胸の動悸が止まらない。ほんとうに心が壊れると涙も出なくなるのか。
「おっ!!ゆいゆい~!体育祭お疲れ!!ごめんね!!今日はみんな揃わないんだけ、ど、、、。とりあえず教室入ろっか。ね?」
力無く頷き、僕は星谷先輩の後を追う。
星谷先輩はお菓子とお茶を用意してくれた。
「無理して聞き出したいわけじゃないから話したくなかったらいいんだけど、さっきなにがあったの?」
僕は下を向きだんまりを決め込んでいる。
「そうだなぁ~。話してみて、とか吐きだしてみるとわかることもあるからさ。ゆいゆいには幸せになってもらいたいの。これは俺のエゴなんだけどね。」
「なんで、どうして僕が幸せになっていいんですか、、、本当は幸せなんて望んじゃいけないんです。僕は、僕なんていっそ、」
言葉を言い切る前に
「ゆい。そうやってすぐ自分を否定するのやめろ。それだけで、ゆいだけじゃない。周りの人たちが悲しむ可能性は考えたか?現に俺は今悲しいよ。」
いつものふわふわとしたおちゃらけた空気感はそこにはなく、厳かで粛々とした空気が漂っている。柳瀬先輩と似たような雰囲気だ。星谷先輩は軽くため息をつくと
「ゆいゆいはさ~もっと自分が周りから必要とされてて、愛されていることを自覚しなきゃね。ゆいゆいの過去のことは知らないし分からないけど、昔と今の環境とか、関わる人って全く違うでしょ??今すぐにその考えを変えることは難しいけど、これから先で前向きな考えに変えることはできるはずだよ。」
自然と頬から涙が伝っていく。僕が落ち着くまでずっと星谷先輩は背中をさすってくれていた。やっと話せるぐらいにまでなると、僕は星谷先輩にさっき聞いてしまった話のこと、自分がなにを不安に思っているのかすべて打ち明けた。
「そっかぁ。今の俺から言えることは、噂は所詮噂でしかないこと、かな。本人の口から確認しない限りはなんとも言えないしさ。一番は、ゆいゆいの彼氏に聞くことだよ。聞きづらい、話しづらいことかもしれないけど。」
「星谷先輩っ。頑張って話してみます、、自分の言いたいことが言えるか分からないですけど、、、」
「話し合いは大事だからねぇ~。ほんとに。応援してるよ。結果がどうであれ、ゆいゆいが真剣に向き合った証拠は俺が知ってるし、みてるからね。」
「はい。ありがとうございます!」
自分の決心が揺らがぬうちに話し合いをしよう。早く部屋に戻ろう。
しかし、部屋に入る直前、治まったと思っていた胸の動悸が再び身体に襲い掛かる。酷くなる前になんとか部屋に入り、深呼吸をして心を落ち着かせる。大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせる。とりあえず、RINEで
「話したいことがあるから部屋で待ってる。」
とメッセージを送った。すぐに既読が付き、
「分かった。すぐに行く。」
と返ってくる。RINEを送ってから数分もかからないうちに、勢いよく扉が開いた。颯君は息を切らしているようだった。僕は覚悟を決め
「ごめんね。いきなり。」
「、、、いや、平気。話って、?」
「、安藤さんとキスしたの??」
彼は一瞬明らかに戸惑ったような顔をした。あぁ、やっぱり事実なんだね。
「唯、それは誤解で「もういいよ。もう、大丈夫。」
「唯、、?」
「それだけ聞けたなら、もういいんだ。」
次の瞬間、ヒュッと短く呼吸したかと思うと、息苦しくなり、吐き気が込み上げてくる。次第にうまく体に酸素を取り込むのが難しくなり、息苦しい。必死に酸素を取り込もうとするが、ヒューッヒューッっという音だけが耳に残る。
「おい!!、い!!、、丈夫か!?、、、りしろ!!」
颯君の声が聞こえる。あぁまただ。どうしてこうもうまくいかないんだ。もっと話し合わなきゃいけないのに。こんなときにまでまた迷惑かけるなんて。最後の最後まで僕はダメ人間だなぁ。
あれ?でも安藤さんとキスしたか聞いたときに否定をしなかった。これ以上なにを聞くんだっけ?もうこれで分かったじゃないか。所詮、僕はお遊びだったって。真実を知って自分から傷つきに行く必要なんてないじゃないか。視界に霞がかかったようにぼやける。もうこのままほんとうに死んでしまいたい。頼むから放っておいてくれないかな。
意識を完全に手放す直前、唇になにか触れるような感覚がした。
「俺が唯以外見るはずがない。安心しろ。」
とは言われたものの、安心できるはずもなく、毎回その現場を目撃するたびに胃がひっくり返るような気分になる。そのため、ここ最近は食欲もほとんど沸いてこず、あまり体調が良くない日々を送っていた。
ある日の放課後、今日は部活動がある日だったので僕はいつも通り帰りの支度を済ませ、302教室に向かおうとする。3階に行ってすぐのこと。どこのだれかは分からなかったが、今、一番聞きたくなかった噂がまた僕の耳を貫通する。
「一条君。あのリレーで倒れた子と付き合ったらしいよ。」
「えぇ~?それやっぱほんとなの?」
「絶対そうだよ!だって私今日、二人で話してるところ見たもん!!」
「あー、あとなんか、保健室でキスしてたみたいなことも言われてたもんね~。」
その刹那、無理して心に蓋をしていた感情が一気に流れだし、ダムのように決壊していく。目の前が真っ白になる。辛い、苦しい、消え去りたい。なにも考えることができない。僕はただ茫然とそこに立ち尽くすしかなかった。胸の動悸が止まらない。ほんとうに心が壊れると涙も出なくなるのか。
「おっ!!ゆいゆい~!体育祭お疲れ!!ごめんね!!今日はみんな揃わないんだけ、ど、、、。とりあえず教室入ろっか。ね?」
力無く頷き、僕は星谷先輩の後を追う。
星谷先輩はお菓子とお茶を用意してくれた。
「無理して聞き出したいわけじゃないから話したくなかったらいいんだけど、さっきなにがあったの?」
僕は下を向きだんまりを決め込んでいる。
「そうだなぁ~。話してみて、とか吐きだしてみるとわかることもあるからさ。ゆいゆいには幸せになってもらいたいの。これは俺のエゴなんだけどね。」
「なんで、どうして僕が幸せになっていいんですか、、、本当は幸せなんて望んじゃいけないんです。僕は、僕なんていっそ、」
言葉を言い切る前に
「ゆい。そうやってすぐ自分を否定するのやめろ。それだけで、ゆいだけじゃない。周りの人たちが悲しむ可能性は考えたか?現に俺は今悲しいよ。」
いつものふわふわとしたおちゃらけた空気感はそこにはなく、厳かで粛々とした空気が漂っている。柳瀬先輩と似たような雰囲気だ。星谷先輩は軽くため息をつくと
「ゆいゆいはさ~もっと自分が周りから必要とされてて、愛されていることを自覚しなきゃね。ゆいゆいの過去のことは知らないし分からないけど、昔と今の環境とか、関わる人って全く違うでしょ??今すぐにその考えを変えることは難しいけど、これから先で前向きな考えに変えることはできるはずだよ。」
自然と頬から涙が伝っていく。僕が落ち着くまでずっと星谷先輩は背中をさすってくれていた。やっと話せるぐらいにまでなると、僕は星谷先輩にさっき聞いてしまった話のこと、自分がなにを不安に思っているのかすべて打ち明けた。
「そっかぁ。今の俺から言えることは、噂は所詮噂でしかないこと、かな。本人の口から確認しない限りはなんとも言えないしさ。一番は、ゆいゆいの彼氏に聞くことだよ。聞きづらい、話しづらいことかもしれないけど。」
「星谷先輩っ。頑張って話してみます、、自分の言いたいことが言えるか分からないですけど、、、」
「話し合いは大事だからねぇ~。ほんとに。応援してるよ。結果がどうであれ、ゆいゆいが真剣に向き合った証拠は俺が知ってるし、みてるからね。」
「はい。ありがとうございます!」
自分の決心が揺らがぬうちに話し合いをしよう。早く部屋に戻ろう。
しかし、部屋に入る直前、治まったと思っていた胸の動悸が再び身体に襲い掛かる。酷くなる前になんとか部屋に入り、深呼吸をして心を落ち着かせる。大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせる。とりあえず、RINEで
「話したいことがあるから部屋で待ってる。」
とメッセージを送った。すぐに既読が付き、
「分かった。すぐに行く。」
と返ってくる。RINEを送ってから数分もかからないうちに、勢いよく扉が開いた。颯君は息を切らしているようだった。僕は覚悟を決め
「ごめんね。いきなり。」
「、、、いや、平気。話って、?」
「、安藤さんとキスしたの??」
彼は一瞬明らかに戸惑ったような顔をした。あぁ、やっぱり事実なんだね。
「唯、それは誤解で「もういいよ。もう、大丈夫。」
「唯、、?」
「それだけ聞けたなら、もういいんだ。」
次の瞬間、ヒュッと短く呼吸したかと思うと、息苦しくなり、吐き気が込み上げてくる。次第にうまく体に酸素を取り込むのが難しくなり、息苦しい。必死に酸素を取り込もうとするが、ヒューッヒューッっという音だけが耳に残る。
「おい!!、い!!、、丈夫か!?、、、りしろ!!」
颯君の声が聞こえる。あぁまただ。どうしてこうもうまくいかないんだ。もっと話し合わなきゃいけないのに。こんなときにまでまた迷惑かけるなんて。最後の最後まで僕はダメ人間だなぁ。
あれ?でも安藤さんとキスしたか聞いたときに否定をしなかった。これ以上なにを聞くんだっけ?もうこれで分かったじゃないか。所詮、僕はお遊びだったって。真実を知って自分から傷つきに行く必要なんてないじゃないか。視界に霞がかかったようにぼやける。もうこのままほんとうに死んでしまいたい。頼むから放っておいてくれないかな。
意識を完全に手放す直前、唇になにか触れるような感覚がした。
48
あなたにおすすめの小説
好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない
豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。
とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ!
神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。
そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。
□チャラ王子攻め
□天然おとぼけ受け
□ほのぼのスクールBL
タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。
◆…葛西視点
◇…てっちゃん視点
pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。
所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。
【完結】恋した君は別の誰かが好きだから
花村 ネズリ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。
青春BLカップ31位。
BETありがとうございました。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
二つの視点から見た、片思い恋愛模様。
じれきゅん
ギャップ攻め
【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』
バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。 そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。 最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m
三ヶ月だけの恋人
perari
BL
仁野(にの)は人違いで殴ってしまった。
殴った相手は――学年の先輩で、学内で知らぬ者はいない医学部の天才。
しかも、ずっと密かに想いを寄せていた松田(まつだ)先輩だった。
罪悪感にかられた仁野は、謝罪の気持ちとして松田の提案を受け入れた。
それは「三ヶ月だけ恋人として付き合う」という、まさかの提案だった――。
姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)
turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。
徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。
彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。
一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。
ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。
その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。
そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。
時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは?
ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ?
読んでくださった方ありがとうございます😊
♥もすごく嬉しいです。
不定期ですが番外編更新していきます!
僕の王子様
くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。
無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。
そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。
見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。
元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。
※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。
坂木兄弟が家にやってきました。
風見鶏ーKazamidoriー
BL
父子家庭のマイホームに暮らす|鷹野《たかの》|楓《かえで》は家事をこなす高校生。ある日、父の再婚話が持ちあがり相手の家族とひとつ屋根のしたで生活することに、再婚相手には年の近い息子たちがいた。
ふてぶてしい兄弟に楓は手を焼きながら、しだいに惹かれていく。
【完結】腹黒王子と俺が″偽装カップル″を演じることになりました。
Y(ワイ)
BL
「起こされて、食べさせられて、整えられて……恋人ごっこって、どこまでが″ごっこ″ですか?」
***
地味で平凡な高校生、生徒会副会長の根津美咲は、影で学園にいるカップルを記録して同人のネタにするのが生き甲斐な″腐男子″だった。
とある誤解から、学園の王子、天瀬晴人と“偽装カップル”を組むことに。
料理、洗濯、朝の目覚まし、スキンケアまで——
同室になった晴人は、すべてを優しく整えてくれる。
「え、これって同居ラブコメ?」
……そう思ったのは、最初の数日だけだった。
◆
触れられるたびに、息が詰まる。
優しい声が、だんだん逃げ道を塞いでいく。
——これ、本当に“偽装”のままで済むの?
そんな疑問が芽生えたときにはもう、
美咲の日常は、晴人の手のひらの中だった。
笑顔でじわじわ支配する、“囁き系”執着攻め×庶民系腐男子の
恋と恐怖の境界線ラブストーリー。
【青春BLカップ投稿作品】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる