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食事会
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蓮君からご両親の話を聞いてから二か月後、俺は新調したスーツに身を包んで、蓮君のご両親が待っているという料亭にこれから向かう予定だった。
まだ会ってすらいないというのに、緊張と不安で心臓がバクバクと脈打っていた。
おかしな点はないだろうか。ネクタイは曲がってない?、忘れ物は?マナーは大丈夫かな......。あぁ、こんな心配になるならもっと勉強しておけばよかったかも。と刻一刻と時間が迫るたびに不安はどんどん募ってきた。
鏡の前で「こうかな??いやこっちの方が...」と悩み続けて、すでに三十分以上は経っていた。
このスーツは瑠夏に選んでもらったものだ。「蓮君の親御さんと会うんだよね」と話をしたとき「じゃあ今からスーツでも買いに行こうよ」と一緒に買いに行ってくれたことを思い出した。
スーツだけに関しては、瑠夏が選んでくれたものだから心配はしていなかった。問題はそれ以外なんだけどね。
「葵さんもう出れそ......ふふっ、もうまーだやってるの?大丈夫。葵さんは今日もキレイだよ。」
「そういうことを言ってるんじゃなくーー!?」
ふにっと温かい感触が唇に触れた。
「じゃっ、下で待ってるね、」
「もう......」
まったく。これから蓮君のご両親に会いに行くというのに、緊張感はないのだろうか......いや、自分の両親を前に緊張するわけないか。
俺は頬をばちんと叩いて気を取り直す。
さて、今日の俺の役割は出しゃばりすぎないこと!!そして蓮君と蓮君のお父さんで話をさせること。俺のお節介だろうけど、二人の関係が少しでも良くなることを願いながら、家を出た。
俺は車に乗ってる最中も、そわそわと落ち着かずにはいられなかった。
「そういえば。今日どこで蓮君のご両親と会うの?」
「あぁ、今日はここでご飯食べるらしいですよ」
「......まじ?」
そう言って蓮君が見せてきた写真には、あの超有名な三つ星がついてる和食屋さんの画面が映し出されていた。そこは予約がもう一年先まで埋まってるとか、そんなレベルのお店だった。
そんなところに今から行くって知ったらますます動揺するに決まってるじゃんね。聞いたことを少しだけ後悔した。
俺が心配して「テーブルマナーの勉強もっとしておけばなぁ」とぼやいていると
蓮君は「個室だからテーブルマナーもそんなに堅苦しくないと思うけどね」と笑っていた。
今日はただ美味しいご飯を食べるだけ。それと、蓮君のサポートをすること。この二つを忘れないように心の中で反芻した。
「あ、葵さん着いたよ。」
「うわぁ...ここテレビで見たことある場所だ。」
ただ、意外とお店の前は高級店!という感じではなく、どちらかというと庶民向けのような雰囲気で少し拍子抜けした。
テレビで見たときはなんかもっとこう、キラキラしてる感じだったんだけどな。
けれど、店の中に足を踏み入れた瞬間、空気が一変した。外観と違って中は一気に和の世界に切り替わっていた。店内の中央には竹や小さい松の木が植えてあり、店の中に木??と想像の斜め上を行く空間に少し困惑した。
さらに奥に進めば受付のような場所が現れた。そこで蓮君が慣れた様子でウェイトレスに要件を伝えていた。
「はい。美園様ですね。すでにお連れ様が中でお待ちでございます。個室までご案内いたします」
ついに来てしまった。蓮君のご両親が待つ個室の前に。手の平にはじんわりと汗が滲んできた。
扉がウェイトレスによって静かに開かれた。中にいた蓮君のご両親と視線が合った。見た瞬間に感じ取った。これは...両親ともにアルファだ。
「それではどうぞごゆるりと」
「葵さん、席こっち。荷物はここに置いてね」
「...あ、あぁ。ありがとう。」
つい、蓮君のご両親の圧のようなものにやられてぼーっとしてしまった。さすが蓮君だ。こういう場所きっと慣れてるんだな。
「初めまして。私は立花葵と申します。この度はお食事にご招待いただきまして、ありがとうございます。」
俺は深々と頭を下げた。
「そんなに畏まらなくていいのよ。あなたが...蓮の恋人ね。初めまして、蓮の母の麗華です。」
はぇ!?なんで付き合ってるってバレてるんだ??と焦って、蓮君の方をちらっと見ると、怒られる寸前の子犬のような顔をしていた。あぁ、うっかり言っちゃったんだろうな蓮君。まぁ、お付き合いしてますって言う手間が省けたからいっか。
「ほら、あなたも挨拶して?」
「......蓮の父の慎一郎だ。」
「ごめんなさいね。この人いつもこんな調子だから、気にしないでちょうだいね。」
「いえ!全然大丈夫です!!」
どうやら、蓮君の整った顔立ちは両親譲りみたいだが、特に母親の麗華さんとはそっくりだった。ぱっちりとした目元や、薄い唇が蓮君にそのまま受け継がれているように感じた。
対して、父親の慎一郎さんとは、あんまり似ていないような気がする?麗華さんの遺伝子が強いのだろうか?それとも、蓮君の内面がお父さんと似ているのかな?
どちらにせよ、話をしてみないと分からないな。まだ挨拶しかしていないのに、少し緊張感のある空気が個室を漂っていた。
この食事会大丈夫かな...。胃がキリキリと少し痛み始めた。
まだ会ってすらいないというのに、緊張と不安で心臓がバクバクと脈打っていた。
おかしな点はないだろうか。ネクタイは曲がってない?、忘れ物は?マナーは大丈夫かな......。あぁ、こんな心配になるならもっと勉強しておけばよかったかも。と刻一刻と時間が迫るたびに不安はどんどん募ってきた。
鏡の前で「こうかな??いやこっちの方が...」と悩み続けて、すでに三十分以上は経っていた。
このスーツは瑠夏に選んでもらったものだ。「蓮君の親御さんと会うんだよね」と話をしたとき「じゃあ今からスーツでも買いに行こうよ」と一緒に買いに行ってくれたことを思い出した。
スーツだけに関しては、瑠夏が選んでくれたものだから心配はしていなかった。問題はそれ以外なんだけどね。
「葵さんもう出れそ......ふふっ、もうまーだやってるの?大丈夫。葵さんは今日もキレイだよ。」
「そういうことを言ってるんじゃなくーー!?」
ふにっと温かい感触が唇に触れた。
「じゃっ、下で待ってるね、」
「もう......」
まったく。これから蓮君のご両親に会いに行くというのに、緊張感はないのだろうか......いや、自分の両親を前に緊張するわけないか。
俺は頬をばちんと叩いて気を取り直す。
さて、今日の俺の役割は出しゃばりすぎないこと!!そして蓮君と蓮君のお父さんで話をさせること。俺のお節介だろうけど、二人の関係が少しでも良くなることを願いながら、家を出た。
俺は車に乗ってる最中も、そわそわと落ち着かずにはいられなかった。
「そういえば。今日どこで蓮君のご両親と会うの?」
「あぁ、今日はここでご飯食べるらしいですよ」
「......まじ?」
そう言って蓮君が見せてきた写真には、あの超有名な三つ星がついてる和食屋さんの画面が映し出されていた。そこは予約がもう一年先まで埋まってるとか、そんなレベルのお店だった。
そんなところに今から行くって知ったらますます動揺するに決まってるじゃんね。聞いたことを少しだけ後悔した。
俺が心配して「テーブルマナーの勉強もっとしておけばなぁ」とぼやいていると
蓮君は「個室だからテーブルマナーもそんなに堅苦しくないと思うけどね」と笑っていた。
今日はただ美味しいご飯を食べるだけ。それと、蓮君のサポートをすること。この二つを忘れないように心の中で反芻した。
「あ、葵さん着いたよ。」
「うわぁ...ここテレビで見たことある場所だ。」
ただ、意外とお店の前は高級店!という感じではなく、どちらかというと庶民向けのような雰囲気で少し拍子抜けした。
テレビで見たときはなんかもっとこう、キラキラしてる感じだったんだけどな。
けれど、店の中に足を踏み入れた瞬間、空気が一変した。外観と違って中は一気に和の世界に切り替わっていた。店内の中央には竹や小さい松の木が植えてあり、店の中に木??と想像の斜め上を行く空間に少し困惑した。
さらに奥に進めば受付のような場所が現れた。そこで蓮君が慣れた様子でウェイトレスに要件を伝えていた。
「はい。美園様ですね。すでにお連れ様が中でお待ちでございます。個室までご案内いたします」
ついに来てしまった。蓮君のご両親が待つ個室の前に。手の平にはじんわりと汗が滲んできた。
扉がウェイトレスによって静かに開かれた。中にいた蓮君のご両親と視線が合った。見た瞬間に感じ取った。これは...両親ともにアルファだ。
「それではどうぞごゆるりと」
「葵さん、席こっち。荷物はここに置いてね」
「...あ、あぁ。ありがとう。」
つい、蓮君のご両親の圧のようなものにやられてぼーっとしてしまった。さすが蓮君だ。こういう場所きっと慣れてるんだな。
「初めまして。私は立花葵と申します。この度はお食事にご招待いただきまして、ありがとうございます。」
俺は深々と頭を下げた。
「そんなに畏まらなくていいのよ。あなたが...蓮の恋人ね。初めまして、蓮の母の麗華です。」
はぇ!?なんで付き合ってるってバレてるんだ??と焦って、蓮君の方をちらっと見ると、怒られる寸前の子犬のような顔をしていた。あぁ、うっかり言っちゃったんだろうな蓮君。まぁ、お付き合いしてますって言う手間が省けたからいっか。
「ほら、あなたも挨拶して?」
「......蓮の父の慎一郎だ。」
「ごめんなさいね。この人いつもこんな調子だから、気にしないでちょうだいね。」
「いえ!全然大丈夫です!!」
どうやら、蓮君の整った顔立ちは両親譲りみたいだが、特に母親の麗華さんとはそっくりだった。ぱっちりとした目元や、薄い唇が蓮君にそのまま受け継がれているように感じた。
対して、父親の慎一郎さんとは、あんまり似ていないような気がする?麗華さんの遺伝子が強いのだろうか?それとも、蓮君の内面がお父さんと似ているのかな?
どちらにせよ、話をしてみないと分からないな。まだ挨拶しかしていないのに、少し緊張感のある空気が個室を漂っていた。
この食事会大丈夫かな...。胃がキリキリと少し痛み始めた。
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