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蓮君の苦心02
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蓮君は俺の手を握りながら、淡々と話し始めた。
「両親は今、海外に拠点を置いてる企業の代表取締役なんです。小学校までは一緒に日本に住んでいたんですけど、そこからは疎遠で、たまに日本に帰ってくる時ぐらいしか両親とは会いません。」
そっか。だから蓮君の家には必要最低限の物しかなかったり、親御さんと住んでる気配もしなかったのか。
「だけど俺、両親と...いや親父と仲が悪いんです。昔から馬が合わなくて顔を合わせれば喧嘩ばっかりして...。あ、でも尊敬はしているんですけどね。」
蓮君は困ったように笑い、微かに肩をすくめた。
「親父は、俺に家業を継がせたがってるんです。だからずっとお前は海外の学校に行くべきとか、大学に行くなら経営学を絶対に学べとか、色々口出ししてくるんです。
最初は俺のためを思ってなのかなって考えていたんですけど、だんだん、指図されるのが負担になってきたというか......」
「煩わしくなった??」
「はい、その方がしっくりくるかもしれません。俺も親父の期待に応えようと頑張ってた時期もありました。従順で、親父の言うことになんでも頷いて、指示されたことだけをやっていました。まるで操り人形のように......」
「ただ、ほんとにこのままでいいのか、俺のやりたいことは別にあるんじゃないかって、自分の中でそういう考えが芽生えてきたんです。」
「だから中学に上がる前に俺は、親父の後を継ぐんじゃなくって、別の何かを目指したいって、他のことをしたいって話したことがあるんです。でも結局、聞く耳すら持ってもらえず...親父のなかで俺の話は無かったことにされました。」
「そこからは自然なことで、親父とはよく衝突するようになりました。この人に何を話しても理解してもらえない、だったらもう話す必要はない。そう思って両親にはついていかず、日本に残りました。」
「そうだったんだね...。」
今のところ、お父さんと仲が悪いことは分かったけれど、お母さんとはどうなんだろう?
「お母さんとも仲は悪いの??」
「いえ、母とは悪くありません。親父と比べたら仲良くやれてると思います。実際、連絡もたまに取り合っていますし、中学、高校と学費を出してくれたのは母ですから。むしろ感謝しています。」
「それで、今になってお父さんから連絡が来てるってこと??」
「はい...実は俺が高校を卒業したタイミングで両親がこっちに戻ってきたんです。話は変わらず俺を海外に連れて行く内容でしたけどね......。」
蓮君は落胆するように軽く息を吐いた。
「ただ、俺はすでに大学に合格してたし、親父も簡単に連れて行く訳には行かないからって、お前が大学を卒業したら海外に連れて行くと、一方的にそれだけ告げて帰っていきました。自分の父親ながら身勝手で、なんて傲慢な人なんだって心底そう思いましたよ。」
蓮君は呆れと、どこか諦めを含めたような口調でそう言い放った。
「ーーこれがざっくりなんですけど、俺と両親の関係です。」
「...話してくれてありがとう。」
俺は蓮君に告げながら、頭の中で思考を巡らせていた。
今、話を聞いていて思ったのは、蓮君と蓮君のお父さんに足りないのは圧倒的に対話の時間だ。一方的に会話が終わってしまっているからこそ蓮君がやりたいこと、お父さんが思っていることがお互い分からなくなっているのではないか。
俺としても今後、蓮君と付き合っていくならこういういざこざはできるだけ無くしておきたい。
それに、蓮君も煩わしいとは思っていても心のどこかではきっと寂しい思いをしているはず。だからこそ、俺にできることはーー
「葵さん??平気??」
「うん平気だよ。...ねぇ蓮君。俺、蓮君のご両親と会ってみたいな。」
「......葵さん。今の俺の話、聞いてましたか??」
冷ややかな声が蓮君から発せられ、微かに冷たい空気が漂う。だが俺も負けてられない。だって蓮君は心のどこかでまだお父さんのことを理解したいという気持ちがあるはずだから。
仕方ない......あまりこれは使いたくなかったけど、今はこの手しかない。
「......もしさ、蓮君と結婚するってなったときに、お互いの両親のことは知ってなきゃでしょ?そのためだと思ってさ。ね?お願い」
「けっ!?けっこん......?!わ、分かりました。そこまで言うなら俺も腹を括りますよ。」
蓮君は口を尖らせながら、拗ねたような表情でスマホをポチポチといじり始める。
「葵さん、行けない日とかありますか??」
「ううん。特にないよ」
「分かりました。二か月後にこっちに戻ってくるそうなので、会うのはそのときですね」
ふぅ、なんとか蓮君を丸め込むことができた。あとは俺ができる限り蓮君のサポートをすれば...うまくいくはず。
「葵さん、そろそろご飯にしましょうか!何食べます?」
「う~ん。野菜炒めが食べたいかも...」
「ふふ、分かりました!お肉たっぷり入れておきますね。」
さっきまでのひりついた空気と打って変わって蓮君は鼻歌を歌いながらキッチンへ向かって行った。
どうか、この優しい笑顔がいつまでも続いてくれますように。愛おしさに胸を満たされながら恋人の姿を見つめ、心から切に願った。
「両親は今、海外に拠点を置いてる企業の代表取締役なんです。小学校までは一緒に日本に住んでいたんですけど、そこからは疎遠で、たまに日本に帰ってくる時ぐらいしか両親とは会いません。」
そっか。だから蓮君の家には必要最低限の物しかなかったり、親御さんと住んでる気配もしなかったのか。
「だけど俺、両親と...いや親父と仲が悪いんです。昔から馬が合わなくて顔を合わせれば喧嘩ばっかりして...。あ、でも尊敬はしているんですけどね。」
蓮君は困ったように笑い、微かに肩をすくめた。
「親父は、俺に家業を継がせたがってるんです。だからずっとお前は海外の学校に行くべきとか、大学に行くなら経営学を絶対に学べとか、色々口出ししてくるんです。
最初は俺のためを思ってなのかなって考えていたんですけど、だんだん、指図されるのが負担になってきたというか......」
「煩わしくなった??」
「はい、その方がしっくりくるかもしれません。俺も親父の期待に応えようと頑張ってた時期もありました。従順で、親父の言うことになんでも頷いて、指示されたことだけをやっていました。まるで操り人形のように......」
「ただ、ほんとにこのままでいいのか、俺のやりたいことは別にあるんじゃないかって、自分の中でそういう考えが芽生えてきたんです。」
「だから中学に上がる前に俺は、親父の後を継ぐんじゃなくって、別の何かを目指したいって、他のことをしたいって話したことがあるんです。でも結局、聞く耳すら持ってもらえず...親父のなかで俺の話は無かったことにされました。」
「そこからは自然なことで、親父とはよく衝突するようになりました。この人に何を話しても理解してもらえない、だったらもう話す必要はない。そう思って両親にはついていかず、日本に残りました。」
「そうだったんだね...。」
今のところ、お父さんと仲が悪いことは分かったけれど、お母さんとはどうなんだろう?
「お母さんとも仲は悪いの??」
「いえ、母とは悪くありません。親父と比べたら仲良くやれてると思います。実際、連絡もたまに取り合っていますし、中学、高校と学費を出してくれたのは母ですから。むしろ感謝しています。」
「それで、今になってお父さんから連絡が来てるってこと??」
「はい...実は俺が高校を卒業したタイミングで両親がこっちに戻ってきたんです。話は変わらず俺を海外に連れて行く内容でしたけどね......。」
蓮君は落胆するように軽く息を吐いた。
「ただ、俺はすでに大学に合格してたし、親父も簡単に連れて行く訳には行かないからって、お前が大学を卒業したら海外に連れて行くと、一方的にそれだけ告げて帰っていきました。自分の父親ながら身勝手で、なんて傲慢な人なんだって心底そう思いましたよ。」
蓮君は呆れと、どこか諦めを含めたような口調でそう言い放った。
「ーーこれがざっくりなんですけど、俺と両親の関係です。」
「...話してくれてありがとう。」
俺は蓮君に告げながら、頭の中で思考を巡らせていた。
今、話を聞いていて思ったのは、蓮君と蓮君のお父さんに足りないのは圧倒的に対話の時間だ。一方的に会話が終わってしまっているからこそ蓮君がやりたいこと、お父さんが思っていることがお互い分からなくなっているのではないか。
俺としても今後、蓮君と付き合っていくならこういういざこざはできるだけ無くしておきたい。
それに、蓮君も煩わしいとは思っていても心のどこかではきっと寂しい思いをしているはず。だからこそ、俺にできることはーー
「葵さん??平気??」
「うん平気だよ。...ねぇ蓮君。俺、蓮君のご両親と会ってみたいな。」
「......葵さん。今の俺の話、聞いてましたか??」
冷ややかな声が蓮君から発せられ、微かに冷たい空気が漂う。だが俺も負けてられない。だって蓮君は心のどこかでまだお父さんのことを理解したいという気持ちがあるはずだから。
仕方ない......あまりこれは使いたくなかったけど、今はこの手しかない。
「......もしさ、蓮君と結婚するってなったときに、お互いの両親のことは知ってなきゃでしょ?そのためだと思ってさ。ね?お願い」
「けっ!?けっこん......?!わ、分かりました。そこまで言うなら俺も腹を括りますよ。」
蓮君は口を尖らせながら、拗ねたような表情でスマホをポチポチといじり始める。
「葵さん、行けない日とかありますか??」
「ううん。特にないよ」
「分かりました。二か月後にこっちに戻ってくるそうなので、会うのはそのときですね」
ふぅ、なんとか蓮君を丸め込むことができた。あとは俺ができる限り蓮君のサポートをすれば...うまくいくはず。
「葵さん、そろそろご飯にしましょうか!何食べます?」
「う~ん。野菜炒めが食べたいかも...」
「ふふ、分かりました!お肉たっぷり入れておきますね。」
さっきまでのひりついた空気と打って変わって蓮君は鼻歌を歌いながらキッチンへ向かって行った。
どうか、この優しい笑顔がいつまでも続いてくれますように。愛おしさに胸を満たされながら恋人の姿を見つめ、心から切に願った。
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