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仲直り
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「ですって。そういうあなたも、蓮に言うことあるのよね?」
「麗華......お前。」
麗華さんからの無理やりな話の転換に慎一郎さんは額に手を置いて、呆れを含んだような声でそう呟いた。
あ、この困ったときの顔、蓮君にそっくりだ。
「んんっ!!そうだな...蓮には苦労を掛けたと思っている。俺は跡継ぎのことに少し躍起になっていた。なにせ、俺の会社を継ぐことがお前の幸せに繋がると、常に考えていたからな。だがそれは...全部俺のエゴだったようだ。」
「中学校の入学式の前ぐらいだったな。蓮が俺に”別のことをやりたい”と言ってきたのは。あのときのお前の目は、親に敷かれたレールの上を歩くのが嫌になって、ただ反発している子どもだった。」
「だから、蓮が高校を卒業したタイミングで帰国したときは、本気で俺の元で働かせるつもりだった。大学に行くなら経営を学べ、と無理強いもしたな。」
慎一郎さん......多少強引だったとはいえ、ちゃんと蓮君の話覚えてて、考えてくれていたんだ...。
「だが、今の蓮にはちゃんと目標がある。それに向かって歩みを進めている蓮を止める権利は俺にはない。であればもう俺が蓮の将来を心配する必要はないしな。」
慎一郎さんの表情に少しだけ、子どもの独り立ちを寂しがるような、柔らかな笑みが零れた。あぁ、こういうときの表情は蓮君に似ているかもしれない。いや蓮君が似ているのか。
「もう後を継げとは強要しないし婚約者の件も先方にはうまく言ってある。これからは蓮のしたいことをしなさい。ただそのうえで困ったことがあれば......まぁ俺も力になろう。」
「まぁ。最後が締まらないのね......。蓮に中学、高校と学費を援助をする、って初めに言いだしたのは私じゃなくてこの人なのよ?今みたいに素直に伝えればいいのに、ほんと不器用な人だこと...。」
「なっ!?それは言わなくて良かっただろう......」
なーんだ愛情表現が下手なだけで、ちゃんといいお父さんじゃないか。話の通じないとんでもない頑固親父だったら、俺が出て行かなきゃ!なんて思ってたけど
ーーその心配は無さそうだな。
「うふふ。まぁそういうことよ、蓮。だからもう私たちのことは気にしなくていいのよ。後継ぎのことも目途が立っているし、蓮のやりたいように自由に生きなさい。それと.......ごめんなさいね。今まで寂しい思いをさせて。」
「いや、俺は大丈夫だったよ。なんだかんだ援助もしてもらってたし、ここまで俺が成長できたのも親父と母さんのおかげだと思うから。...俺の方こそありがとう。」
その瞬間、空気がふっと和らいだ気がした。
「葵君、蓮のことよろしく頼むわね。ほら!あなたからも、何かひと言ないの!?」
「そうだ...な。蓮は少々我が儘で強引なところがあるが、悪いやつではない。これからも仲良くしてやってくれ。」
「...親父。その言い方だと俺がただの我が儘みたいじゃんか......。」
「おぉ、そうだったか。すまない」
「ふふ、はい。こちらこそよろしくお願いします。」
美園一家の微笑ましい掛け合いを見て、つい笑いが込み上げてきた。
これで一件落着かな??ずっと二人の間にあった蟠りが解けたようでなによりだ。ついでに俺も蓮君のご両親に挨拶できたし一石二鳥だな。
ほっ、と一息つくと緊張の糸が切れたのか急に頭がぽわぽわとしてきた。
「あら??もう、日本酒が空ね?葵君、全部飲んじゃったの?」
「あぁ!美味しかったのでつい...すみません...」
「全然いいのよ!気にしないで。でも今回、葵君が一緒に来てくれてよかったわ。じゃないとこの人たち、まともに話すことなんて一生無かったでしょうから。」
麗華さんは、グラスに入ったお酒を見つめながらぽつりと言葉を落とした。
「さっ!そろそろデザートもいただこうかしらね。」
食後に運ばれてきたのは、抹茶を使った小さなデザートだった。ほどよく膨れたお腹に、無理なく収まるくらいの控えめなサイズ感がとても嬉しかった。
ひと口頬張ると、抹茶特有のほろ苦さが舌に広がり、食後の口の中をすっと整えてくれるようだった。甘さも控えめで、まさに大人のための口直しといった一品だった。
「そういえば葵君は何をされてるのかしら??」
「俺はWebのデザイナーを個人でやってます。」
「そうそう葵さんすごいんだよ??これとかぜーんぶ葵さんが作ったやつなんだよ?」
蓮君が自慢げに、俺が今まで作ってきたホームページやらデザインを見せるもんだから、褒めてくれて嬉しい気持ちもあれば、なんだかむずがゆい気分にもなった。
「あら!そうだったの!!だったらうちの会社のホームページなんかもお願いしちゃおうかしらね......」
「そうだな、葵君が良ければ是非とも検討してもらいたい。報酬は十分に出そう。」
「は、ははは。ありがとうございます...か、考えさせてもらいます!」
「もう、二人とも葵さんにプレッシャーかけすぎないでね?ただでさえ、徹夜で仕事詰めるときあるんだから。もしお願いしたかったら俺を通してよね。そしたら葵さんのスケジュール押さえるからさ。」
おい、俺の意思はないのか?何を勝手に決めてるんだ?と、喉まで出かかった言葉をぐっと飲み込んだ。今は蓮君の顔を立たせてあげよう。
「もし引き受けてくれるなら~...そうね、このくらいの額になるかしら。」
麗華さんから提示された金額を見ると、いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん.......なんかゼロがやたら多い気がする。打ち間違えだよな?うん、きっとそうだ。
俺は深く考えることを放棄して笑ってごまかした。
ただ、引き受けるにしても今溜まってる依頼が四件ぐらいあったはずだから、二か月は欲しいかな~とぼんやり考えていた。
「麗華......お前。」
麗華さんからの無理やりな話の転換に慎一郎さんは額に手を置いて、呆れを含んだような声でそう呟いた。
あ、この困ったときの顔、蓮君にそっくりだ。
「んんっ!!そうだな...蓮には苦労を掛けたと思っている。俺は跡継ぎのことに少し躍起になっていた。なにせ、俺の会社を継ぐことがお前の幸せに繋がると、常に考えていたからな。だがそれは...全部俺のエゴだったようだ。」
「中学校の入学式の前ぐらいだったな。蓮が俺に”別のことをやりたい”と言ってきたのは。あのときのお前の目は、親に敷かれたレールの上を歩くのが嫌になって、ただ反発している子どもだった。」
「だから、蓮が高校を卒業したタイミングで帰国したときは、本気で俺の元で働かせるつもりだった。大学に行くなら経営を学べ、と無理強いもしたな。」
慎一郎さん......多少強引だったとはいえ、ちゃんと蓮君の話覚えてて、考えてくれていたんだ...。
「だが、今の蓮にはちゃんと目標がある。それに向かって歩みを進めている蓮を止める権利は俺にはない。であればもう俺が蓮の将来を心配する必要はないしな。」
慎一郎さんの表情に少しだけ、子どもの独り立ちを寂しがるような、柔らかな笑みが零れた。あぁ、こういうときの表情は蓮君に似ているかもしれない。いや蓮君が似ているのか。
「もう後を継げとは強要しないし婚約者の件も先方にはうまく言ってある。これからは蓮のしたいことをしなさい。ただそのうえで困ったことがあれば......まぁ俺も力になろう。」
「まぁ。最後が締まらないのね......。蓮に中学、高校と学費を援助をする、って初めに言いだしたのは私じゃなくてこの人なのよ?今みたいに素直に伝えればいいのに、ほんと不器用な人だこと...。」
「なっ!?それは言わなくて良かっただろう......」
なーんだ愛情表現が下手なだけで、ちゃんといいお父さんじゃないか。話の通じないとんでもない頑固親父だったら、俺が出て行かなきゃ!なんて思ってたけど
ーーその心配は無さそうだな。
「うふふ。まぁそういうことよ、蓮。だからもう私たちのことは気にしなくていいのよ。後継ぎのことも目途が立っているし、蓮のやりたいように自由に生きなさい。それと.......ごめんなさいね。今まで寂しい思いをさせて。」
「いや、俺は大丈夫だったよ。なんだかんだ援助もしてもらってたし、ここまで俺が成長できたのも親父と母さんのおかげだと思うから。...俺の方こそありがとう。」
その瞬間、空気がふっと和らいだ気がした。
「葵君、蓮のことよろしく頼むわね。ほら!あなたからも、何かひと言ないの!?」
「そうだ...な。蓮は少々我が儘で強引なところがあるが、悪いやつではない。これからも仲良くしてやってくれ。」
「...親父。その言い方だと俺がただの我が儘みたいじゃんか......。」
「おぉ、そうだったか。すまない」
「ふふ、はい。こちらこそよろしくお願いします。」
美園一家の微笑ましい掛け合いを見て、つい笑いが込み上げてきた。
これで一件落着かな??ずっと二人の間にあった蟠りが解けたようでなによりだ。ついでに俺も蓮君のご両親に挨拶できたし一石二鳥だな。
ほっ、と一息つくと緊張の糸が切れたのか急に頭がぽわぽわとしてきた。
「あら??もう、日本酒が空ね?葵君、全部飲んじゃったの?」
「あぁ!美味しかったのでつい...すみません...」
「全然いいのよ!気にしないで。でも今回、葵君が一緒に来てくれてよかったわ。じゃないとこの人たち、まともに話すことなんて一生無かったでしょうから。」
麗華さんは、グラスに入ったお酒を見つめながらぽつりと言葉を落とした。
「さっ!そろそろデザートもいただこうかしらね。」
食後に運ばれてきたのは、抹茶を使った小さなデザートだった。ほどよく膨れたお腹に、無理なく収まるくらいの控えめなサイズ感がとても嬉しかった。
ひと口頬張ると、抹茶特有のほろ苦さが舌に広がり、食後の口の中をすっと整えてくれるようだった。甘さも控えめで、まさに大人のための口直しといった一品だった。
「そういえば葵君は何をされてるのかしら??」
「俺はWebのデザイナーを個人でやってます。」
「そうそう葵さんすごいんだよ??これとかぜーんぶ葵さんが作ったやつなんだよ?」
蓮君が自慢げに、俺が今まで作ってきたホームページやらデザインを見せるもんだから、褒めてくれて嬉しい気持ちもあれば、なんだかむずがゆい気分にもなった。
「あら!そうだったの!!だったらうちの会社のホームページなんかもお願いしちゃおうかしらね......」
「そうだな、葵君が良ければ是非とも検討してもらいたい。報酬は十分に出そう。」
「は、ははは。ありがとうございます...か、考えさせてもらいます!」
「もう、二人とも葵さんにプレッシャーかけすぎないでね?ただでさえ、徹夜で仕事詰めるときあるんだから。もしお願いしたかったら俺を通してよね。そしたら葵さんのスケジュール押さえるからさ。」
おい、俺の意思はないのか?何を勝手に決めてるんだ?と、喉まで出かかった言葉をぐっと飲み込んだ。今は蓮君の顔を立たせてあげよう。
「もし引き受けてくれるなら~...そうね、このくらいの額になるかしら。」
麗華さんから提示された金額を見ると、いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん.......なんかゼロがやたら多い気がする。打ち間違えだよな?うん、きっとそうだ。
俺は深く考えることを放棄して笑ってごまかした。
ただ、引き受けるにしても今溜まってる依頼が四件ぐらいあったはずだから、二か月は欲しいかな~とぼんやり考えていた。
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