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渇望
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今日はとうとう蓮君の国家試験が終わる日だ...。蓮君からは「今日は何があっても葵さんの家に行きます。待っててください。」とだけ連絡が来ていた。
メッセージが送られてきた時刻を見ると、”三時”と書いてあり嬉しさよりも心配が勝ち、大変なのは分かるんだけど、結構真面目に寝て欲しいなと思った。健康第一というものを自分の身をもって体感したからね。
俺自身も三日前くらいから発情期の兆候である”身体のだるさ”が出てきたので、抑制剤を服用している。ただ、今日は朝しか抑制剤を飲んでないから、夜にはきっとーー入る...気がする。
そんな都合よくいくかな?なんて思うけど、ここはもう自分を信じるしかなかった。
さてと、そろそろ準備始めますか。まず俺は部屋の装飾に取り掛かった。テーブルの上にはアロマキャンドルを用意して、カーテンの所には膨らませた風船をくっつけた。
指輪は...そうだな、寝る前とかに渡せればいいかな。いやご飯のときの方が~...と色々悩んだが、とりあえず寝室の引き出しの中に閉まっておくことにした。ここならいつでもパッと出せるし。
そんな指輪を渡すタイミングを考えたはいいものの、一番の問題は料理だった。
蓮君に「好きな食べ物とか料理ってある?」と聞いたとき
「えぇ~なんですかね?食べられればなんでも...あっ!でも葵さんが作る料理はどれも好きです!!」
と言われ、嬉しかったのだがそういうことではないんだよな、とあまり参考にならなかった。
タイミングよく、麗華さんとリモートで話す機会があったので、そっちでも聞いてみたのだが
「そうねぇ~。あの子、基本的に好き嫌いはしなかったし...。あぁ、でも家庭的な料理が好きだったかしら。」
「家庭的な...ですか??」
「そうね。家庭的なというより、誰かと食べるのが好きって言ったほうがいいのかしら?」
俺は、ふむふむと頷きながらメモを取った。
「けれど、葵君の作る料理ならなんだってあの子喜ぶと思うわ。家庭的って言うのはあくまでも参考程度にね。あまり力になれなくてごめんなさいね。」
「いえっ!そんなことはないです!!ありがとうございます。」
とは言ったものの、家庭的な料理、家庭的な...果たして、何があるかな。俺が普段瑠夏に作ってたようなものでいいのか?
誰かと食べるのが好きって言うのはたぶん、両親共働きで一緒にご飯を食べる人がいなかった寂しさからきているものもあるんだろうな...と、ふと考えていた。
俺は、数時間悩んだのち、最終的にビーフカレーに決めた。ちょっと奮発していい肉を使って、あとはサラダとスープを作れば特別感もでるはず。
時刻は十四時。今から煮込んで十八時ぐらいに完成すれば、味も染みて肉も口に入れたときにほろほろと崩れるようになるはずだ。
そこから、俺はカレーの食材を切り、サラダは冷蔵庫の中に入れておいた。スープも温め直すだけですぐに飲めるようにして、カレーは低温でじっくりコトコト煮込んでいる最中だ。
「ふぁ~。」
ちょっと眠くなってきたな。煮込んでいる間暇だし、軽く仮眠でも取るか。
IHのタイマーが点いていることを目で確認すると、俺はソファーで横になった。
二時間後ぐらいには起きれるでしょ、と軽い気持ちで思いながら目を瞑った。
***
ゆっくり目を開けると、時刻は十九時過ぎ。一時間遅く起きちゃったけど蓮君が帰ってきている気配は無かった。スマホを見ると
「ごめん!!遅れそうです!!」
と連絡が来ていた。ま、こればっかりは仕方がない。気長に待ちますか...と考えながら風呂に入ることにした。
風呂で一人になると「今日蓮君、やっぱ寝たいかな、」「アロマキャンドルとか風船とかはしゃぎすぎたかな。」と余計なことをぐるぐると考え始めてしまう。
あぁ、もう......考えすぎだって分かってるのに、どんどん変な方向へ思考が走っていく。横に首を振って不安を飛ばした。
「はぁ、そろそろ上がるか。」
湯から上がり、脱衣所で身体を拭いてパジャマに着替えると、まだ帰ってきていないはずの蓮君のフェロモンがほのかに漂ってきた。
「うそ...蓮君帰ってきちゃった!?」
急いでリビングへ戻るが蓮君の姿は無かった。ほっ、良かった。ただの気のせいか...そう思った瞬間、背後から誰かにがばっと抱きしめられた。
「ねぇ葵さん、これ全部俺のため??」
やっぱりーー蓮君、もう家に着いてたか...。それにしても蓮君に後ろから抱きしめられるのこれで何回目だろう...。まぁされるの好きだし、いくらあってもいいんだけどね。
「お帰り。もう...サプライズしたかったのに」
「十分サプライズだよ??」
「俺は蓮君を出迎えたかったの。」
「じゃあ今からやり直す??」
「それはいい。」
「そっかぁ~残念。また今度期待してよっかなぁ~。この匂いカレーでしょ?食べていいの?」
「うん、すぐ食べれるよ。座って待ってて」
「そうする!」
ちょっとサプライズが失敗したのは悔しいけど、蓮君の嬉しそうな顔を見れたから俺はそれで十分だった。
テーブルにスープ、サラダ、カレーを並べていく。
蓮君は両手を合わせて「いただきます!」と言い、ぱくぱくとカレーを食べ進める。目をまんまるに開いて、「おいしいよ!」と幸せそうに笑ってくれるのだから、作った甲斐があったなぁ。と心がじんわりと温かくなった。
俺も一口食べると、牛肉は口の中でとろけるように消えて、ほんのりスパイスの効いたカレーがいい感じに仕上がっていた。自分でも満足できるクオリティーでちょっと安心した。
まぁ奮発して高いお肉買ったんだから、まずくなるはずないよね。
お腹が膨れた後はーーやっぱり自然と”そういう雰囲気”になった。お互いのフェロモンの香りが甘く蕩けるように濃くなって、静かに混ざり合っていった。
メッセージが送られてきた時刻を見ると、”三時”と書いてあり嬉しさよりも心配が勝ち、大変なのは分かるんだけど、結構真面目に寝て欲しいなと思った。健康第一というものを自分の身をもって体感したからね。
俺自身も三日前くらいから発情期の兆候である”身体のだるさ”が出てきたので、抑制剤を服用している。ただ、今日は朝しか抑制剤を飲んでないから、夜にはきっとーー入る...気がする。
そんな都合よくいくかな?なんて思うけど、ここはもう自分を信じるしかなかった。
さてと、そろそろ準備始めますか。まず俺は部屋の装飾に取り掛かった。テーブルの上にはアロマキャンドルを用意して、カーテンの所には膨らませた風船をくっつけた。
指輪は...そうだな、寝る前とかに渡せればいいかな。いやご飯のときの方が~...と色々悩んだが、とりあえず寝室の引き出しの中に閉まっておくことにした。ここならいつでもパッと出せるし。
そんな指輪を渡すタイミングを考えたはいいものの、一番の問題は料理だった。
蓮君に「好きな食べ物とか料理ってある?」と聞いたとき
「えぇ~なんですかね?食べられればなんでも...あっ!でも葵さんが作る料理はどれも好きです!!」
と言われ、嬉しかったのだがそういうことではないんだよな、とあまり参考にならなかった。
タイミングよく、麗華さんとリモートで話す機会があったので、そっちでも聞いてみたのだが
「そうねぇ~。あの子、基本的に好き嫌いはしなかったし...。あぁ、でも家庭的な料理が好きだったかしら。」
「家庭的な...ですか??」
「そうね。家庭的なというより、誰かと食べるのが好きって言ったほうがいいのかしら?」
俺は、ふむふむと頷きながらメモを取った。
「けれど、葵君の作る料理ならなんだってあの子喜ぶと思うわ。家庭的って言うのはあくまでも参考程度にね。あまり力になれなくてごめんなさいね。」
「いえっ!そんなことはないです!!ありがとうございます。」
とは言ったものの、家庭的な料理、家庭的な...果たして、何があるかな。俺が普段瑠夏に作ってたようなものでいいのか?
誰かと食べるのが好きって言うのはたぶん、両親共働きで一緒にご飯を食べる人がいなかった寂しさからきているものもあるんだろうな...と、ふと考えていた。
俺は、数時間悩んだのち、最終的にビーフカレーに決めた。ちょっと奮発していい肉を使って、あとはサラダとスープを作れば特別感もでるはず。
時刻は十四時。今から煮込んで十八時ぐらいに完成すれば、味も染みて肉も口に入れたときにほろほろと崩れるようになるはずだ。
そこから、俺はカレーの食材を切り、サラダは冷蔵庫の中に入れておいた。スープも温め直すだけですぐに飲めるようにして、カレーは低温でじっくりコトコト煮込んでいる最中だ。
「ふぁ~。」
ちょっと眠くなってきたな。煮込んでいる間暇だし、軽く仮眠でも取るか。
IHのタイマーが点いていることを目で確認すると、俺はソファーで横になった。
二時間後ぐらいには起きれるでしょ、と軽い気持ちで思いながら目を瞑った。
***
ゆっくり目を開けると、時刻は十九時過ぎ。一時間遅く起きちゃったけど蓮君が帰ってきている気配は無かった。スマホを見ると
「ごめん!!遅れそうです!!」
と連絡が来ていた。ま、こればっかりは仕方がない。気長に待ちますか...と考えながら風呂に入ることにした。
風呂で一人になると「今日蓮君、やっぱ寝たいかな、」「アロマキャンドルとか風船とかはしゃぎすぎたかな。」と余計なことをぐるぐると考え始めてしまう。
あぁ、もう......考えすぎだって分かってるのに、どんどん変な方向へ思考が走っていく。横に首を振って不安を飛ばした。
「はぁ、そろそろ上がるか。」
湯から上がり、脱衣所で身体を拭いてパジャマに着替えると、まだ帰ってきていないはずの蓮君のフェロモンがほのかに漂ってきた。
「うそ...蓮君帰ってきちゃった!?」
急いでリビングへ戻るが蓮君の姿は無かった。ほっ、良かった。ただの気のせいか...そう思った瞬間、背後から誰かにがばっと抱きしめられた。
「ねぇ葵さん、これ全部俺のため??」
やっぱりーー蓮君、もう家に着いてたか...。それにしても蓮君に後ろから抱きしめられるのこれで何回目だろう...。まぁされるの好きだし、いくらあってもいいんだけどね。
「お帰り。もう...サプライズしたかったのに」
「十分サプライズだよ??」
「俺は蓮君を出迎えたかったの。」
「じゃあ今からやり直す??」
「それはいい。」
「そっかぁ~残念。また今度期待してよっかなぁ~。この匂いカレーでしょ?食べていいの?」
「うん、すぐ食べれるよ。座って待ってて」
「そうする!」
ちょっとサプライズが失敗したのは悔しいけど、蓮君の嬉しそうな顔を見れたから俺はそれで十分だった。
テーブルにスープ、サラダ、カレーを並べていく。
蓮君は両手を合わせて「いただきます!」と言い、ぱくぱくとカレーを食べ進める。目をまんまるに開いて、「おいしいよ!」と幸せそうに笑ってくれるのだから、作った甲斐があったなぁ。と心がじんわりと温かくなった。
俺も一口食べると、牛肉は口の中でとろけるように消えて、ほんのりスパイスの効いたカレーがいい感じに仕上がっていた。自分でも満足できるクオリティーでちょっと安心した。
まぁ奮発して高いお肉買ったんだから、まずくなるはずないよね。
お腹が膨れた後はーーやっぱり自然と”そういう雰囲気”になった。お互いのフェロモンの香りが甘く蕩けるように濃くなって、静かに混ざり合っていった。
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