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不穏な心02
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そんな折、初詣の時期になった。蓮君からは「初詣行きませんか!?」とすでに誘われていた。
今まで断りすぎていたので初詣ぐらいなら.....と思い直し、近所の神社へ一緒に行くことになった。
蓮君とちゃんと二人で予定を合わせて会うのは、実にあの水族館デートのとき以来だった。
「あ!葵さん!」
俺と目が合うと同時に、蓮君は雪で足を滑らせないようにペンギンのような歩き方で、よたよたとこちらに向かって歩いてきた。
その歩き方がとても愛らしくて、胸がギュンと高鳴った。
「ごめん、お待たせ。じゃあ早速行こうか」
時期は少しずらしたとはいえ、すでに神社は人で溢れかえっていた。
並び始めてからようやく本殿へと続く階段の列が、進み始めた。
この日、都内では珍しく雪が降っていた。足元には雪がうっすらと積もっていて吐く息も白くなっていた。
「人、多いですね」
「そうだね。なんか新年って感じするよね」
長い階段の列を眺めながら、こんなにも新年の訪れを待ち望んでた人がいるんだなぁと思いにふけっていた。
「葵さん。手、繋いでもいいですか??」
蓮君はいつもより控えめに俺の顔色をを伺いながら聞いてくる。
その遠慮がちな態度に、少しだけ意地悪な気分になった俺は、何も言わずに蓮君の手を取った。
蓮君は俺の突拍子もない行動に驚いたのか、目を白黒とさせていた。
「.....いつも確認なんてしてなかったくせにね?」
そう茶化すように言うと、蓮君は慌てて釈明した。
「それはっ!!葵さんが人前で手を繋いでるの見られたら嫌かなって.....」
そっか。今まで控えめだったのは、俺を気遣ってのことだったんだな。
そう思うと学校で手を掴まれたときに、すぐに手をぱっと離したことに納得がいくかもしれない。そっけない態度とっちゃったし、蓮君に申し訳なかったな。
「.....別に、嫌とかそういうのはないよ。恥ずかしいのは少しあるけど」
「やっぱり.....葵さん可愛いです。」
「ふふ、そりゃどーも」
手を繋いだままゆっくりと歩く。蓮君の手は自分のものより大きくて、ずっと温かかった。本当ならこの手のぬくもりにもっと素直に甘えてしまいたかった。
「葵さーー」
「......あ、やっと順番回ってきそうだね」
蓮君は何か言いたげだったけれど、俺はあえてそれを遮るように言葉を被せた。
だって蓮君にこの違和感を全部見透かされてるような気がしたから。
「蓮君五円玉持ってきた??」
「はい!今年は百五円入れますよ!!」
「なんで百五円なの??なにその半端な.....あ、語呂合わせだっけ?」
確かお賽銭を入れる時に、語呂合わせみたいな感じがあったような気がするのだが、百五円は聞いたことがなかった、
「はい!十分なご縁がありますようにって意味なんです!!あと、金額多い方が願い事が叶いやすい気がして、」
「ははっ、だとしたら神様も現金主義だね」
「ちなみに四十一円は”幸せに”って意味になるらしいですよ」
へぇ、四十一円は幸せに…か。神頼みとかは普段しないけど今年くらいはしてもいいかもしれない。
俺は四十一円、蓮君は百五円を賽銭箱に投げ入れる。それから拝殿に向かって二礼、二拍手ーー目を閉じて、手を合わせた。
願い事が終わり、うっすら目を開けると隣の蓮君がまだ目を閉じたまま、じっと手を合わせているのが視界の端に映った。
どれだけ長いお願いしてるんだよ。そう心の中で笑いながら、最後の一礼をして神前をあとにする。
「なにをそんなにお願いしてたの??」
つい気になって、聞いてしまった。
「いや、教えませんよ~。.....そういう葵さんは、なんてお願いしたんですか??」
俺の願い事はーー瑠夏や蓮君たちが、どうか健やかに、笑って過ごせますように。
ーーでもほんの少しだけ、自分の病気が良くなればとも思った。けれどそれはきっと、神様も聞き入れてはくれないだろう。
「そういうのってさ、人に聞いたら叶わなくなるんだよ?」
「えぇ~!それ、俺に聞いた時点で破ってますよ!?」
蓮君のツッコミにくすっと笑ってしまう。あぁやっぱり一緒にいて心地いいな。
その後、蓮君はおみくじを引きたいと言っていたのでおみくじを引きにいった。屋台の並ぶ道を抜けて、おみくじ売り場へ向かった。
そして引いた紙を早速開こうとしたら蓮君が必死に声をあげた。
「待って!待って!!一緒に開けよ?」
そう言ってくる蓮君が、あまりに嬉しそうでーー口には出さなかったが、「可愛いな」と思ってしまった。
「せーの!」で一緒におみくじを開ける。俺は末吉、蓮君はなんと大吉を引いていた。
その瞬間、蓮君は小さくガッツポーズして、子どものように喜んでいた。
「あっははは!!そんなに喜ばなくてもさ...ふふっ」
寒空の下なのに、今日はなんだかあったかい。いつもよりたくさん笑えている。それだけで十分だなと思った。
「だって大吉なんて引けたのもう何年前かとか覚えてないぐらいですもん!」
「ふふっ、そっか。で、なんて書いてあったの??ちょっと見せて」
俺は自然と、蓮君の肩あたりに頭を寄せて確認する。願い事”叶う”、金運”好機到来”、学業”息抜きも必要”。
ふーん。やっぱ大吉だけなあって良いこといっぱい書かれてるじゃん。恋愛は”身近なところに良縁がある”か。
「身近なところに良縁がある......」
蓮君がぽつりと呟いた声が、耳の近くで聞こえた。ちょうど二人して同じところを見ていたらしい。
「大吉だからいいことばっかり書かれてるね」
「はい、ほんと良かったです。葵さんはなんて書かれてました??」
今度は蓮君が俺の肩にそっと頭を乗せてくる。
くるりと蓮君の方を見ると、少しだけ意地悪そうに、にやっと笑っている。たぶん、さっきの俺への仕返しのつもりだろうな。
ふわりと香る、甘くて包み込んでくれるような優しい匂い。一瞬だけ胸がとくん、と高鳴った。そんな蓮君の一挙一動が俺の心を揺さぶってきた。
蓮君は俺のおみくじに書かれているものを見ながら「末吉でも良いこと書かれてますよ!」と明るく言っていたが、俺はやっぱり病気の項目に目が行ってしまった。
病、手遅れに注意。
今まで断りすぎていたので初詣ぐらいなら.....と思い直し、近所の神社へ一緒に行くことになった。
蓮君とちゃんと二人で予定を合わせて会うのは、実にあの水族館デートのとき以来だった。
「あ!葵さん!」
俺と目が合うと同時に、蓮君は雪で足を滑らせないようにペンギンのような歩き方で、よたよたとこちらに向かって歩いてきた。
その歩き方がとても愛らしくて、胸がギュンと高鳴った。
「ごめん、お待たせ。じゃあ早速行こうか」
時期は少しずらしたとはいえ、すでに神社は人で溢れかえっていた。
並び始めてからようやく本殿へと続く階段の列が、進み始めた。
この日、都内では珍しく雪が降っていた。足元には雪がうっすらと積もっていて吐く息も白くなっていた。
「人、多いですね」
「そうだね。なんか新年って感じするよね」
長い階段の列を眺めながら、こんなにも新年の訪れを待ち望んでた人がいるんだなぁと思いにふけっていた。
「葵さん。手、繋いでもいいですか??」
蓮君はいつもより控えめに俺の顔色をを伺いながら聞いてくる。
その遠慮がちな態度に、少しだけ意地悪な気分になった俺は、何も言わずに蓮君の手を取った。
蓮君は俺の突拍子もない行動に驚いたのか、目を白黒とさせていた。
「.....いつも確認なんてしてなかったくせにね?」
そう茶化すように言うと、蓮君は慌てて釈明した。
「それはっ!!葵さんが人前で手を繋いでるの見られたら嫌かなって.....」
そっか。今まで控えめだったのは、俺を気遣ってのことだったんだな。
そう思うと学校で手を掴まれたときに、すぐに手をぱっと離したことに納得がいくかもしれない。そっけない態度とっちゃったし、蓮君に申し訳なかったな。
「.....別に、嫌とかそういうのはないよ。恥ずかしいのは少しあるけど」
「やっぱり.....葵さん可愛いです。」
「ふふ、そりゃどーも」
手を繋いだままゆっくりと歩く。蓮君の手は自分のものより大きくて、ずっと温かかった。本当ならこの手のぬくもりにもっと素直に甘えてしまいたかった。
「葵さーー」
「......あ、やっと順番回ってきそうだね」
蓮君は何か言いたげだったけれど、俺はあえてそれを遮るように言葉を被せた。
だって蓮君にこの違和感を全部見透かされてるような気がしたから。
「蓮君五円玉持ってきた??」
「はい!今年は百五円入れますよ!!」
「なんで百五円なの??なにその半端な.....あ、語呂合わせだっけ?」
確かお賽銭を入れる時に、語呂合わせみたいな感じがあったような気がするのだが、百五円は聞いたことがなかった、
「はい!十分なご縁がありますようにって意味なんです!!あと、金額多い方が願い事が叶いやすい気がして、」
「ははっ、だとしたら神様も現金主義だね」
「ちなみに四十一円は”幸せに”って意味になるらしいですよ」
へぇ、四十一円は幸せに…か。神頼みとかは普段しないけど今年くらいはしてもいいかもしれない。
俺は四十一円、蓮君は百五円を賽銭箱に投げ入れる。それから拝殿に向かって二礼、二拍手ーー目を閉じて、手を合わせた。
願い事が終わり、うっすら目を開けると隣の蓮君がまだ目を閉じたまま、じっと手を合わせているのが視界の端に映った。
どれだけ長いお願いしてるんだよ。そう心の中で笑いながら、最後の一礼をして神前をあとにする。
「なにをそんなにお願いしてたの??」
つい気になって、聞いてしまった。
「いや、教えませんよ~。.....そういう葵さんは、なんてお願いしたんですか??」
俺の願い事はーー瑠夏や蓮君たちが、どうか健やかに、笑って過ごせますように。
ーーでもほんの少しだけ、自分の病気が良くなればとも思った。けれどそれはきっと、神様も聞き入れてはくれないだろう。
「そういうのってさ、人に聞いたら叶わなくなるんだよ?」
「えぇ~!それ、俺に聞いた時点で破ってますよ!?」
蓮君のツッコミにくすっと笑ってしまう。あぁやっぱり一緒にいて心地いいな。
その後、蓮君はおみくじを引きたいと言っていたのでおみくじを引きにいった。屋台の並ぶ道を抜けて、おみくじ売り場へ向かった。
そして引いた紙を早速開こうとしたら蓮君が必死に声をあげた。
「待って!待って!!一緒に開けよ?」
そう言ってくる蓮君が、あまりに嬉しそうでーー口には出さなかったが、「可愛いな」と思ってしまった。
「せーの!」で一緒におみくじを開ける。俺は末吉、蓮君はなんと大吉を引いていた。
その瞬間、蓮君は小さくガッツポーズして、子どものように喜んでいた。
「あっははは!!そんなに喜ばなくてもさ...ふふっ」
寒空の下なのに、今日はなんだかあったかい。いつもよりたくさん笑えている。それだけで十分だなと思った。
「だって大吉なんて引けたのもう何年前かとか覚えてないぐらいですもん!」
「ふふっ、そっか。で、なんて書いてあったの??ちょっと見せて」
俺は自然と、蓮君の肩あたりに頭を寄せて確認する。願い事”叶う”、金運”好機到来”、学業”息抜きも必要”。
ふーん。やっぱ大吉だけなあって良いこといっぱい書かれてるじゃん。恋愛は”身近なところに良縁がある”か。
「身近なところに良縁がある......」
蓮君がぽつりと呟いた声が、耳の近くで聞こえた。ちょうど二人して同じところを見ていたらしい。
「大吉だからいいことばっかり書かれてるね」
「はい、ほんと良かったです。葵さんはなんて書かれてました??」
今度は蓮君が俺の肩にそっと頭を乗せてくる。
くるりと蓮君の方を見ると、少しだけ意地悪そうに、にやっと笑っている。たぶん、さっきの俺への仕返しのつもりだろうな。
ふわりと香る、甘くて包み込んでくれるような優しい匂い。一瞬だけ胸がとくん、と高鳴った。そんな蓮君の一挙一動が俺の心を揺さぶってきた。
蓮君は俺のおみくじに書かれているものを見ながら「末吉でも良いこと書かれてますよ!」と明るく言っていたが、俺はやっぱり病気の項目に目が行ってしまった。
病、手遅れに注意。
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