独り身オメガに幸せを

蒸しケーキ

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番外編

ママ友ができました02

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 それに今日の集まりに遅れたのも、本当は仕事が理由なんかではなかった。

「ママ友とお茶会?いいけど気を付けてね?あと迎え行くから予定より早く解散するんだったら連絡ちょうだい。」
「え?いいよ別に。久しぶりの休みなんだからゆっくりしてなって。」
「だーめ。連絡絶対して。しないと行かせない。」
「分かった!分かったから!もう遅れちゃうって!!」

 と蓮が一向に離してくれなかったからであった。だから昨日からの出来事を思い出したら顔が一気に熱くなるのは反射的だった。それに俺と別れ際、項にキスをしてきたけどあれはマーキングだったのか...。う~ん何が不安なんだろうな。二人とも俺と同じ第二次性だし結婚してるって伝えてるんだけどな。

「あらら~??葵ちゃん顔真っ赤じゃなーい?」

「まったく、ルジュさんがいじるから...。」

「あはは、俺そんなに匂いついてますかね?」

 俺は苦笑しながら、くんくんと自分の服の匂いを嗅いで確かめてみる。ルジュさんは背もたれに体重を預けて腕組みをした。

「えぇすごいわよ。威圧のあるフェロモンで独占欲丸出しね。番のいる私たちでさえ感じ取れるぐらいだもの。」

「でも、葵君自身は気づかないかもしれないね。初めて会った時から割とこんな感じだったし、たぶんその匂い嗅ぎ慣れちゃってるんだと思うよ。」

「普段からそんな強烈なの!?相当愛されてるわね、葵ちゃん。ま、葵ちゃんはそのぐらい愛されてもまだ足りないくらいだけどね。」

「そこだけは、ルジュさんに同意ですね。」

 椿君は深く頷いていた。

「あ”?そこだけ??」

 ふたりには、俺の過去のことや蓮との馴れ初めについてざっと話していた。本当は暗い話だから、誰にも話すつもりなんてなかった。でも、ルジュさんと椿君が自分たちの番との馴れ初めや、過去にあった辛いことを先に打ち明けてくれた。だからこの二人になら受け止めてもらえるかもしれないーーそう思って、俺も話したのだった。

「葵君、頑張ったね。これからはもっと幸せになるんだよ。」
「そうよ!こっからは私たちも一緒よ!!何があっても葵の味方だからね!?ほんと、今まで生きててくれてよかったわよ。」

 あの日の二人の顔は今でも鮮明に思い出せる。俺の話を聞きながらずっと泣いていて、涙でぐしゃぐしゃの顔だった。特にルジュさんなんか化粧が全部落ちるぐらい泣いてくれたし、椿君も俺の隣に来て、泣きながらぎゅっと抱きしめてくれた。

 いつからか、この話をするのも辛くなくなっていたし、発情期がきても夢にあいつらが出てくることは無くなっていた。むしろルジュさんと椿君の大泣きしている姿を見て、そんなに泣く?なんて思って、ついくすっと笑ってしまったぐらいだ。

 ーーそう思えるようになったのも、蓮のおかげだな。

 今日のこの集まりも、いつもどおりルジュさんが主導で予定を決めてくれた。俺は仕事柄スケジュールを立てやすいから、二人の都合に合わせて仕事を調整していた。

 ルジュさんは二人の子どもがある程度大きくなるまでは仕事を辞めているらしく、椿君は中学校で養護教諭をしているけど、子どものために今年で一旦、仕事に区切りをつけるとのことだった。

「ほんと、子育てと仕事の両立って難しいわよね~。」

 なんていう育児トークで盛り上がったり

「うちの旦那、基本的にいい人なんだけどさ~。子どもたちに強く言うのがほんっと苦手なのよね。この前なんか、壁にクレヨンで思いっ切り絵描いてるの見てるのに、何も言わずにニコニコしてんの。気づいてんなら止めろや!!って、私気が狂いそうだったわ。」

「俺もこの前、職員会議で『緊急抑制剤の設置個所を増やしてください』って提案したら、学年主任に鼻で笑われてさ。あいつマジで許さない。時代遅れのじじぃの癖に、何鼻で笑ってんだよって感じ。」

「あぁ~、あの低身長ハゲ頭??まだやってんのね。てっきりどっかに飛ばされてるもんだと思ってたわ。」

「本当は飛ばされる予定だったんだけど、あいつを貰ってくれる学校が他に無くて......。」

 椿君は困ったように目尻を下げてため息をついた。

「葵君は?仕事とかで不満とかある??」

「俺?う~ん......納期に追われると忙しくなるぐらいかなぁ?基本的にメールでしかやり取りしないからそういうストレスは少ないかも?」

「そりゃそうよね~。しかも旦那さんとも仲良いし、最高じゃない。」

 こんな風にルジュさんの旦那さんの愚痴だったり、椿君の職場の不満を聞くこともあって毎回楽しい時間を過ごしていた。

 ちなみにルジュさんと椿君の旦那さんは写真でしか見たことないけど、二人とも系統が違うイケメンでかなりかっこよかった。

「そういえば、俺が働いてる学校でこの前『同時に結婚した~!』って子どもたちの間で騒ぎになった先生たちがいてさ。」

「へぇ~そうなの。同時になんてすごいじゃない。」

「でしょ?一人は常勤の先生なんだけど、もう一人はスクールカウンセラーの先生でね。」

 スクールカウンセラーで、この前結婚......。いやいやそんな偶然あるはずないか。

「いつも学校にいるわけじゃないのに、その先生すんごい子どもたちに大人気でさ。指輪嵌めてるの見て、それにショック受けた子たちがわらわら保健室に集まってきちゃって、もう大変だったよ。」

「そんなに人気なの?その二人の先生。」

「そうそう、隠れファンクラブみたいなのがあるらしくて、『推しカプがどうたらこうたら』『推しの幸せが~』ってみんな言ってたよ。二人とも綺麗な顔立ちしてるし、モテるだろうねあれは。」

「椿がそんなに言うなら見てみたいわ。ね、葵?」

「う、うん見てみたいよね。あ、あはは......。」

 よし、違うとは思う。思うけど......念のため聞いておこう。

「......ちなみにその先生たちの名前って??」

「あぁ、出海先生と立花先生?だったかな。出海先生は職員会議のときに『番が出来ました』って報告してくれてたよ。相手は誰か分かんないんだけどね。」

「ぶっ!」

「ちょっと!葵ちゃん!?大丈夫!?」
「すいません!おしぼりいただけますか!?」
「ご、ごめん......ちょっと変なところに入っちゃって......。」

 飲んでいたカフェオレを盛大に吹き出した俺を見て二人は慌てていたが、当の俺は別の意味で、落ち着かずにはいられなかった。

 ......世間って......思ったより狭いんだなぁ。
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