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「生徒の皆さん。来週には狩猟大会がありますから、体調にはくれぐれもお気をつけてくださいね。優秀者には成績の加点もありますから、心して臨むように。では、ご機嫌よう。」
狩猟大会、狩猟大会......あぁ!!!! このイベント超大事なやつだ!!
狩猟大会。アジームス学園にはそれぞれ名物のイベントがあり、その中でも狩猟大会は目玉の一つだ。三年生は全員強制参加。下級生は有志参加だが、学業実と技の試験でそれぞれ上位二十名以内に入らなければならないため、ハードルは高い。
他にも収穫祭、体育祭、舞踏会があり、この四つのイベントで物語のシナリオが決まると言っても過言ではない。
しかし、これらのイベントはすべてランダムで且つ年次毎で分かれているから一年のうちで被ることは一切ない。
なかでも狩猟大会からは、ゼノの悪役としての立ち位置ーーいわゆる当て馬ぶりが一気に加速する。
アルトの使うはずだった弓を壊し、わざと誤った道へ誘導する看板を設置し、挙句の果てには猛獣のエリアへ誘い込んで大怪我を負わせる。ここまでがテンプレ展開だ。
今まであまり悪役らしいことはできていなかったが、ここからは違う。俺の悪役劇の始まりだ。
ふっふっふ。......ここでしっかりカリムとアルトの接点を作り、親密度を上げさせる。
ただし、やりすぎは禁物だ。下手をすれば、この狩猟大会でゼノが退場する可能性もある。
序盤で消えるのは絶対に避けたい。だからアルトには、最悪でも軽傷で済む程度に抑えるつもりだ。もし危険区域に入ってしまったとしても、そのときは俺が助けに入ればいい。
ーーそして、そこにカリムが現れてくれれば、なお良し。
我ながら、なかなかいい作戦じゃないか?俺は先生の話をほとんど聞かず、そんなことばかり考えていた。
それにしても、狩猟大会まであと一週間。時間があるようで、きっとあっという間に過ぎていく。
とりあえず、会場となる場所の下見はしておきたい。それから応急手当用の薬も用意しておく必要があるし、クロラさんにもバイトに入れる日数が減ることを伝えておかないと。
授業が終わるとすぐ、俺はクロラさんの元へ向かった。店の裏口から入り、制服に着替える。準備をしていると、すでに、常連客たちの声が聞こえてきた。相変わらず、来るのが早い。
着替えが終わると、「おはようございます」と挨拶をして仕事に取り掛かる。
クロラさんも優しく微笑んで、「おはよう。今日もよろしくね。」と返してくれた。
作業をしながら、俺は狩猟大会のことを伝え、しばらくバイトに入れなくなることを話した。
「あら、そうかい。ゼノちゃん狩猟大会に出るのね。そしたら無理して来なくていいからね。学業を優先なさいね。なんなら丸ごと一週間休んでもいいんだからね。」
「一週間はさすがに休みませんけど......三日くらい前から休ませてもらいます。」
「そうしなさい。それと、この前みたいに体調が悪いのにわざわざ家まで来なくていいからね。来られないときは文で知らせてくれればいいんだから。」
そう。先日、高熱のまま「お休みをいただきます。」報告しに来たせいで、クロラさんにドン引きされたのだ。いや、だって休みの連絡って大事じゃん?
それ以降、クロラさんはさらに俺を気遣ってくれるようになった。
「おぉ! ゼノ! お前、狩猟大会に出んのか。いやぁ~懐かしいな。俺も昔は、タヌキやウサギを狩ってたもんよ。」
「俺ん家の息子も、来年だな。まぁ三年生メインの行事だし、気楽にやれよ。」
「ありがとうございます。ところで、おじさんのときはどこでやったんですか?」
「俺のときか? 変わってなけりゃ......ハイドの森だな。学園から三十分もかかんねぇところにある。」
「へぇ、そうでしたか......。」
ーーハイドの森。
あのとき夢で見た場所は、そこなのかもしれない。でも、どうしてアルトが泣いていたんだ?
......まさか、カイラスが崖から落ちるとか?いや、そんな展開、原作にはなかったはずだ。カリムにもそんなシーンはなかった。
もしかして、この森のどこかで起きる未来の映像......?だとすると、一体何が起きるんだ......?
「......ノ! おいゼノ! 戻ってこ~い。追加で酒の注文だ。」
「......あっ、ごめんおっちゃん! 今、持ってくる!」
「ゼノのやつ、ぼーっとして大丈夫かよ。」
「さぁ? 以外に緊張してんじゃねぇの?」
「ぶっはっは!! 安心しろゼノ! あの森は一応学園が管理してるし、大きな危険はないと思うぞ。」
常連客のおじさんの言葉に、少し安心しつつ、俺も危険がないことを願う。
けれど、胸の奥に妙な違和感が残っていた。
狩猟大会、狩猟大会......あぁ!!!! このイベント超大事なやつだ!!
狩猟大会。アジームス学園にはそれぞれ名物のイベントがあり、その中でも狩猟大会は目玉の一つだ。三年生は全員強制参加。下級生は有志参加だが、学業実と技の試験でそれぞれ上位二十名以内に入らなければならないため、ハードルは高い。
他にも収穫祭、体育祭、舞踏会があり、この四つのイベントで物語のシナリオが決まると言っても過言ではない。
しかし、これらのイベントはすべてランダムで且つ年次毎で分かれているから一年のうちで被ることは一切ない。
なかでも狩猟大会からは、ゼノの悪役としての立ち位置ーーいわゆる当て馬ぶりが一気に加速する。
アルトの使うはずだった弓を壊し、わざと誤った道へ誘導する看板を設置し、挙句の果てには猛獣のエリアへ誘い込んで大怪我を負わせる。ここまでがテンプレ展開だ。
今まであまり悪役らしいことはできていなかったが、ここからは違う。俺の悪役劇の始まりだ。
ふっふっふ。......ここでしっかりカリムとアルトの接点を作り、親密度を上げさせる。
ただし、やりすぎは禁物だ。下手をすれば、この狩猟大会でゼノが退場する可能性もある。
序盤で消えるのは絶対に避けたい。だからアルトには、最悪でも軽傷で済む程度に抑えるつもりだ。もし危険区域に入ってしまったとしても、そのときは俺が助けに入ればいい。
ーーそして、そこにカリムが現れてくれれば、なお良し。
我ながら、なかなかいい作戦じゃないか?俺は先生の話をほとんど聞かず、そんなことばかり考えていた。
それにしても、狩猟大会まであと一週間。時間があるようで、きっとあっという間に過ぎていく。
とりあえず、会場となる場所の下見はしておきたい。それから応急手当用の薬も用意しておく必要があるし、クロラさんにもバイトに入れる日数が減ることを伝えておかないと。
授業が終わるとすぐ、俺はクロラさんの元へ向かった。店の裏口から入り、制服に着替える。準備をしていると、すでに、常連客たちの声が聞こえてきた。相変わらず、来るのが早い。
着替えが終わると、「おはようございます」と挨拶をして仕事に取り掛かる。
クロラさんも優しく微笑んで、「おはよう。今日もよろしくね。」と返してくれた。
作業をしながら、俺は狩猟大会のことを伝え、しばらくバイトに入れなくなることを話した。
「あら、そうかい。ゼノちゃん狩猟大会に出るのね。そしたら無理して来なくていいからね。学業を優先なさいね。なんなら丸ごと一週間休んでもいいんだからね。」
「一週間はさすがに休みませんけど......三日くらい前から休ませてもらいます。」
「そうしなさい。それと、この前みたいに体調が悪いのにわざわざ家まで来なくていいからね。来られないときは文で知らせてくれればいいんだから。」
そう。先日、高熱のまま「お休みをいただきます。」報告しに来たせいで、クロラさんにドン引きされたのだ。いや、だって休みの連絡って大事じゃん?
それ以降、クロラさんはさらに俺を気遣ってくれるようになった。
「おぉ! ゼノ! お前、狩猟大会に出んのか。いやぁ~懐かしいな。俺も昔は、タヌキやウサギを狩ってたもんよ。」
「俺ん家の息子も、来年だな。まぁ三年生メインの行事だし、気楽にやれよ。」
「ありがとうございます。ところで、おじさんのときはどこでやったんですか?」
「俺のときか? 変わってなけりゃ......ハイドの森だな。学園から三十分もかかんねぇところにある。」
「へぇ、そうでしたか......。」
ーーハイドの森。
あのとき夢で見た場所は、そこなのかもしれない。でも、どうしてアルトが泣いていたんだ?
......まさか、カイラスが崖から落ちるとか?いや、そんな展開、原作にはなかったはずだ。カリムにもそんなシーンはなかった。
もしかして、この森のどこかで起きる未来の映像......?だとすると、一体何が起きるんだ......?
「......ノ! おいゼノ! 戻ってこ~い。追加で酒の注文だ。」
「......あっ、ごめんおっちゃん! 今、持ってくる!」
「ゼノのやつ、ぼーっとして大丈夫かよ。」
「さぁ? 以外に緊張してんじゃねぇの?」
「ぶっはっは!! 安心しろゼノ! あの森は一応学園が管理してるし、大きな危険はないと思うぞ。」
常連客のおじさんの言葉に、少し安心しつつ、俺も危険がないことを願う。
けれど、胸の奥に妙な違和感が残っていた。
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