死ぬことが確約されている悪役令息ですが、推しの闇落ち回避のために頑張ります

蒸しケーキ

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36.転生者

「んん......」

 朝から妙に騒がしい。
 
 ぼんやりと目を開けると、扉の前に立っているのはーーカリムとエルザさん、それからカイラスだった。

「だから! どうしてアルトとゼノを会わせなくてはならないのですか!」

「気持ちは分かる。私も止めたさ。......しかし『早めがいいんだ、できれば今日中に』とアルトの頼みで、断れなくてな。」

「......兄上。」

「あの......俺大丈夫です。」

「なっ! ゼノ!!」

「本当か、助かる。アルトはすでに王宮内のバラの庭園にいるはずだ。今、案内させよう。」

「兄上! なら俺もーー」

「あんたは、まだ終わってない仕事があるでしょうが。先に片付けなさい。」

「っ......ゼノ。すぐに終わらせる。だから待っていろ。」

「はい、分かりました。」

 そんなに心配する必要ないと思うんだけどな。

「ゼノ様、身支度のお手伝いいたします」

 簡単に身支度を整えてもらい、ビオラさんの案内でバラの庭園へと向かった。

 庭園の中央ーー吹き抜けになっている白い建物の中に、アルトはいた。

 俺の姿を見つけるなり、ぱっと顔を輝かせ、手招きをしてくる。

「病み上がりなのに、急に呼び出してごめんね。」

「ううん、全然大丈夫。でもどうしたんだ?」

「ゼノ君に聞きたいことが二つあってね。」

「二つ?......うん、分かった。」

「ありがとう。まずは、これ見てほしいんだけど。」

 アルトはポケットから、小さな瓶を取り出した。

 中にはーー紫色の液体。

 その瞬間、指輪が赤黒く脈打つように光る。

(......っ)

 嫌な予感が背筋を這い上がる。

 どうしてアルトが毒物を持っている?

 ーーまさか。

 俺を殺そうとしたのは、ヴェリタス家じゃなくて、アルト......?

 一度、深く息を吸う。

「......どうして、アルトが毒物を?」

 問いかけると、アルトは少しだけ目尻を下げた。どこか寂しそうに、けれど確信を持った表情で。

「やっぱり分かるよね。それが毒物だって。」

 アルトは小瓶を軽く揺らしながら続ける。

「なのに、どうしてあの場で飲んだの?」

「しかも、指輪もカリムに見せないように隠してたみたいだし。」

 核心を突く言葉に、思わず息が詰まる。

「それは......カリムを守るため、だよ。」

 声が、わずかに上ずった。

 アルトは俺から視線を外さない。まるで、すべてを見透かすかのように。

(アルトから感じるこの違和感は、なんなんだ。)

「そっか。」

 アルトはあっさりと頷いた。

「まぁ、警戒するのも無理ないよね。」

「うん。じゃあ、一つ目はこれで終わり。」

 一歩、距離が詰まる。

「じゃあ二つ目。僕としては、こっちが本題なんだけどーー」

 その瞳が、わずかに細められる。

「ゼノ君、いやゼノ・ヴェリタス。」

 一拍。

 庭園の風が、静かにバラを揺らした。

 アルトの瞳が真っ直ぐに俺を捉える。

「ーー君“も”転生者なんでしょ。」
感想 36

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