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13.アインスside
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縁談だと......?こんな話、俺は一切聞いてないが......。
......なるほど。やけに大人しかったと思えばそういうことか。シューンがいなくなった今を好機と見たわけか。相変わらず、ずる賢い戦略だ。
ただ、それは俺も同じこと。父上と二人きりになれる瞬間は、おそらく今このときしかない。やるなら今日だな。
俺は書類と”白い粉末”の入った袋を手に、父の元へ向かった。
「父上。失礼します。」
「おぉアインスか。よく来てくれたな。」
父上はいつもと変わらぬ様子で俺を出迎えた。ーー今から自分が殺されるとも知らずに。
「久しぶりに話をするんです。たまには紅茶でも一緒に飲みませんか?こちらの茶葉は苦みが強いので、先に砂糖を入れますね。」
俺は持ってきた粉を父上のカップの中に注いだ。
「ほぉ。お前から茶を誘うとはな......。ではいただこう。」
父上はごくり、と一杯飲むと呑気に「お前の入れた茶はうまいな」と戯言をほざいていた。
「ふふ、それは良かったです。それで、私を呼び出したのは如何様な理由で?」
「おぉそうだな。早速本題に入るとしよう。お前に話があるというのは、縁談を持ってきてやったことだ。ほら、その紙にも書いてあるだろう。その中から、気に入ったご令嬢を選びなさい。」
「......私とシューンが結ばれる際、跡取りは不要だと仰っていたではありませんか。」
「ふむ。そんなこと、いつ私が言ったかね?最近歳でな、どうも記憶が曖昧で思い出せないのだよ......。何か、証明できる書面でもあれば良かったのだが、生憎持ち合わせていなくてな......。」
父上は愉快そうに笑みを浮かべていた。
「もともと彼は平民の出自だ。まさかお前が爵位を授けるほど執着しているとは思っていなかったがな。本来であれば私が直々に手を下すつもりだった。だが、その必要もなかったな。彼が素直な子で助かったよ。」
「お前の役目は大事な跡取りをしっかり残すことだ。シューン君のことは、もう忘れなさい。」
「......手を、下す?」
その言葉を聞いた瞬間、一気に頭に血が昇り、今すぐにでも殺してやりたい衝動が溢れてきたが、なんとかそれを抑え込んだ。
「はっはっは。そう怖い顔をするな。なに、シューン君にはこのまま消えてもらったほうが、我が一族に都合がいいと思ってね。心配するな。シューン君も承諾のうえでいなくなったんだからな。お前は何も悪くない。生活を支援することも約束したからね。シューン君も御の字だろう。」
下衆な笑みを浮かべ、顎を撫でる父上を見た瞬間ーー頭の中でぷつり、と何かが切れた。
もうこいつはダメだ。さっきまで頭に血が昇っていたのがバカバカしくなるくらい、今度はひどく冷静でいられた。
「......そうですか。父上。それは、残念でなりません。」
「なにが残念だというのだ、アインス。国のために責務を果たすこと、それこそがーー!?」
ーーあぁ、やっと毒が回ってきたか。
「ア”、ア”インス”......ぎ、さ、ま”、何、を......し、た!!」
テーブルの上にあった置物や書物が大きな音を立てて崩れていった。最後、父上は悶え苦しみながら、その場で息絶えた。
俺は、この手で初めて人を殺した。シューンが断れないのを分かっていながら。その事実を俺に伝えなかった。人の優しさに付け込んだ、なんて下劣で愚かな考えだろうか。しかもそれが実の父親だということに、心底戦慄した。
だからこそ、血がつながっていようと、家族であろうと、殺すことに一切のためらいもなかった。
「国のため、ですか......。一体どの口が言っているんですか、父上。かつて、王の右腕と持て囃されたからといって、何をしても許されるわけありませんよ。」
「ご存じですか?人は死んでからも、五感の中で聴力だけは最後まで機能し続けるらしいのですよ。」
「これから、あなたの裁判を行う予定です。そこで、あなたのこれまでの悪事をすべて報告させていただきます。」
「この事実が明るみに出れば......あなたに関わった者たちも、無事では済まないでしょう。」
「もっとも、その前に......あなたの息がかかった者たちは、俺がまとめて”お掃除”させていただきますけどね。」
ひと通り話し終えると、毒薬の解毒剤を父上の口に流し込んだ。これが血液中に流れた毒物と結合することで、毒の分解作用が生じるように錬成しておいた。
あぁ......。これでやっとシューンを迎えに行ける。俺にはシューンさえいてくれればそれでいい。もう何があっても二度と逃がしてやらない。
今日も可愛いシューンのために俺は生きるよ。今から迎えに行くから待っててね、シューン。
......なるほど。やけに大人しかったと思えばそういうことか。シューンがいなくなった今を好機と見たわけか。相変わらず、ずる賢い戦略だ。
ただ、それは俺も同じこと。父上と二人きりになれる瞬間は、おそらく今このときしかない。やるなら今日だな。
俺は書類と”白い粉末”の入った袋を手に、父の元へ向かった。
「父上。失礼します。」
「おぉアインスか。よく来てくれたな。」
父上はいつもと変わらぬ様子で俺を出迎えた。ーー今から自分が殺されるとも知らずに。
「久しぶりに話をするんです。たまには紅茶でも一緒に飲みませんか?こちらの茶葉は苦みが強いので、先に砂糖を入れますね。」
俺は持ってきた粉を父上のカップの中に注いだ。
「ほぉ。お前から茶を誘うとはな......。ではいただこう。」
父上はごくり、と一杯飲むと呑気に「お前の入れた茶はうまいな」と戯言をほざいていた。
「ふふ、それは良かったです。それで、私を呼び出したのは如何様な理由で?」
「おぉそうだな。早速本題に入るとしよう。お前に話があるというのは、縁談を持ってきてやったことだ。ほら、その紙にも書いてあるだろう。その中から、気に入ったご令嬢を選びなさい。」
「......私とシューンが結ばれる際、跡取りは不要だと仰っていたではありませんか。」
「ふむ。そんなこと、いつ私が言ったかね?最近歳でな、どうも記憶が曖昧で思い出せないのだよ......。何か、証明できる書面でもあれば良かったのだが、生憎持ち合わせていなくてな......。」
父上は愉快そうに笑みを浮かべていた。
「もともと彼は平民の出自だ。まさかお前が爵位を授けるほど執着しているとは思っていなかったがな。本来であれば私が直々に手を下すつもりだった。だが、その必要もなかったな。彼が素直な子で助かったよ。」
「お前の役目は大事な跡取りをしっかり残すことだ。シューン君のことは、もう忘れなさい。」
「......手を、下す?」
その言葉を聞いた瞬間、一気に頭に血が昇り、今すぐにでも殺してやりたい衝動が溢れてきたが、なんとかそれを抑え込んだ。
「はっはっは。そう怖い顔をするな。なに、シューン君にはこのまま消えてもらったほうが、我が一族に都合がいいと思ってね。心配するな。シューン君も承諾のうえでいなくなったんだからな。お前は何も悪くない。生活を支援することも約束したからね。シューン君も御の字だろう。」
下衆な笑みを浮かべ、顎を撫でる父上を見た瞬間ーー頭の中でぷつり、と何かが切れた。
もうこいつはダメだ。さっきまで頭に血が昇っていたのがバカバカしくなるくらい、今度はひどく冷静でいられた。
「......そうですか。父上。それは、残念でなりません。」
「なにが残念だというのだ、アインス。国のために責務を果たすこと、それこそがーー!?」
ーーあぁ、やっと毒が回ってきたか。
「ア”、ア”インス”......ぎ、さ、ま”、何、を......し、た!!」
テーブルの上にあった置物や書物が大きな音を立てて崩れていった。最後、父上は悶え苦しみながら、その場で息絶えた。
俺は、この手で初めて人を殺した。シューンが断れないのを分かっていながら。その事実を俺に伝えなかった。人の優しさに付け込んだ、なんて下劣で愚かな考えだろうか。しかもそれが実の父親だということに、心底戦慄した。
だからこそ、血がつながっていようと、家族であろうと、殺すことに一切のためらいもなかった。
「国のため、ですか......。一体どの口が言っているんですか、父上。かつて、王の右腕と持て囃されたからといって、何をしても許されるわけありませんよ。」
「ご存じですか?人は死んでからも、五感の中で聴力だけは最後まで機能し続けるらしいのですよ。」
「これから、あなたの裁判を行う予定です。そこで、あなたのこれまでの悪事をすべて報告させていただきます。」
「この事実が明るみに出れば......あなたに関わった者たちも、無事では済まないでしょう。」
「もっとも、その前に......あなたの息がかかった者たちは、俺がまとめて”お掃除”させていただきますけどね。」
ひと通り話し終えると、毒薬の解毒剤を父上の口に流し込んだ。これが血液中に流れた毒物と結合することで、毒の分解作用が生じるように錬成しておいた。
あぁ......。これでやっとシューンを迎えに行ける。俺にはシューンさえいてくれればそれでいい。もう何があっても二度と逃がしてやらない。
今日も可愛いシューンのために俺は生きるよ。今から迎えに行くから待っててね、シューン。
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