神を越えたその先へ

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3.5章 それぞれの物語

閑話 対魔族戦3

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 さすがに2話で片づけるには無理があったみたいです。今までもちょっと駆け足気味だったのでもう少しゆっくり話を進めていきたいと思います。(言い訳)
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「はっ!オラァ!」

 山内が周りにいる魔物を次々と駆逐していく。

「セイッ!──っ、後衛!右側に打ち込んでくれ!」

 進藤は自分も魔物を倒しながらアイザーに言われた通り全体をできるだけ把握し、山内のカバーをしていた。なんだかんだで連携は取れており、国の騎士たちも早々に進藤たちのことは気にせず、それぞれ陣形を整えて魔物の討伐に当たっている。

「わかった、ファイアーボム!」
「アイスランス!」

 既に詠唱を終えて発動前の状況で待機していた二人が同時に魔法を放つ。どちらも初級の魔法だが、勇者故に込められた魔力は多く、威力は中級程に高い。

 結果、そこにいた魔物は体を焼かれ、貫かれた、吹き飛ばされた。

「ナイスフォロー!中衛も後衛も引き続き頼む!」
「おう(うん)!」

「チッ!」

 遠くから進藤の強化された聴覚に山内の舌打ちが微かに届いた。そちらを見ると、山内が複数の魔物に囲まれていた。

「っ、中衛!山内君のフォローを──」
「必要ねぇ!はぁぁ………アラウンドスラッシュ!」

 山内が自らの両手斧を持ち、斧技を発動させ、魔物を横なぎに裂いた。

「さすがだな、俺も負けてられないな。………ライトニングアロー!」

 進藤の前夫に20もの光の矢が現れ、それぞれ別の方向に飛んでいき、魔物を地面に縫い留めた。そして、そっこうで距離を詰め確実に仕留めていく。

 東の門は順調に魔物の数を減らしていた。





~西門side~

 西門は………荒れていた。

「ちょっと、細井くん!一人で突っ込むと危ないわよ!」
「大丈夫だって!ほっ!てやっ!」

 細井は調子に乗っていた。いろんなところに動き回るせいでフレンドリーファイアを恐れて攻撃魔法も打ちづらく、打ち漏らしもあるため、涼乃が打ち漏らしを確実に仕留めていた。

(実際に強いから何とも言えないのよね……)

 細井は弱くない、寧ろクラスメイトの中では上位に位置する程度には強い。

 涼乃が前衛を細井に任せた理由は、単純に涼乃に殲滅力が無かったからだ。涼乃の武器は刀であり、1対1の戦闘に向いているため、1対多での戦闘は槍を武器とする細井に任せるしかなかったのだ。

「細井くん!左の方の魔物を集中して倒して!中衛、後衛は右側を!打ち漏らしは全て私が片付ける!細井くん!頼りにしてるわよ!」

 本当はそういう感情を利用したくはなかったが、このままでは効率が悪い。涼乃は意を決してそう叫んだ。
 その結果涼乃に頼られた細井は、

「任せて!宵波さん!」

 嬉しそうに返事をして、一定の場所にとどまって、魔物を倒し始めた。

「よし…香奈!特大のをお願い!撃つ前に言って!」
「わかった!……………」

 右側を中衛組に任せ、涼乃は打ち漏らしを迅速に倒していった。

「…………、涼乃ちゃん!できた!」
「中衛!一旦退いて!」

 それを聞いた中衛組が即座に離脱、香奈の魔法が突き刺さる。

「行くよ!ウィンドストーム!エアカッター!」

 瞬間、戦場を刃が乱れ舞う嵐が発生し、その場にいた魔物を八つ裂きにした。

 香奈が思いついた複合魔法。竜巻を発生させ、そこに風の刃を紛れさせることで、殺傷能力と殲滅力を大幅に上げたのだ。属性は同じのため、香奈目線では比較的簡単にできた。

「ナイス、香奈!これでかなり余裕はできたはず……」

 そこへ、情報収集に努めていたクラスメイトの隅谷すみたにが涼乃のところへやってきた。

「宵波さん、魔物が南に集中し始めてる。強い魔物も現れてる。」
「なんですって!?城壁を壊して入る気かしら。だとするとまずいわね。」

 そう言うと涼乃は少し逡巡して、

「わかったわ、私と香奈が向かうわ。隅谷くんは進藤くんのところにも伝えて。余裕があるようなら少し増援を頼むわ。」
「わかった。」

 隅谷は一つ頷くと、気配を消しつつ走りだした。

「香奈、行くわよ。すみません、ここお願いしても良いですか?細井くんが危なくなったら言ってあげてください。アイザーさんが騎士さんの言うことは聞くようにと言ってましたから。」

 涼乃は国の騎士に頼んだ。彼は一つ頷き、

「あぁ、承った。負担をかけてしまって申し訳ない。」
「いえ、乗り掛かった舟なので。できるだけ手伝うつもりです。では!」
「キャッ!?ちょ、ちょっと涼乃ちゃん!?」

 涼乃は言うや否や香奈を背負って走り出した。その姿はまさにお姫様を守る王子様。

「ちょっと我慢しなさい香奈。二人で走るよりこの方が速いわ。」
「そ、そうかもだけど。ちょっと恥ずかしいよ……」
「気にしたら負けよ。急ぐわよ。」

 そう言うと涼乃は一気にスピードを上げた。

 香奈の少し楽しそうな悲鳴が戦場に響いた。






──数分後──


「これは、かなり酷いわね。」

 涼乃は香奈を連れてきたことを若干後悔した。予想はしていたが、そこには………

 兵士の死体がいくつも転がっていた。現在も生きている兵士はいるが、劣勢だった。

 涼乃は若干青ざめている香奈を降ろした。

「香奈、大丈夫?」

 そう聞くと、香奈は

「う、うん。戦場だから。覚悟はしてたよ。確かにちょっと怖いけど、やれるよ。」

 そうして香奈はポケットに手を入れ、そのままギュッと握りしめた。そして顔を上げ、

「行こう、涼乃ちゃん!」
「えぇ!」

 それぞれ、杖、刀を手に走り出した。


「居合──一閃!」

 涼乃は納刀した刀を、走っている勢いそのままに風の魔力を纏わせなが一瞬で抜刀し、大型の魔物を両断した。

「確かに硬いけど……これならいける!」

 そう確信した涼乃は戦意を滾らせ、

「兵士のみなさん、助けに来ました!怪我の治療をするので香奈の……黒色の長髪の子のところに行ってください!」

 そう言いながら次の魔物に斬りかかり、魔物を蹴り飛ばして刀を引っこ抜き、卓越した技術で全く同じところを今度こそ両断した。

「くっ、居合じゃないと一刀で両断はできない……なら!」

 持ち前の敏捷性をフル活用し魔物の背後に回り刀を逆手に持ち替えながら飛び上がった。

(魔物が少ないからこそできる技……芯貫!)

 刀を両手で持ち、人型の魔物の上から全力で振り下ろした。刀は頭を貫き肩あたりで止まった。だが、魔物はまだ動いている。それを確認した涼乃はもう一度飛び上がり、柄を籠手を付けた左手で殴りつけた。刀は深々と入り込み、とあるところで何かを貫いた感触とともに、魔物の息の根が止まった。

(っ、ここね!)

 涼乃は倒れた魔物から風魔法を併用して刀を抜き、香奈のところへ走っていった。

「香奈!それと兵士のみなさん!あの大型の魔物の弱点は胸にあります!私たちで言うところの心臓の少し上あたり、体の真ん中です!」
「ほ、本当か?」
「えぇ。ただし、もう皆さんもわかっているかもしれませんが、あの魔物はすごく硬い。力に自信がある方が全力で貫けるように3人か4人ほどで一体を囲んで確実にさせる状況に持って行った方が良いと思います。」

 それを聞いた兵士は、

「わ、わかった。おい!俺たちで仇を取りに行くぞ!勇者様に助けられてばっかりだと胸を張って国に戻れねぇ!勇者様、ありがとうございます!」

 兵士は走って行き、すぐに魔物たちを相手にし始めた。国で訓練を積んだだけあって行動が速かった。

「さすが涼乃ちゃん。魔物の弱点を見抜いちゃうなんてすごいね。」
「ありがとう、私たちもやるわよ。」
「うん!」

 戦況は改善された。



~東門side~


「ふぅ、結構片付いてきたか?」
「そうだね、もう魔物も少ないみたい。それにしてもこんな量の魔物いったいどうして……まさか」

 進藤がとある仮設を思い立った瞬間、その仮説は真実となった。

『そのまさかです。王国を滅ぼせる程度の魔物を送ったつもりだったんですが、すさまじい勢いで魔物の量が減っていくと思ったら、黒眼黒髪………貴方たち、異界の勇者ですね?』

 褐色の肌をした紫髪の男がどこからか現れた。

「お前は………魔人だな?」

『………そうです。無駄な会話は好みません。貴方たちには魔王様のため、消えてもらいます。』

「くっ、山内!来るぞ!」
「わかってる!魔人だかなんだか知らねぇが、ぶっ殺すぞ!」

 進藤と山内が魔人に同時に斬りかかる。

『弱いですね。』

 魔人が両手をかざし、それぞれの武器を手のひらで受け止める。そして、二人の腹を殴った。

「「ガハッ!?」」

 二人は吹っ飛び、地面を派手に滑った。

『ふむ、軽く撫でただけのつもりなんだが。もう終わり──っと。』

 山内が一瞬で身を起こし、再び突進して斧を斬り上げるが、魔人に軽々と避けられた。

「まだだ!アースシェイク!」

 山内が斧技を発動し、魔人に向けて振り下ろす。

『遅い』

 魔人は避けるが

「それが狙いじゃねぇ!ハァ!」

 山内は勢いを緩めずに斧を地面に叩きつけた。その瞬間、地面が大きく揺れ、魔人が体勢を崩す。そこを逃さず、山内は揺れる地面を蹴って魔人めがけて弾丸のように跳び横なぎに魔人に斧を叩きつけた。

『グッ!?』

 魔人は勢いよく吹っ飛ばされた。

「今だ、進藤!」

「あぁ、サンダーランス!」

 吹っ飛ばされながらも詠唱していた。魔法を発動させる。雷の槍、それは先ほどの光の矢と同程度の速さにして、比べ物にならないほどに威力が高い。

 雷の槍は轟音と土煙を立てて魔人に着弾する。

「どうだ、やったか!?」
「おい、山内。それフラグ──」

 フラグは、回収された。

『まだ実践経験は浅いようですがそれでも勇者ですね。』

 突風が起き、土煙が払われる。そこには…

「クソ、ピンピンしてんじゃねえか。」

 大してダメージを受けた様子のない魔人がいた。

「全く、まるでボス戦にでも挑むようだよ。」

 それを聞いた魔人は眉毛を片方上げ、

『おや、私は魔人の中では最弱………とまでは言いませんが別段強い方でもありませんよ。』

「そうかい、だからと言って逃げるわけにはいかないね!」
「そうだな、勝てないと決まったわけではない。」

 魔人は二人が絶望しなかったのが意外だったのか、もう片方の眉毛も上げた。

『そうですか、無抵抗の方が楽なんですが──ね!』

「「!?」」

 魔人が一瞬で距離を詰め反射的にかざした山内の斧に拳を振り下ろすと、

──バキィィンッ!!──

 金属が引きちぎれる音と共に山内の斧が砕けた。

「なんっ!?」

 喋る暇も与えず魔人はそのまま蹴り落とすように山内に踵落としに近い後ろ回し蹴りを放ち、山内を地面に沈めた。

「山内ぃ!」

『貴方もですよ?』

「ッ!?」

 魔族が消え、直後に進藤の後ろに現れた。進藤は振り向いて剣で斬ろうとするが圧倒的に間に合わず、後頭部を魔人に殴られ、脳震盪を起こした進藤は成す術もなく地面に倒れ伏した。

『ふぅ、こんなものですか。魔族の脅威になるようには思えませんがね。』

「ぁ、くっ……!」

 山内が起き上がろうともがき、魔人を睨む


『ヤマウチクン、と言いましたか?この状況ではどうしようもないでしょう。』

「…るせぇ、こんな、とこで……」
「そうだね、地球に、帰らなきゃ……」

 進藤の戦意も衰えずに、魔人を睨みつける。

『ふむ、やはり生かしておくのはなしですね。成長したらどうなるかもわかりませんし。』

 そう言って二人に近づき、魔人はその手に魔法らしきもの生み出した。

「クソ…」
「ここまでか…」

『では、終わりです。』







































「はいストップ。ちょっと待って。」


 ローブを羽織った男が現れた。

  _______________________
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 ちょっと長くなりましたがまだ終わりません。
 涼乃ちゃんと香奈ちゃんは決して百合じゃないですよ。あくまであの場ではあれが最善だったんです。

 進藤君の名前を変更しようか迷ってます。もし変えることになった場合、「お?なんだコイツ?」となるかもしれませんが、前書きが後書きで書くのでご了承ください。

 次回もまだこっちですね。次回で終わるかはわかりませんが。

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