運命に花束を

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運命に花束を①

運命に花束を⑤

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 数日後、ナダールは一振りの剣を手にグノーの元へやってきた。

「カズサに聞きました、あなたが自分の剣を探しているとね。本当はあまり見せたくはなかったのですけど、持ってきましたよ」

 そう言って渡された一振りの剣は装飾こそほとんどないが持ってみればそこそこの重さで、使い込まれているのが一目で分かる程度に汚れていた。

「一応手入れはしておきましたが、さすがに色々あって、欠けなどもあるのですよ。勝手に処分などできないので……どうしました?」

 剣を持つ手が震えた。何かを思い出しそうで、記憶の端々が明滅する。剣を鞘から抜き去れば、綺麗に手入れされたその刀身には自分の姿が映った。

『グノーシス』

 低く響くような男の声。どこかで聞き覚えのある、だが思い出したいような思い出したくないような気持ちがぐるぐると心をかき乱す。グノーの異変に気が付いたのかナダールが慌ててその剣を取り上げた。

『あんたなんか、死ねばいいのに』

 女の人の声、蔑むような瞳、紅い紅い瞳。

『大嫌い!!』

 泣き叫ぶ子供の声と泣き崩れる少年の映像……これは一体何なんだ!?
 他にもたくさんの男の声、女の声、低い音、高い音、たくさんの音と声と映像が頭の中を物凄いスピードで回っている。

「うわぁぁあぁぁ!」

 音は大きくなったり、小さくなったり、だがどの映像もこちらを睨み付けグノーに罵りの言葉を投げつける。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 呼吸が乱れる、何だコレは? この記憶は何なんだ?
 村の人達は皆優しかった、だが、自分のその記憶はそんな優しさなど欠片もない。

「くっ」

 眉を顰めてナダールがグノーを抱きしめた。彼の匂いが自分を包み込む。あぁ、彼の腕の中だけは絶対に安心できる場所なんだ。

「すみません、まだコレは早すぎました」
「これ……この記憶、何? たくさんの罵りの声が、聞こえるんだ。オレはそんなに他人に憎まれるような人間だった?」

 血の気が引いて瞳が潤む。

「そんな事ある訳ないでしょ。あなたがそんな人だったら私は今ここにいませんし、村の人だってあなたに優しくなんてしませんよ」
「本当、に?」
「私は嘘は吐きません」
「じゃあ、あの声は何? 一人じゃなかった、たくさんの罵りの声。オレ死んだ方が良かった?」
「馬鹿なことを!!」

 ナダールの瞳にも涙が浮かぶ。あぁ、こいつも泣く事あるんだな、なんてそんな場違いな感想が頭を掠める。いつも笑顔で「大丈夫」と笑っていてくれるから、こんな姿想像できなかった。
 なんとなく居たたまれなくなって瞳を逸らすと、その顔を優しく両手で包まれ瞳を覗き込まれた。
 碧い、飲み込まれそうなほど碧い瞳。

「過去を、知りたいですか?」

 知りたい、でもそれはとても恐ろしくなってしまった。
 今知りたいと自分が言えば、彼はそれを教えてくれるだろう、だがそれがどうにも恐ろしくなってしまった。
 血の薫りがする。なんでオレはこんなに血の匂いの立ち込める場所にいるのだろう……息が苦しい、うまく呼吸ができず、ナダールの腕をきつく握った。

「私はあなたを苦しめたくはないのです。あなたにはいつでも笑っていて欲しいのに、どうやってもあなたを過去の呪縛から解き放つ事ができない……私はどうすればいいですか? 教えてください、あなたの望むことを……」
「いき……たい」

 答えは考える間もなく口をついて出た。

「オレはお前と、生きたい……」

 過去なんてどうでもいい、今彼と生きていたい。それでも心の中に燻ぶる不安、自分はこの思いを忘れてしまってもいいのだろうか? 忘れて彼の腕の中で笑っていてもいいのだろうか?

「怖い……どうしてこんなに怖いんだ? お前と一緒に生きたいんだ、でも生きてる事がすごく怖い。オレは誰? 知りたくない……でも、知らなきゃいけない事なんじゃないのか?」

 ナダールは悲しげな瞳で笑った。

「あなたがそう望むなら、すべてお話します。ですが、ひとつだけ約束をしてください。あなたが過去を知っても自暴自棄にならない事、過去のあなたは自分の命を酷く軽く扱っていた、私はそれが怖いのです。あなたを失っては私は生きていけません、だからあなたも自分の命を粗末に扱うような事は絶対しないと約束してください」
「約束……うん、分かった。約束する」

 ナダールがあまりにも真剣な表情で言い募るので、また少し不安になった。ナダールには笑っていて欲しい、笑ってくれたらオレは安心できるのに……
 彼はぽつりぽつりと語り始める。グノーの出生、生い立ち、過去にあった事件の数々、それはまるで物語のように現実離れした過去の出来事。だが、そのひとつひとつに過去の映像が思い出されて、それが真実である事は自分の中にすとんと落ちてきた。
 話の途中からどうにも涙が溢れて止まらなくなってしまう。
怖いのか悲しいのか切ないのか自分の中でもはっきりしない感情が溢れ出して、抱きしめてくれるナダールの胸に縋って顔を見られないように涙を流し続けた。
 彼は優しくオレの頭を撫でてくれて、それでますます涙が止まらなくなってしまうのだ。

「怖いですか? 大丈夫ですか? もう今日はやめましょうか?」

 オレは首を横に振る。すべてを知ってしまわなければ、自分は立ち止まったまま動けなくなってしまう事は分かっていた。だからすべてを聞きたかった。
 ナダールがすべてを話し終わった時にはどれほどの時間が経っていたのだろう、オレ達は静寂の中、まるで二人きり漂うように抱き合っていた。

「全部かどうか分からないけど、思い出した。レリックの事、アジェの事、両親の事、その他にもたくさん、オレのせいで不幸になった人達の事……」
「あなたのせいではありません! あなたは何もしていない。皆があなたを責めるのは間違っているのに、あなたはそれをすべて背負ってしまう……」

 自分はそれが耐えられないとナダールは表情を翳らせた。

「でも、俺さ、お前に出会えて、今はすごく幸せだと思ってるぞ?」
「グノー」
「一人じゃ耐えられなかった、お前が居てくれたから前を向けた、お前が居るから俺は今生きてここに居るんだ」
「本当に、思い出したんですね」
「お前さ、俺が寝てる間、俺のことずっと呼んでただろ? 俺、お前に早く会いたくて夢の中に記憶だけ落としてきちまったみたいだ。よっぽど慌ててたんだろうな」

 会いたくて会いたくて暗闇の中、必死にもがいていた。アレは死の淵だったのかもしれないな。

「私のために戻ってきてくれたんですか?」
「だって俺が死んだら、お前俺の後追ってくるだろ? 今までずっとそうだったじゃん」
「そうですね、私はいつもあなたの背を追いかけて……」

 ナダールの瞳から涙が溢れて零れ落ちた。あぁ、綺麗だなぁ。

「泣くなよ、俺まで泣けてくるだろ」
「すみません……」
「ただいま、遅くなってごめんな」

 今度は俺が彼の頭を撫でてやると彼は嬉しそうに泣き笑い「おかえりなさい」とキスをくれた。

「この首輪、お前が外して」

 ナダールに鍵を手渡すと彼はその鍵をぎゅうと握りしめ、頷いた。
 長い間繋がれていた鎖が、今ようやく外れる。
 鍵を差し込むと、かちりと音がする。回せる隙間はない、そのままでは外れないのだろうナダールが首を傾げるように触っていると、金具の部分が動いた。上下左右にパズルのように動かしていくと、その首輪は音もなく外れた。

「綺麗な項ですね……」

 ナダールはそこに唇を這わす。ぞわりと肌が総毛立って身体が震えた。
 二人の匂いが交じり合って広がっていく、あぁ、この匂いはどこまで届いてしまうだろう。でも、そんな事はもうどうでもいい。誰に気付かれても構わない、身体が疼く。

「早く噛んで……早く俺をお前の物にして、離さないって誓って」
「離しませんよ、もう二度とあなたの手は離さない」

 ナダールが背後から抱き込むようにして項に齧り付く。激しい痛みと甘い痺れ、あぁ、これでようやく……
 まさぐる手が身体中を這い回る、どこを触られても身体の疼きは止まらない。

「ちょうだい、たくさんお前を……もっと、もっと、もっと!」

 長い事、禁欲生活に耐えていた二人の気持ちは昂るばかりで際限を知らない。
 「煽らないで」と呟くナダールの声も色を帯びて耳を擽る。
お互いがお互いの服を剥いでいくように裸身を晒す。初めてでもないのに、まるで初めて肌を触れ合わせているかのような興奮に眩暈がした。
 いつも以上にナダールの匂いを強く感じるのは、番になったせいなのだろうか? 自分達はこれで本当に正真正銘番になれたのだろうか?
 不安に思ったのは自分だけではなかったようで、ナダールもまた執拗に俺の項に舌を這わせ、甘噛みをするようにそこに何度も何度も歯を立てていた。その度ごとに身体には甘い痺れが走り、自身の雄の部分も雌の部分もどちらも突き抜けるような快感に濡れていくのが分かる。

「ナダール、もういいから……」

 項に埋めるその顔に自ら顔を寄せ口付ける。
 舌が絡み合い、それでも足りないと身体を捻るようにして更に深く頭を抱えるように抱きつくと、彼は嬉しそうに微笑んだ。

「……なに?」
「嬉しくて、こんな風にあなたに求められるようになれた事が、私は本当に嬉しいのです」

 掌を重ね合わせて、瞳の中まで覗きこまれる。本当は最初から拒めてなどいなかった、初めて匂いを嗅いだ時からこの男は自分の特別な人間なのだと本能で分かっていた。
 それでも人間は理性の生き物だ、本能などと言う不確かな物を信じられずに拒み続け、抗い続け無駄な労力を費やした。
そんな無駄な力を抜いて素直になったら、心がずいぶん楽になった気がする。

「愛してる」

 耳元でそう囁いたら彼はまた嬉しそうに微笑む。
 こんな言葉を自分が素面で言える日が来るとは思わなかった。
今なら何度でも言える気がする、呪い続けた『愛』を囁ける相手をようやく見付けた。
 押し倒すようにして身体に乗り上げると、彼は苦笑する。

「あなた意外と上に乗るの好きですよね。騎乗位も嫌いではありませんが、たまには私にも主導権を握らせてはくれませんか?」
「そう、だっけ?」
「無意識ですか?」

 言ってまた身体を返して押し倒された。
 あ……そっか、たぶん俺は怖かったんだ、組み敷かれ身動きが取れない状態での性交には嫌な思い出しかない、けれどナダールの腕の中で彼の匂いに包まれてするのはとても気持ちがいい。

「いいよ、お前の好きにしろ。ここもお前を欲しがってる」

 足を開いて濡れた秘穴を擦り付けるように彼の腰に足を回して抱き込む。片足が無いから完全ホールドとはいかないが、密着した下半身に彼の昂ぶりが勢いを増したのが分かった。

「早く入れて……」
「全くあなたは……煽るなと言うのに!」

 前戯もそこそこに彼の怒張が自分の中に押し入ってくる感覚、だが濡れそぼった肉壁は彼を拒む事はない。

「痛くないですか?」
「ん……平気」

 彼の背に腕も回して更に奥へと誘うように身体を密着させると、彼もそれに応えるように昂ぶりを俺の奥へと押し
込んだ。

「っ……は、あ……」
「あなたの中は温かくて柔らかくて気持ちがいい。際限もなく、貪ってしまいたくなる」
「いい……よ。俺も欲しい」

 全部、俺の中に……ちょうだい、そんな風に呟くと彼は我慢し切れなかったのか激しく腰を打ち付けてくる。

「っあ、あっ、あ……んっ」

 甘い嬌声が己の口から零れ落ちた。彼の穏やかな普段とのギャップがたまらなく愛おしい。優しく抱こうとしてくれてるのは分かるのだが、俺にはこの位が丁度いい、理性もすべてかなぐり捨てて俺だけを見てくれているナダールの碧い瞳が愛おしくてたまらない。
 下肢から響く卑猥な水音が一層の快楽を煽り「もっともっと」と際限もなく求めているのは俺の方だ。
 呻くようにして彼が俺の中に精を吐き、それを根こそぎ搾り取ろうとしているかのように自分の肉壁がうねっているのが分かる。俺の中から出て行こうとする彼を「ダメだ」と首を振って嫌がれば、困ったように頬を撫でられた。

「理性が勝っている内に止めておかないと、あなたの事を抱き潰してしまうかもしれませんよ?」
「子供……」
「ん?」
「二人目はお前に似た子がいい……」

 ナダールが言ったのだ、記憶さえ無くしてなかったら今頃二人目を作る為に励んでいたはずだと。

「まだ、足りない」
「……あなたって人は……」
「こんな俺は、嫌い?」

 最初は反発して罵って、彼を受け入れてからはひたすら甘やかされている。ナダールは一体どんな俺が好みだったのかよく分からない。

「嫌いなわけないでしょう、大好きですよ」
「だったら、もっと愛して」
「本当にあなたは私を煽る天才ですよ」

 言って抜かれかけた彼自身が再び堅さを取り戻して最奥へと突き入れられた。それを嬉しいと思ってしまう俺はもう完全にこいつだけの雌なのだろう。

「最初の時の事、あなた覚えてますか?」
「最初……? っつ」
「抱き潰してしまいそうだと言った私に、あなたが何を言ったか覚えていますか?」
「あの時はヒートにやられて、朧気にしか……っん」

 肉壁の敏感な部分を突かれてあがる嬌声に彼は満足げに笑みを零した。

「ここ、好きですか?」
「あっ、は……やっ、そこばっかり……ダメ」

 まるで快楽中枢と直結しているかのような、その場所に何度も何度も彼を突き立てられて、零れる喘ぎを止められない。
 寄せられる唇が俺の肌の上を滑る毎に赤い華を散らしていく。
堪らず、己も自身の腹に精を吐くと、律動を続けていた彼も苦しそうにその精を俺の中にぶちまけた。

「あったかい……」
「生きてるって感じがするでしょう?」

 ゆるゆると項に顔を埋めるように、言われた言葉に頷くと、耳を舐るように唇を寄せられ優しく腹を撫でられた。

「今度は私によく似た男の子、生んでくださいね」

 耳朶に響く声がくすぐったいし気持ちがいい。

「んふふ……頑張る」

 俺の言葉に彼はなにやら満足したように頷いた。






 数年の歳月が流れたある日、グノーはナダールの腕の中で暴れていた。

「もうホントこれなんなんだよ! 離せ! 降~ろ~せ~!!」
「嫌です、降ろしたらあなた逃げるでしょ!」
「分かってんなら、こういう事すんな! 馬鹿!!」

 じたばたと暴れるグノーの衣装はどこか華やいでいる。
 更紗の布を巻きつけたような服に、腰にはやはり更紗の帯で可愛らしい華の形に飾られていた。頭に被っている帽子のような物もやはり同じ更紗の共布で出来ていて、そこから長く垂れたベールの先には小さな鈴が幾つも付いて、軽やかな音を響かせていた。ナダールも似たような格好をしているのだが、その布はシンプルな物でグノー程の華やかさはない。

「お祭り衣装だって言うから着たのに、これ絶対なんか違うだろ!しかもこれ絶対女物だろ!!」
「コレはね、花嫁衣裳です」

 ナダールはグノーを担いだまましれっとそう言った。

「は? 花嫁? え? ちょ……え?」
「私を花嫁に逃げられた間抜けな花婿にしたくなければ、大人しくしててください」
「なっ、なっ……そんなの知るかぁぁぁ!」

 叫ぶグノーに、笑うナダール。いつしか傍近くで小さな子供が二人手を繋いでこちらを見上げていた。一人はグノーに似た赤毛の女の子、もう一人は金色の髪の男の子だ。

「ママ、凄い! 綺麗! ルイにもっとよく見せて」
「そうでしょう、ママは世界一綺麗ですからね」

 キラキラした瞳に見詰められてグノーは暴れるのをやめた、なんかもう八方塞がりだ。
 今日は村のお祭りで、祭りの衣装があるから着てみないかと近所の友人に誘われたのは今朝の事だった。そしてあれよあれよと衣装を着せられ、何かおかしいと思った時にはナダールに担ぎ上げられており、今に到る。

「今日はパパとママの結婚披露宴です。ルイとユリも出席するのですよ」
「けっこん? ひろーえん?」

 小さな男の子はよく分からないのだろう首を傾げるが、そのうちへにゃりと笑って「ひろーえん、ひろーえん」と飛び回り始めた。

「ママ綺麗だから、ルイお花摘んでくる。ユリも行こ」
「ユリ、行く~」

 子供二人は楽しそうにその辺の花を摘み始め花束を作り始める。
そんな二人を目を細めて見やるナダールは本当に幸せそうだ。

「なぁ、もう逃げないから、降ろして」
「本当に?」

 向けられる笑顔は楽しそうで、仕方がないと観念した。

「逃げないから、これ、凄く恥ずかしい」

 担ぎ上げられる花嫁は村人達の注目の的だ。どうにもこうにも恥ずかしすぎる。グノーは両足で地面の上に立つ。
 グノーの片足は義足だったが、自身のからくりの知識を総動員して自作したその義足は思いのほか出来が良くて、隠してしまえば何の違和感もなく過す事ができた。
 もう逃げないと言っているのに、ナダールはグノーの手を離そうとはせず、にこにこと子供二人を見守っている。
 長女がルイ、二番目にできた子は男の子でユリウスと言う。

「二人ともそろそろ行きますよぉ」

 声をかけると二人の小さな子供は駆けてくる。両腕にたくさんの花を抱えて。

「ママ、あげる」
「ユリも、ユリも」

 子供の笑顔は眩しくて笑みが零れた。

「あはは、こんなにたくさん持ちきれるかなぁ……」

 ただ摘んだだけの、その辺に咲く名も知らないような花々だ。
それでもそれが嬉しくて二人の頭を撫でると、子供は嬉しそうに微笑んだ。

「早く行こう、ママ凄くいい匂いするし、この音、綺麗ね」

 ベールに付いた鈴の音がしゃらしゃらと軽やかな音を奏でる。

「いいな、いいな」と子供達は二人の周りを駆け回り、両腕には抱えきれないほどの花束を抱えて、グノーは笑う。
「約束、絶対叶えますからね」

 一生一緒に二人で幸せになる、それは何度も繰り返し交わされ続けている破られる事のない約束。ナダールがグノーの頬に口付けると、彼は真っ赤になりながらも小さく頷いた。

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