運命に花束を

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運命に花束を②

運命の三回戦④

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 翌朝、武闘会七日目最終日、残す試合はあと二回。あと二回勝てば騎士団長だ。
 恐らく両方負けても副騎士団長の地位は確約済みだが「どうせやるなら優勝しろよ」とナダールは二回戦を共に戦った戦友達に背を痛いほどに叩かれた。
 天気は快晴、会場は誰が第一騎士団長の座を射止めるかの予想で大賑わいだ。

「やっぱりここは順当にアイン団長だろ」
「でも今回下から二人も上がってきてるぞ。第二騎士団分団長のアランと、どこにも所属してないナダールとかいう新人」
「あぁ、あのマイラー様に推薦されたとかいう新人? 強いのか?」
「ここまで勝ち上がってきてるんだから弱くはないだろう。しかもマイラー様が推すくらいだ、そんなへなちょこ寄越さないだろう?」
「だよな、今回は第三騎士団長と第五騎士団長が参加してるのか……ん? もしかして第五騎士団長はもう残ってないのか?」
「昨日一試合目で第三騎士団長に当たって早々に負けてるよ。しかも敗者復活の方も三回戦始めて上がってきた奴に負けたとかで、下手すると分団長落ち……毎度の事ながら敗者は哀れだな」
「そうか……でもそうすると、次の試合勝てば少なくとも第五騎士団長、もしあの新人が勝ったら、初めてじゃないか? 所属なしからの騎士団長就任」
「マイラー様がいるだろう?」
「知らないのか? マイラー様は一度副団長をやっているぞ。言っても十五で副団長、二十一で騎士団長だからとんでもない事に変わりはないけど」
「へぇ、そうなのか。これはちょっと面白くなってきたな」

 とても楽し気な観客の声、そんな民衆の声が面白くないのは第二騎士団分団長のアランと、第三騎士団副団長のスコットの二人だ。
 二人は所属こそ違うが同期で入隊した友人で、常にどちらが出世できるかを競い合っているようなそんな仲だった。

「くそっ、なんで俺の次の試合相手アイン団長なんだよっ!」
「仕方ないだろう、これも厳選なくじの結果だ。どうせならアイン団長を倒す! くらいの気概を見せたらどうだ?」
「そんな事は分かっているが、あの人伊達に毎回参加してる訳じゃない、化け物みたいに強いのお前も知ってるだろう?」
「それでもうちの団長より下だがな」

 アランの言葉にスコットが「なんだと!?」と怒りの表情を滲ませ声を荒げる。
 こんな仕組みの騎士団でも上下の仲間意識は比較的強い、それは人を配する際、騎士団長を中心にそれぞれその人物に見合った人物をその配下に配分していくからだ。第一から第五までの騎士団にはその時の騎士団長にもよるが、割と特色がある。
 第一騎士団はクロードの下、大人しく穏やかで特別目立ったことをしないお行儀のいい、育ちのいい者達が多く配されている。
 第二騎士団はガリアスの下、品行方正で規律正しい。上昇志向が高く、気位が高い者も多い。
 第三騎士団はアインの下、武闘派が集っている。少々乱雑な人間が多いが、上下関係の厳しさでは群を抜いていて纏まりはいい。
 第四騎士団は団長が根無し草のように自由な人間なので、割と自由人が集まっている。常の纏まりは悪いのだが、いざと言う時にはきっちり団結する空気の読める者達が多い。しかし、第二・第三騎士団とはそりが合わない。
 そして最後の第五騎士団は団長の入れ替わりが激しいので、どこにも属さない者達や新人が多く配されている。そういった人間をいかに纏め上げるかに騎士団長の力量が問われるので、試練の第五騎士団と呼ばれている。

「前回は辛酸を舐めたが、今回は一足先に行かせてもらう。騎士団長の座は私の物だ!」
「吠えてろ。負け犬の遠吠えにならなければいいがな」
「私がぽっと出の新人などに負けるものか。お前も悔しかったらアイン団長を打ち負かして上がって来い。私はアイン団長にも負けるつもりはないが、お前に負けるつもりもないからな!」

 そうお互いを鼓舞して二人は踵を返した。
 それぞれの想いを乗せてこうして最終日は始まった。



 試合は先に第三騎士団長のアインと副団長スコットとの戦いだった。
 予想通りといえば予想通りにアインが勝ち上がり駒を進める。スコットもアランに鼓舞されて粘りはしたのだが、ファルス一の武闘派にはさすがに歯は立たなかった。
 続く第二試合が新人ナダールと第二騎士団分団長アランとの試合になる。

「ナダールさん勝てるかな?」

 今日もグノーと一緒に観戦しているキースは呟く。
 最終日ともなると観客が引きもきらず「普通に観戦していたら子連れでは大変だろう」とブラックが関係者席の方に席を用意してくれたので、キースはそのご相伴にあずかり、かぶりつきで試合を観戦していた。

「次の相手は二回戦で一度やってるんだから大丈夫だろ? あの第三騎士団の団長って人はよく分からないけど」
「あのアラン分団長だって有名なんですよ。前回は分団長に甘んじていますけど、人望もあるし、さっきのアイン団長と戦ったスコット副団長と同期で、強さは五分五分だって言われてるんです」
「さっき負けた方と五分って言うなら楽勝だろ?」
「何言ってるんですか、アイン団長が強すぎるだけで、スコット副団長だって弱くないですよ。前回の武闘会だって最後まで残っていた実力者です」
「ん~? あれ? 団長・副団長の参加って六年に一回でいいんじゃなかったっけ?」

 グノーは首を傾げる。確か前にそんな話を聞いた気がするのだけれど……?

「そうですよ。でも、第三騎士団のアラン団長が毎回参加しているので、第三騎士団は副団長も今回は強制参加だそうですよ」
「それは迷惑な話だな」
「今の第三騎士団は武闘派揃いなので、強制と言われてもたぶん好きで参加しているんだと思いますよ。そういえばスタールさんも第三騎士団でしたね」
「そうだっけ? でもあいつもそんな感じだよな」
「騎士団内にそんな区分けがあるなんて知らなかったな」

 突然背後から声をかけられ振り向くと、そこにはエドワードとそれに付き従うクロードがこちらに向かってぺこりと頭を下げた。

「エディ知らなかったんですか? なんであなたが私の率いる第1騎士団ではなく第三騎士団に放り込まれたのか、少し考えれば分かるでしょう?」
「知らねぇよ。あの頃の俺、それ所じゃなかっただろうが」

 「まぁ、そうなんですけど……」とクロードは呟き「こんにちは」と子供達にまで丁寧に頭を下げた。

「お、エディにクロード、お前達も観戦か?」
「一応ちゃんと最後まで見届けておかないと気になるだろう?全員クロードより弱いとはいえ、あの人が勝てる保障なんてない訳だし」

 そう言ったエドワードの言葉にクロードが少しだけ小首を傾げる。

「エディ、私前から言おう言おうと思っていたのですけど、この国で一番強いの、私ではありませんからね」
「あ? お前第1騎士団長だろ? 一番強いからそこにいるんじゃないのか? あぁ、もし親父の方が強いとか言うなら、あいつは出てないからどうでもいいぞ」
「えぇ、まぁ陛下はお強いですよ。何度かお相手をした事がありますが、本気の陛下に勝てるかどうかは私にも分かりません」
「だから親父はどうでもいい、どうせこの武闘会には関係ない」
「でも、陛下だけではありません。もう一人私より確実に強い方が……」
「あ? 誰だよ? 俺が知ってる奴?」

 エドワードの言葉にクロードは頷いた。

「はい、知っていますよ。第二騎士団長のガリアスです」

 クロードの口から意外な人物の名前が出てきて皆一様に驚く。
 第二騎士団長のガリアス・ゲイルはクロードの幼馴染でもあり、兄のような存在でもある人物である。クロードを溺愛しすぎてクロード・マイラー親衛隊を作り上げた人物でもあるのだが、それも過去の話となり、今はクロードとは普通の友人関係を築いている。

「え? ガリアス騎士団長ってクロードさんに負けたから第二騎士団長なんじゃないんですか?」
「そう思われがちなんですけどね、私はガリアスに勝った事は一度もありません。そもそも武闘会で戦った事は一度もありませんしね」

 驚いたようなキースの言葉に、クロードは淡々と答える。

「なんで戦ってもないのにお前が第一騎士団長なんだよ?」
「知っての通り副団長以上は二回に一回の参加でいい事になっています。私とガリアスとではその期間がずれているので、故意に当たろうとしない限り戦う事がありません。私が第1騎士団長になったのは、当時の第1騎士団長を私が負かした結果であり、ガリアスに勝ったからではないのですよ」

 「あぁ、なるほど」とキースは頷く。

「でも、当時の第一騎士団長を負かしているという事は、当然第二騎士団長より強いという事になるんじゃないんですか?」
「どうなんでしょうか? 当時の第1騎士団長ともガリアスは出場時期がずれていたはずですから、戦ったらガリアスの方が強かった可能性はありますよ。ガリアスはそういう出世欲はないので、アイン第三騎士団長のようにあえて挑んでいくという事もありませんからね」

 「えぇ、意外……」とキースは唸った。

「ん? でも待てよ。という事は今回ガリアスさん出場してないんじゃ……?」
「えぇ、そうですね。今回は出ていません」
「だったら別に問題ないじゃないか。驚かすなよ」

 エドワードはあからさまにほっとしたような表情を見せ、それにクロードはまた小首を傾げる。

「別に驚かせようとした訳ではありません。ただエディが私をファルス一強いみたいな言い方をするので否定しただけです」

 「なんだ……」とキースとエドワードがほっと安堵した表情を見せるなか、グノーは一人「そんなに強い奴なら戦ってみたいな」と空気を読まず笑顔を見せた。
 そしてその頃、ナダールは競技場の向こう側からアラン陣営に睨まれて苦笑していた。

「おぉ~お、睨まれてるなぁ。お前もやり返してみたらどうだ?」
「そういうの得意じゃないんですよね。やってみても、どうせ迫力がないって笑われるだけなので、別にいいです。あなたはこういうの得意そうですよね、代わりに睨んでおいてください」

 そのへろっとしたナダールの言いざまにスタールは鼻白む。

「なんで俺だよ! 俺はお前の配下に下った覚えはないし、お前が勝とうが負けようがどうでもいい」
「私が負けたら自分が負けたみたいで悔しいくせに」
「あぁん!? お前この数日でずいぶん馴れ馴れしくなりやがったな」

 スタールがこちらを睨むのに「あなた良い人なので、つい……」と笑みを見せる。

「何が良い人だよ、俺は右も左も分からんお前に、仕方なく付き合ってやってるだけだろうが!」
「それが良い人だって言うんですよ。どうでもいいと思うなら放っておけばいいのに、あなたがいつもたくさんの人に囲まれている理由がよく分かります」

 「けっ!」とスタールはそっぽを向いたが、その顔は気持ち照れて赤らんでいてナダールはまた笑ってしまう。

「まぁ、そんな事はどうでもいい。あいつとは二回戦でもやりあってるんだ、なんとなくどんな感じかは分かってんだろう?」
「えぇ、そうですね。でもあの時はあの人も配下の人達に囲まれていましたから、一対一ではまた状況も違うのでしょうけど」
「二回戦では勝ったんだ、今度だって負けたりしないだろう。ほら、行ってこい」

 スタールは面倒くさそうに「さっさと行け」と手を振った。
 競技場に上がると、やはりこれでもかと言わんばかりに睨まれて、ナダールは睨み返す事もできず苦笑した。

「何を笑っている!」
「いえ、あんまり睨まれるので、どんな顔をしていいのか分からないのですよ」
「だからと言って何故笑う!」

 アランは怒りを露にやはり睨み付けるようにそう言った。

「えぇ……と困りましたねぇ。そうは言われましても、この顔は地顔なのでどうにもできませんよ」
「緊張感のない奴だな」
「はは、よく言われます」

 競技場の真ん中に相対し、剣を構える。緊張していない訳ではないが、そういうたちなのだから仕方がない。
 試合開始の鐘が鳴り、踏み込みはナダールの方が早かった。だが、簡単に受け止められ、ぎりぎりと剣で競り合う。
 ナダールは力は互角と考え、一端引いて体勢を整える事にする。
 アランはスピードに対する反応も速く、パワーもある、あまり得意な相手ではないと思うのだが、彼もまた自分と同じ重量級だ、パワーはあっても振りは大きい。そういう相手は繊細な動きに弱いはず。
 ナダールはアランの嫌いそうな隙を突いて、巧みに攻撃を仕掛けていく。思惑は当たったようで、アランの顔に焦りの色が浮かんだ。
 『ビンゴ』とナダールの顔には知らず笑みが零れた。
 対照的にアランはどんどん余裕をなくしていき、手元に迷いが生じる、その一瞬の躊躇いをナダールは見逃さなかった。
 その剣を絡め取り、剣先を喉元に突きつけた所で勝敗の旗が上がり、観衆から「わあっ!」と歓声が上がった。

「パパ勝った!」

 喜ぶ子供達の横で、グノーも満足げな表情でうんうんと頷く。

「ナダールさん、本当に強いですね。正直そんな風には見えないのに」

 キースは拍手を贈りながらもそう呟く。

「だろ? 俺が散々しごいたのも勿論あるんだけど、あいつ元々いい腕してるんだよな。本人全く自覚なくて勿体ない限りだけど」
「やっぱりあの人強いのか?」

 グノーの言葉に横に座って観戦していたエドワードが尋ねる。

「何? お前も分からない? あいつは強いよ。あいつは人の本質を見る目が鋭いのさ、相手の弱そうな所を瞬時に見抜く。あれも一種の天賦の才だな。今までそれが分かっても、それに対応する腕がなかったから、そう強くもなかったんだけど、俺達の中で揉まれてる内にいつの間にかここまで強くなってた。本人に自覚はないけどな」

 「そうなのか……」とエドワードがもう一度ナダールを見やと、ナダールは笑顔で観衆に手を振っていた。

「でも、やっぱり強そうには見えないな……」
「そうなんだよなぁ……あいつには気迫が足りないんだよ。やってやる! って気概が見えない。だから相手も油断するんだろうけど、やる気満々の奴から見たら腹立つだろうな。ほら、また睨まれてる」

 負けたアランから噛み付かんばかりに睨まれて、ナダールは競技場の上でまた苦笑していた。
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