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君と僕の物語:番外編
子作り指南③
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「ナダールさん、またちょっといいですか!」
そう言ってエドワードがナダールの元へやって来たのは相談から1週間後の事だった。
彼はあの助言の日から1週間、毎晩アジェの部屋へと通い詰め、いちゃいちゃゴロゴロを満喫しているのだとそう言った。
「アレは良い、凄く良い。何で今までやってこなかったのかと後悔しきりです」
膝枕でごろごろしたり、抱き合ってバードキスを繰り返してみたり、アジェも嬉しそうに笑うので、自分も幸せな気持ちになる、とエドワードは熱弁をふるった。
「それは良かったですねぇ。でしたらこれで悩みも解消ですね」とナダールも笑みを零す傍ら「凄く良いんですけど……」と満面の笑みから一変、少し険しい表情を見せたエドワードは語尾を濁らせる。
「何か問題でも?」
「アジェが無防備すぎて余計手を出しにくくなりました……」
エドワードの言葉にナダールは困惑しかない。
「なんでですか? 無防備って事はリラックスしている証拠でしょう? そのまま延長線上で事に望めばいいじゃないですか」
「そう簡単にできるなら、もうやってますよ……」
そう言ってエドワードは溜息を落とす。
確かにアジェはとても楽しそうに嬉しそうに笑うようになった、その姿はとても幸せそうで自分は愛されていると実感もできるのだが、ムラムラして手を出そうとすると「なぁに?」と無邪気な笑顔で見詰められてしまい逆に手が出せなくなった、とエドワードは語る。
「自分ばっかりアジェに邪な気持ちを抱いているみたいで、自己嫌悪に陥るんですよ……」
「それは、何というか……どうしようもないですね」
「元々する事自体好きじゃないんだろうなって言うのは分かっているので、このまましなくてもこんな風に生活できればそれでもいいのかな、とは思うのですよ」
「けれど、どうせだったらもっと触りたい、撫で回したい、繋がりたいとそう思ってしまう……と、そういう訳ですね。その気持ちはよく分かります」
「どうしたらいいですか? 何か上手に触るコツとかないですか?」
真っ直ぐに見詰められてこちらの方が照れてしまう、とナダールは思うのだが、その真剣な表情に事態は深刻なのだと理解ができる。
「せっかく今凄くいい感じなのに、下手に手を出して嫌われたくないんです。何か良いアドバイスがあるようなら教えてください!」
そんな全幅の信頼を置かれても困るなぁ、とナダールは心の中で苦笑した。
「う~ん、そうですねぇ……今はひたすら我慢の時なんじゃないですか?私もあの人との旅の初めは絶対触るなと宣言されて我慢しましたよ、確か3ヵ月くらい。年単位での我慢も視野に入れていたので、思いの外早く落ちてきて助かりました。おなかに宿った娘のおかげですねぇ」
「この状態で我慢とか、何の試練ですか……」
「ヒートの時はちゃんとやっているんでしょ? だったらそれくらいの期間は我慢できますよ。私なんて、最初の一回から娘が産まれるまでお預けだったんですよ。しかもその後もフェロモンの制御ができなくて、あの人のチョーカーが外れるまでのほぼ一年間お預けくらったんですからね、それに比べたらあなたなんか全然マシです」
「そうですか? キツさで比べたら大差ないと思いますけど……」
ナダールはエドワードに胡乱な瞳を向ける。
「あなた、あの人のフェロモンの強さ知ってるはずでしょう? 妊娠中の抑制剤を飲んでいないあの人の匂いなんてどれだけ耐えるのに苦労したと思ってるんですか! しかも私が近付くと更に濃くなるんですよ、どんな苦行かと思いましたよ、えぇ、本当にね!」
「あぁ……そういえばそうでしたね……」
最近のグノーからはフェロモンの薫りはもうほとんど感じられない。
それはお互いに番がいるせいでもあり、彼が欠かさず抑制剤を飲み続けているおかげでもある。
だが、ひとたびそのフェロモンを解放すればその薫りはβをも虜にする事をエドワードは自分の目で見て知っていた。その匂いも体感した事があるので、それは確かに苦行だと頷かない訳にはいかない。
「今は誰を憚る事もなく彼を甘やかし放題甘やかせるので、楽しいですけどね」
「甘やかす……」
確かにナダールはグノーに対して甘い。
ナダールの言葉の端々に彼を甘やかす言動が見て取れる。だが、それに対してグノーは見ている限りかなりの確立で拒絶を返しているように思うのだ。
それでもそれは彼にとって楽しいのだろうか?
「あの人、そんなに甘えたじゃないでしょう?」
「何を言っているんですか、グノーは甘えん坊ですよ。物凄く可愛いです。普段あなた方に見せている姿はただの照れ隠しですよ、ですがそんな事は私だけが知っていればいい事です。それこそそれは私だけの特権ですからね」
「誰にも見せない私だけの彼です」と満面の笑みを零すナダールにエドワードは少し考え込んでしまう。
「俺、アジェのそういう俺にしか見せない所って全然見た事ないような気がします……」
アジェは誰に対しても優しくて、誰に対しても平等だ。
自分は特別だと思い込んでいるが、果たして自分は特別な彼を見た事はあっただろうか?
「ふむ、だったらあなた方はまだその一歩手前なのでしょうね。特別だから見せたくない、という所でしょうか。弱い部分、自分が嫌だなと思っている部分は好きな相手には見せたくないものですよ。そこまで全部知ってこそ、より仲は深まると私は思うのですが、あなた方はまだそこまで到達はしていないのでしょうね」
「なんだか難しいですね……」
「あなたもアジェ君には見せたくないと思っている自分の嫌な所が幾らもあるのでしょう? だから今の現状なのですよ。それはアジェ君も同じで、お互いそこを一歩踏み越えられないのから、どうにも足踏み状態になっているんじゃないでしょうかねぇ」
「うちは常にフルオープンを心がけていますよ」とナダールは笑顔で腕を広げる。
「それでも見えない部分、絶対に相手に触れられたくない部分は誰しもが持っているものですが、そこは努力と愛でカバーです」
「……なんだか、あなたがあの面倒くさい人に愛されている理由が、なんとなく分かった気がします」
グノーはとても難しい人間だと思うのだ。
過去も人間関係もぐちゃぐちゃで、正直自分がそんな立場に置かれたら発狂していてもおかしくないと思うほどに彼の過去は悲愴だった。
それでもそんな彼が、今ではナダールの横で幸せそうに笑っている。きっとそれはグノーだけではなく、ナダールも一緒に努力をして成しえた結果なのだと今は素直に頷く事ができた。
「そういえば、ひとつ気になったのですが、あなた、アジェ君の好きな場所を知っていますか?」
「好きな場所? アジェはこの町が好きだと思いますよ?」
エドワードの返答にナダールは「いやいや」と苦笑する。
「今はそういう話をしていた訳ではないでしょう? 好きな場所って言ったら、こういう場所の事ですよ」
そう言ってナダールはそっとエドワードに向かってその手を伸ばして耳元を擽った。
その触り方にびくりと反応を返して、エドワードは耳元を押さえ、真っ赤になって飛び退る。
「っな、何するんですか?!」
「あんまり可愛らしい事を言うので、つい」
「口で言ってくださいよっ!!」
「ごめんなさい」と口では言うものの、ナダールは可笑しそうにずっとくすくす笑っている。
「で、実際どうなんです? あなたは彼の好きな場所を一体どれだけ知っていますか?」
「え……どうだろう……首元とか触ると気持ち良さそうにしている気がしますけど、あまりよくは分からない……かも」
「あなた、本当にそういう所駄目ですねぇ」
「そんなに駄目ですか?」
「全然駄目ですよ、あなたこの1週間一体何をしていたのですか? 1週間もいちゃいちゃしてたら普通相手の気持ちいい場所の1つや2つ見付かるでしょう?」
ナダールは「やれやれ」と呆れたようにそう言い、エドワードはそういうものなのかと戸惑いを隠せない。
「例えば先ほどの耳元ですとか、首筋、脇腹とか足の付け根とか人の感じる部分はたくさんありますよ、この1週間触ったりしなかったのですか? 今までも?」
「う……そもそも最初は触るのに勇気がいるって相談ですよ!そんな事ができていたら、相談なんてしてませんよっ」
「あぁ、確かにそうでしたね。でもこの一週間はいちゃいちゃしていたのでしょう? アジェ君と手を繋ぐ事くらいしなかったのですか? グノーはこういう所も好きですよ」
そう言ってナダールはエドワードの手を取り、指の付け根につーと指を這わす。
その感触に一瞬ざわりと背筋に電流が走り、エドワードはその取られた手を振り払った。
「あんた、いちいち触り方がエロい!!」
「何を言っているのやら。人の身体は壊れ物ですよ、優しく触ってなんぼです。まさか、あなたそんな事もしていなかったとか言いませんよね? だとしたら、アジェ君とそんな雰囲気になれないのも当然ですよ」
呆れたように言ったナダールの言葉にエドワードは反論もできない。
「コミュニケーション不足もさる事ながら、これは致命的ですよ。気持ちよくさせようと思っていない人が抱いてるのですから、そりゃあ気持ちよくなる訳がない」
「ぐぅぅ……どうすれば、いいですか?」
「まずはあなたは自分の欲求を抑えて、相手の気持ちいい所を探す所からですね。自分本位に抱いて相手が気持ちよくなれるなんて思い上がっては駄目ですよ、アジェ君は優しいから今まであなたに我慢して付き合ってくれていただけです。それに今まで気付かなかったあなたが全面的に悪い、今のあなたの現状はまさに自業自得です!」
何て事だっ! とエドワードは衝撃を受け、肩を落とす。
アジェに気を遣わせているつもりなど毛頭なかったのだが、そう言われてしまえばその通りで、エドワードは激しく猛省するしか術はなかった。
※ ※ ※
「なんか最近エディが可愛いんだ」
アジェは嬉しそうにお茶のカップを両手で持ってにこにことそう言った。
「最近急に優しくなって、毎晩部屋に遊びに来てくれるんだよぉ。嬉しい」
それはなんだか浮気している人間の特徴なんじゃ……と少しだけグノーの頭を掠めたのだが、いやいや、それはないだろう……とそんな考えを振り払い「良かったな」と笑みを返す。
「でもね……優しいんだけど、やっぱり触ってはくれないんだよ」
少し瞳を伏せたアジェの様子にグノーの頭の中にはまた「浮気」の二文字が浮上する。
アジェを不安がらせたくはない、それでもその彼の行動は浮気を疑わせるもので、あいつ、一度締めとかないと……とグノーは頭の中で彼を締め上げた。
「アジェは触って欲しいのか?」
「それはね。グノーだってそうでしょう? 好きな人とは抱き合いたいって思うのは普通だよね?」
「う~ん、正直に言えば俺はあんまりそう思わなかったし、今も思ってない」
「え? そうなの? あ……」
グノーの過去を思い出したのだろう、アジェは少し言葉を詰まらせ、気遣うようにこちらを上目遣いに見やる。
「別にそんな顔しなくていいよ。もう今は昔の事だって思ってるし、気にしてない。でも、やっぱり抱き合うのは好きじゃないよ。ナダールだけが特別、あいつだから許してる。あいつに抱かれるのは嫌じゃない、あいつは身体だけじゃなくて、ちゃんと俺の心も満たしてくれるからな。俺は心だけ満たしてくれたらそれで満足だけど、あいつは身体も重ねて満足するから俺はそれに付き合ってるだけ」
「そうなんだ……?」
「俺は『好き』って気持ちも『愛してる』って感情もよく分かってなかったからな。それを全部根気よく教えてくれたのがあいつでさ、そこに身体を重ねる事も必要だと思えば、そういう事をするのも悪くはないって、そう思ったんだよ。あいつは俺が本気で嫌がってる時は絶対してこないし、どんな時でも俺優先でさ……だから俺もちゃんとあいつに返したいって思ったんだ」
それこそ忠犬みたいなもので「待て」と言ったら指一本触ってこないぞ、とグノーは笑う。
だけで、それをやり過ぎると「待て」の解除をした途端に動けなくなるまでされるから、程よくやらないとな……と苦笑する。
「そっか……実を言うとさ、本当は僕も抱かれるのはそう好きじゃないんだ。ヒートの時ならともかく、通常時なんて痛いし、怖いし、辛いし、いい事何にもないんだもん。でもさ、それでもエディが僕で気持ちよくなれるなら、それでもいいかなぁって思うんだ」
「お前は本当にエディが好きなんだな」
「うん、大好き。この世で一番大事な人だよ」
「そうか……でもさ、そんな風に我慢して付き合ってたら、お前達いずれ破綻するぞ?」
「え?」
グノーの突然の言葉にアジェが固まる。
「今は自分が我慢すればいいと思ってるかもしれないけど、喧嘩なんかして、ちょっとでも嫌な事があれば『なんで自分ばっかり、こんなに我慢してるのに』って思っちまうよ。その時は仲直りしたって、そういう感情が積もり積もればいずれ取り返しがつかなくなる。そういう小さな積み重ねが、こういう関係では一番大事なんじゃないかって、俺は思うんだ」
「そんな怖い事言わないでよ……」
「お前等なら大丈夫だって思ってるけどな」とグノーはアジェの髪を掻き回す。
「お前、あいつとやってて気持ちよくなった事ねぇの?」
「う~ん、よく分からない。やるの、ほとんどヒートの時だし、ヒートの時は訳分かんなくなっちゃうしね」
「普段は?」
「あんまり気持ちいいとは思わないかな」
「突っ込まれて気持ちいいとこ責められたりしねぇの?」
「身体は男だもん、そんなの無いでしょう?」
「お前、俺も男だって事忘れてるだろ。男の身体だって、責められたら感じる場所はあるよ、感じる場所は人それぞれかもしれないけど、絶対あるからあいつと一緒に探してみ。そこ責められたら、もう痛いとか感じてる暇ないくらい気持ちよくなれるぞ」
「本当に?」
半信半疑という表情のアジェに「物は試しだ、頑張れ」と声援を贈る。
「あとは……それでも無理な時は、口か手で抜いてやればいいよ。それこそ同じ男なんだからどこがいいかくらい分かるだろう?」
「えっ!? えぇ……それはまだちょっと勇気いるかも……」
「もうやる事やってんだから、今更今更。それに口でしてやると気持ちいいからエディも喜ぶと思うぞ。ちょっと口開けてみ、はい、あ~ん」
グノーはアジェの口を開けさせて、指の腹で口内の上顎の辺りを撫で上げた。
「んぅ!? あっ……」
「っ痛っ、噛むなよ」
「だって、グノーが変なとこ触るからっっ!」
真っ赤になって抗議するアジェに「でも、その辺気持ちよくね?」とグノーは言う。
「キスしてそういう所責められるのもいいけど、自分で咥えてたって気持ちいい所に当たれば気持ちいいだろう?」
「そんなの、した事ないよっ!」
「え? キスくらいしてるだろ?」
「軽いのならね!でもディープキスなんて、数えるほどしかした事ないよっ」
アジェは恥ずかしさが過ぎるのか頬は紅潮して涙目だ。
「お前ら番になって何年だよ……それで、それなのか? ちょっとおかしくね?」
「だからおかしいって、最初から言ってるじゃん」
そう言えばそうか……とグノーは自身の頭を掻く。
「何なんだろうな? あいつ、そんなに淡白っぽくも見えないんだけどなぁ」
どちらかと言えばうちのナダールと同じむっつりタイプだと思うのだ、まさかここまでアジェが何もされていないとは思わなかった。
大事にされていると言えば聞こえはいいが、これはどうなんだ? と首を傾げてしまう。
「ん~これはお前自身もっと積極的にいかないと駄目かもなぁ」
「積極的って……自分から誘うって事? 無理無理、そんなの恥ずかしくてできないよっ」
「別に言葉で言わなくてもいいんだぞ、最近よくいちゃいちゃはしてるんだろ? だったら手でも触ってキスしてみろ、うちならそれで間違いなく襲ってくる」
「手にキス……そんな簡単に?」
「抱きついて耳を甘噛みとかでもいいぞ。ついでに耳元で『しよ』って言ってみ、これでエディが落ちない何て事絶対無い、俺が保障する」
「うぅぅ……うん、分かった、やってみる。ありがとう、グノー」
そう言ってアジェは席を立ち、上手くいけばいいけれどとグノーはその背を見送った。
それにしても解せないのはエドワードの態度だ、もし万が一本気で浮気なんぞしてたらぶっ殺す……と笑顔の裏では物騒な事を考えているグノーだった。
そう言ってエドワードがナダールの元へやって来たのは相談から1週間後の事だった。
彼はあの助言の日から1週間、毎晩アジェの部屋へと通い詰め、いちゃいちゃゴロゴロを満喫しているのだとそう言った。
「アレは良い、凄く良い。何で今までやってこなかったのかと後悔しきりです」
膝枕でごろごろしたり、抱き合ってバードキスを繰り返してみたり、アジェも嬉しそうに笑うので、自分も幸せな気持ちになる、とエドワードは熱弁をふるった。
「それは良かったですねぇ。でしたらこれで悩みも解消ですね」とナダールも笑みを零す傍ら「凄く良いんですけど……」と満面の笑みから一変、少し険しい表情を見せたエドワードは語尾を濁らせる。
「何か問題でも?」
「アジェが無防備すぎて余計手を出しにくくなりました……」
エドワードの言葉にナダールは困惑しかない。
「なんでですか? 無防備って事はリラックスしている証拠でしょう? そのまま延長線上で事に望めばいいじゃないですか」
「そう簡単にできるなら、もうやってますよ……」
そう言ってエドワードは溜息を落とす。
確かにアジェはとても楽しそうに嬉しそうに笑うようになった、その姿はとても幸せそうで自分は愛されていると実感もできるのだが、ムラムラして手を出そうとすると「なぁに?」と無邪気な笑顔で見詰められてしまい逆に手が出せなくなった、とエドワードは語る。
「自分ばっかりアジェに邪な気持ちを抱いているみたいで、自己嫌悪に陥るんですよ……」
「それは、何というか……どうしようもないですね」
「元々する事自体好きじゃないんだろうなって言うのは分かっているので、このまましなくてもこんな風に生活できればそれでもいいのかな、とは思うのですよ」
「けれど、どうせだったらもっと触りたい、撫で回したい、繋がりたいとそう思ってしまう……と、そういう訳ですね。その気持ちはよく分かります」
「どうしたらいいですか? 何か上手に触るコツとかないですか?」
真っ直ぐに見詰められてこちらの方が照れてしまう、とナダールは思うのだが、その真剣な表情に事態は深刻なのだと理解ができる。
「せっかく今凄くいい感じなのに、下手に手を出して嫌われたくないんです。何か良いアドバイスがあるようなら教えてください!」
そんな全幅の信頼を置かれても困るなぁ、とナダールは心の中で苦笑した。
「う~ん、そうですねぇ……今はひたすら我慢の時なんじゃないですか?私もあの人との旅の初めは絶対触るなと宣言されて我慢しましたよ、確か3ヵ月くらい。年単位での我慢も視野に入れていたので、思いの外早く落ちてきて助かりました。おなかに宿った娘のおかげですねぇ」
「この状態で我慢とか、何の試練ですか……」
「ヒートの時はちゃんとやっているんでしょ? だったらそれくらいの期間は我慢できますよ。私なんて、最初の一回から娘が産まれるまでお預けだったんですよ。しかもその後もフェロモンの制御ができなくて、あの人のチョーカーが外れるまでのほぼ一年間お預けくらったんですからね、それに比べたらあなたなんか全然マシです」
「そうですか? キツさで比べたら大差ないと思いますけど……」
ナダールはエドワードに胡乱な瞳を向ける。
「あなた、あの人のフェロモンの強さ知ってるはずでしょう? 妊娠中の抑制剤を飲んでいないあの人の匂いなんてどれだけ耐えるのに苦労したと思ってるんですか! しかも私が近付くと更に濃くなるんですよ、どんな苦行かと思いましたよ、えぇ、本当にね!」
「あぁ……そういえばそうでしたね……」
最近のグノーからはフェロモンの薫りはもうほとんど感じられない。
それはお互いに番がいるせいでもあり、彼が欠かさず抑制剤を飲み続けているおかげでもある。
だが、ひとたびそのフェロモンを解放すればその薫りはβをも虜にする事をエドワードは自分の目で見て知っていた。その匂いも体感した事があるので、それは確かに苦行だと頷かない訳にはいかない。
「今は誰を憚る事もなく彼を甘やかし放題甘やかせるので、楽しいですけどね」
「甘やかす……」
確かにナダールはグノーに対して甘い。
ナダールの言葉の端々に彼を甘やかす言動が見て取れる。だが、それに対してグノーは見ている限りかなりの確立で拒絶を返しているように思うのだ。
それでもそれは彼にとって楽しいのだろうか?
「あの人、そんなに甘えたじゃないでしょう?」
「何を言っているんですか、グノーは甘えん坊ですよ。物凄く可愛いです。普段あなた方に見せている姿はただの照れ隠しですよ、ですがそんな事は私だけが知っていればいい事です。それこそそれは私だけの特権ですからね」
「誰にも見せない私だけの彼です」と満面の笑みを零すナダールにエドワードは少し考え込んでしまう。
「俺、アジェのそういう俺にしか見せない所って全然見た事ないような気がします……」
アジェは誰に対しても優しくて、誰に対しても平等だ。
自分は特別だと思い込んでいるが、果たして自分は特別な彼を見た事はあっただろうか?
「ふむ、だったらあなた方はまだその一歩手前なのでしょうね。特別だから見せたくない、という所でしょうか。弱い部分、自分が嫌だなと思っている部分は好きな相手には見せたくないものですよ。そこまで全部知ってこそ、より仲は深まると私は思うのですが、あなた方はまだそこまで到達はしていないのでしょうね」
「なんだか難しいですね……」
「あなたもアジェ君には見せたくないと思っている自分の嫌な所が幾らもあるのでしょう? だから今の現状なのですよ。それはアジェ君も同じで、お互いそこを一歩踏み越えられないのから、どうにも足踏み状態になっているんじゃないでしょうかねぇ」
「うちは常にフルオープンを心がけていますよ」とナダールは笑顔で腕を広げる。
「それでも見えない部分、絶対に相手に触れられたくない部分は誰しもが持っているものですが、そこは努力と愛でカバーです」
「……なんだか、あなたがあの面倒くさい人に愛されている理由が、なんとなく分かった気がします」
グノーはとても難しい人間だと思うのだ。
過去も人間関係もぐちゃぐちゃで、正直自分がそんな立場に置かれたら発狂していてもおかしくないと思うほどに彼の過去は悲愴だった。
それでもそんな彼が、今ではナダールの横で幸せそうに笑っている。きっとそれはグノーだけではなく、ナダールも一緒に努力をして成しえた結果なのだと今は素直に頷く事ができた。
「そういえば、ひとつ気になったのですが、あなた、アジェ君の好きな場所を知っていますか?」
「好きな場所? アジェはこの町が好きだと思いますよ?」
エドワードの返答にナダールは「いやいや」と苦笑する。
「今はそういう話をしていた訳ではないでしょう? 好きな場所って言ったら、こういう場所の事ですよ」
そう言ってナダールはそっとエドワードに向かってその手を伸ばして耳元を擽った。
その触り方にびくりと反応を返して、エドワードは耳元を押さえ、真っ赤になって飛び退る。
「っな、何するんですか?!」
「あんまり可愛らしい事を言うので、つい」
「口で言ってくださいよっ!!」
「ごめんなさい」と口では言うものの、ナダールは可笑しそうにずっとくすくす笑っている。
「で、実際どうなんです? あなたは彼の好きな場所を一体どれだけ知っていますか?」
「え……どうだろう……首元とか触ると気持ち良さそうにしている気がしますけど、あまりよくは分からない……かも」
「あなた、本当にそういう所駄目ですねぇ」
「そんなに駄目ですか?」
「全然駄目ですよ、あなたこの1週間一体何をしていたのですか? 1週間もいちゃいちゃしてたら普通相手の気持ちいい場所の1つや2つ見付かるでしょう?」
ナダールは「やれやれ」と呆れたようにそう言い、エドワードはそういうものなのかと戸惑いを隠せない。
「例えば先ほどの耳元ですとか、首筋、脇腹とか足の付け根とか人の感じる部分はたくさんありますよ、この1週間触ったりしなかったのですか? 今までも?」
「う……そもそも最初は触るのに勇気がいるって相談ですよ!そんな事ができていたら、相談なんてしてませんよっ」
「あぁ、確かにそうでしたね。でもこの一週間はいちゃいちゃしていたのでしょう? アジェ君と手を繋ぐ事くらいしなかったのですか? グノーはこういう所も好きですよ」
そう言ってナダールはエドワードの手を取り、指の付け根につーと指を這わす。
その感触に一瞬ざわりと背筋に電流が走り、エドワードはその取られた手を振り払った。
「あんた、いちいち触り方がエロい!!」
「何を言っているのやら。人の身体は壊れ物ですよ、優しく触ってなんぼです。まさか、あなたそんな事もしていなかったとか言いませんよね? だとしたら、アジェ君とそんな雰囲気になれないのも当然ですよ」
呆れたように言ったナダールの言葉にエドワードは反論もできない。
「コミュニケーション不足もさる事ながら、これは致命的ですよ。気持ちよくさせようと思っていない人が抱いてるのですから、そりゃあ気持ちよくなる訳がない」
「ぐぅぅ……どうすれば、いいですか?」
「まずはあなたは自分の欲求を抑えて、相手の気持ちいい所を探す所からですね。自分本位に抱いて相手が気持ちよくなれるなんて思い上がっては駄目ですよ、アジェ君は優しいから今まであなたに我慢して付き合ってくれていただけです。それに今まで気付かなかったあなたが全面的に悪い、今のあなたの現状はまさに自業自得です!」
何て事だっ! とエドワードは衝撃を受け、肩を落とす。
アジェに気を遣わせているつもりなど毛頭なかったのだが、そう言われてしまえばその通りで、エドワードは激しく猛省するしか術はなかった。
※ ※ ※
「なんか最近エディが可愛いんだ」
アジェは嬉しそうにお茶のカップを両手で持ってにこにことそう言った。
「最近急に優しくなって、毎晩部屋に遊びに来てくれるんだよぉ。嬉しい」
それはなんだか浮気している人間の特徴なんじゃ……と少しだけグノーの頭を掠めたのだが、いやいや、それはないだろう……とそんな考えを振り払い「良かったな」と笑みを返す。
「でもね……優しいんだけど、やっぱり触ってはくれないんだよ」
少し瞳を伏せたアジェの様子にグノーの頭の中にはまた「浮気」の二文字が浮上する。
アジェを不安がらせたくはない、それでもその彼の行動は浮気を疑わせるもので、あいつ、一度締めとかないと……とグノーは頭の中で彼を締め上げた。
「アジェは触って欲しいのか?」
「それはね。グノーだってそうでしょう? 好きな人とは抱き合いたいって思うのは普通だよね?」
「う~ん、正直に言えば俺はあんまりそう思わなかったし、今も思ってない」
「え? そうなの? あ……」
グノーの過去を思い出したのだろう、アジェは少し言葉を詰まらせ、気遣うようにこちらを上目遣いに見やる。
「別にそんな顔しなくていいよ。もう今は昔の事だって思ってるし、気にしてない。でも、やっぱり抱き合うのは好きじゃないよ。ナダールだけが特別、あいつだから許してる。あいつに抱かれるのは嫌じゃない、あいつは身体だけじゃなくて、ちゃんと俺の心も満たしてくれるからな。俺は心だけ満たしてくれたらそれで満足だけど、あいつは身体も重ねて満足するから俺はそれに付き合ってるだけ」
「そうなんだ……?」
「俺は『好き』って気持ちも『愛してる』って感情もよく分かってなかったからな。それを全部根気よく教えてくれたのがあいつでさ、そこに身体を重ねる事も必要だと思えば、そういう事をするのも悪くはないって、そう思ったんだよ。あいつは俺が本気で嫌がってる時は絶対してこないし、どんな時でも俺優先でさ……だから俺もちゃんとあいつに返したいって思ったんだ」
それこそ忠犬みたいなもので「待て」と言ったら指一本触ってこないぞ、とグノーは笑う。
だけで、それをやり過ぎると「待て」の解除をした途端に動けなくなるまでされるから、程よくやらないとな……と苦笑する。
「そっか……実を言うとさ、本当は僕も抱かれるのはそう好きじゃないんだ。ヒートの時ならともかく、通常時なんて痛いし、怖いし、辛いし、いい事何にもないんだもん。でもさ、それでもエディが僕で気持ちよくなれるなら、それでもいいかなぁって思うんだ」
「お前は本当にエディが好きなんだな」
「うん、大好き。この世で一番大事な人だよ」
「そうか……でもさ、そんな風に我慢して付き合ってたら、お前達いずれ破綻するぞ?」
「え?」
グノーの突然の言葉にアジェが固まる。
「今は自分が我慢すればいいと思ってるかもしれないけど、喧嘩なんかして、ちょっとでも嫌な事があれば『なんで自分ばっかり、こんなに我慢してるのに』って思っちまうよ。その時は仲直りしたって、そういう感情が積もり積もればいずれ取り返しがつかなくなる。そういう小さな積み重ねが、こういう関係では一番大事なんじゃないかって、俺は思うんだ」
「そんな怖い事言わないでよ……」
「お前等なら大丈夫だって思ってるけどな」とグノーはアジェの髪を掻き回す。
「お前、あいつとやってて気持ちよくなった事ねぇの?」
「う~ん、よく分からない。やるの、ほとんどヒートの時だし、ヒートの時は訳分かんなくなっちゃうしね」
「普段は?」
「あんまり気持ちいいとは思わないかな」
「突っ込まれて気持ちいいとこ責められたりしねぇの?」
「身体は男だもん、そんなの無いでしょう?」
「お前、俺も男だって事忘れてるだろ。男の身体だって、責められたら感じる場所はあるよ、感じる場所は人それぞれかもしれないけど、絶対あるからあいつと一緒に探してみ。そこ責められたら、もう痛いとか感じてる暇ないくらい気持ちよくなれるぞ」
「本当に?」
半信半疑という表情のアジェに「物は試しだ、頑張れ」と声援を贈る。
「あとは……それでも無理な時は、口か手で抜いてやればいいよ。それこそ同じ男なんだからどこがいいかくらい分かるだろう?」
「えっ!? えぇ……それはまだちょっと勇気いるかも……」
「もうやる事やってんだから、今更今更。それに口でしてやると気持ちいいからエディも喜ぶと思うぞ。ちょっと口開けてみ、はい、あ~ん」
グノーはアジェの口を開けさせて、指の腹で口内の上顎の辺りを撫で上げた。
「んぅ!? あっ……」
「っ痛っ、噛むなよ」
「だって、グノーが変なとこ触るからっっ!」
真っ赤になって抗議するアジェに「でも、その辺気持ちよくね?」とグノーは言う。
「キスしてそういう所責められるのもいいけど、自分で咥えてたって気持ちいい所に当たれば気持ちいいだろう?」
「そんなの、した事ないよっ!」
「え? キスくらいしてるだろ?」
「軽いのならね!でもディープキスなんて、数えるほどしかした事ないよっ」
アジェは恥ずかしさが過ぎるのか頬は紅潮して涙目だ。
「お前ら番になって何年だよ……それで、それなのか? ちょっとおかしくね?」
「だからおかしいって、最初から言ってるじゃん」
そう言えばそうか……とグノーは自身の頭を掻く。
「何なんだろうな? あいつ、そんなに淡白っぽくも見えないんだけどなぁ」
どちらかと言えばうちのナダールと同じむっつりタイプだと思うのだ、まさかここまでアジェが何もされていないとは思わなかった。
大事にされていると言えば聞こえはいいが、これはどうなんだ? と首を傾げてしまう。
「ん~これはお前自身もっと積極的にいかないと駄目かもなぁ」
「積極的って……自分から誘うって事? 無理無理、そんなの恥ずかしくてできないよっ」
「別に言葉で言わなくてもいいんだぞ、最近よくいちゃいちゃはしてるんだろ? だったら手でも触ってキスしてみろ、うちならそれで間違いなく襲ってくる」
「手にキス……そんな簡単に?」
「抱きついて耳を甘噛みとかでもいいぞ。ついでに耳元で『しよ』って言ってみ、これでエディが落ちない何て事絶対無い、俺が保障する」
「うぅぅ……うん、分かった、やってみる。ありがとう、グノー」
そう言ってアジェは席を立ち、上手くいけばいいけれどとグノーはその背を見送った。
それにしても解せないのはエドワードの態度だ、もし万が一本気で浮気なんぞしてたらぶっ殺す……と笑顔の裏では物騒な事を考えているグノーだった。
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これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
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「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
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