運命に花束を

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運命の子供たち

明かされる真相

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 手を繋いでどのくらい走っただろうか、辺りを窺うようにしてヒナノはようやく走る足を緩めた。

「どうにか、逃げおおせたようなのです……」

 息を吐きながらヒナノはようやく立ち止まる。

「ノエル君、大丈夫ですか?」

 心配そうに見上げる顔、息が切れて言葉が出てこなかったのだが、俺は無言で頷いた。

「もう! なんでヒナを庇ったですか!」
「女の子を、乱暴に扱う奴は……人間のクズだっ! 俺にはまだ、力がなくて……はぁ、怪我してない? 大丈夫?」
「ノエル君の方が大怪我です!」
「俺は男だから……」

 あぁ、でも少し体が痛むな。本当に遠慮なくぶん殴りやがって……今度会ったらただじゃおかねぇ。

「怪我の手当てをしないとなのです。もう! ここ何処ですか!」

 逃げる際に回りも見ずに逃げ出したので、完全に道に迷った。
 どこか大通りに出ればいいだけなのだろうが、民家の立ち並ぶ小路は壁が近すぎて周りの様子も窺い知れない。見上げて進めばいいはずの城も見えやしない。

「少し休憩……俺、疲れた……」
「大丈夫ですか?」

 また心配そうに顔を覗き込まれて大丈夫と頷いた。

「はは、なんか格好悪い、ごめんな」
「全然そんな事ないです! ノエル君は格好良かったです!」

 壁を背にずるずると滑り落ちるかのように座り込んだ俺を心配するようにヒナノも隣へ座り込む。

「それにしても、あの人達なんだったのでしょう。都会は怖い所なのですね」
「うん、なんか今人攫いが出てるみたいでさ、騎士団の人達も警戒してた。なんか『Ω狩り』とか言って、君は分かる?」
「Ω狩り……ではやはりヒナが狙われたのですね」

 険しい顔でヒナノは頷く。そうか、もしかしてとは思ったのだが、彼女はやはり『Ω』という性なのだろう。

「俺はそういうのよく分からないんだけど、なんでΩは狙われるんだ?」
「Ωは数が少ないです。番持ちでないΩの数は更に少ない。だから狙われるのです」
「希少価値的に?」
「それも勿論あると思います。αは繁殖力がとても低い、Ωがいなければ子孫を残せない、自分の子供を必要とするαの中にはお金でΩを買おうとする人もいると聞きます」

 少し険しい顔でヒナノは訥々と語ってくれる、なんだか複雑なんだな。

「αとΩの出会いは運命なのです、無理矢理捻じ曲げた出会いは悲劇しか生みません、出会えないのならそれがその人の運命なのに、それを分からない人も世の中には多いのです」
「君にも運命の相手はいるの?」

 そういえばカイトはツキノを『運命の番』だと言っていた。

「私にはまだ『運命』の相手はいませんです。ですが、きっとそのうち出会えると思っているです」

 彼女は少し表情を和らげてにっこり笑った。

「さて、そろそろ行こうか。あいつ等、もうその辺にいないといいけど」

 俺が立ち上がってそう言うと、彼女は少しだけ複雑な表情を見せた。

「たぶんいないと思うです、きっと大怪我です」
「大怪我?」
「あの人達仲間割れになったはずです、悪い人達だったので遠慮なくやってしまいましたが、ヒナのせいです」

 少しだけ瞳を伏せて「使う時には気を付けるように言われていたのですが……」と彼女は零す。

「何? どういう事?」
「ノエル君は分からなかったのですね、それなら多少は加減ができていたという事です。悪人とはいえ死んでいたら寝覚めが悪いです」
「え? 死……え?」
「ノエル君は知らなくてもいい事です、さぁ、行きましょう」

 なんだか物騒な言葉を聞いたように思うのだが、気のせいか?
 そういえば、俺が彼女を抱きかかえている時、何か仲間割れをするような声が聞こえた気もするけれど……
 ヒナノはもう何事もなかったかのように歩みを進めている、まるで怯えた様子を見せないのは気丈な娘だという事だろうか?

「ノエル君、どうやら向こうが大通りのようなのですよ」

 先を行くヒナノが俺を呼ぶ、俺はそんなヒナノを追いかけ、また駆け出した。





 大通りに出て、しばらく歩くと背後から肩を掴まれた。
 え? 何? 俺、また殴られるの!? と身構えたら、俺の顔を見た相手は「何でそんな事になってるの!?」と叫び声を上げた。

「あら、ユリ君です」
「ユリ君です……じゃないよ! ヒナ! こんな所で何をやってるんだ!」
「ママとはぐれてしまったです。ノエル君が一緒に行ってくれると言うので、騎士団の詰所を目指していた所ですよ?」
「さっき、そっちの裏通りでお前の匂いを嗅いだよ、しかも道には血痕も残ってるし、何か事件に巻き込まれたかと……!」
「事件といえば事件だったですよ。ヒナは攫われそうになったです。ですがノエル君が助けてくれたですよ」
「それでノエル君のこの怪我か……大丈夫? ごめんね」

 別に彼が謝る必要性をまるで感じないのだが、とても申し訳なさそうにユリウスが謝るので「大丈夫ですよ」と笑みを返した。

「それにしても、こんな白昼堂々人攫いとはね……」
「ユリウスさんは犯人を見なかったですか?」
「私がそこに駆けつけた時には誰もいなくて、ヒナノの残り香だけが残っていたからてっきり攫われたかと思って冷や汗かいたよ、本当にありがとうノエル君」

 残り香、そんな物で人の判別が付くものなのか? そういえばさっき妙に甘い薫りが漂った気もしたけれど、それの事か?
 なんだかよく分からない俺はやはり首を傾げる事しかできない。

「ユリ君、ここから詰所は近いですか? ママはきっとそこにいると思うのですよ」
「詰所にはもういないよ、さっき詰所で会ったんだけど、姉さんが攫われた事伝えたら、一気に頭に血が上ったみたいで行っちゃったんだよね……」
「ルイちゃんが? 攫われた……?」

 ヒナノが目を見開いて驚いている。そういえば第五騎士団の詰所でも「あのお嬢が?」という感じだったのだけど、お姉さんって一体どういう人なんだろう? 怖いのかな?

「今日自分は一回戦の参戦があったから詰所に戻ってみたらノエル君はいないし、母さんいるし、ヒナは行方不明だって言うし、姉さんは捕まったまま戻ってこないし、下の子達も訳分からなくて泣き出すし……大変だった……」

 疲れた顔で零すようにユリウスは溜息を吐く。

「そういえば一回戦どうなりました?」
「あぁ、何とか勝ち進んだよ。でも、こんな事件ばっかりで、本当にお祭り所じゃないよ」

 確かにユリウスの言う通りだ、なんだかんだで自分も巻き込まれ気味で祭りを楽しむ余裕は微塵もない。

「とりあえず、ノエル君は傷の手当だね。そういえばウィルと一緒に居るって聞いてたんだけど、ウィル坊は?」
「色々あってはぐれました」

 うん、間違った事は言ってない。本当に色々あったけど説明するの面倒くさい。

「犯人まだ捕まえられないんですか?」
「アジトだけは分かってるんだけど、アジトがあそこだけとも限らないからね」
「ロイヤー家ってそんなに悪い奴等なんですか?」
「え? ロイヤー家?」
「あれ?」

 どうやらユリウスはまだその話を聞いていなかったようで首を傾げる。

「あの家の所有者ロイヤーとか言う元貴族の人の家だったって第五騎士団で聞きました。なんか、あんまり縁起のいい名前じゃないとかなんとか。どうも俺の家の遠縁に当たるらしくて、ちょっと気分が悪いです」
「え? そうなんだ、それは自分も初耳だよ」
「うちの祖父はここでは割と有名なんですね、名前を言うと何故か驚かれます」

 俺がそう言うとヒナノは「ノエル君のおじいさんは有名な方なのですか?」と首を傾げた。

「俺は知らない。そもそも祖父が騎士団員だったというのも、ちらっと聞いた程度でまさか騎士団の副団長を務めてた事もあるなんて聞いてなかったから」
「でもまぁ、まずは2人共無事で良かったよ」

 そう言ってユリウスはようやくほにゃりと笑みを零した。





 俺達は第一騎士団の詰所へと戻り、俺がヒナノに傷の手当をして貰っている間、ユリウスはここ第一騎士団の副団長キースへ事の次第を説明していた。

「こんなに白昼から襲ってくるなんて向こうは全く見境がない、警備の強化をした方がいいと思います」
「そうだな、第3・第5共同で事件解決に当たっているようだったから、すぐに解決するかと思ったんだがな……ふむ」

 キース副団長はひとつ頷き「やはりうちも手を貸すように手配するか」と何事か部下へと指示を飛ばした。

「そういえば第5騎士団の詰所で、変な人に絡まれたんですよ。第5騎士団の騎士団長もそれで怪我して、騎士団長はどうもその変な人も、この人攫いの件もどっちも曰くあり気な事言ってましたけど……」
「どういう事だろう?」
「なんか元々その人牢屋にでも入ってたんですかね? 騎士団長が『出てきてたのか?』って、険しい顔してたんですよね。その変な人の名前、えっとなんだっけ……ジミー? えっと、そう、ジミー・コーエン」

 瞬間キースも驚いたようにこちらを向き「うわっ、マジか……」と呟いた。

「副団長さんも知ってるんですか?」
「あの当時ルーンにいた人間だったら大体皆知ってるよ。そうか、出てきてたんだあの人……それでその人どうなったの?」
「ウィルが捕まえて騎士団長さんが牢屋に放り込んでました」
「はは、ウィル坊やるなぁ」
「騎士団長さんは怒ってましたよ、子供が危ない真似するな! って騎士団長さんが怒るから、ウィルは拗ねてどこか行っちゃったんです」

 キースはどこか少し困ったような表情を見せた。

「スタール団長らしいけど、ウィル坊はなんせ規格外だからなぁ……そこまで目くじら立てて怒る事ないのに」
「そうやって甘やかすからウィルは怖い物知らずで、何かあってからじゃ遅いって騎士団長言ってましたよ」
「あの人は相変わらず堅物だなぁ、だからこそ人も付いてくるんだけど、もう少し柔軟に考えてもいいと思うんだけど」

 キースは苦笑するように笑みを零す。

「キース副団長大変です! 例の事件、アジトに子供が複数人乗り込んだという情報が入ってきました!」
「……子供?」
「聞いた情報を総合するに、思い当たるのはカイト、ツキノ、ウィルの三人です」

 キースは言葉を失って片手で顔を覆った。
 ってか、乗り込んだ? あのアジトに? 3人で? え? 本気で?!

「その情報、信憑性は?」
「黒の騎士団からですよ、ほぼ間違いないです」
「前言撤回だ、スタール団長が全面的に正しい。子供は子供らしく事件に首を突っ込むもんじゃない」

 それ、今更言っても遅いんじゃないかな……?

「私、行ってきます!」

 慌てたようにユリウスが踵を返す。
 「準備はしておくから、人手がいるようだったらすぐに連絡をくれ!」というキースの言葉に「分かりました」と言葉だけ返してユリウスは行ってしまう。
 キースも部下に指示を飛ばしながらどこかへ行ってしまうし、どうしていいか分からない。
 また置いてかれたな……俺、どうすればいいんだろう。

「あら、ユリ君が行ってしまったです。ヒナはどうすればいいのでしょう……」

 途方に暮れている人がもう一人、俺の傍らで溜息を零した。

「お母さんは? 宿の場所は聞いてないの?」
「聞いてはいますが、私一人では入れてもらえないと思うのですよ」
「入れてもらえない?」
「はい、母は顔パスかもしれませんが、私はイリヤには来た事がないですからね」

 「そうなんだ」と俺は頷いて、俺達はユリウスの消えた方角を見やる。

「とりあえず、待ってるしかなさそうだね」
「そのようなのです」

 第一騎士団の詰所は慌しく、なんとなく居心地の悪かった俺達は詰所の外で壁に寄りかかった。

「ノエル君は今日のご予定はないのですか?」
「予定らしい物は何もないよ、ここでユリウスさんを待ってるはずだったんだけど、また行っちゃったし」
「ユリ君をですか? そういえばノエル君はお父さんを探しているのでしたね。ユリ君はノエル君のお父さんを知っているですか?」
「う~ん、たぶん……分からないけど。あ、そういえば唯一はっきり知ってるって言ってた人がいたよ」
「誰ですか?」
「えっと、カイルさんっていうお医者さん」
「あぁ、カイト君の……」
「知ってるんだ?」

 俺の問いにヒナノは少し複雑な表情で頷く。第五騎士団でも常にこんな顔をされてたんだけど、あの人よっぽど問題のある人なんだな。

「何度か会った事があるのですが、私はどうも苦手です。両親も近付くなと言うので、あまり関わりあいたくはないですね。ですけど、ヒナはカイト君とは仲良しですよ」
「同じΩ同士だから?」
「そういうのもあるかもしれませんね。Ωの人は人数が少ないですから。ですけど、元々兄妹のように育てられていたので、そういう感じでもありますですよ。カイト君はツキ君より優しいですから」
「あはは、ツキノ君は性格キツそうだもんね」
「昔はそうでもなかったのですよ、でもある時から急に、反抗期という物なのですかね。私はまだなった事がないので分からないです」

 少し困ったような表情でヒナノは言った。

「家族はみんな仲良くがいいのですけどね」
「ツキノ君は家族が嫌いなの?」
「どうなのでしょう? でも最近父や母には怒ってばかりです。言い争いを聞くのは辛いです、ツキ君が我が家を出た時には少しほっとしたのはここだけの秘密です」

 常に不機嫌顔だったツキノ、カイトを連れに来た時には優しい人かとも思ったけれど、家族にここまで心配をかけるのはどうかと思う。

「君は家族が好きなんだね」
「はい、それは勿論、大好きですよ。私の将来の夢は両親のような幸せな家庭を築く事なのです」

 ヒナノは屈託もなくにっこりと笑った。
 『幸せな家庭』その裏で父親が浮気をしていたとしても? 薄暗い感情が瞬間頭の隅を掠めた。
 ユリウスさんも彼女もとてもいい人だ、確かに幸せな家庭で育ったという余裕すら感じられる。けれどその裏で俺みたいな人間もいるし、カイトのように黙って幸せな家庭を眺めている人間もいる。
 その『幸せな家庭』は実は非常に脆い地盤の上に立っているのではないのだろうか? 少しつつけばすぐに崩壊するほどに……

「ノエル君、どうかしたですか?」
「え? ううん、何でもない」

 顔を覗き込まれて俺は首を振った。
 俺がしようとしていること、自分の父親探しはひとつの幸せな家庭を壊す事に繋がるのかもしれない。だけど、それでも、俺は自分が誰の子供なのかはっきりさせたいと思っている、これは罪な事なのだろうか?

「ノエル君のお家はどんなお家なのですか?」
「うち? うちは別に普通だよ、嫌いじゃないけど仲が良いかって言われたらどうなんだろう? って感じ。母さんは仕事ばっかりだし、じいさんはうるさいし、ばあちゃんだけは好きだなぁ」
「うふふ、そうなのですね。でもきっと素敵なご家族なのでしょうね」
「そんな事ないよ、全然だよ」

 俺は何故彼女がそんな風に思うのかがさっぱり分からない。

「ノエル君はさっきヒナを庇ってくれたですよ。自分の事を顧みずにそういう事ができる人はとても素晴らしい人なのです。そんな素晴らしい人のご家族の方はきっと素晴らしい方々だと私は思うのですよ」
「買いかぶりだよ……」

 俺は瞳を伏せた。本当に彼女にそんな風に言ってもらえるような家族では全然ない、言いたい事も言えない居心地の悪い家なのだ。

「俺、家出してきたんだ。でもきっとまだ誰も気付いてない。そのくらい我が家で俺の存在は希薄で薄いんだよ……」
「お前は何を言っているんだ、ノエル」

 急に声をかけられて驚いて顔を上げた。

「え……? 嘘、じいちゃん? 何で?」
「それはこっちの台詞だ、お前が何でこんな所にいる? 私は聞いていないよ?」

 そこに立っていたのは祖父のコリーで、いつもと変わらぬ気難しい顔で何故かこちらを怒ったように見つめていた。

「しかもなんだその怪我は? 誰にやられた?」
「え……いや、これは……」
「ノエル君は私を暴漢から庇って怪我をしたのです、怒らないでくださいです」
「君は?」

 祖父が目を細め、値踏みするようにヒナノを上から下まで眺めるのがなんだか腹立たしくて俺は彼女を庇うように一歩前へ進み出た。

「彼女は関係ない。俺が弱いからやられただけだ」
「ほう、子供が一丁前の事を言う」
「じいちゃんこそなんだよ、なんでこんな所にいるんだ?」
「私は厄介事を片付けに来ただけだよ、まさかこんな所でお前に会うとはな、メリッサは知っているのか?」

 ぷいとそっぽを向くと、祖父が微かに溜息を零すのが聞こえる。

「お前は一体誰に似たのやら……こんな所で立ち話もなんだ、中へ入りましょう。お前も付いてきなさい、お嬢さんも一緒にどうぞ、若い娘さんがそんな風に地べたに座っているのはあまり感心しませんからね」

 祖父はまるで我が物顔で第一騎士団の詰所へと入って行く。ここって本来一般人が気軽に出入りする場所じゃないと思うんだけど?
 しかし、祖父が中に入って行くと、見知った顔が何人もいたのだろう、慌てたように皆祖父の前へと集まってくる。
 じいちゃん、マジで偉かったんだ……意外。
 「コリー副団長!」と慌てたように駆け寄って来た中の一人にキース副団長もいて「今はあなたが副団長なのでしょう? しっかりしなさい」と何故か叱られている。

「突然どうされたのです? もしかしてお孫さんをお迎えに?」
「いや、孫がいたのは予想外でしたよ、なんでうちの孫はここにいるのです? いえ、まずそれは二の次です、私は少し伺いたいことがあってここへ来たのですよ」
「何ですか? わざわざルーンから出向くような大事な用件ですか?」
「まぁ、そうであり、そうでもなしという所です。何、ロイヤー家の馬鹿息子が牢から出てきたという話を聞いたのと、うちが売りに出していた物件をそのロイヤーが買取ったという噂を小耳に挟んだものですからね。何かあってからでは遅いと報告も兼ねて参った次第ですよ」

 『ロイヤー家』第五騎士団で聞いたうちの本家とかいうアレか。

「勘がいいですね、何かは既に起こっているのかもしれないですよ」
「何か問題でも?」
「現在祭りに乗じた人攫いが起きています。そのアジトと思われる場所がロイヤー家の次男クロウが買取った屋敷だという事だったのですが、もしかして……?」
「あそこは元々カーティスの土地だったのですよ、そこをロイヤーに乗っ取られ、奪い返して貸し出していたのですが、最近買取りたいという人間が現われたというので仲介業者に任せていたのです。それがまさかロイヤーの家の者だとは思わず、慌てて馳せ参じたのですが、どうやらすでに遅かったようですね」

 祖父は眉間に皺を寄せて、ただでさえ渋い顔を更に厳しい表情へと変える。

「事件の詳細は?」
「祭りに乗じて数人の若いΩが攫われている事が確認されています。攫われた人数は不明、敵の数もまだはっきりとはしていません」
「Ω……? あぁ、もしかしてそれで……?」

 祖父がちらりとこちらを見やった。

「現在第3・第5騎士団が陣頭指揮を取っている為、こちらではそこまで詳しい事は分かっていないのですが、人質の中にはナダール騎士団長の娘さんも含まれているようです」
「お嬢さんが? 一番上の? 彼女はそんな簡単に捕まるような娘ではないでしょう? それに彼女はαですよね?」
「その辺がこちらでもはっきりしなくてですね……」

 言葉を濁すキース副団長に「分かりました」と祖父は頷く。

「それでは私もそちらに参るとしましょう。直接確認した方が早そうです」

 祖父はくるりと踵を返し、改めて俺の前に立つ。

「もしやお前のその怪我は娘さんが攫われるのを未然に防いだ結果だったのかな?」
「どうせ、格好良くなんて助けられなかったよ」

 祖父は「ふむ」とひとつ頷き、頭にぽんと手を置いて、一言「よくやった」と褒めてくれた。

「ですが、そんな怪我をするようではまだまだですね、見本を見せてあげましょう。一緒にいらっしゃい」
「え? いいの?」
「その怪我がロイヤーの仕業なのだったら、一矢報いるのがカーティスの役割ですよ。やられたら、やられた分だけやり返しておやりなさい」

 じいちゃん意外と過激だな……いや、でもそういえばうちは元々そういう教育方針だったわ。

「ノエル君、行くのですか?」

 不安そうにヒナノが俺を見上げてくる。

「おや、その瞳。もしやお嬢さんはナダール騎士団長の娘さんですか?」
「はい、私、ヒナノ・デルクマンと申します」
「あぁ、そうでしたか。大事がなくて何よりでした。もしあなたに何かあったらあなたのご両親に顔向けができなくなる所でしたよ」
「こちらこそ、ノエル君はこんなに怪我をしたのに私は無傷でなんだか申し訳ないです」
「うちの孫はそこまで柔に育てておりませんので、大丈夫ですよ」

 じいちゃん、孫には厳しいくせになんだよソレ。
 「さぁ、行きますよ」とじいちゃんが歩き出すのを追いかけるように俺も歩き出した。
 やられた分だけやり返せと言われたが、じいちゃんは一体何をする気なのだろう?

「じいちゃん、うちとロイヤー家って一体どういう関係なの? なんか、うちの本家だとか何とか言われたけど、うちって貴族だったの?」
「名ばかりの貴族なら名乗るだけ無駄ですからね。我が家はもう一般家庭と変わらない。それでいいのです、名前にしがみつく事ほど愚かしい事などありはしない」

 じいちゃんは一刀両断で斬り捨てる。

「じいちゃん、場所分かってるの?」
「私が一体何年このイリヤに暮らしてきたと思っているのです? それにあのロイヤーの小童共がアジトにしているのは私の育った家ですよ、全く腹立たしい」

 あの屋敷、じいちゃんの家だったんだ……結構大きかったけど、本当に金持ちだったんだな。

「対応にあたっているのは第3と第5騎士団と言っていましたか? でも、なんで第3と第5が共同で事にあたっているのか……」
「なんか元々第5騎士団が警備してたんだけど、第3騎士団の騎士団長の身内が攫われたからって……そういえば、攫われたのローズさんだよ。あのマイラーさん家のローズさん」
「ローズさん、それはまた……無事だといいのですが、どちらにしてもこれでロイヤーは完全に終わりましたね」
「え? なんで?」
「敵に回した相手が悪すぎる、マイラー家を敵に回すとは恐れ知らずにも程があるという物です。私が奴らを潰さなくても、これはもう完全に完膚なきまでに綺麗さっぱり奴らを葬り去ってくれるでしょうね。これはいい、手間がはぶけた」

 じいちゃんが清々しい顔をしていて、なんだか怖いよ?

「じいちゃんって本当にそのロイヤーって家の人達嫌いなんだね」
「それはもう、大嫌いですよ。私の両親は奴らに殺されたようなものですから。ですが、そんな憎しみも後世に残していく物ではない、私の代で断ち切る事ができればと思っていたのですが、どうやら望み通りに事は進みそうで安心しました」

 じいちゃんは真っ直ぐ前を向いて進んでいく。

「ノエル、何か困難が立ち塞がっても立ち止まってはいけません。何事も前を向いて進んでいけば未来は必ず開かれる。望みはいずれ必ず叶う、それを肝に銘じて進んでいけば間違いない」
「何を突然……」
「これは教訓です。すべてを諦め意固地になっていた間、物事は何も動かなかった。けれど前を向けば世界は開けた。私は頑固でそれに気付くのも遅かった、だがお前にはまだ未来がある、だからその言葉をお前に贈ろう。お前は常に前を向いて生きるんだ」
「じいちゃん、それ遺言みたいに聞こえるから止めて」

 祖父は「ふふ」と珍しく笑みを零す。

「私ももう歳を取った。いつ逝っても不思議ではない。だから大事な事は忘れない内に伝えるに限る」
「いつもそんなに饒舌に喋ったりしないくせに、なんなのさ」
「少し興奮しているのかもしれないな、孫と共にロイヤーを討てると思うとワクワクする」

 なんだか少年のような瞳で語る祖父が不思議で仕方がない。何がそんなに楽しいのかも分からない。

「さぁ、見えてきましたよ。あぁ、なんだ、もう突撃の準備は整っているようだ」

 祖父の目指す先には幾人かの騎士団員がいる、その中に一人だけまったく騎士団とは関係なさそうな麗人が彼等に食って掛かっているのが見えた。

「だ~か~ら! そういう事は突撃してから考えればいいだろう! 中にはうちの娘がいるんだ! 俺は回りくどいのは嫌いなんだよ! なんなら俺が先陣きるから付いて来い!」
「待ってください、まだ敵が中にどれだけいるかも分からないのに無闇に飛び込むのは危険です」
「そうだよ、母さんここは穏便に……」

 近付くとそこにはユリウスの姿も見えて、必死にその麗人を止めている。
 っていうか、あの人騎士団長の奥さんじゃん。美人なクセに素だと言葉遣い悪いんだな。

「奥さん、これはまたお久しぶりですね」
「コリー副団長!? え? なんでここに?」
「ロイヤーが悪さをしていると聞きつけてやって参りましたよ。あなたは相変わらず無鉄砲ですねぇ」

 どうやら祖父は騎士団長の奥さんとも顔見知りのようで、そんな風に飄々と彼等に寄っていく。

「別に無鉄砲って程でもないだろう? この程度の屋敷に一体どれほどの人数がいるって言うんだ。100も200もいるわけじゃあるまいし、こんな事件俺一人でもどうにかなる」
「そういう所が無鉄砲だと言うのですよ。雑魚が束でかかってもあなたに敵わない事は分かっていますが、中にいるのが雑魚だけとは限らないでしょう?」
「何か心当たりでもあるのか?」
「よく考えてください、クレールが牢から出てきているという事は、あのジミー・コーエンも出てきているという事ですよ? 彼はクレールと違って腕は確かです」

 え? あぁ、そうなんだ……確かにあの人凄く強かった、でも……

「その人ならここにはいないよ。第5騎士団の騎士団長が捕まえて牢に放り込んでたから間違いない」
「牢に? 何でまた?」
「俺の赤髪が目障りだって襲われたんだよ、そんで騎士団長が助けてくれた」
「あれ? 少年、さっきの……?」

 騎士団長の奥さんはそこで初めて俺に気が付いたのか首を傾げた。
 俺は「どうも」と小さく頭を下げる。

「なんでコリー副団長といるの? 知り合い?」
「この子はうちの孫ですよ」
「孫? え? メリッサさんの子? え? 俺、知らないんだけど、ちょっと大きくない? ユリと同じくらい? そんな子いなかったよな?」
「体格がいいので年齢は上に見られがちですが、まだ12歳ですよ。あなた方がイリヤに戻ってから生まれた子です」
「えぇ、びっくり。でもなんで赤毛? 旦那は? メリアの人?」

 祖父は「ふむ」と片眉を上げる。

「心当たりはありませんか?」
「ん? 心当たり? 何に?」

 奥さんはきょとんと首を傾げた。

「いえ、まぁ、分かっていましたよ、大体予想は付いています」
「だから何?」
「この子の父親ですよ、心当たりはないんですね?」
「え……ちょっと待って、どういう事?」
「メリッサはこの子の父親の名前を語ろうとしません。ですがこの見事な赤毛ですよ、大体見当は付くというものです……」

 何かに思い当たったのか、奥さんも驚いたように目を見開く。

「え? マジで!? いやいや、そんなまさか……」
「他に誰がいます? あなたに心当たりはないんでしょう? それともあるんですか?」
「その頃、俺の腹の中に子供がいたの、あんただって知ってるだろ!」
「けれど無い話ではない、そうでしょう?」

 2人の間に微妙な空気が流れる。
 なんだろう? 2人の間で会話は成立してるけど、俺にはよく分からない。

「うわぁ、疑われてたんだ? ずっと? 言ってくれたら弁明したのに……」
「はっきりさせるのはそれはそれで角が立ちそうだったのでね、黙っていましたよ」

 角が立つ? それは騎士団長の浮気で奥さんが傷付くとかそういう……?
 そんな事を考えていたら傍でぼそっと「良かった、やっぱり浮気じゃなかったんだ」とユリウスが呟いた。

「ってか、なんだ! お前まで疑ってたのか、ユリ!」
「だって、あの当時ルーンにいた赤毛の人なんて母さんくらいしか知らないし、ノエル君が父親は騎士団員じゃないかって言うから。母さんは騎士団員の人達とよく一緒にいたし、ノエル君のお母さんとも仲が良かっただろ、だからもしかして? って思ったってしょうがないでしょう!」
「馬鹿言うな! 浮気なんかしてた日には、今頃俺なんかあいつに監禁されてるっての! ってか、絶対言うなよ、そんなの聞いただけであいつの機嫌が傾くのなんか目に見えてる!」

 なんかもう全く話しが見えないんだけど、どういう事? 俺の父親で疑われてたの騎士団長じゃなかったの? って言うか、なんでこの人? ユリウスさんの母親だろ? お母さんだろ? 生む方の人だろ?

「絶対俺じゃないから!!」

 えぇえぇぇ?
 奥さんの叫びに疑問符を飛ばしまくって、はたと気が付いた。そういえばカイトの父親も生みの親だった。

「もしかして、奥さんって男の人なの……?」

 周りの視線が俺に集まる、なんでそんな『今更?』みたいな顔すんだよ! 知らないよ! 聞いてないしっ!!

「そういえばお前にはバース性の話しはした事がありませんでしたね」
「あれ? 私、言いませんでした?」

 祖父は「そういえば」という表情をし、ユリウスは「言わなかった?」と首を傾げる。
 聞いてない、聞いてないよっ!

「こんな姿をしていますが、この人これでいて正真正銘男性ですよ。歳を取る毎に性別不詳に拍車がかかって、そういえばもはや気にする人は誰もいませんね」
「うっさいよ、性別不詳って言うな。俺は何にも変わってない!」

 あぁ、そうか、この人も『男性Ω』ってやつなんだ。男なのに生めるんだ……
 ん……? 男だから生ませる事もできるのか? なんか複雑。それにしてもこんな綺麗な顔立ちで男とかちょっと俄かに信じられない。

「あ……でもじゃあ、騎士団長は俺の父親じゃない……?」
「父の不倫の子なら、たぶん私と同じ金髪になると思いますよ」

 そういえばそうじゃん、最初から赤毛は母親似って言ってたじゃん……でもそんなの知らないんだから気付かないよ。
 でも、そうしたら俺の父親探し、またふりだしだ……いや、でもなんかじいちゃんも、奥さんも心当たりが有りそうだったけど……

「ナダールに限って不倫はない」
「え……でもカイトは……」

 そこまで口を滑らせて、しまったと口で手を覆った。カイトはユリウスそっくりの金髪で、騎士団長が金色の髪の持ち主だと言うのなら、そちらの信憑性は一段と増す。

「カイト? あいつ、まだそんな事を言ってるのか? ないない、無いよ」

 奥さんは呆れたように首を振った。なんなんだろう、その自信。カイトは奥さん達家族を傷付けたくないからと黙っているだけなのに。

「違うって何度も言ってるはずなんだけどなぁ。まぁ、別にカイトもうちの子みたいなもんだから、構わないっちゃあ構わないけど、ナダールがまた渋い顔しそうだな」
「なんで、そんなにはっきり断言できるんですか? カイトは父親が誰なのか分からないって言ってましたよ、父親がはっきりしないのなら可能性としては0じゃない」
「ん? まぁ、傍から見たらそう見えるのかな? この国では金髪も珍しいしなぁ。でもランティスでは金髪なんて全然珍しくないんだぞ? それにカイトのあの金髪は母親似で、父親は普通に栗毛だった」

 え? あれ……?

「カイトの父親って、ちゃんと分かってるんですか?」
「それはな、俺等も知ってる奴だよ。ただ色んな事情でカイトには言えないだけ、でもいまだに疑ってるとなると、そろそろ本当の事も話さなきゃならん時期かもなぁ」

 溜息を零すように奥さんは言って「面倒くさい」と呟いた。

「そもそもこれはカイル先生の問題で、こっちはなんの関係も無いのに本当面倒くさい。カイトは可愛いけど、あの人だけはなぁ……」

 あぁ、ここでもあの先生はそんな扱いなんだ……
 本当にあの人ってどういう人なんだろう? よく分からないや。

「まぁ、子供の話しはその辺にして、まずは目の前の事件の話をしましょうか?」

 祖父が気を取り直したようにそんな事を言う。
 確かに中にはまだ囚われている人達もいるし、そういえばウィル達も侵入したとか言ってなかったか?

「ユリウスさん、ウィルは?」
「え? あぁ……裏口から乗り込んだ事までは分かってるんだけど、屋敷の中は静かだし、まだ動いてないだけなのか、それとも捕まったのか……だとしたら人質増やしてどうするんだって話でさ、ホントあいつ等は誰に似たんだか……」
「ふむ、裏口ですか、まぁ懸命な判断ですね。屋敷の中は広い、まずは見取り図の準備はないのですか? 私の記憶通りでしたら問題はありませんが……」

 慌てたように騎士団員の一人が「少々お待ちください」と駆けて行く。なんだろう、じいちゃんにそんな権限ないと思うんだけど……
 しばらくすると、駆けて行った騎士団員が誰かを伴って戻ってきた、って言うかあの人知ってる、ウィルのお父さんだ。

「これはコリー指揮参謀、お久しぶりです」

 指揮参謀? 何それ?

「止めてください、私はもう引退した人間ですよ。国王の要請があれば馳せ参じる場合もございますが、基本的には隠居の身、そのように呼ばれるのはどうにも気が引けます」
「何をおっしゃっているのやら、ご活躍は聞いていますよ。今となってはあなたはこの国の国防にはなくてはならない方ではないですか、引退など国王が許しませんよ」

 ウィルの父親、第3騎士団長アイン・シグは笑った。
 ってか、知らない、聞いてない。じいちゃんなんかほとんどルーンから出ることないくせにどういう事だよ?

「まぁ、まずはその話は置いておきましょう。現在この場の指揮は誰が?」
「基本的には私が取っていますが、四方八方からの圧力がキツくて参っていた所ですよ。あなたが来てくれたのなら心強い」
「圧力?」
「人質の中にマイラー家のローズ嬢がいます、マイラー家は完全に頭に血が上った状態で何をやらかすか……そして現在一緒にデルクマン氏のお嬢さんルイ殿も囚われている為、婚約者の王子が……」
「ちょっと待て、ルイはまだ婚約なんかしてないぞ! そもそも本人が嫌がってる」
「うむ、そうなのか? 詳しい話しは知らないが、自称婚約者のジャック王子は自分が助けに行くと言い張って、そっちを止めるのにも手を焼いている所ですよ」
「へぇ、そんな感じなのにウィル達は乗り込んで行ったんだ?」

 俺が何気なく言った一言に瞬間騎士団長が驚いたような表情をこちらへと向けた。
 慌てたようにユリウスに口を塞がれたのだが、言っちゃ駄目だったのか? それなら先に言っておいてくれよ……

「少年、今なんと……?」
「え……いやぁ……」

 どうしていいか分からずにユリウスを見上げると彼は溜息を吐くように息を吐き、第3騎士団長に告げた。

「現在こちらの情報網で屋敷内に子供が3人侵入したと情報が入っています。その内の一人がウィル、残りはツキノとカイトです」

 ユリウスの言葉に騎士団長の表情が険しい物へと変わる。

「なんでそんな事に!」
「それはこっちが聞きたいですよ」
「あなた方の警備はザルですか? 裏口は見張っていない?」
「裏口……? 入り口はすべて監視をしていた、そんなはずは……」
「ふむ、だとしたらあそこですかね……」

 祖父が腕を組んでひとつ頷く傍らで、第3騎士団長は「あれほどここには近付くなと言っておいたのに」と険しい顔を崩さない。

「あなたはこの場所を子供達に教えたのですか?」
「え? 危ない場所には近付かないように警告するのは親の務めでしょう」
「もし自分だったら、言われて素直に引き下がりますか?」
「え?」
「危ないから絶対近寄るなと言われて、自分ならどうしますか? 今はともかく子供の時だったら?」

 少し考え込んだ騎士団長は眉間に皺を寄せ「……見に来るくらいの事はするかもしれませんね」とぼそりと呟いた。
 祖父はその言葉にふぅと息を吐く。

「だったら最初から場所など教えないことです。子供は危険を好みます、何故なら危険を察知する能力が低いですからね。あなたは警告のつもりかもしれませんが、子供にとったら楽しい見世物ですよ。そして時に子供は一人でも無謀な試みをするものです、そこに数が集まれば何をするか予想も付きませんよ」

 ちらりと祖父はこちらを見やる。
 俺、別に無謀な試みなんてしてないし、家出はしたけど危ない事はしてないぞ。

「ですが、今はそんな説教をしている場合ではありません、大至急私の指示する場所に兵を回してください、配備でき次第私とノエルで屋敷へと訪問させていただきます」
「え?」
「何を驚く事がありますか? この家は元々我が家の持ち家ですよ、家主が家を訪れる事に何の疑問があるというのです。指示があるまで各人待機、突入指示は私が出します」

 祖父はそういうと口角を上げて、それは楽しそうににぃっと笑みを零した。
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