童貞のまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話

矢の字

文字の大きさ
23 / 222
第一章

少年剣士ロイド

しおりを挟む
 僕は今日も草を摘む。この僕が摘んだ薬草が煎じられて加工され、冒険者達の体力回復や魔力回復の薬に変わるのだから、最低ランクの仕事とはいえ疎かには出来ない。
 薬草の種類をちゃんと覚えておけば、いざという時自分で煎じるという方法も取れるし、そのまま齧っても多少の体力や魔力の回復が見込める。そういう意味でこの仕事は回り回って自分の役にも立つ仕事だと僕は考えている。
 冒険者になって一番最初の仕事としてこの仕事が与えられているのはそういう意味もあるのだろうなと僕は思うのだ。
 良薬は口に苦しと言うけれど、ポポン草の花は美味しいし、それ以外にも食用に向いた植物は幾つも自生している、そんな植物を覚えていくのも楽しい作業のひとつだ。

「お前、いつまでそんな依頼ばっかやってるつもりだ」

 僕が薬草採取をしていると必ずというほど僕の前に現れる人物がいる。それは冒険者登録試験からすっかり目の敵にされてしまっている少年剣士のロイド君だ。もう一人の魔術師アリスさんは、たまにしか見かけないから、毎日のように現れる彼はもう故意に僕の前に現れているとしか思えない。

「こんにちは、ロイド君。今日もスライム退治ご苦労様」

 喧嘩腰に声をかけられるのはもう日常で、腹を立てても仕方がないので僕は普通に挨拶を返す。

「やってもやっても減らないんだよ、ここのスライム! お前も手伝えよ!」
「本当にそうだよね、毎日ロイド君が倒す傍から分裂してるから、大変だなって思っていつも見てるよ」

 ロイドが「ちっ!」と盛大な舌打ちを打った。

「だけど、スライム達は分裂すると小さくなるし、小さくなると食べる量が減ってるみたいだから無駄じゃないよね。薬草まで食べ尽くされると僕も困る」
「その割にはお前はいつもスライムを周りに侍らせてるよな」
「だって、スライムって可愛くない?」

 僕の膝の上にぴょこんと乗っかってくる小さなスライムは、最近僕の周りをよく飛び跳ねている個体だと思う。スライムの姿形はほぼ同一で見分けはつかないのだけど、淡い水色のスライムの中でこの子だけは少し色味が緑がかっているので何となく見分けが付いている。

「それでもスライムは魔物だ」
「うん、そうなんだけどね」

 だけどやっぱり懐かれると悪い気はしないんだよな。連れて行ってまた他のスライムに襲われたら堪らないので連れ帰る事はしないけれど、できればこの子には長生きして欲しいと僕は思っている。

「そういえばお前、今日はあの人達と一緒じゃないのか?」
「あの人達? ルーファウスさんとアランさん?」
「ああ、ってか、お前あの人達の何なんだよっ! 低ランク冒険者の癖に高ランクの二人に金魚の糞みたいべったり付いて回って、向こうの迷惑も考えろ!」

 あ、傍目にはそう見えてるのか。実際の所は二人が僕の後を付いて回っていたのだけど、それよりも僕の方が二人に付き纏ってるって方が傍からは納得いくんだな。なにせ二人は有名人だし、かたや僕は無名の低ランク冒険者なんだから。

「僕、ルーファウスさんの弟子になったんですよ」
「は?」
「魔術師の弟子として魔術について色々教えてもらっています」
「はああぁ!? 何だよっ! どういう事だよっ! 白銀の魔術師が弟子取ってるなんて話聞いてない! だったら俺だって疾風のアランの弟子になりたい!」
「白銀の魔術師? 疾風のアラン……?」

 聞き慣れない単語が出てきて僕は首を傾げる。

「お前知らないのかよっ! 知らないで付き纏ってるってどういう了見だ!」

 いや、だから僕が付き纏ってた訳じゃないんだよ……それに知ってたからって付き纏っていいって話でもなくないか?

「あの二人はこの辺りでは無敵の黄金ゴールデンコンビ、白銀の魔術師ルーファウスと疾風のアランって有名なんだからな! 俺等みたいなガキなんか相手にもされないって、俺より先に冒険者になった友達達だって遠巻きにしてたってのに……」

 いや、知らんし。
 そもそも相手にされないって、そんな訳あるか。今までも声かけてくる人がいれば普通に相手してたし握手にも応じてたぞ。その度に二人は有名人なんだなと思ってたけど、そこまで低ランク冒険者たちに崇拝される対象だとは思ってなかったよ。

「そんなに気になるなら普通に声かけたら良くない? 二人とも全然怖くないよ?」
「怖いとか怖くないの問題じゃない! お前には人を敬う心がないのか!」

 そんな事言われても、二人はもう今となっては敬う対象じゃなくて同居人、家族みたいなものだからな。

「なんなら僕、紹介しようか?」
「え……」
「ルーファウスさんは今ちょっと仕事で街を出てるけど、アランさんならいつでも紹介できるよ。あ! 今度皆で一緒にご飯食べに行くのもいいかもね!」
「ちょ……待て待て待て、勝手に決めんな!」

 急に慌てだしたロイド、交流したいのか、したくないのかどっちだよ。

「お前、何なの? 俺、今までお前に嫌がらせしかしてこなかったのに……」
「嫌がらせ?」

 僕が首を傾げたらロイドは大きく溜息を吐いた。

「もういい。でも、疾風に紹介は絶対だかんな!」
「うん、いいよ。今日会いに行く?」
「っ……俺にも心の準備をさせろ!」

 そんなに緊張する事ないと思うのだけど、ロイドがすぐには無理だと言うので交流会は日を改める事になった。アランにも予定があるだろうし、今晩アランの予定も聞いておこう。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...