童貞のまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話

矢の字

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第四章

知らないって怖いよね

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 リブルの街に着いて早々買い物に勤しんでいた僕だけど、この街へ来た一番の目的は料理! そして新鮮な魚介類! 刺身も食べられるかもなんて思って来たけれど、露店を見る限りやはり刺身は売っていない。
 まぁ、刺身は生ものだし、生の刺身を露店で売るのは衛生的にどうかと思うしね。湖畔の街にしては生魚もその辺では売っていないくて、新鮮な生魚は昼過ぎにリブル湖畔に並ぶ市で売られるのだと小耳に挟んだ。僕は是非その市を見に行かなければと俄然テンションが上がる。

「タケル、市に行くのは良いですけれど、その前に呪いの正体をつきとめるために剣の鑑定に行きますよ」
「あ……」

 そう言えばそうだった。僕は既に自前の鑑定スキルでその剣の正体を知ってしまっていたから、うっかりその存在を忘れていたよ。
 だけど、鑑定か……ここでその剣の正体がバレたら色々問題になったりしないか? だって現在この聖剣グランバルトには白金貨10枚の報奨金がかかっているのだ、言ってしまえばロイドは大金を背負って歩いているのと同じ、これは危険すぎる気がするのだが……
 いや、でも、正体を知った上で持っているのと、正体を知らずに持っているのでは危機感も変わってくるか?
 ここはさっさと鑑定をしてしまって、教会なりギルドなりに剣を持ち込んでこの件は片付けてしまった方が賢明なのか!?

「なんだタケル、そんな難しい顔をして。何かその剣に思う所でもあるのか?」
「あ、いえ、そういう訳では……って、あれ? 小太郎君は? それにロイド君も」

 皆を見回すように振り返ってみたら、一緒に居たはずの小太郎の姿が見えない。そして何故かロイドの姿も。

「さっきまで二人でその辺に居たはずなんだが……まさか迷子か? いや、でもさすがにそれは……」

 アランが見回すように辺りにぐるりと視線をやった瞬間、僕達の後方でなにやら騒ぎ声が聞こえた。その声は誰か人と人とが争っているような声で、そちらに視線を向けると争っている人影の片方は見間違えようもなくロイドだ。そして、そんな彼の後方で小太郎がまたしても泣きそうな顔でうずくまっていた。

「おいおい、何事だ?」

 慌てたようにアランが二人の方へと駆けて行く、するとロイドと争っていた人影が逃げるように踵を返した。

「逃がすか!」

 アランがそんな言葉と共に加速する、僕はそんなアランに加勢するようにして逃げた人影の足元に風魔法を放つ。足をもつれさせた人影は派手にすっ転び、アランはそいつを捕獲した。

「二人とも大丈夫?」
「俺は平気、だけど……」

 ロイドが埃を払って僕の問いに答えてくれたものの、傍らに座り込んだままの小太郎は小さく震えて何も答えない。

「何があったの?」
「それが俺もよく分からないんだ。気付いたらこいつが攫われそうになってて、助けようとしたらこんな事に」
「誘拐?」
「なのかな……だとしたら物騒な話だよ」

 僕は未だ震え続ける小太郎の傍らに座り込む。小太郎の腕は攫われそうになった時に強く捕まれたのか指の形に跡が残っている。これ絶対青痣になるやつだ。僕はそんな指跡を撫でて聖魔法で治療する。たぶんこれでもう青痣にはならないと思うけど、心の傷は魔法ではどうにもできない。

「怖かったね、もう大丈夫だよ」
「ううう、もうヤダ、家に帰りたいよぉ……」

 僕にしがみついて泣く小太郎、人攫いの方はアランに首根っこを捕まれたまままだ暴れている。そして叫ぶ言葉の端々に「自分は依頼されただけ」とか「俺は悪くない」などの言葉が漏れ聞こえる。
 一体あいつは何を言っているのか、人を攫うというのはもうそれだけで立派な犯罪だ。人に頼まれたからやったなんて言い訳が通用すると思っている方が間違っている。自分の言っている台詞があまりにも自分勝手な言い分だと自分で気付かないものなのか?

「ほーん、お前の言い分は分かった。で、お前のその依頼主は何処のどいつだ? どうしてこんな子供を狙う?」
「理由なんか知らねぇよ! 俺は黒髪の子供を攫ってこいって言われただけだ!」

 黒髪の子供か、確かに小太郎はその条件にはぴったり嵌るな。この世界、意外と黒髪は珍しいみたいだし、そういう意味で高く売られる可能性もあるのだろうか? 僕の髪もよく見れば蒼色だけど見た目は黒にも見えるから気を付けないとだな。

「依頼主は?」
「…………」
「しらばっくれるつもりか!?」
「ちっ、違う! 俺は何も知らねぇんだよ! 信じてくれよ!!」

 アランが少しきつめに締め上げると男は簡単に音を上げる。そして、しばらくすると街の警備に通報されたのか男は連行されて行ってしまった。

「ちっ、何だかもやっとすんな」
「この街には貴族の子息も観光に訪れますし、そういう子供の誘拐目的の犯行かもしれませんね」
「あん? だが狙われたのは『黒髪』の子供、だぞ。しかも小太郎はどう見ても庶民の子だ、貴族の子息と間違えられるなんて――」
「いえ、だから逆ですよ。貴族の遊び相手として、この場合慰み者とでも言うのでしょうか、毛色の変わった子供を捕まえ侍らせる。悪趣味な貴族の子息なら平気でやっている事ですよ」
「ちょ……マジか、胸糞悪ぃ」

 アランの言葉に完全同意。貴族の子を攫うのではなく、貴族の子が依頼者で自分達のおもちゃになりそうな子供を攫うのか……元々貴族であるらしいルーファウスが言う事だから言葉に信憑性があり過ぎて気分が悪い。

「うちのパーティーメンバーですと、タケル、コタロー、オロチあたりがターゲットになりやすそうですので気を付けないと」
「いや待て、そこでなんでロイドじゃなくオロチなんだ? そこは普通にロイドだろう?」
「何を言ってるんですか? オロチは亜人ですよ。貴族にとって亜人は奴隷のような扱いです。オロチは見た目に立派な亜人ですので、見目良い亜人を求めている貴族に誘拐される要素は充分――」
「いや、俺が言いたいのはそういう事じゃなくてだな……それにオロチがそう易々と人間なんかに攫われる訳ねぇだろう」
「だからターゲットになりやすそうな人物と言っているのですよ。ちなみにそこの彼を外した理由ですけど、容姿平凡・能力平凡・家柄平凡な彼をターゲットにする理由がないからですよ。彼を選ぶくらいなら、美貌と能力で勝る私がターゲットになる確率の方が断然高いです」

 ルーファウスの言い方! しかもロイドもロイドで「ぐぅの音もでねぇ……」と自らの敗北を認めてるのどうなの……

「こういうのは皆違って皆良いんだよ、皆で気を付けようねで、この話はお終い!」

 って言うかさ、皆は気付いてないから仕方ないけど現在白金貨10枚を腰に佩いてる状態のロイドが一番狙われる可能性が高いと僕は思うけどね!

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