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第四章
まだまだ知らない事があるもので
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場所を変えようとは言ったものの、僕達は今日この街に着いたばかりで、しかも宿屋を変えるつもりでここまで来たので、新たな宿屋はまだ決まっていない。ゆっくり話をするにしても結構な大人数になってしまっていて、道を歩いているだけで目立ってしまって仕方がない。
その中でもひときわ目立っているのはやはり王子様、なんかね、纏うオーラが既にキラキラしていてなんか違うんだよ。顔立ちだけで言ったらルーファウスも同じくらいの美形でキラキラなのだけど、なんか種類が違う。
身に纏っているものが地味を装っていても高級品なのがダダ洩れているから余計になのかな? やっぱり王子様は庶民とは存在感から違うんだな。
「ねぇ、あんたさぁ、背縮んだ? 三年前からなんにも変わらな過ぎてウケるんですけど! ちゃんと成長してんの? しかも未だに学生服って、何年その服着倒すつもり? だっさ!」
茉莉が定食屋を出た瞬間から小太郎に絡んでいる。そんな怒涛の口撃に小太郎は「あの」とか「その」とか口を挟みたそうにしているのだが、茉莉のお喋りは止まる気配がない。
二人の仲は悪そうには見えないけれど、力関係は一目瞭然でこんな感じに幼馴染である彼女に小太郎は振り回されてきたんだろうなというのは容易に想像ができた。
「君達は今晩の宿は決まっているのかな? こんな所で立ち話もなんだし、もし良かったら私達の宿に来るかい?」
キラキラの王子様が親し気にこちらに声をかけてくる。そんな王子様とは対照的に茉莉の護衛と言っていた女騎士のマリーは王子の前に立ち、相変らずこちらを睨み付け警戒心MAXの様子だ。
「レオンハルト様、こんな不審者どもをそんな安易に懐に入れるような真似はお止めください!」
「ん~……でも、私にとっても全く見知らぬ者達という事もなさそうなのだよ、ね、ルーファウスおじ様?」
「…………え?」
王子の言葉に思わずルーファウスの方を向くと、ルーファウスは苦虫を嚙み潰したような表情で「気付いてらしたんですか」と大きく溜息を吐いた。
「私はこれでも記憶力は良い方でね、一度会った事のある人物の顔と名前は忘れないんだ」
「大した記憶力ですね、最後に私が直接貴方にお会いしたのは、貴方がまだ幼子の頃であったと思うのですが」
「ははは、おじ様はAランク冒険者として随分名が売れているだろう? 三年前のドラゴン討伐依頼にも参加されていた事には気付いていたよ。私もあの時にはドラゴン討伐に参加していたんだ」
「知っていますよ、あの時貴方はそちらのお嬢様に夢中でこちらなど眼中にもなかったでしょう」
「あの時おじ様は知らん顔で声もかけてくれなくて、こちらも声をかけそびれただけですよ」
淡々と王子様と会話を続けるルーファウス。まさか二人が知り合いだなんて、二人は一体どういう関係なんだ?
「なに? レオ、あんたその綺麗なお兄さんと知り合いなの?」
「知り合いというか、親戚筋だよ。マツリは確かうちの総務大臣のアルバートとは面識があったよね? 彼はその大臣の御子息さ」
!? 王子のその言葉に言われた茉莉だけではなく、僕達まで驚いてルーファウスを見やる。聞いてない、聞いてないぞ! ルーファウスが大臣の子息とか全然全く聞いてない!
「父は父、私は私で縁はとうに切れてます。そもそも妾の子である私など父は子とも思っていないでしょう、ホーリーウッドの籍からも私は既に除外されているはずです」
「おや、おかしいな。私は貴方は大臣の自慢の息子だと聞いているけれど?」
「何かの聞き間違いでしょう。私は父に嫌われていますので」
相変らず淡々とした語り口のルーファウス。なんだか聞いてるだけで根の深そうな確執を感じる親子関係だな……
「まぁ、おじ様がそう言うのであれば、この話はここまでで。という訳で、彼の身元は割れているし、おじ様の冒険者仲間に不審な所はないと私は思っているのだけれど、マリー、君の考えは変わらない?」
「あ、いえ、レオンハルト様がそう仰られるのでしたら……」
先程までの勢いが失速したマリーはちらりとルーファウスを見やる。彼女としてはまだ半信半疑って所なのだろうな。そもそも僕だってまだ信じられないくらいだし。
でも、こうやって王子と普通に会話ができているあたり、恐らく全て本当の事なのだろう。ホーリーウッドの名を聞いた時から、ルーファウスが貴族の出だという事は分かっていたけど、まさか大臣の子息だったなんてな……っていうか、そのアルバート総務大臣はルーファウスの父親って事は当然ルーファウスより年上なんだよな? とすると、もしかしてこの国が建国された当初から大臣をやっていたりするのかも? ついでに、もしかしたら滅茶苦茶偉いこの国の重鎮だったりするのかも??
ちらりと横目に盗み見るルーファウスの横顔はいつもと変わらない。
ルーファウスの過去には色々な事があったのだろうなと常々思っていたけれど、これは僕が想像しているよりもずっと大変な過去が隠されている可能性もありそうで、僕は改めてルーファウスの底知れなさを知った気がした。
その中でもひときわ目立っているのはやはり王子様、なんかね、纏うオーラが既にキラキラしていてなんか違うんだよ。顔立ちだけで言ったらルーファウスも同じくらいの美形でキラキラなのだけど、なんか種類が違う。
身に纏っているものが地味を装っていても高級品なのがダダ洩れているから余計になのかな? やっぱり王子様は庶民とは存在感から違うんだな。
「ねぇ、あんたさぁ、背縮んだ? 三年前からなんにも変わらな過ぎてウケるんですけど! ちゃんと成長してんの? しかも未だに学生服って、何年その服着倒すつもり? だっさ!」
茉莉が定食屋を出た瞬間から小太郎に絡んでいる。そんな怒涛の口撃に小太郎は「あの」とか「その」とか口を挟みたそうにしているのだが、茉莉のお喋りは止まる気配がない。
二人の仲は悪そうには見えないけれど、力関係は一目瞭然でこんな感じに幼馴染である彼女に小太郎は振り回されてきたんだろうなというのは容易に想像ができた。
「君達は今晩の宿は決まっているのかな? こんな所で立ち話もなんだし、もし良かったら私達の宿に来るかい?」
キラキラの王子様が親し気にこちらに声をかけてくる。そんな王子様とは対照的に茉莉の護衛と言っていた女騎士のマリーは王子の前に立ち、相変らずこちらを睨み付け警戒心MAXの様子だ。
「レオンハルト様、こんな不審者どもをそんな安易に懐に入れるような真似はお止めください!」
「ん~……でも、私にとっても全く見知らぬ者達という事もなさそうなのだよ、ね、ルーファウスおじ様?」
「…………え?」
王子の言葉に思わずルーファウスの方を向くと、ルーファウスは苦虫を嚙み潰したような表情で「気付いてらしたんですか」と大きく溜息を吐いた。
「私はこれでも記憶力は良い方でね、一度会った事のある人物の顔と名前は忘れないんだ」
「大した記憶力ですね、最後に私が直接貴方にお会いしたのは、貴方がまだ幼子の頃であったと思うのですが」
「ははは、おじ様はAランク冒険者として随分名が売れているだろう? 三年前のドラゴン討伐依頼にも参加されていた事には気付いていたよ。私もあの時にはドラゴン討伐に参加していたんだ」
「知っていますよ、あの時貴方はそちらのお嬢様に夢中でこちらなど眼中にもなかったでしょう」
「あの時おじ様は知らん顔で声もかけてくれなくて、こちらも声をかけそびれただけですよ」
淡々と王子様と会話を続けるルーファウス。まさか二人が知り合いだなんて、二人は一体どういう関係なんだ?
「なに? レオ、あんたその綺麗なお兄さんと知り合いなの?」
「知り合いというか、親戚筋だよ。マツリは確かうちの総務大臣のアルバートとは面識があったよね? 彼はその大臣の御子息さ」
!? 王子のその言葉に言われた茉莉だけではなく、僕達まで驚いてルーファウスを見やる。聞いてない、聞いてないぞ! ルーファウスが大臣の子息とか全然全く聞いてない!
「父は父、私は私で縁はとうに切れてます。そもそも妾の子である私など父は子とも思っていないでしょう、ホーリーウッドの籍からも私は既に除外されているはずです」
「おや、おかしいな。私は貴方は大臣の自慢の息子だと聞いているけれど?」
「何かの聞き間違いでしょう。私は父に嫌われていますので」
相変らず淡々とした語り口のルーファウス。なんだか聞いてるだけで根の深そうな確執を感じる親子関係だな……
「まぁ、おじ様がそう言うのであれば、この話はここまでで。という訳で、彼の身元は割れているし、おじ様の冒険者仲間に不審な所はないと私は思っているのだけれど、マリー、君の考えは変わらない?」
「あ、いえ、レオンハルト様がそう仰られるのでしたら……」
先程までの勢いが失速したマリーはちらりとルーファウスを見やる。彼女としてはまだ半信半疑って所なのだろうな。そもそも僕だってまだ信じられないくらいだし。
でも、こうやって王子と普通に会話ができているあたり、恐らく全て本当の事なのだろう。ホーリーウッドの名を聞いた時から、ルーファウスが貴族の出だという事は分かっていたけど、まさか大臣の子息だったなんてな……っていうか、そのアルバート総務大臣はルーファウスの父親って事は当然ルーファウスより年上なんだよな? とすると、もしかしてこの国が建国された当初から大臣をやっていたりするのかも? ついでに、もしかしたら滅茶苦茶偉いこの国の重鎮だったりするのかも??
ちらりと横目に盗み見るルーファウスの横顔はいつもと変わらない。
ルーファウスの過去には色々な事があったのだろうなと常々思っていたけれど、これは僕が想像しているよりもずっと大変な過去が隠されている可能性もありそうで、僕は改めてルーファウスの底知れなさを知った気がした。
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