童貞のまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話

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第四章

言いたくなるのは分かるけど

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「あの、茉莉さん、そんな頭ごなしの喋り方だと小太郎君が言いたい事も言えなくなってしまうので、少し声のトーンは落としましょう」
「は? 関係ない人は黙っててもらえる? これはあたしとこいつの問題なんで」

 ぴしゃりと言われて僕は言葉に詰まる。確かに僕はこの問題に関して完全に無関係な人間だけど、こんな一方的な詰問では小太郎は話したい事の一割も話せないという事が分かるので、見ていてどうにももどかしい。

「では客観的な意見だけ。先程貴女は小太郎君を見てまるで育っていないと言いましたよね、制服も三年着倒したにしては綺麗すぎると思いませんでしたか? 普通14歳からの三年間だったら男女ともに成長期です、男子なら一気に背が伸びていても不思議ではない、けれど貴方は彼を見て縮んだとすら言っていた、それは貴女だけが成長していて、彼が全く成長していないからだと思いませんか?」
「は……」
「いくら成長期だと言っても人は一ヵ月程度ではそんなに大きくなれません、よく見てください、彼は現在17歳の少年に見えますか?」

 一瞬の沈黙の後「こいつの育ちが悪いだけでしょ」と茉莉は吐き捨てるが、大人の三年間などほぼ誤差の範囲の期間だが、少年時代の三年間はその限りではない。14歳から17歳の見た目が全く変わらないなんて、そんなのはほぼあり得ない。

「僕は現在13歳、ロイド君は16歳です、それを踏まえた上で今目の前の小太郎君が一体いくつに見えますか?」

 僕の身長は小太郎とほぼ変わらない、一方でロイドは僕達より頭一つ分背が高い。身長だけが基準になるとは思わないけれど、どう見ても小太郎の見た目は13歳である僕に近く、ロイドより年上になんてどう頑張っても見えやしない。
 僕達三人をぐるりと見渡した茉莉は「ちっ」と舌打ちを打って「だったらなんでコタがそんな事になってんのか説明してよ!」と怒りをこちらへと向けてきた。
 小太郎は相変らず委縮してしまって一言も発せず縮こまったままだ。

「その件なんですけど、もしかして聖剣グランバルトには時空魔法系の付与魔法が施されていたりはしませんか?」

 ルーファウスが茉莉にではなくレオンハルト王子に視線を向けて問いかける。

「時空魔法? そんな話は聞いた事がないけれど……」
「けれどコタローはこの剣を手に入れてから、少なくとも一度は転移魔術を使っています。転移魔術は時空魔法で、時空魔法は極めれば時を超える事ができるようになると伝えられています。聖剣グランバルトにもし時空魔法系の魔術付与が施されているのであれば、彼がこの三年という時を飛んだ理由に説明がつきます」

 王子は「なるほど」と、頷いているが茉莉は相変らず不機嫌そうに「あたしだって時空魔法は使えるけど、そんなの知らない」とそう言った。

「この剣には少なくとも各種能力値アップという強力な魔術付与が施されている事は分かっているのですが、それ以外がさっぱりなのですよ。どうやら剣自体に情報の隠蔽がされているようで、鑑定士に依頼してもその詳細が掴めませんでした。お陰で先程指摘を受けるまでこれが聖剣グランバルトである事すら私達は知り得なかったのです。そして私達とコタローが出会ったのもまた昨日の事、彼に詳しい状況を語ってもらう以外には何事も説明のしようがありません。ですのでまずは彼の話に耳を傾けるのが最善かと」

 ルーファウスがそこまで言って、ようやく話を聞く気になったのか茉莉は大人しくソファーに腰掛け、ふいっとそっぽを向くと机に乗った茶菓子のクッキーを幾つか鷲掴み口の中に放り込むとお茶を啜り始めた。
 ようやく落ち着いた所で、小太郎はぽつりぽつりと昨日も僕達に話してくれたような事情を、昨日よりも詳しく説明していく。口下手な小太郎の話は要領を得ない部分も多いのだが、小太郎が分かっていない部分は王子からの解説も入って僕達にもずいぶん分かりやすい話になってきた。

 小太郎と茉莉がこの世界にやって来て一番最初に居た場所は王宮の一室で、小太郎が何人かおじさんが居たと言っていたその人達はこの国の国王陛下と国政に関わる重鎮の何人かであったらしい。
 彼等が召喚された理由は先程から語っている通り「魔物の大暴走スタンピード」を止めるため、そして魔王を討伐するため、古より伝えられている勇者召喚の儀式を行い二人を呼び寄せたのだとか。
 小太郎に聖剣を渡したのは大臣の一人で、使い手を自らの意志で選別する聖剣グランバルトなら本物の勇者を見分けられる、即ち聖剣に認められたのならその者は間違いなく勇者であるという証明になるという思惑からのことだった。けれど、元々教会で大事に管理保管されていた聖剣を教会側がそう簡単に差し出す訳もなく、実は秘密裏に王命で持ち出されていたらしい。
 というのも元々王妃でもある大聖女様はこの勇者召喚にはあまり乗り気ではなかったのだそうだ。古から伝承として残っている勇者召喚だが、詳しい資料などはほとんど残っておらず勇者を召喚しようとして別の何か得体の知れない物を召喚してしまう危険もあるとの事で、そんな危険を犯してまで異世界からの勇者を頼る意味が分からないというのが彼女の言い分であった。
 けれど数百年に渡る魔王討伐の悲願、しかも間もなく魔物の大暴走スタンピードが起こる300年目、王はこのままではグランバルト王国は魔王に滅ぼされてしまうかもしれないと危機感を募らせており、王妃には秘密裏に勇者召喚を決行する事となったのだ。
 勇者召喚の儀式の詳しい手順な何も残されていない、けれどここで「自分はかつてその勇者召喚の儀式に立ち会った事がある」と名乗り出た人物が居た。

「これは君もよく知る人物なのだけど分かるかな?」

 不意にレオンハルト王子がそんな事を言ってルーファウスを見やる。それにルーファウスはものすごく嫌そうな顔で「もしかして父ですか?」と返すと、王子は「ご名答」と笑みを浮かべた。

「この勇者召喚の儀式はアルバート総務大臣の主導で行われたと私は聞いているよ。そして勇者コタローに聖剣グランバルトを渡したのも彼さ」

 ああ、確かに小太郎は聖剣グランバルトを渡してきたのはエルフだったと言っていた、そしてルーファウスにどこか似ていたとも言っていたのだ。もしかして親戚か? などと思っていたが、似ていて当然だ親子なのだから。
 だとすると小太郎に紋印を刻み付けたのもそのアルバート総務大臣ということか……その辺の事を捕捉的に僕が告げると、ルーファウスはまた少し険しい表情で黙りこんだ。

「ルーファウス、どうかした?」
「まだ仮定の話ですが、もしかするとコタローを城の外へ放り出したのは父の仕業かもしれません」
「え? なんで?」
「私に時空魔法は極めると時を超える事ができるらしいと私に教えたのは父です、父は私同様に時空魔法を扱えます。そして恐らく私よりもレベルは上です」

 ルーファウスの時空魔法のレベルは8だと以前に聞いた、そしてそれより上のレベルとなると、もしかすると既にMAXレベルの10である可能性も否定できない。
 けれど、自ら呼び出しておきながら小太郎を放り出す意味が分からない。しかも聖剣グランバルトを押し付けた上でだ。

「意図的に小太郎君に目印だけ付けて放り出した……?」
「その可能性を私は否定できません」

 苦虫を噛み潰したような表情のルーファウス。何か思う所でもあるのだろうか?

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