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第四章
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真顔で冷ややかな視線をこちらへと向けたアルバート、けれどその視線を毅然と見返していたら彼はふっと瞳を細め「ルーファウス、お前は良い仲間を持ったようだ」と笑みを浮かべた。
正直その笑顔、もう胡散臭くしか見えないけどね! 確かに彼の言っている事は正しい事も多いけど、自分が答えたくない事には答えようとしないし、正論で返されればさらりと身を躱す。
結局こちらは話をはぐらかされてばかりでまともな回答は得られない。前にホウエル枢機卿が屁理屈で口撃するルーファウスに『これだからエルフは』なんて言っていた事があったけれど、エルフってのは歳を重ねている分だけ口達者な者が多いのかもしれないな。
「ルーファウス、私はお前にもう何も無理強いをするつもりはない。お前がホーリーウッドの名を捨てて冒険者への道を選んだ時点で里の長老達はお前を見限った。だが私はそれで良いと思っている」
「…………」
「お前は何にも囚われず自由に生きればそれで良い。私がタロウの真実を今まで語らなかったのもその為だ。だが、私は信じていた。お前はタロウの愛したこの国を見捨てる事だけはしない、とね」
「……貴方は本当に嫌な人だ」
そう呟いてルーファウスがぎゅっと拳を握る。
「私はそれが仕事のようなものだからな」
「タロウが死んでいないというのは嘘偽りなく真実なのですか?」
「ああ、時折彼の分身が私の所に訪ねてくるからね」
タロウさんって、そんな事も出来るのか。魔物達を狂わす程の魔力を封じながらそれでも彼は生き続けている。そうか、生きているんだ……
何故か僕の胸の中が少しだけざわりと揺れる。
死んでしまったと思っていたルーファウスの大事な人が生きていた事を本当は嬉しく思わなければ駄目なのに、複雑な感情が僕の胸を焦がす。
恋愛経験なんて無いに等しい僕が今まで一度も抱いた事のないこの感情、これは嫉妬か? ルーファウスの初恋で僕に面影を重ねている相手、僕はそんな彼に嫉妬している。
こんな感情、知りたくなかったな……
「彼は何処にいるのですか?」
「これ以上は教えられないよ」
「はぁ!?」
「これは機密情報だと言っただろう? 私達に手を貸してくれる気もない部外者に教えられる情報はここまでだ」
アルバートはそう言ってくるりとルーファウスに背を向ける。
「ひと月後、例年通り王都から魔王城へ向けて兵を向かわせる。それにはレオンハルト王子と聖女様も参戦予定だ。今年は王国建国300年の節目でもあり大暴走の懸念もある、派兵は通常とは異なる大規模なものとなるだろう。もちろんその際冒険者からも勇士を募るつもりでいる。私は君達に無理強いはしない、けれど、もしそれに参戦の意志があるのならば、それまでに王都まで来るといい」
無理強いはしないと言いつつも、来なけりゃ情報は渡さないって事か。
自分は何もしていないという顔で人を動かすというのは正にこういう事を言うのだろうな。全くもって意地が悪い。
「さて、私はもうそろそろ行くよ。これでも忙しい身でね、もっと募る話がしたかったのだけどそういう訳にもいかないんだ。ああ、この屋敷は自由に使ってもらって構わない。何と言ってもここは君の家でもあるのだからね。セルジュ、後は任せたよ」
アルバートがそう言うと執事なのであろう老紳士は「仰せのままに、ご主人様」と頷いた。それを見届けるとアルバートもひとつ頷き、こちらにちらりと視線を投げて寄越す。
何故僕の方を見るのか分からなくて首を傾げたら、アルバートは意味ありげにこちらへとウィンクして指をぱちんと鳴らすと姿を消した。恐らく転移魔法で王都へと戻ったのだろう。
それにしても今のウィンクの意味ってなんだ? 頭にクエスチョンマークを大量に浮かべつつも、考えても分からない事は考えるだけ無駄だと割り切る。
「坊ちゃま、本日はご宿泊で?」
この屋敷の執事なのであろうセルジュさんがルーファウスに問う。
ルーファウスってこの屋敷では『坊ちゃま』って呼ばれてるのか。年齢だけは何処にいっても最年長だったルーファウスだけど、年嵩のエルフに囲まれてしまえばその扱いは『坊ちゃま』なのだと思うと少し可笑しい。
「セルジュ、坊ちゃまはやめてくれ。ルーファウスでいい」
「ではルーファウス様、お部屋は発たれた時そのままに何時でも使用できるように整えてございます」
「……お前は変わらないな」
「お褒めにあずかり光栄です」
胸に手を添え恭しく頭を下げる老紳士にルーファウスはまた溜息を吐いた。
「どうやらリブル滞在の間の宿代が浮いたようですよ」
「そのようだな。聖女様達はどうする? 呼ぶか?」
「ホテルも警備が万全ではないようですし、今回の事と……今後の事も話し合いたいのでお招きいたしましょうかね。セルジュ、客人があと3名、いや4名来るから準備をお願いできるかな?」
「承知いたしました」
セルジュはルーファウスの命を受け、メイド達に指示を飛ばしていく。
こうして僕達はここから数日間ルーファウスの実家(?)でお世話になる事になったんだ。
正直その笑顔、もう胡散臭くしか見えないけどね! 確かに彼の言っている事は正しい事も多いけど、自分が答えたくない事には答えようとしないし、正論で返されればさらりと身を躱す。
結局こちらは話をはぐらかされてばかりでまともな回答は得られない。前にホウエル枢機卿が屁理屈で口撃するルーファウスに『これだからエルフは』なんて言っていた事があったけれど、エルフってのは歳を重ねている分だけ口達者な者が多いのかもしれないな。
「ルーファウス、私はお前にもう何も無理強いをするつもりはない。お前がホーリーウッドの名を捨てて冒険者への道を選んだ時点で里の長老達はお前を見限った。だが私はそれで良いと思っている」
「…………」
「お前は何にも囚われず自由に生きればそれで良い。私がタロウの真実を今まで語らなかったのもその為だ。だが、私は信じていた。お前はタロウの愛したこの国を見捨てる事だけはしない、とね」
「……貴方は本当に嫌な人だ」
そう呟いてルーファウスがぎゅっと拳を握る。
「私はそれが仕事のようなものだからな」
「タロウが死んでいないというのは嘘偽りなく真実なのですか?」
「ああ、時折彼の分身が私の所に訪ねてくるからね」
タロウさんって、そんな事も出来るのか。魔物達を狂わす程の魔力を封じながらそれでも彼は生き続けている。そうか、生きているんだ……
何故か僕の胸の中が少しだけざわりと揺れる。
死んでしまったと思っていたルーファウスの大事な人が生きていた事を本当は嬉しく思わなければ駄目なのに、複雑な感情が僕の胸を焦がす。
恋愛経験なんて無いに等しい僕が今まで一度も抱いた事のないこの感情、これは嫉妬か? ルーファウスの初恋で僕に面影を重ねている相手、僕はそんな彼に嫉妬している。
こんな感情、知りたくなかったな……
「彼は何処にいるのですか?」
「これ以上は教えられないよ」
「はぁ!?」
「これは機密情報だと言っただろう? 私達に手を貸してくれる気もない部外者に教えられる情報はここまでだ」
アルバートはそう言ってくるりとルーファウスに背を向ける。
「ひと月後、例年通り王都から魔王城へ向けて兵を向かわせる。それにはレオンハルト王子と聖女様も参戦予定だ。今年は王国建国300年の節目でもあり大暴走の懸念もある、派兵は通常とは異なる大規模なものとなるだろう。もちろんその際冒険者からも勇士を募るつもりでいる。私は君達に無理強いはしない、けれど、もしそれに参戦の意志があるのならば、それまでに王都まで来るといい」
無理強いはしないと言いつつも、来なけりゃ情報は渡さないって事か。
自分は何もしていないという顔で人を動かすというのは正にこういう事を言うのだろうな。全くもって意地が悪い。
「さて、私はもうそろそろ行くよ。これでも忙しい身でね、もっと募る話がしたかったのだけどそういう訳にもいかないんだ。ああ、この屋敷は自由に使ってもらって構わない。何と言ってもここは君の家でもあるのだからね。セルジュ、後は任せたよ」
アルバートがそう言うと執事なのであろう老紳士は「仰せのままに、ご主人様」と頷いた。それを見届けるとアルバートもひとつ頷き、こちらにちらりと視線を投げて寄越す。
何故僕の方を見るのか分からなくて首を傾げたら、アルバートは意味ありげにこちらへとウィンクして指をぱちんと鳴らすと姿を消した。恐らく転移魔法で王都へと戻ったのだろう。
それにしても今のウィンクの意味ってなんだ? 頭にクエスチョンマークを大量に浮かべつつも、考えても分からない事は考えるだけ無駄だと割り切る。
「坊ちゃま、本日はご宿泊で?」
この屋敷の執事なのであろうセルジュさんがルーファウスに問う。
ルーファウスってこの屋敷では『坊ちゃま』って呼ばれてるのか。年齢だけは何処にいっても最年長だったルーファウスだけど、年嵩のエルフに囲まれてしまえばその扱いは『坊ちゃま』なのだと思うと少し可笑しい。
「セルジュ、坊ちゃまはやめてくれ。ルーファウスでいい」
「ではルーファウス様、お部屋は発たれた時そのままに何時でも使用できるように整えてございます」
「……お前は変わらないな」
「お褒めにあずかり光栄です」
胸に手を添え恭しく頭を下げる老紳士にルーファウスはまた溜息を吐いた。
「どうやらリブル滞在の間の宿代が浮いたようですよ」
「そのようだな。聖女様達はどうする? 呼ぶか?」
「ホテルも警備が万全ではないようですし、今回の事と……今後の事も話し合いたいのでお招きいたしましょうかね。セルジュ、客人があと3名、いや4名来るから準備をお願いできるかな?」
「承知いたしました」
セルジュはルーファウスの命を受け、メイド達に指示を飛ばしていく。
こうして僕達はここから数日間ルーファウスの実家(?)でお世話になる事になったんだ。
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