童貞のまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話

矢の字

文字の大きさ
149 / 222
第四章

無料の宿泊先をゲットしました

しおりを挟む
 真顔で冷ややかな視線をこちらへと向けたアルバート、けれどその視線を毅然と見返していたら彼はふっと瞳を細め「ルーファウス、お前は良い仲間を持ったようだ」と笑みを浮かべた。
 正直その笑顔、もう胡散臭くしか見えないけどね! 確かに彼の言っている事は正しい事も多いけど、自分が答えたくない事には答えようとしないし、正論で返されればさらりと身を躱す。
 結局こちらは話をはぐらかされてばかりでまともな回答は得られない。前にホウエル枢機卿が屁理屈で口撃するルーファウスに『これだからエルフは』なんて言っていた事があったけれど、エルフってのは歳を重ねている分だけ口達者な者が多いのかもしれないな。

「ルーファウス、私はお前にもう何も無理強いをするつもりはない。お前がホーリーウッドの名を捨てて冒険者への道を選んだ時点で里の長老達はお前を見限った。だが私はそれで良いと思っている」
「…………」
「お前は何にも囚われず自由に生きればそれで良い。私がタロウの真実を今まで語らなかったのもその為だ。だが、私は信じていた。お前はタロウの愛したこの国を見捨てる事だけはしない、とね」
「……貴方は本当に嫌な人だ」

 そう呟いてルーファウスがぎゅっと拳を握る。

「私はそれが仕事のようなものだからな」
「タロウが死んでいないというのは嘘偽りなく真実なのですか?」
「ああ、時折彼の分身が私の所に訪ねてくるからね」

 タロウさんって、そんな事も出来るのか。魔物達を狂わす程の魔力を封じながらそれでも彼は生き続けている。そうか、生きているんだ……
 何故か僕の胸の中が少しだけざわりと揺れる。
 死んでしまったと思っていたルーファウスの大事な人が生きていた事を本当は嬉しく思わなければ駄目なのに、複雑な感情が僕の胸を焦がす。
 恋愛経験なんて無いに等しい僕が今まで一度も抱いた事のないこの感情、これは嫉妬か? ルーファウスの初恋で僕に面影を重ねている相手、僕はそんな彼に嫉妬している。
 こんな感情、知りたくなかったな……

「彼は何処にいるのですか?」
「これ以上は教えられないよ」
「はぁ!?」
「これは機密情報だと言っただろう? 私達に手を貸してくれる気もない部外者に教えられる情報はここまでだ」

 アルバートはそう言ってくるりとルーファウスに背を向ける。

「ひと月後、例年通り王都から魔王城へ向けて兵を向かわせる。それにはレオンハルト王子と聖女様も参戦予定だ。今年は王国建国300年の節目でもあり大暴走スタンピードの懸念もある、派兵は通常とは異なる大規模なものとなるだろう。もちろんその際冒険者からも勇士を募るつもりでいる。私は君達に無理強いはしない、けれど、もしそれに参戦の意志があるのならば、それまでに王都まで来るといい」

 無理強いはしないと言いつつも、来なけりゃ情報は渡さないって事か。
 自分は何もしていないという顔で人を動かすというのは正にこういう事を言うのだろうな。全くもって意地が悪い。

「さて、私はもうそろそろ行くよ。これでも忙しい身でね、もっと募る話がしたかったのだけどそういう訳にもいかないんだ。ああ、この屋敷は自由に使ってもらって構わない。何と言ってもここは君の家でもあるのだからね。セルジュ、後は任せたよ」

 アルバートがそう言うと執事なのであろう老紳士は「仰せのままに、ご主人様」と頷いた。それを見届けるとアルバートもひとつ頷き、こちらにちらりと視線を投げて寄越す。
 何故僕の方を見るのか分からなくて首を傾げたら、アルバートは意味ありげにこちらへとウィンクして指をぱちんと鳴らすと姿を消した。恐らく転移魔法で王都へと戻ったのだろう。
 それにしても今のウィンクの意味ってなんだ? 頭にクエスチョンマークを大量に浮かべつつも、考えても分からない事は考えるだけ無駄だと割り切る。

「坊ちゃま、本日はご宿泊で?」

 この屋敷の執事なのであろうセルジュさんがルーファウスに問う。
 ルーファウスってこの屋敷では『坊ちゃま』って呼ばれてるのか。年齢だけは何処にいっても最年長だったルーファウスだけど、年嵩のエルフに囲まれてしまえばその扱いは『坊ちゃま』なのだと思うと少し可笑しい。

「セルジュ、坊ちゃまはやめてくれ。ルーファウスでいい」
「ではルーファウス様、お部屋は発たれた時そのままに何時でも使用できるように整えてございます」
「……お前は変わらないな」
「お褒めにあずかり光栄です」

 胸に手を添え恭しく頭を下げる老紳士にルーファウスはまた溜息を吐いた。

「どうやらリブル滞在の間の宿代が浮いたようですよ」
「そのようだな。聖女様達はどうする? 呼ぶか?」
「ホテルも警備が万全ではないようですし、今回の事と……今後の事も話し合いたいのでお招きいたしましょうかね。セルジュ、客人があと3名、いや4名来るから準備をお願いできるかな?」
「承知いたしました」

 セルジュはルーファウスの命を受け、メイド達に指示を飛ばしていく。
 こうして僕達はここから数日間ルーファウスの実家(?)でお世話になる事になったんだ。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...