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第五章
謁見終了
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「ははは、父上もマツリにかかると形無しですね」
混沌とした謁見の間に笑い声が響く。その声の主はレオンハルト王子で、彼はそれはもう心底可笑しいという感じに笑い続けている。
「レオンハルト、慎みなさい。陛下の御前ですよ!」
そんな王子を𠮟責したのは、国王陛下の横で渋い表情のまま黙っていた王妃様。即ちレオンハルト王子の母親だ。
「すみません母上、ふふ、あまりにも父上とマツリのやり取りが可笑しくて、あははは」
「笑い事ではありません、レオンハルト。これは国王陛下に対する暴言です、不敬ですよ」
「ですがマツリは間違った事は言っていない。しかも彼女はそれを分かった上で私達を助けようと動いてくれている。母上、彼女はまさに聖女の鑑だと思いませんか?」
「聖女というのは慎ましくたおやかで、誰からも尊敬される存在で在らねばならぬのです。私はその者を聖女だなんて認めません!」
ああ、そういえばここの国王夫妻はそれで一瞬即発の喧嘩をしているんだったか。確か息子が好きになった相手であるのならどんな娘でもいいじゃないかの国王陛下と、あんなとんでも聖女では国母は務まらないという王妃様の対立で王家と教会が揉めてるって話だったよなぁ……
「べっつに、あたしは聖女だなんて認めてもらわなくても平気だし、かったるくてやってらんない」
まぁ、ですよね~
「まぁ! 貴女のその言動が聖女として相応しくないと言っているのにその態度! 私は貴女をレオンハルトの妻にだなんて、絶対に認めませんからね!」
「だ~か~ら~、あたしは聖女だって認めてもらわなくていいって言ってるし、レオと結婚する気もないって言ってんのにおばさん話聞いてる? あたしは彼ピと番になって卵を産むって約束してんの! レオなんてお呼びじゃないの、むしろ迷惑!」
「おば……しかも聖女として一番誉れ高い役職である王妃を迷惑などと……」
王妃が役職かぁ……そこに愛はあるのかい? と少しツッコみたくはなるけれど、今まで歴代の王妃はそうやって決められてきたのだろうし、完全に部外者である僕にはその習慣を否定はできないからなぁ。
「とりあえず今日は約束通りコタを連れて来たし、聖剣を持って帰って来た、それだけで充分でしょ。ほらさっさと聖剣持ってきなよ」
「いや、しかしだな……」
国王陛下が困ったような表情でロイドと聖剣を見比べる。
確かに聖剣グランバルトは現在ロイド以外の持ち手を受け付けない、これでは返すに返せない。
「と、とりあえず、その聖剣と現在所有者となってしまった勇者ロイドに関しては今からどのように遇するかの検討を進めたいと思う。まずは長旅疲れたであろう、魔王領への派兵までまだ今しばらく猶予がある、勇者ロイドとそのお仲間の方々、それまでこの王城でゆるりと過ごされると良い」
少しばかり疲れたような表情で国王陛下がそう告げると、僕達は追い立てられるように謁見室を追い出された。
これ、なんだか更に面倒な事になっている気がしてならない。そしてロイドは謁見室を追い出されても呆然としたままで魂が抜けたようになってしまっている。
「ロイド君、ロイド君、大丈夫?」
「だ、大丈夫……? なのか? これ、俺が持ってて本当に大丈夫なのか?」
「えっと、それはどうなんだろうね?」
聖剣グランバルトは相変らずここが居場所と言わんばかりにロイドの腰ベルトにしゃきん! と収まっている。
いつも得意気に見た目にはどの部位かも分からない胸(?)を張っているライムと似たようなものを感じるな。
「あの……ロイドさん、なんか、本当にごめんなさい!」
別に小太郎が謝る必要などないのに彼は勢いをつけて頭を下げる。
だけど実際のところ僕達は小太郎と出会っていなければこんな事にはなっていなかったはずで、それを思えば事の発端は小太郎にあると言ってもいい。
だがそもそもこの異世界への召喚に小太郎自身ですら巻き込まれただけである可能性を僕達は否定できないのだ。
「まぁ、今回はタケルが矢面に立つ事なく済んで個人的にはホッとしましたけどね」
そんな風にルーファウスが言った言葉にロイドは複雑そうな表情を浮かべる。
「そもそも俺なんかこのパーティ内で一番のどべなのに……」
「聖剣があなたを選んだのですから仕方がありません。あ、そうそう、タケルは引き続きその剣には絶対に触れてはダメですよ。何が起こるか分かりませんからね」
何が起こるかって、何も起こらないだろう? だって聖剣は既にロイドを選んだのだから剣士でも何でもない僕なんて最初からお呼びじゃないはずだ。
それでも絶対に触れては駄目だと念押しをするように告げるルーファウスに呆れながらも「分かったよ」と僕は返事を返す。本当にルーファウスは過保護過ぎるよ。
僕達は聖剣グランバルトの事もあってそのまま王城での滞在を余儀なくされ、客室へと通される。さすがに王城の客室なだけあって室内は無駄に絢爛豪華だ。
リブルの街で宿泊させてもらった高級ホテルの部屋も相当豪華だったが、それと比べても更に一段と豪華な室内に貧乏性な僕はソワソワしてしまう。
「なんか場違い感半端ないですね、はは」
ふわふわな室内の絨毯を踏みしめ、この床ならこのまま寝れるな、なんて思ってしまう辺り、ずいぶん冒険者生活に慣れたなと思う。
『タケル~難しいお話おわった~?』
僕のローブの胸ポケットに大人しく収まっていたライムがひょっこりと顔を覗かせる。そして、今まで見た事のない景色に『ここどこ~?』と、辺りを飛び回り始めた。
「ライム、散策は部屋の中だけだよ、迷子になるからね」
『は~い』
そんな良い子のお返事で飛び跳ねまわるライムに呼応するように小太郎の学ランのポケットがもそもそと動きだした。
ポケットに何か入っているのかとそれを凝視していたらその小太郎のポケットからひょっこり一匹のスライムが顔を覗かせた。
「あれ? その子……」
「え? ああ、なんかこのスライム、ボクのポケットの中が居心地良いみたいで出ていかないんですよ」
そう言って小太郎がそのスライムを撫でると、スライムは身をプルプルと震わせてとても嬉しそうにしている。
「その子の名前は?」
「え? 名前?」
「付けてないの?」
「えっと、だって、このスライム、タケルさんの従魔ですよね?」
ん~? そうなのかな? 確かにそのスライムはライムから分裂して小太郎が熱を出した時に一生懸命熱を冷まそうとしていたスライムの内の一匹なのだと思う。
それはライムの分裂体なので僕の従魔とも言えるのかもしれないけれど、ライムと完全分離している今、その子が僕の従魔なのかと言われると正直よく分からない。
「僕の従魔のスライムは一応ライム一匹だけなんだよね。ライムが取り込んで仲間にしている子達はライムの掛け声ひとつで僕の言う事を聞いてくれるけど、僕が一匹ずつ全員を従魔にしてる訳じゃないんだ。だからその子が小太郎君を好いているなら、その子は小太郎君の従魔にしてもいいと思うよ」
「この子をボクの従魔に? どうやるんですか?」
「その子に名前を付けてあげて、それで従魔契約は完了」
小太郎がポケットから顔を覗かせていたスライムを掌に乗せてじっと見つめる。小太郎の掌に乗せられたスライムはソワソワと少し落ち着かない様子だ。
「じゃあ、響」
なんかすごい良さげな名前がさっくり出てきた。
僕の名付けセンスの無さは折り紙付きで、ライムはスライムのライムだし、オロチはヤマタノオロチからで安直でしかなかったのに、小太郎君はセンスいいな。
そんな事を思っていたら小太郎の掌の上のスライムの体がじんわりと発光しだして、そしてしばらくすると光は治まった。
『おいらの名前! おいらの名前はヒビキ! やったぁ!!』
先程までうんともすんとも喋る事がなかったスライムの声が不意に頭に響く。
「わ! 君、喋れたの!?」
小太郎が慌てたようにスライムを見やると、嬉しそうなスライムは『コタローが名前を付けてくれたから!』と、伸び縮みを繰り返す。
そして無事に小太郎の従魔になった様子のスライムの響は嬉しそうに跳ねて、小太郎の掌から肩に飛び移り、そして最終的に頭の上で落ち着いた。
混沌とした謁見の間に笑い声が響く。その声の主はレオンハルト王子で、彼はそれはもう心底可笑しいという感じに笑い続けている。
「レオンハルト、慎みなさい。陛下の御前ですよ!」
そんな王子を𠮟責したのは、国王陛下の横で渋い表情のまま黙っていた王妃様。即ちレオンハルト王子の母親だ。
「すみません母上、ふふ、あまりにも父上とマツリのやり取りが可笑しくて、あははは」
「笑い事ではありません、レオンハルト。これは国王陛下に対する暴言です、不敬ですよ」
「ですがマツリは間違った事は言っていない。しかも彼女はそれを分かった上で私達を助けようと動いてくれている。母上、彼女はまさに聖女の鑑だと思いませんか?」
「聖女というのは慎ましくたおやかで、誰からも尊敬される存在で在らねばならぬのです。私はその者を聖女だなんて認めません!」
ああ、そういえばここの国王夫妻はそれで一瞬即発の喧嘩をしているんだったか。確か息子が好きになった相手であるのならどんな娘でもいいじゃないかの国王陛下と、あんなとんでも聖女では国母は務まらないという王妃様の対立で王家と教会が揉めてるって話だったよなぁ……
「べっつに、あたしは聖女だなんて認めてもらわなくても平気だし、かったるくてやってらんない」
まぁ、ですよね~
「まぁ! 貴女のその言動が聖女として相応しくないと言っているのにその態度! 私は貴女をレオンハルトの妻にだなんて、絶対に認めませんからね!」
「だ~か~ら~、あたしは聖女だって認めてもらわなくていいって言ってるし、レオと結婚する気もないって言ってんのにおばさん話聞いてる? あたしは彼ピと番になって卵を産むって約束してんの! レオなんてお呼びじゃないの、むしろ迷惑!」
「おば……しかも聖女として一番誉れ高い役職である王妃を迷惑などと……」
王妃が役職かぁ……そこに愛はあるのかい? と少しツッコみたくはなるけれど、今まで歴代の王妃はそうやって決められてきたのだろうし、完全に部外者である僕にはその習慣を否定はできないからなぁ。
「とりあえず今日は約束通りコタを連れて来たし、聖剣を持って帰って来た、それだけで充分でしょ。ほらさっさと聖剣持ってきなよ」
「いや、しかしだな……」
国王陛下が困ったような表情でロイドと聖剣を見比べる。
確かに聖剣グランバルトは現在ロイド以外の持ち手を受け付けない、これでは返すに返せない。
「と、とりあえず、その聖剣と現在所有者となってしまった勇者ロイドに関しては今からどのように遇するかの検討を進めたいと思う。まずは長旅疲れたであろう、魔王領への派兵までまだ今しばらく猶予がある、勇者ロイドとそのお仲間の方々、それまでこの王城でゆるりと過ごされると良い」
少しばかり疲れたような表情で国王陛下がそう告げると、僕達は追い立てられるように謁見室を追い出された。
これ、なんだか更に面倒な事になっている気がしてならない。そしてロイドは謁見室を追い出されても呆然としたままで魂が抜けたようになってしまっている。
「ロイド君、ロイド君、大丈夫?」
「だ、大丈夫……? なのか? これ、俺が持ってて本当に大丈夫なのか?」
「えっと、それはどうなんだろうね?」
聖剣グランバルトは相変らずここが居場所と言わんばかりにロイドの腰ベルトにしゃきん! と収まっている。
いつも得意気に見た目にはどの部位かも分からない胸(?)を張っているライムと似たようなものを感じるな。
「あの……ロイドさん、なんか、本当にごめんなさい!」
別に小太郎が謝る必要などないのに彼は勢いをつけて頭を下げる。
だけど実際のところ僕達は小太郎と出会っていなければこんな事にはなっていなかったはずで、それを思えば事の発端は小太郎にあると言ってもいい。
だがそもそもこの異世界への召喚に小太郎自身ですら巻き込まれただけである可能性を僕達は否定できないのだ。
「まぁ、今回はタケルが矢面に立つ事なく済んで個人的にはホッとしましたけどね」
そんな風にルーファウスが言った言葉にロイドは複雑そうな表情を浮かべる。
「そもそも俺なんかこのパーティ内で一番のどべなのに……」
「聖剣があなたを選んだのですから仕方がありません。あ、そうそう、タケルは引き続きその剣には絶対に触れてはダメですよ。何が起こるか分かりませんからね」
何が起こるかって、何も起こらないだろう? だって聖剣は既にロイドを選んだのだから剣士でも何でもない僕なんて最初からお呼びじゃないはずだ。
それでも絶対に触れては駄目だと念押しをするように告げるルーファウスに呆れながらも「分かったよ」と僕は返事を返す。本当にルーファウスは過保護過ぎるよ。
僕達は聖剣グランバルトの事もあってそのまま王城での滞在を余儀なくされ、客室へと通される。さすがに王城の客室なだけあって室内は無駄に絢爛豪華だ。
リブルの街で宿泊させてもらった高級ホテルの部屋も相当豪華だったが、それと比べても更に一段と豪華な室内に貧乏性な僕はソワソワしてしまう。
「なんか場違い感半端ないですね、はは」
ふわふわな室内の絨毯を踏みしめ、この床ならこのまま寝れるな、なんて思ってしまう辺り、ずいぶん冒険者生活に慣れたなと思う。
『タケル~難しいお話おわった~?』
僕のローブの胸ポケットに大人しく収まっていたライムがひょっこりと顔を覗かせる。そして、今まで見た事のない景色に『ここどこ~?』と、辺りを飛び回り始めた。
「ライム、散策は部屋の中だけだよ、迷子になるからね」
『は~い』
そんな良い子のお返事で飛び跳ねまわるライムに呼応するように小太郎の学ランのポケットがもそもそと動きだした。
ポケットに何か入っているのかとそれを凝視していたらその小太郎のポケットからひょっこり一匹のスライムが顔を覗かせた。
「あれ? その子……」
「え? ああ、なんかこのスライム、ボクのポケットの中が居心地良いみたいで出ていかないんですよ」
そう言って小太郎がそのスライムを撫でると、スライムは身をプルプルと震わせてとても嬉しそうにしている。
「その子の名前は?」
「え? 名前?」
「付けてないの?」
「えっと、だって、このスライム、タケルさんの従魔ですよね?」
ん~? そうなのかな? 確かにそのスライムはライムから分裂して小太郎が熱を出した時に一生懸命熱を冷まそうとしていたスライムの内の一匹なのだと思う。
それはライムの分裂体なので僕の従魔とも言えるのかもしれないけれど、ライムと完全分離している今、その子が僕の従魔なのかと言われると正直よく分からない。
「僕の従魔のスライムは一応ライム一匹だけなんだよね。ライムが取り込んで仲間にしている子達はライムの掛け声ひとつで僕の言う事を聞いてくれるけど、僕が一匹ずつ全員を従魔にしてる訳じゃないんだ。だからその子が小太郎君を好いているなら、その子は小太郎君の従魔にしてもいいと思うよ」
「この子をボクの従魔に? どうやるんですか?」
「その子に名前を付けてあげて、それで従魔契約は完了」
小太郎がポケットから顔を覗かせていたスライムを掌に乗せてじっと見つめる。小太郎の掌に乗せられたスライムはソワソワと少し落ち着かない様子だ。
「じゃあ、響」
なんかすごい良さげな名前がさっくり出てきた。
僕の名付けセンスの無さは折り紙付きで、ライムはスライムのライムだし、オロチはヤマタノオロチからで安直でしかなかったのに、小太郎君はセンスいいな。
そんな事を思っていたら小太郎の掌の上のスライムの体がじんわりと発光しだして、そしてしばらくすると光は治まった。
『おいらの名前! おいらの名前はヒビキ! やったぁ!!』
先程までうんともすんとも喋る事がなかったスライムの声が不意に頭に響く。
「わ! 君、喋れたの!?」
小太郎が慌てたようにスライムを見やると、嬉しそうなスライムは『コタローが名前を付けてくれたから!』と、伸び縮みを繰り返す。
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