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中編
しおりを挟むわたしは立膝であなたの腕にしがみついていた。
レースのカーテンから月明かりが漏れる寝室に、私たちの影が絡み合って伸びている。
わたしの大切な場所を優しく撫でる彼の指先。
頬に触れるように、頭を撫でるように、柔肌に熱を残していく。
閉じた花弁の隙間から敏感な芽が顔を見せる。
わたしは恥ずかしさに身震いした。
震えが身体を走り抜け、遅れて乳房の先までもが反応した。
小さな声が思わず漏れ、胸の奥で鼓動が跳ねる。
彼の指先が、花の隙間をかすめるようにそっと滑る。
ほんの少し触れただけなのに、皮膚の奥で火花が散ったみたいに息が詰まる。
身動ぎに膝の下で寝床の布が擦れる。
指紋の凹凸まで伝わるようにゆっくり往復すると、その摩擦のたびに喉の奥からこぼれる声を止められなくなる。
「やぁ…っ、ふぁ…///」
声が溢れるたび、触れられている場所はますます敏感に脈打っていった。
腰の奥に徐々に重く蓄積されていく甘い感覚。
しかし、次に襲った擦り上げられる刺激に蓄積が崩壊して、意識が熱に塗りつぶされた。
「ふッ…んんぅうぅ…///」
ぎゅっと目を瞑る。
ガクガクと内腿が震え、しがみつく腕に力が入る。
身体の奥から甘い波が押し寄せ、彼の指先を濡らしていく。
力が抜けてゆっくりと目を開く。
浅く荒い呼吸のまま彼を見返した。
嗚呼、好き。
愛しさと独占の小さな火が、温かく身体の内側で溶け合って漏れ出していた。
きっと、こんな顔は彼にしか見せられない。
彼の瞳が一瞬、獲物を捕らえる猫の鋭さを帯びた。
けれどその奥には迷いがあって、またゆっくりとわたしの大切な場所を撫で始めた。
しがみつく腕に力を込めると、こんな時にも関わらず彼の体温に昔の記憶が蘇る。
『キミは食いしん坊だねぇ』
今でも鮮明に覚えている。
ご飯をねだって、不安に鳴いていた、あの日。
彼の優しい声と、抱きしめられた時の温かさ。
ご飯をねだる子猫のように鳴き声をあげ、腕の中で身を捩りながら、快楽に霞む意識が記憶を飛び飛びにしていく。
ーわたしはバカ猫だ。
兄弟姉妹は次々と遠くへ行った。
でもわたしだけは母親のそばを離れられなかった。
母親は、わたしを連れて人間の近くへ行くことが増えた。
理由なんてわからない、でもそうしなきゃいけなかったんだ。
わたしたちを追い払う人間もいた。
でも、食べ物をくれる人間もいた。
その中には遊んでくれる人間もいた。
わたしはその遊んでくれる人間が大好きだった。
そんなある日ー
「キミは食いしん坊だねぇ」
大好きな人間(あなた)の優しい声。
いつものように彼の住処でご飯を食べていると、わたしを見守っていたはずの母親が居なくなっていた。
わたしは辺りを見渡した。
わたしは母親を呼んだ。
何度も何度も、叫ぶように呼んだ。
だけど、母親は来なかった。
幼いわたしは母親に捨てられた事に気が付かなかった。
ただ置いていかれたと思っていた。
だからーーわたしはバカ猫だった。
不安になったわたしは、人間(あなた)に頼るしかなかった。
お願い!…助けて!助けて!
人間(あなた)はわたしを抱き上げた。
大きくて、毛も少なくて、ちょっと怖い。
でも、とても暖かかった。
わたしは彼の胸に顔を押しつけた。
鼓動が聞こえて、少しずつ怖くなくなっていった。
この時からだと思う。
わたしはあなたとツガイになりたかったんだ。
人間の身体になって、その時と同じように抱きあげられて、腕の中の心地よさを知って、昔を思い出して…
気が付いてしまった。
『恩返し』
そんな言葉でわたしは自分を正当化した。
飛びついて、身体を押し付けて、キスをして、彼の雄に触れて、
ーそして、わたしは放心してしまった。
彼はそんなわたしを寝室に運んでくれた。
寝床にそっと下ろし、タオルケットをかける。
口に含んだ時に感じた雄の匂いにまだ身体は言う事を聞かないが、意識は戻ってきた。
下着を履いた彼が濡れたタオルを持って来て、彼に染まってベタベタなわたしの顔を拭いてくれる。
…人間の綺麗/汚いの感覚にはだいぶ慣れたけど、せっかく付いた彼の匂いが拭き取られしまうのはさみしい。
力の入らない手で彼の腕に触れて抗議する。
「…や。なの」
わたしは力の入らない身体を無理やり起こして、彼の首に腕を回した。
猫みたいに顔を擦り寄せ、そっと唇を重ねようとする。
けれど、咥えたあとの味が残っているせいか、その匂いのせいか、彼は顔をそむけてしまう。
胸がちくりと痛んだ。
…あぁ、そうなんだ。
人間にとっては、これは「綺麗じゃない」ことなんだ。
それが寂しく泣き出したくなる。
寂しさを埋めるようにわたしはねだる。
「じゃあ…触って…」
そう言って立膝になり、彼の手をわたしの大切な場所に運ぶ。
寄りかかるようにその腕にしがみついて、必死に彼の温もりを求める。
ーあの時、わたしが初めてあなたを選んだ時と同じように。
ご飯をねだる子猫のように鳴き声をあげ、腕の中で身を捩りながら、快楽に耽る。
まだ慣れない人間の身体の敏感な感覚。
しかし2度目となるとある程度は勝手が解る。
獲物を狙うようにわたしだけを見つめる彼に応えるように、先ほどより少しだけ脚を広げる。
溶けかけた飴細工のように柔らかくなった花弁が、くにゅう…と彼の指を沈め包む。
その瞬間、一瞬だけ猫の本能が前に出て、知らず腰が少し押し出され、匂いを深く吸い込んでしまった。
微かに香る甘い匂いが鼻腔をくすぐり、息を吸い込むたびに胸の奥がきゅんとする。
ふっくらとしてきた秘部の感触と溢れた熱を感じた彼の男の証が跳ねる。
わざわざ履き直した下着越しでも、鼓動と熱気が伝わってくる。
彼の獣のような吐息が聞こえる。
わたしだけを見つめる視線が熱い。
わたしに触れる手のひらの温もりが肌に染みわたり、指先の圧力で身体の芯が痺れる。
ねえ?
人間の身体になって良かったでしょ?
大人のお姉さんじゃなくても、あなたの視線を奪えるでしょ?
コレならあなたとツガイになれるよね?
往復する彼の指に身を焦がしながら、その手に自身の手を重ねる。
ほんの短い間だけ、わたしの中の猫が前面に出てきて、欲望が理性を押しのけた。
花弁の奥に誘うよう少しだけ力を込めると、彼の呼吸がさらに乱れ、指が止まる。
どうすればいいか分からないはずなのに、わたしは自然と自分の手で彼の指先を導いてしまっていた。
彼の迷いの向こうで、わたしの小さな手が彼の手をしっかりと握り――これがいまの私の意思だと伝える。
彼は息を飲んで、そして…ゆっくりと指を蜜に沈めた。
身体の奥がひくつきながら、彼の指を柔らかく包み込む。
「んっ…あぁ…///」
下唇を噛んで声を押し殺そうとするのに、喉の奥から絞り出てしまう。
自分で促しておきながら、広がっていく熱と蕩ける感覚に耐えきれない。
その胸が上下に揺れ、彼の腕の温もりが心地よく伝わる。
彼の指先はただ触れるだけじゃない。
わたしの鼓動や呼吸に合わせるみたいに、まるでわたしを確かめている。
深くを撫でられるたびに、身体の奥底まで「好き」という気持ちで塗り替えられていく。
彼の体温と、触れられる感覚の濃密さに、身も心も溶けていくようだ。
目が合った。
彼の瞳は、わたしだけを見ていて、怖いくらいに真剣だった。
息を飲んだ。
期待?恐怖?
その視線に心を掴まれたわたしは、膝の力がガクッと抜けてしまう。
ぐらり後ろに倒れるわたしに慌てた彼が背中に腕をまわして、だが支えきれず寝床に2人で倒れ込んだ。
抱きとめようとした彼のしなやかな腕が、安心感と同時に火照りを増幅させる。
彼の胸に押し潰されるように包まれて、彼の心臓の音が響いて、逃げ場のない甘さが広がっていく。
目の前に彼の顔がある。
吐息が触れるたび、唇が重なってしまいそうで私の心臓が跳ねる。
わたしに体重がかからないように腕を付いているが、重なる肌はとても熱い。
獣のような鋭さと、わたしへの心配と、迷いを湛えた彼の瞳に、吸い込まれた。
それでもわたしは…彼に両手を伸ばし抱き寄せる。
それはあなたを受け入れたいという意思表示。
…にゃあ///
口から漏れた誘うような鳴き声。
その響きはもう子猫のものではなかった。
猫の身体だったら壊れてしまうような強い包容。
同じようにわたしも力を込める。
わたしはココにいるよ。
あなたの腕の中にいるよ。
今(にんげん)の身体ならあなたが求める事を叶えてあげられるよ。
好き…。すき…。
彼の包容の中、飽和してしまう気持ちと言葉。
恩返しという言葉で包んだ自分の願望。
わかっていても止められない思い。
その思いは、彼からの熱い吐息交じりの身体へのキスにより、更に膨らんでいく。
頬。首筋。肩。鎖骨。胸元。
その順番が、わたしの『恩返し』に対する返答だと気づいたとき、胸の奥の幸せが爆発するように広がった。
安心と同時に、期待と怖さがないまぜになって込み上げる。
そして——彼の唇が、胸の先端に触れた。
「ひぁ…っ///」
喉がひきつり、思わず背を反らせてしまう。
そこは痛みを感じてしまうくらい敏感な場所。
だけど彼の唇と舌の繊細な愛撫は、星が落ちるように頭の中をチカチカさせた。
その快感が胸から腰へと落ちて、頭の先から足の裏、耳の先から尻尾の先まで届いて、堪えきれずに腰がびくりと跳ねた。
「やぁっ…だめ、そんなの…っ///」
声で否定しながら、身体は抗えない。
恥ずかしさと甘さに、堪らず両腕で彼を抱きすくめる。
先端を飴玉のように舐られ、胸深くまでじんじん痺れていく。
でも——こんな顔、見られたくない。
わたしは彼の肩を押して仰向けから身を翻し、枕に顔を埋めた。
真っ赤な耳と涙のような潤みを隠すように。
枕に顔を埋めたまま、熱い息を必死に隠す。
しかし枕からは彼の匂いがして、それが頭の中の本能を直接カリカリと引っ掻く。
彼の手が背中を優しく撫で下ろしてくる。
その指先が肩から腰へと降りていくたび、力が抜けていく。
「…や、っ…/// ふぁぁ…」
次に感じたのは、背筋を伝う熱い唇。
肩甲骨、背骨、そして腰へと辿るように降りてくる。
背中へのキスに尻尾がピクピクと反応する。
敏感になった身体は、触れられるたびに微かに痙攣し、後ろ足や腰が反射的に動く。
まるで子猫を撫でるみたいに優しい手つきなのに、背筋を走る快感は逃げられないほど鋭い。
「んぁ…っ…ち、が…うのに…///」
理性は否定するのに、背中に降りてくるキスと撫でる指に、自然と腰が浮いてしまう。
恥ずかしさで顔を隠しても反応は止まらない。
羞恥と本能が交錯して、目が潤む。
尻尾が大きく揺れ、隠していたはずの秘密の場所が一瞬、彼の視界に晒される。
綻び始めた秘められた花の蕾が夜の空気を感じた。
――あっ…。
枕に顔を埋めたまま、振り返らなくても視線がそこに注がれたのが解ってしまった。
「……えっち…」
思わず口からこぼれて、耳まで熱くなる。
でも彼が喜んでくれるのなら…
わたしは猫だ。
だから、これは…自然な事なんだ。
恥ずかしさを打ち消すように自分に言い聞かせる。
枕から顔を上げ振り向く。
尻尾に力を入れ、ゆっくりと持ち上げていく。
それに合わせて秘部が花開く。
心臓が強く弾み、羞恥に全身が疼く。
「…そんなに尻尾が、気になるの?」
わたしは嘘をついた。
彼が気になっているのは尻尾ではない。
でも…恥ずかしいから尻尾のせいにする。
その影で見えないように隠していた大切な場所を、彼に晒す。
わたしの一番恥ずかしい、本能のままの猫の姿。
視界の端で彼が息と生唾を飲み込んで、震える手をゆっくりとわたしに伸ばした。
レースのカーテンから漏れる月の光に、揺れる尻尾が影絵のように踊った。
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