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第八章 紗国の悪夢
引き裂かれた魂
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朝が来た。
一晩汗をかきながらもぐっすりと眠った少年の顔色はいくらかましになってきたようだ。
しかし、額に手をあてると熱はまだある。
この場にいる誰もが言葉少なく、そして難しい顔をして少年を見入る。
斉井と梢紗の二人も、この少年が紗国のお嫁様である可能性が高いことを知りながら、新王に伝えることをためらった。
俺は、彼がお嫁様であるならば、魂の片割れである彼をどれほど欲するか、一番わかっていた。
俺自身がそうだからだ。
どれほど昔になるだろう。
魂の半分を持つ男がこの世を去ったその時に感じた絶望。
そして、そうと知った今、一目会ってみたかったと思う渇望。
この思いは説明しても他の者にはわからないだろう。
目の前に眠る少年も、相手が善人であれ悪人であれ、そばにいたいと、そう願うのではないだろうか。
「医師を呼んで……そして城に使いを……」
斉井は力なくそう言った。
今の王にお嫁様が渡ってきたとなれば、紗国の暗い世は何百年続くかわからない。
お嫁様を得た王は完全体となり、長生きすることがわかっているからだ。
「やはり、そうされますか」
梢紗は斉井をじっと見つめた。
「お嫁様であろうお方を、隠し立てすることは……」
「しかし、兄上にこの方を会わせてしまえば、兄上の世は長きにわたり続くことになります」
「梢紗、それはこちらの都合だ、この少年にとってみれば、王に会いたいに違いない。何者にも代えがたい……そんな存在のはずだ」
なにか言いたげに皆が俺を見る。
斉井以外は皆、俺がかつて紗国の嫁としてここに現れたことを知る者だ。
「それに、この少年の力の源にもなるはず、伝説が確かならばこの少年の魂は半分しかない、王に会えば体に力がみなぎるはずだ」
「……確かに……それはその通りですな」
斉井は少年の手にそっと自分の手を重ね、そして力なくうなずいた。
「わかりました。使者を送りましょう」
「ああ、そうしてくれ」
斉井が静かに立ち上がり、襖の向こうに消えた。
アレクシスがそれを待って、口を開いた。
「阿羅彦様、俺にはおぼろげに魂の形が見えるんだが……」
皆が一斉にアレクシスを見つめた。
「その少年の魂は半分どころか、ずたずたに切り裂かれたようになっている、原型がないほどに」
「それは、どういう意味だ?」
「そのままの意味だ、なぜかはわからない、エルフが感じ取れるのは、なんとなくの形だけだ」
「お前は紗国王の即位式に立ち会った。あの王の魂はどんな様子だったか覚えているか?」
アレクシスはフゥとため息をついた。
「あの時、言うのはさすがに……はばかられたが……あの新しい紗国王の魂も似たような形だった。だから俺は、この王は長く続かないだろうなと、思ったんだ」
皆が息をのんだ。
「しかし……その伝説だが……」
「二人があわさって完璧となるというか?」
「ああ、そうだ」
「どうもその……そうはならない気がする、いやこれは……単なるカンだ。二人があわさっても、ピタリとはまるようには思えないんだ、特に王の魂はすでにボロボロの形をしていた」
俺はジルの言葉を思い出していた。
引き裂かれたように半分だったから、丸くなるように作り替えたと……
少年をもう一度見た。
血の気のない顔で静かに寝息を立てる彼には……幸せな未来がないのだろうか。
ついに会うことが叶わなかった俺の紗国王は、死してもまだ、俺のことを思い、子孫に俺を託そうとした。
どんなに愛されても、どこか満たされないこの思い。
一目、会いたかった、この腕で抱きしめたかったという渇望。
彼にはこの思いを抱いてほしくない、相手があの江利紗であろうとも……彼のことは大切にするはずだ。
そう……俺は思っていた。
一晩汗をかきながらもぐっすりと眠った少年の顔色はいくらかましになってきたようだ。
しかし、額に手をあてると熱はまだある。
この場にいる誰もが言葉少なく、そして難しい顔をして少年を見入る。
斉井と梢紗の二人も、この少年が紗国のお嫁様である可能性が高いことを知りながら、新王に伝えることをためらった。
俺は、彼がお嫁様であるならば、魂の片割れである彼をどれほど欲するか、一番わかっていた。
俺自身がそうだからだ。
どれほど昔になるだろう。
魂の半分を持つ男がこの世を去ったその時に感じた絶望。
そして、そうと知った今、一目会ってみたかったと思う渇望。
この思いは説明しても他の者にはわからないだろう。
目の前に眠る少年も、相手が善人であれ悪人であれ、そばにいたいと、そう願うのではないだろうか。
「医師を呼んで……そして城に使いを……」
斉井は力なくそう言った。
今の王にお嫁様が渡ってきたとなれば、紗国の暗い世は何百年続くかわからない。
お嫁様を得た王は完全体となり、長生きすることがわかっているからだ。
「やはり、そうされますか」
梢紗は斉井をじっと見つめた。
「お嫁様であろうお方を、隠し立てすることは……」
「しかし、兄上にこの方を会わせてしまえば、兄上の世は長きにわたり続くことになります」
「梢紗、それはこちらの都合だ、この少年にとってみれば、王に会いたいに違いない。何者にも代えがたい……そんな存在のはずだ」
なにか言いたげに皆が俺を見る。
斉井以外は皆、俺がかつて紗国の嫁としてここに現れたことを知る者だ。
「それに、この少年の力の源にもなるはず、伝説が確かならばこの少年の魂は半分しかない、王に会えば体に力がみなぎるはずだ」
「……確かに……それはその通りですな」
斉井は少年の手にそっと自分の手を重ね、そして力なくうなずいた。
「わかりました。使者を送りましょう」
「ああ、そうしてくれ」
斉井が静かに立ち上がり、襖の向こうに消えた。
アレクシスがそれを待って、口を開いた。
「阿羅彦様、俺にはおぼろげに魂の形が見えるんだが……」
皆が一斉にアレクシスを見つめた。
「その少年の魂は半分どころか、ずたずたに切り裂かれたようになっている、原型がないほどに」
「それは、どういう意味だ?」
「そのままの意味だ、なぜかはわからない、エルフが感じ取れるのは、なんとなくの形だけだ」
「お前は紗国王の即位式に立ち会った。あの王の魂はどんな様子だったか覚えているか?」
アレクシスはフゥとため息をついた。
「あの時、言うのはさすがに……はばかられたが……あの新しい紗国王の魂も似たような形だった。だから俺は、この王は長く続かないだろうなと、思ったんだ」
皆が息をのんだ。
「しかし……その伝説だが……」
「二人があわさって完璧となるというか?」
「ああ、そうだ」
「どうもその……そうはならない気がする、いやこれは……単なるカンだ。二人があわさっても、ピタリとはまるようには思えないんだ、特に王の魂はすでにボロボロの形をしていた」
俺はジルの言葉を思い出していた。
引き裂かれたように半分だったから、丸くなるように作り替えたと……
少年をもう一度見た。
血の気のない顔で静かに寝息を立てる彼には……幸せな未来がないのだろうか。
ついに会うことが叶わなかった俺の紗国王は、死してもまだ、俺のことを思い、子孫に俺を託そうとした。
どんなに愛されても、どこか満たされないこの思い。
一目、会いたかった、この腕で抱きしめたかったという渇望。
彼にはこの思いを抱いてほしくない、相手があの江利紗であろうとも……彼のことは大切にするはずだ。
そう……俺は思っていた。
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