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第八章 紗国の悪夢
神ー 江利紗視点
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「江利紗様! どこにもおられません!」
そう告げてきたお嫁様付きの侍女長を平手打ちした。
よろけるだけで動じない、我は舌打ちし、もう一度反対側の頬を叩いた。
乾いた大きな音が鳴り、我の侍従長が慌てて止めに入った。
「おやめくださいませ! 暴力で解決は無理でございます! お嫁様はこの城の一番奥まった部屋から忽然と消えられたのですよ!」
侍従長をにらみつけ、彼の着物を合わせを握った。
「お前、我のことを馬鹿にするか」
「どうしてそうなりますか、私たちは王をそんな風に」
全部を言わせず、そのまま侍従長も平手打ちをして、乱暴に床に投げた。
老齢に差し掛かった侍従長は痩せて軽い、まるで子供のように床にうちつけられた。
その様子も腹立たしい。
どうしてもイラつきが収まらない、あいつは外に出してはいけないのに、どうして逃げ出せた?
ーーあのような体で一人で逃げ出せるはずはない。
我だけの嫁なのだ。
我の力を補充してくれるのは、あやつだけ。
性技の一つも知らないあやつは、まるで人形のように感情を出さず、うつろな目で俺との褥をやり過ごす。
何もかも気に入らなかった。
そもそもどうして、あのような障害を負うほどのケガをしたのか?
あれの言うことが本当で、『見たことのない大きな牛のような獣に襲われ、噛まれたところから毒が回った』というのならば、どうやって毒を消したというのか?
「とにかく、隠れていそうなところをくまなく探すのだ!」
我の怒号は城中に響いたに違いない。
ーー『そのような不自由な体を世間に晒すわけにはいかない』
そう伝え、外には出ずここで過ごせと、そう伝えた時、あれの目は絶望に染まった。
そしてついに、名さえ明かさずに、我の前から姿を消した。
心臓のあたりを手で掴む。
着物がよれ、しわができた。
我の心に絶望が広がっていくのを感じた。
本当は……一目見た瞬間から、愛していた。
なんと美しく、もろい……愛おしい存在だったか。
だが、兄の玖羅紗に与えられたお嫁様はあれほどの健康体だったのに、どうして我にはあのような不自由な体の少年が与えられたのか?
それを思うと腹が煮えくり返ったのだ。
愛するがゆえに、憎かった。
動かない腕、真っすぐに立てない脚、傷口は紫色になっていて、痛々しかった。
あんな姿を他にさらして、我の嫁などと、言えるはずはなかった。
「仕方なかった……」
そう呟いて、椅子に倒れこむように座った。
流れる涙が止められない。
これほどまでに、愛おしい存在だったのかと、失って初めて理解できたのだ。
なんと愚かな、そうも思う。
だが、そうではない。
我は悪くなどない。
あのような嫁を送ってきた神が悪いのだ。
全て、神が。
そう告げてきたお嫁様付きの侍女長を平手打ちした。
よろけるだけで動じない、我は舌打ちし、もう一度反対側の頬を叩いた。
乾いた大きな音が鳴り、我の侍従長が慌てて止めに入った。
「おやめくださいませ! 暴力で解決は無理でございます! お嫁様はこの城の一番奥まった部屋から忽然と消えられたのですよ!」
侍従長をにらみつけ、彼の着物を合わせを握った。
「お前、我のことを馬鹿にするか」
「どうしてそうなりますか、私たちは王をそんな風に」
全部を言わせず、そのまま侍従長も平手打ちをして、乱暴に床に投げた。
老齢に差し掛かった侍従長は痩せて軽い、まるで子供のように床にうちつけられた。
その様子も腹立たしい。
どうしてもイラつきが収まらない、あいつは外に出してはいけないのに、どうして逃げ出せた?
ーーあのような体で一人で逃げ出せるはずはない。
我だけの嫁なのだ。
我の力を補充してくれるのは、あやつだけ。
性技の一つも知らないあやつは、まるで人形のように感情を出さず、うつろな目で俺との褥をやり過ごす。
何もかも気に入らなかった。
そもそもどうして、あのような障害を負うほどのケガをしたのか?
あれの言うことが本当で、『見たことのない大きな牛のような獣に襲われ、噛まれたところから毒が回った』というのならば、どうやって毒を消したというのか?
「とにかく、隠れていそうなところをくまなく探すのだ!」
我の怒号は城中に響いたに違いない。
ーー『そのような不自由な体を世間に晒すわけにはいかない』
そう伝え、外には出ずここで過ごせと、そう伝えた時、あれの目は絶望に染まった。
そしてついに、名さえ明かさずに、我の前から姿を消した。
心臓のあたりを手で掴む。
着物がよれ、しわができた。
我の心に絶望が広がっていくのを感じた。
本当は……一目見た瞬間から、愛していた。
なんと美しく、もろい……愛おしい存在だったか。
だが、兄の玖羅紗に与えられたお嫁様はあれほどの健康体だったのに、どうして我にはあのような不自由な体の少年が与えられたのか?
それを思うと腹が煮えくり返ったのだ。
愛するがゆえに、憎かった。
動かない腕、真っすぐに立てない脚、傷口は紫色になっていて、痛々しかった。
あんな姿を他にさらして、我の嫁などと、言えるはずはなかった。
「仕方なかった……」
そう呟いて、椅子に倒れこむように座った。
流れる涙が止められない。
これほどまでに、愛おしい存在だったのかと、失って初めて理解できたのだ。
なんと愚かな、そうも思う。
だが、そうではない。
我は悪くなどない。
あのような嫁を送ってきた神が悪いのだ。
全て、神が。
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