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第八章 紗国の悪夢
葵衣
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阿羅国の着物を着せられて、ずいぶん顔色が良くなった少年は、重ねた枕に体を預けて少し体を起こしていた。
「目が覚めたのだな」
室内に入ってすぐ声をかけると、パッと花のような笑顔を咲かせて俺を見た。
そして、梢紗に視線を移動させた。
「……」
何も言わないまま、ごくりとつばを飲み込んだ。
梢紗は悲し気な顔で頭を下げ、そして再び顔を上げると静かに話し出した。
「あなた様に辛い思いをさせた紗国の王は、私の兄です。母も違いますし、それぞれが母似なので顔は似てはいないと思いますが……それでも、神や目の色が同じですから、不信感をお持ちですよね?」
「弟……」
「はい」
「でも……えっとここは……紗国ではないのですよね? お医者さんに聞いたのですけど」
俺はうなずき、ベッドの横にある椅子にかけた。
「そうだ、ここは俺の国だ、阿羅国という。ここから紗国は遠い。もう安心してよいぞ」
「ありがとうございます……でも、ではなぜ……あの方はここに? 紗国の王の弟さんだったら、紗国の王子様なのでは?」
梢紗は美しい顔を微笑ませて答えた。
「私は、兄が許せませんでした……その、話が長くなるのですが、私は5人の兄がいましてね、一番目の兄が王だったのです、とても優秀な人で、日本から来たお嫁様とともに、仲睦まじくお過ごしでした……それを、二番目の兄が嫉妬し、暗殺してしまったのです」
「暗殺……って、え、その、前の王のお嫁様も日本人だったのですか?」
俺を見たので、うなずき、そして彼の手を取った。
「そうだ、玖羅紗王のお嫁様は紅葉と言い、俺の友でもあった。ちょうど、君と同じくらいの年齢だったと思う」
「その人まで殺されて……その殺した犯人が次代の王になったということですか? たしか、江利紗様は二番目の王子だと聞きました」
不安げに梢紗を見た。
梢紗はため息をついた。
「いえ……本来は二番目の兄が他にいたのです。ですがその兄は、次代の王を決める会議の最中貴族らを監禁し、自分を選ぶよう強要しました。そして……この阿羅国の忠実なる臣下エクトル様を捕らえました。我々は紗国へ出向きエクトル様の奪還を目指しましたが、ならず……エクトル様は我々の目の前で事切れました。その、二番目の兄を阿羅彦様が制して紗国の貴族らも開放されたのです」
梢紗はそこまで話すと、深呼吸した。
「つまり、二番目の兄は罪人です。ですから、歴史上に無かったこととして、3番目の兄を第二王子とし、即位となったのです」
「あの人は、本当なら第3王子だったのですね」
「ええ……そうです。私が許せなかったのは、二番目の兄ですが、今の紗国王とて……」
俺は梢紗の視線を感じ、うなずきを返した。
つらいことを語らせてしまった。
しかし、彼にこのことを伝えないわけにはいかない。
少年は唇をかんで、梢紗の顔をじっと見つめた。
「話してくれてありがとうございます。僕はこの世界に来て、ずっとわけがわからないままでした、本当のことも教えてもらえず、閉じ込められて……」
彼はふるりと体を震わせた。
「もう、大丈夫だ」
「はい」
「名を、聞かせてくれないか?」
「僕は……倉田葵衣です」
「あおい……良い名だ」
「はい、祖父が考えたそうです、染めの職人だったんですよ」
「そうか……思い出を、大切にするのだ。もう会えないとしても、それがお前を助けてくれる」
「はい」
葵衣と名乗った少年は、大きな瞳から涙を流した。
「目が覚めたのだな」
室内に入ってすぐ声をかけると、パッと花のような笑顔を咲かせて俺を見た。
そして、梢紗に視線を移動させた。
「……」
何も言わないまま、ごくりとつばを飲み込んだ。
梢紗は悲し気な顔で頭を下げ、そして再び顔を上げると静かに話し出した。
「あなた様に辛い思いをさせた紗国の王は、私の兄です。母も違いますし、それぞれが母似なので顔は似てはいないと思いますが……それでも、神や目の色が同じですから、不信感をお持ちですよね?」
「弟……」
「はい」
「でも……えっとここは……紗国ではないのですよね? お医者さんに聞いたのですけど」
俺はうなずき、ベッドの横にある椅子にかけた。
「そうだ、ここは俺の国だ、阿羅国という。ここから紗国は遠い。もう安心してよいぞ」
「ありがとうございます……でも、ではなぜ……あの方はここに? 紗国の王の弟さんだったら、紗国の王子様なのでは?」
梢紗は美しい顔を微笑ませて答えた。
「私は、兄が許せませんでした……その、話が長くなるのですが、私は5人の兄がいましてね、一番目の兄が王だったのです、とても優秀な人で、日本から来たお嫁様とともに、仲睦まじくお過ごしでした……それを、二番目の兄が嫉妬し、暗殺してしまったのです」
「暗殺……って、え、その、前の王のお嫁様も日本人だったのですか?」
俺を見たので、うなずき、そして彼の手を取った。
「そうだ、玖羅紗王のお嫁様は紅葉と言い、俺の友でもあった。ちょうど、君と同じくらいの年齢だったと思う」
「その人まで殺されて……その殺した犯人が次代の王になったということですか? たしか、江利紗様は二番目の王子だと聞きました」
不安げに梢紗を見た。
梢紗はため息をついた。
「いえ……本来は二番目の兄が他にいたのです。ですがその兄は、次代の王を決める会議の最中貴族らを監禁し、自分を選ぶよう強要しました。そして……この阿羅国の忠実なる臣下エクトル様を捕らえました。我々は紗国へ出向きエクトル様の奪還を目指しましたが、ならず……エクトル様は我々の目の前で事切れました。その、二番目の兄を阿羅彦様が制して紗国の貴族らも開放されたのです」
梢紗はそこまで話すと、深呼吸した。
「つまり、二番目の兄は罪人です。ですから、歴史上に無かったこととして、3番目の兄を第二王子とし、即位となったのです」
「あの人は、本当なら第3王子だったのですね」
「ええ……そうです。私が許せなかったのは、二番目の兄ですが、今の紗国王とて……」
俺は梢紗の視線を感じ、うなずきを返した。
つらいことを語らせてしまった。
しかし、彼にこのことを伝えないわけにはいかない。
少年は唇をかんで、梢紗の顔をじっと見つめた。
「話してくれてありがとうございます。僕はこの世界に来て、ずっとわけがわからないままでした、本当のことも教えてもらえず、閉じ込められて……」
彼はふるりと体を震わせた。
「もう、大丈夫だ」
「はい」
「名を、聞かせてくれないか?」
「僕は……倉田葵衣です」
「あおい……良い名だ」
「はい、祖父が考えたそうです、染めの職人だったんですよ」
「そうか……思い出を、大切にするのだ。もう会えないとしても、それがお前を助けてくれる」
「はい」
葵衣と名乗った少年は、大きな瞳から涙を流した。
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