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第九章 永遠に
ある港町の事情 1
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夏に差し掛かる強い日差し、額から汗が流れて来る。
それを手の甲で乱暴にふき取り、目の前を見つめた。
ー紗国の港町、ここには各国からの大型船が来航する。
王侯貴族の乗る豪華な船もあれば、貨物船もある。
その貨物船の乗組員は、国籍もない荒くれ者が多い、どこにも身を寄せるところがなく自然と集まってきた力自慢の男たちの集団だ。
「ラトヤ、早くしろ!」
怒鳴られ、再び荷を担ぐ。
重い木箱には酒が何瓶も入っている、カタカタと瓶のかち合う音を耳元で聞きながら、よろける足ではしご段を上がる。
一歩一歩が重い、自分の限界を超えての作業に自らの限界を知った。
「お、おい!」
先輩の叫ぶ声は微かに聞こえた、だがそのまま動かなくなった僕の体ははしご段から外れ、海にとぷんと落ちてしまった。
水の中、急にごぼごぼと自分の口から漏れ出る空気が泡となり、もがいて必死に伸ばした手を誰かが掴んでくれた。
力強く引き上げられ、抱き上げられた……空に。
◇
「まだ、動くな」
静かな、低い声が響き、僕はびくりと体を震わせた。
叱られる、本能的にそう思って体を丸める。
「大丈夫だ、ここには私しかいないよ」
聞き覚えのない声、それに、なんともやわらかな肌触りの良い上掛け……そっとそれをめくって、声の主を見た。
白いひげをはやした、立派な貴族の男性だった。
どうして僕はこんなところで介抱されているのか、全くわからない。
「あの……」
「どうしても起きたいのか? ならば水をのむか?」
「え……」
優しく手を添えられて、ベッドに半身を起こす。
美しい室内の豪華な調度品が目に入り、一瞬息ができなかった。
「私はお前を助けた者だ、門矢と呼んでくれ」
「か、かどやさま……」
うまく息ができずぜえぜえと呼吸すると、ゆっくりと優しく背を撫でてくれた。
「私はね、お前を買い取った。そんな弱い体であの仕事は無理だろうと言って、雇い主もすぐに手放してくれてね」
少し笑って、水差しからグラスに注いだ水を渡してくれた。
僕は震える手でそれを受け取り、一口飲んだ。
「あの……あの……僕は何をすれば……」
恐る恐る聞くと、門矢様は小さくうなずき話し出した。
「君にはね、ある方のためにある役目を担ってほしいのだよ」
「ある方?」
不安になって聞き返すと、門矢様は穏やかに微笑んでくれた。
「ああ、そんなに難しいことではないよ。ただ、情報や小さな荷を運んでほしいだけなんだ」
「運ぶ……」
「そう、君ぐらいの年齢の子を探していてね。ちょうどよく君に出会えたってわけだ」
「僕が……できるのでしょうか?」
門矢様は眉をあげておどけたように「もちろんだ」と言った。
「何をすれば……」
シンとした室内、門矢様は笑顔をやめ、真顔で僕を見つめた。
カタンと物音がした。
扉の向こうから響いてきたそれは、ドンドンという扉をたたく音へと変わる。
驚く僕と対照的に、門矢様は聞えていないかのように表情を変えなかった。
「あちらにね、何人か待たせてあるんだが」
「あちら?」
僕は叩かれている扉を見つめたまま返答をした。
「そうだ、あちらにいる小さなものをね、届けてほしいんだ。持ち主の元へね」
それを手の甲で乱暴にふき取り、目の前を見つめた。
ー紗国の港町、ここには各国からの大型船が来航する。
王侯貴族の乗る豪華な船もあれば、貨物船もある。
その貨物船の乗組員は、国籍もない荒くれ者が多い、どこにも身を寄せるところがなく自然と集まってきた力自慢の男たちの集団だ。
「ラトヤ、早くしろ!」
怒鳴られ、再び荷を担ぐ。
重い木箱には酒が何瓶も入っている、カタカタと瓶のかち合う音を耳元で聞きながら、よろける足ではしご段を上がる。
一歩一歩が重い、自分の限界を超えての作業に自らの限界を知った。
「お、おい!」
先輩の叫ぶ声は微かに聞こえた、だがそのまま動かなくなった僕の体ははしご段から外れ、海にとぷんと落ちてしまった。
水の中、急にごぼごぼと自分の口から漏れ出る空気が泡となり、もがいて必死に伸ばした手を誰かが掴んでくれた。
力強く引き上げられ、抱き上げられた……空に。
◇
「まだ、動くな」
静かな、低い声が響き、僕はびくりと体を震わせた。
叱られる、本能的にそう思って体を丸める。
「大丈夫だ、ここには私しかいないよ」
聞き覚えのない声、それに、なんともやわらかな肌触りの良い上掛け……そっとそれをめくって、声の主を見た。
白いひげをはやした、立派な貴族の男性だった。
どうして僕はこんなところで介抱されているのか、全くわからない。
「あの……」
「どうしても起きたいのか? ならば水をのむか?」
「え……」
優しく手を添えられて、ベッドに半身を起こす。
美しい室内の豪華な調度品が目に入り、一瞬息ができなかった。
「私はお前を助けた者だ、門矢と呼んでくれ」
「か、かどやさま……」
うまく息ができずぜえぜえと呼吸すると、ゆっくりと優しく背を撫でてくれた。
「私はね、お前を買い取った。そんな弱い体であの仕事は無理だろうと言って、雇い主もすぐに手放してくれてね」
少し笑って、水差しからグラスに注いだ水を渡してくれた。
僕は震える手でそれを受け取り、一口飲んだ。
「あの……あの……僕は何をすれば……」
恐る恐る聞くと、門矢様は小さくうなずき話し出した。
「君にはね、ある方のためにある役目を担ってほしいのだよ」
「ある方?」
不安になって聞き返すと、門矢様は穏やかに微笑んでくれた。
「ああ、そんなに難しいことではないよ。ただ、情報や小さな荷を運んでほしいだけなんだ」
「運ぶ……」
「そう、君ぐらいの年齢の子を探していてね。ちょうどよく君に出会えたってわけだ」
「僕が……できるのでしょうか?」
門矢様は眉をあげておどけたように「もちろんだ」と言った。
「何をすれば……」
シンとした室内、門矢様は笑顔をやめ、真顔で僕を見つめた。
カタンと物音がした。
扉の向こうから響いてきたそれは、ドンドンという扉をたたく音へと変わる。
驚く僕と対照的に、門矢様は聞えていないかのように表情を変えなかった。
「あちらにね、何人か待たせてあるんだが」
「あちら?」
僕は叩かれている扉を見つめたまま返答をした。
「そうだ、あちらにいる小さなものをね、届けてほしいんだ。持ち主の元へね」
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