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ガラスの植物園
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はぁとため息をついた。
すると、サヨと仙が顔色を変えてサッと傍まで来てじっと見つめてくる。
「薫様、やはり、お布団にお戻りになったほうがよろしいのでは?」
「そうです。お疲れなのでしょう?」
うん……なんていうか……
初めての夜を過ごした翌日に「お疲れでしょう?」と聞かれるのは、恥ずかしいよね。
早朝に部屋に戻ってからは、ゆっくりとお風呂に入った。
胸のところとおへその横に小さな赤い痣があってびっくりしたけど、これが『キスマーク』なんだね……
またもや顔がボッと熱くなったよ……
それから、なんとなくそわそわして色々考え込んだりしてたら、侍女達にすごく心配されたんだ。
そして朝から強制的にベッドに入らされたわけだけど。
横になっても眠れるはずもなく、お布団の中で色々と考え込んでしまった。
主に、この国のことと日本に残してきたもののこと。
考えても考えても答えなんて出ない。
皆が言うように、帰る方法はわからないのだ。
そして、早くも馴染みつつあるこの世界のこと……
まず、呼吸からして楽なんだ。
蘭紗様の言うように、僕の魂はもともとこの世界のものだったんだろう。
僕はここにうまく適応できている。
戸惑いがまだまだ大きいけれど、体が元気に動けるというのは、こんなにも気持ちを軽くしてくれくれるのかと、不思議な思いがした。
そして昼過ぎには起きて、遅めの軽い昼食後、軽くいくつかの文献を読んだ。
この世界での覚えなければならないことをおさらいしたのだ。
そして夕方になって、美しい茜色の空を見ながら、侍女に夕食に向かう着物を着つけられた。
薄い水色のシャリっとした感触の羽織が少しひんやりして気持ちいい。
「薫様、帯を少し緩めますか?お顔の色が優れないようですが」
「ん……大丈夫だよ、ちょっとお腹が減っただけだよ」
「では、少し軽いものを召し上がります?」
「そんなにペコペコってわけじゃないし、蘭紗様との食事があるし、今はいらないよ」
「さようでございますか?、ご無理はいけませんよ」
「それにもう蘭紗様もお支度をしているだろうし」
仙とサヨが微笑んだので、僕も笑って大丈夫と言ってから、ソファーにポサっと座ってあけ放たれた窓の方を見る。
窓に近寄れば街が見えるんだけど、ソファーに座ると空しか見えない。
その空がとても美しいんだ。
きれいな夕焼け……
あの澄んだ空を僕は飛んだんだよ、信じられる?
はじめてだったから泳ぐみたいにバタバタしちゃって恥ずかしかった……
でも蘭紗様は優しく手を引いてくれて……
また顔が熱くなっていく。
蘭紗様とはまだ数回しか会ってないのに、一緒にいるのが嬉しくてそして自然すぎて……
こんな風に僕のことを愛してくれるなんて、そんな人が現れるなんて……考えたこともなかった。
日本にいる頃は、このまま一人で人生を終えるのかもしれないと漠然と考えたりもしていたのに。
みんなどうしているかなあ?
お父さんもお母さんも妹も。
妹は手術を控えて大事な時期なのに、心配かけちゃってごめん。
「薫様、そろそろ食堂へ参りましょう、蘭紗様の侍従からお知らせが来ました」
「ありがとう、サヨ」
にこりと微笑むとサヨもにこりとしてくれた。
サヨを見ていると妹を思い出すから時々ちょっと切なくなる。
この子は頑張り屋さんで本当にいい子。
護衛のたくましい男性4人と侍女2人を連れてぞろぞろと長い廊下を歩く。
なんだろうね、護衛がね多すぎるんじゃないのかな?
ここって安全なお城の中でしょ!?
僕なんかの為になんだか申し訳ないみたい……
食堂はこじんまりしたお部屋が用意されていた。
大きすぎる部屋だと落ち着かないので、配慮がうれしい。
テーブルに近寄ると冷製のスープ、サラダなどの前菜ががとってもキレイに並んでいた。
ホテルのアフタヌーンティーみたいな重ねた形のシャレたお皿もある。
「今日もキレイなテーブルセッティングだねー!お花もかわいい」
侍女たちはにこにこしてくれた。
もうすぐ蘭紗様が来ると思うとドキドキする。
何度見ても慣れない、あの美しさ。
ゲームキャラクターがそのまま実物になったかのような、完璧な芸術品の姿で、低すぎないイケボで「薫」と呼んでくれるんだ。
何のご褒美なんだろうね?
テーブルセッティングのことで侍女達と雑談していると、蘭紗様がするっと障子を開けて入ってきた。
「待たせたな薫」
朝に会ったばかりなのに早く会いたくて仕方なかった美しい人!
あぁ、ほんとにこの人のこと好きになっちゃった。
「僕も今来たんです! それより見てくださいこのかわいいテーブルセッティング!」
「ほう……」
蘭紗様は何事かとテーブルを見ているがあまりピンとこないようで頭から盛大に?を出している。
「テーブルセッティングとかそういうのはよくわからぬが、あれだな薫の好みをきちんと把握してくれてるようで料理長にも礼を言わねばな」
そこでタイミングよく現れた料理長は蘭紗様からお礼を言われてドギマギしていた。
「え……と、本日の主菜はお魚です、陛下と薫様お好みのお刺身と柑橘ソースの蒸しものもございます。今日はさっぱりしたものがよろしいのでは?という侍従からのご報告がございましたので、そのようにいたしましたが、お肉もお召し上がりになられるのなら、すぐにご用意できますので、お任せください」
「ああ、それでよいぞ、では始めてくれ」
料理長は嬉しそうに頷いて厨房へ消えて行った。
「蘭紗様、この前菜、生春巻きですよね?僕大好きなんです」
「そうか、我の好みでもあるぞ」
「一緒ですね!! いただきます!」
僕は元気よくパクパク食べて、それを見ていた蘭紗様がハハと笑って「おいしそうに食べるのを見ていると元気がでるよ」と言ってくれた。
同じ言葉を父に言われたことがあったなと思い出して、心がチクってして鼻の奥がツンとしてしまったけど、何気ない様子を装ってとにかくパクパク食べた。
蘭紗様との食事はとっても楽しくておいしくて、そして幸せだった。
きっと日本の家族も僕がいなくったって、こんな風に楽しい時間を過ごしてくれるはずだって思えるくらいに。
◇
食事が終わってから、2人で護衛を連れて散歩をすることにした。
60階には蘭紗様と僕の居住区以外にもかなり大きな植物園があるらしいんだ。
それを知ったのは食事の時の会話だった。
歴代の王様が遠征先や旅行先で見つけた物を集めているらしいんだけど。
元々ある紗国の動植物に影響を与えないように、この居住区に集めて管理してるんだって。
外来種の危険をきちんと理解してるんだなってちょっと驚いた。
聞くと、何代目かのお嫁様が植物学の研究者だったらしくてその教え通りに今でも管理されているとか。
「僕、そのうちきちんと歴代のお嫁様のことを知りたいと思うんですけど」
「そうか……知りたいとはどの程度だ?」
「んー……例えばですけど、ここの暮らしを経験してみてわかることは、異世界とは感じないくらい自然になじめるということで、それは僕にとっては凄く違和感なんです」
「……違和感」
「どういえばいいのか……良い意味で異世界を感じないんです、お嫁様の持ってきた世界の常識が根付いているここの文化が、僕にはなじみ深いものが多すぎて、きっとお嫁様達の元いた世界は僕がいた地球が多いんじゃないかって、そう思えるんです」
蘭紗様は植物園の入口のゲートに手をかざし、ピンという何かを弾くような音をさせて扉を開けてくれた。
促されて一歩入ってみる。
とたんにムッと湿気の強い暑苦しい空気に囲まれ、押しつぶされそうになってフラッとしてしまった。
後にいた蘭紗様はわかっていたように僕を優しく抱きしめてくれて、それから防御壁を発動させてくれた。
「この中にいれば、涼しくて快適だ」
後を振り向くと微笑む蘭紗様がいて、あまりのかっこよさにクラクラしてしまう。
うん、さっきとは別の意味でね!
「先ほどの件だが……お嫁様のことを知りたいのなら我の友人を紹介しよう」
「友人?」
「ああ、他国の王子なのだが、おかしなやつで……この国に移り住んでかれこれ2年もずっとあの研究所から出ても来ない」
「えええ?」
さすがに驚いた。
「王子様なんですね? 僕がお話しても大丈夫でしょうか?その身分とか……」
蘭紗様はハハっと笑って抱きしめたままの僕の頭の上にキスをした。
「そなたは我の嫁なのだ。我と同等なのだよ」
「ん……」
僕は赤面して下を向いた。
慣れないよ……慣れないったら……
「それより、ほら見るんだ。なかなかの見ごたえだぞ」
僕はゆっくりと顔を上げて周りを見てみた。
「……わ!」
そこはまるでジャングル! トロピカルな大きな木が陽気な様子で所狭しと植えられている、そしてツルが伸びていて色とりどりのインコみたいな小鳥が止まっていて首を傾げてこっちを見ている。
足元には極彩色の大輪の花だ。
ここは日本にもよくあったように、ガラス張りの立派な建物だ。
夕方の暮れかけた日差しがキラキラと入ってくる。
あら、おかしいな……外から見た時とまるで違う……
「どうだ?」
「素晴らしいですね!この植物園は暑い地方の植物が植えてあるのですね」
「色んな地方のものがあるぞ、この先にいけば寒い地方のものもある、それぞれ部屋を分けて栽培してあるのだ、さあ行こう」
蘭紗様が微笑みながら僕の手を握ってくれたから、うれしくなって歩き出した。
ツルに止まっていた小鳥がチュンチュン鳴いてこちらに飛んできた。
そしてふわーっと2人の周りを飛んでぱさぱさっと奥の方へ行ってしまった。
「動物も一緒にですか?」
「そうだな、小動物も少しはいる。それらも献上品だったりするのだ」
「それぞれの生態系がありますから、それに合わせてあげた方が動物にも優しいですね」
「……薫は、そういったことに詳しいのか?」
「そういうわけではありませんが……元いた世界では割と常識かもしれません」
「なるほど、高度な文明なのだな」
「んー高度と言われたら、そうなのかもしれませんが、僕はこの世界とそう変わらないように感じますよ、こっちには魔法がありますから」
「そうか……」
蘭紗様はふと空を見つめてつぶやいた。
「ん、雨が振りそうだな。今夜も露天風呂が良ければ、早めに入らねば」
「え?こんなに天気がいいのに?」
「おそらく夜半すぎに雨になるな」
「……天気予報ができるんですか!」
「風が読めるだけだ」
万能王様なのです!
僕たちは美しい植物園を小一時間かけて堪能し、あれこれ僕の知らない木々や花々を見つけたり、話し込んだりして楽しんだ。
これは初めてのデート……だったのかも。
そう思うと胸が熱くなるようだった。
すると、サヨと仙が顔色を変えてサッと傍まで来てじっと見つめてくる。
「薫様、やはり、お布団にお戻りになったほうがよろしいのでは?」
「そうです。お疲れなのでしょう?」
うん……なんていうか……
初めての夜を過ごした翌日に「お疲れでしょう?」と聞かれるのは、恥ずかしいよね。
早朝に部屋に戻ってからは、ゆっくりとお風呂に入った。
胸のところとおへその横に小さな赤い痣があってびっくりしたけど、これが『キスマーク』なんだね……
またもや顔がボッと熱くなったよ……
それから、なんとなくそわそわして色々考え込んだりしてたら、侍女達にすごく心配されたんだ。
そして朝から強制的にベッドに入らされたわけだけど。
横になっても眠れるはずもなく、お布団の中で色々と考え込んでしまった。
主に、この国のことと日本に残してきたもののこと。
考えても考えても答えなんて出ない。
皆が言うように、帰る方法はわからないのだ。
そして、早くも馴染みつつあるこの世界のこと……
まず、呼吸からして楽なんだ。
蘭紗様の言うように、僕の魂はもともとこの世界のものだったんだろう。
僕はここにうまく適応できている。
戸惑いがまだまだ大きいけれど、体が元気に動けるというのは、こんなにも気持ちを軽くしてくれくれるのかと、不思議な思いがした。
そして昼過ぎには起きて、遅めの軽い昼食後、軽くいくつかの文献を読んだ。
この世界での覚えなければならないことをおさらいしたのだ。
そして夕方になって、美しい茜色の空を見ながら、侍女に夕食に向かう着物を着つけられた。
薄い水色のシャリっとした感触の羽織が少しひんやりして気持ちいい。
「薫様、帯を少し緩めますか?お顔の色が優れないようですが」
「ん……大丈夫だよ、ちょっとお腹が減っただけだよ」
「では、少し軽いものを召し上がります?」
「そんなにペコペコってわけじゃないし、蘭紗様との食事があるし、今はいらないよ」
「さようでございますか?、ご無理はいけませんよ」
「それにもう蘭紗様もお支度をしているだろうし」
仙とサヨが微笑んだので、僕も笑って大丈夫と言ってから、ソファーにポサっと座ってあけ放たれた窓の方を見る。
窓に近寄れば街が見えるんだけど、ソファーに座ると空しか見えない。
その空がとても美しいんだ。
きれいな夕焼け……
あの澄んだ空を僕は飛んだんだよ、信じられる?
はじめてだったから泳ぐみたいにバタバタしちゃって恥ずかしかった……
でも蘭紗様は優しく手を引いてくれて……
また顔が熱くなっていく。
蘭紗様とはまだ数回しか会ってないのに、一緒にいるのが嬉しくてそして自然すぎて……
こんな風に僕のことを愛してくれるなんて、そんな人が現れるなんて……考えたこともなかった。
日本にいる頃は、このまま一人で人生を終えるのかもしれないと漠然と考えたりもしていたのに。
みんなどうしているかなあ?
お父さんもお母さんも妹も。
妹は手術を控えて大事な時期なのに、心配かけちゃってごめん。
「薫様、そろそろ食堂へ参りましょう、蘭紗様の侍従からお知らせが来ました」
「ありがとう、サヨ」
にこりと微笑むとサヨもにこりとしてくれた。
サヨを見ていると妹を思い出すから時々ちょっと切なくなる。
この子は頑張り屋さんで本当にいい子。
護衛のたくましい男性4人と侍女2人を連れてぞろぞろと長い廊下を歩く。
なんだろうね、護衛がね多すぎるんじゃないのかな?
ここって安全なお城の中でしょ!?
僕なんかの為になんだか申し訳ないみたい……
食堂はこじんまりしたお部屋が用意されていた。
大きすぎる部屋だと落ち着かないので、配慮がうれしい。
テーブルに近寄ると冷製のスープ、サラダなどの前菜ががとってもキレイに並んでいた。
ホテルのアフタヌーンティーみたいな重ねた形のシャレたお皿もある。
「今日もキレイなテーブルセッティングだねー!お花もかわいい」
侍女たちはにこにこしてくれた。
もうすぐ蘭紗様が来ると思うとドキドキする。
何度見ても慣れない、あの美しさ。
ゲームキャラクターがそのまま実物になったかのような、完璧な芸術品の姿で、低すぎないイケボで「薫」と呼んでくれるんだ。
何のご褒美なんだろうね?
テーブルセッティングのことで侍女達と雑談していると、蘭紗様がするっと障子を開けて入ってきた。
「待たせたな薫」
朝に会ったばかりなのに早く会いたくて仕方なかった美しい人!
あぁ、ほんとにこの人のこと好きになっちゃった。
「僕も今来たんです! それより見てくださいこのかわいいテーブルセッティング!」
「ほう……」
蘭紗様は何事かとテーブルを見ているがあまりピンとこないようで頭から盛大に?を出している。
「テーブルセッティングとかそういうのはよくわからぬが、あれだな薫の好みをきちんと把握してくれてるようで料理長にも礼を言わねばな」
そこでタイミングよく現れた料理長は蘭紗様からお礼を言われてドギマギしていた。
「え……と、本日の主菜はお魚です、陛下と薫様お好みのお刺身と柑橘ソースの蒸しものもございます。今日はさっぱりしたものがよろしいのでは?という侍従からのご報告がございましたので、そのようにいたしましたが、お肉もお召し上がりになられるのなら、すぐにご用意できますので、お任せください」
「ああ、それでよいぞ、では始めてくれ」
料理長は嬉しそうに頷いて厨房へ消えて行った。
「蘭紗様、この前菜、生春巻きですよね?僕大好きなんです」
「そうか、我の好みでもあるぞ」
「一緒ですね!! いただきます!」
僕は元気よくパクパク食べて、それを見ていた蘭紗様がハハと笑って「おいしそうに食べるのを見ていると元気がでるよ」と言ってくれた。
同じ言葉を父に言われたことがあったなと思い出して、心がチクってして鼻の奥がツンとしてしまったけど、何気ない様子を装ってとにかくパクパク食べた。
蘭紗様との食事はとっても楽しくておいしくて、そして幸せだった。
きっと日本の家族も僕がいなくったって、こんな風に楽しい時間を過ごしてくれるはずだって思えるくらいに。
◇
食事が終わってから、2人で護衛を連れて散歩をすることにした。
60階には蘭紗様と僕の居住区以外にもかなり大きな植物園があるらしいんだ。
それを知ったのは食事の時の会話だった。
歴代の王様が遠征先や旅行先で見つけた物を集めているらしいんだけど。
元々ある紗国の動植物に影響を与えないように、この居住区に集めて管理してるんだって。
外来種の危険をきちんと理解してるんだなってちょっと驚いた。
聞くと、何代目かのお嫁様が植物学の研究者だったらしくてその教え通りに今でも管理されているとか。
「僕、そのうちきちんと歴代のお嫁様のことを知りたいと思うんですけど」
「そうか……知りたいとはどの程度だ?」
「んー……例えばですけど、ここの暮らしを経験してみてわかることは、異世界とは感じないくらい自然になじめるということで、それは僕にとっては凄く違和感なんです」
「……違和感」
「どういえばいいのか……良い意味で異世界を感じないんです、お嫁様の持ってきた世界の常識が根付いているここの文化が、僕にはなじみ深いものが多すぎて、きっとお嫁様達の元いた世界は僕がいた地球が多いんじゃないかって、そう思えるんです」
蘭紗様は植物園の入口のゲートに手をかざし、ピンという何かを弾くような音をさせて扉を開けてくれた。
促されて一歩入ってみる。
とたんにムッと湿気の強い暑苦しい空気に囲まれ、押しつぶされそうになってフラッとしてしまった。
後にいた蘭紗様はわかっていたように僕を優しく抱きしめてくれて、それから防御壁を発動させてくれた。
「この中にいれば、涼しくて快適だ」
後を振り向くと微笑む蘭紗様がいて、あまりのかっこよさにクラクラしてしまう。
うん、さっきとは別の意味でね!
「先ほどの件だが……お嫁様のことを知りたいのなら我の友人を紹介しよう」
「友人?」
「ああ、他国の王子なのだが、おかしなやつで……この国に移り住んでかれこれ2年もずっとあの研究所から出ても来ない」
「えええ?」
さすがに驚いた。
「王子様なんですね? 僕がお話しても大丈夫でしょうか?その身分とか……」
蘭紗様はハハっと笑って抱きしめたままの僕の頭の上にキスをした。
「そなたは我の嫁なのだ。我と同等なのだよ」
「ん……」
僕は赤面して下を向いた。
慣れないよ……慣れないったら……
「それより、ほら見るんだ。なかなかの見ごたえだぞ」
僕はゆっくりと顔を上げて周りを見てみた。
「……わ!」
そこはまるでジャングル! トロピカルな大きな木が陽気な様子で所狭しと植えられている、そしてツルが伸びていて色とりどりのインコみたいな小鳥が止まっていて首を傾げてこっちを見ている。
足元には極彩色の大輪の花だ。
ここは日本にもよくあったように、ガラス張りの立派な建物だ。
夕方の暮れかけた日差しがキラキラと入ってくる。
あら、おかしいな……外から見た時とまるで違う……
「どうだ?」
「素晴らしいですね!この植物園は暑い地方の植物が植えてあるのですね」
「色んな地方のものがあるぞ、この先にいけば寒い地方のものもある、それぞれ部屋を分けて栽培してあるのだ、さあ行こう」
蘭紗様が微笑みながら僕の手を握ってくれたから、うれしくなって歩き出した。
ツルに止まっていた小鳥がチュンチュン鳴いてこちらに飛んできた。
そしてふわーっと2人の周りを飛んでぱさぱさっと奥の方へ行ってしまった。
「動物も一緒にですか?」
「そうだな、小動物も少しはいる。それらも献上品だったりするのだ」
「それぞれの生態系がありますから、それに合わせてあげた方が動物にも優しいですね」
「……薫は、そういったことに詳しいのか?」
「そういうわけではありませんが……元いた世界では割と常識かもしれません」
「なるほど、高度な文明なのだな」
「んー高度と言われたら、そうなのかもしれませんが、僕はこの世界とそう変わらないように感じますよ、こっちには魔法がありますから」
「そうか……」
蘭紗様はふと空を見つめてつぶやいた。
「ん、雨が振りそうだな。今夜も露天風呂が良ければ、早めに入らねば」
「え?こんなに天気がいいのに?」
「おそらく夜半すぎに雨になるな」
「……天気予報ができるんですか!」
「風が読めるだけだ」
万能王様なのです!
僕たちは美しい植物園を小一時間かけて堪能し、あれこれ僕の知らない木々や花々を見つけたり、話し込んだりして楽しんだ。
これは初めてのデート……だったのかも。
そう思うと胸が熱くなるようだった。
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