狐の国のお嫁様 ~紗国の愛の物語~

真白 桐羽

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夏祭り3

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 カジャルさんを先頭に大通りに出た。
僕は雑踏の中「ああほんとに花火大会のようだ」と思ってにやけてしまった。
子供のころ一度だけ連れてきてもらった時、駅に入場制限のかかる壮絶な人ごみを経験したことを思い出す。
当然のように具合を悪くして連れて行ってくれた母を困らせてしまった、だからあれ以来友だちに誘われても断っていたのだが。

僕はここでとっても健康になれている!
そして手を握っているのは頼りになるステキな蘭紗様です、もう絶対大丈夫でしょ!

「これは、なかなかだねえ」
「おい、りんさん!こっち」

ふらふらしそうになった涼鱗王子の手をカジャルがしっかり掴んで引き寄せると「危ない」とぷりぷり怒るカジャルさん。
それを見て噴き出す蘭紗様。
皆が笑顔のこんな瞬間って……僕が体がつらくてベッドで寝ているしかできなかったころ、夢見ていたものだなって思った。

「みやちゃん! あれ見て、すっごくかわいいおみせ!」

涼鱗王子が指さす方にあるのは、可愛いフルーツジュース屋さんのようだった。

僕と涼鱗王子はスイーツ男子なんですよ!

「んー!行きたい!」
「絶対いこ!ね?!」
「はいはい、取りあえずそのまま歩いて」
「カジャル必死だね」
「あーーーもう!もっと危機感持って?」

涼鱗王子は幸せそうにふわっと笑って、カジャルさんを見つめていた。
信頼しきった様子で手を引かれている。
その様子を見て僕も蘭紗様を見上げた。
蘭紗様も2人の様子を呆れ顔で見ていたけど、僕の視線を感じて下を向いてくれた。

ふたりでプッっと吹きだしてけらけら笑いあった。

「カジャルは涼鱗のことを大事にしているのだな……そういえば、本当にみやと同じような着物の女子が多いな」
「僕も思っていました」

周りを見ると女の子の踊りが始まるので大通りに開設されたメイン会場に向かう女子たちが群れをなして歩いているのだが、どの子もみんな僕と同じような花模様のふんわりした着物に細かいプリーツの袴、そして頭にお花を付けている。

色とりどりの女の子たちはとってもかわいい。

お店はずっと先まで見えなくなるぐらい遠くまで繋がっていて、この大通りはお城から見下ろした時の記憶を思い出す。
小さな茶店のようなものから、少し立派なレストラン、そして雑貨屋さんにお茶屋さん、陶器だけを集めたお店も見えてきた。
元いた世界と変わらない活気に違和感なく見入る僕。

「ここだ」

カジャルさんはササッとお店に入り、店主と話している。
このお店は女の子に人気のカフェのようだ。
甘くていい香りが漂って涼鱗王子がはしゃいでいる。

今日の僕たちは王族とバレては面倒なので、カジャルさんの連れということになっているから、店主も僕たちをどっかの貴族としか思っていない様子だ。

「カジャル様、二階にね屏風だしておきましたよ、もう上がってもらって大丈夫です、あとで注文取りに伺いますんでね」
「わかった、すまないね」

カジャルさんは僕と蘭紗様を先に階段を登らせ、その後に続いた。
気になって振り向くと近衛の人達が僕たちも二階にと相談している。
カジャルさんは店主に頷き返し、ではどうぞと言われて近衛部隊の3人が上がってくるようだ。

街になじむようにみんな普段着の着物を着流しているようだけど、そもそもの鍛え方が違うというか……背が高く手足も長い、全身がしっかり鍛えられ背筋がピンと伸びて……しかもなかなかの美男子揃いだ。
漂うオーラがやばいので、1階のお客さんたちがざわついていた。
はじめは蘭紗様と涼鱗王子の近寄りがたい美形2人を見て、皆ポカンとして頬を紅潮させ見つめていたけど。
近衛部隊にはキャーっと黄色い声が上がっている。

蘭紗様と涼鱗王子の高貴なオーラは遠巻きに観察するものなのかもしれないけど、近衛のみんなはあれでしょ、男性アイドルグループみたいな感じなんだよね!
僕は彼女たちの反応に大いに頷く。

二階はテラス席のみで、籐で統一された調度品に、真っ白な日よけタープが美しい南国風味だった。
カジャルさんなかなかの目利きですよ。

木の彫刻の屏風が置かれ仕切られていたので、カジャルさんだけがあちら側に顔を出して挨拶をしている。
あちらの人の声は聞こえるけど、まさかここに王がいるなんて思いもしていないのだろう、覗いてきたりはしないようで安心した。

護衛は半数が店の入り口などにさりげなく残り、2名が一階に、3名が二階で僕たちの程近くのテーブルに座って僕たちの連れのふりをしている。

「ああ、日よけがあってよかったねえ、今日すごく日差し強くなあい?」
「もう夏本番だな」
「これぐらいの陽気でないと夏祭りの風情がないからなあ」

軽やかに表れた店員の若い女の子に、おススメのジュースとか紅茶と、それから皆でつまめるように果物や焼き菓子やらを涼鱗王子がスラスラと注文した。
僕はその店員の女の子がチラチラと蘭紗様と涼鱗王子の横顔を、頬を赤らめながら交互に見ているのが気になったけど、仕方ないよね、これほどの美形だもんね。

「ふむ、なかなか美味しいティーだね」

涼鱗王子は一口飲んで味を確かめてから、グラス入りの紅茶に例の氷をボンボン入れ始めた。

「おい、リン、お前なにやってる」
「あれ?まだ知らないの?」
「忘れてたかも! 僕、まだ言ってなかったかも?」

そう僕が言うと、「ふーん」と勝ち誇った顔で意地わるそうに蘭紗様を見ながら涼鱗王子は蘭紗様のグラスに入った紅茶にも遠慮なくボンボンと氷を出して入れた。

「さあ、飲んでごらんよ」
「これはまた……」

蘭紗様は一瞬嫌そうな顔をしたが、渋々ごくりと飲んで、そして眼をぱちくりして満足そうに「ほう」とつぶやいた。

「ね!おいしいでしょ?!」
「すっきりするな、夏には良い」
「でしょでしょ」
「おい……なんで自分が開発したみたいに言ってるんだよ?」
「ということは、みやの案なのか?」
「はい、でも、僕は氷出せないし……実現できたのはリンさんのおかげです」
「だよね!」

涼鱗王子は人差し指を上げて僕にウィンクした。
……そういうポーズが様になってます……


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