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心からの祝福を 佐良紗視点
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私には一人の妹と一人の弟がいる。
妹は魔力が平民ほどしかなく、心も体も弱くほぼ寝たきりの上……誰とも会いたくないと他人を拒否する子。
ゆえに、王族の集まりにも顔を出さない、つまり会ったことは人生で4度だけ。
妹が生まれた時と、妹が死にかけた時と、私が神殿長になった日と……それから父王が身罷った日。
私の力ではあの子の心は癒せない。
どうにもしてあげられない心の痛みと寂しさはあるが……そっとしておくのが最善だと理解はしている。
弟の蘭紗は光り輝く王子でまっすぐに私に向かって話してきてくれる子。
私の目は見えないが、魔力の強い者は輪郭や口の動きの少しはわかる。
私の闇の世界に白く輝くからだ。
今まで、私の闇の世界を照らすのは……弟蘭紗だけだった。
しかし
その弟に、あの伝説のお嫁様がいらしたというではないか。
私は気ばかり焦って早くお披露目にならぬものかと侍女にそればかり話して、窘められたりもしたものだ。
果たして、はじめて薫様と同席できて……本日王族の寄合で私は激しく動揺した。
動揺しすぎて皆が着席したのちも動けずに見入ったのだ。
……なぜなら……生まれて初めて、弟の顔がはっきりと見えたのだ。
今までのようなおぼろげな輪郭と唇の動きだけではなく、きちんとこちらを見やる美しい形の目鼻立ち、そして髪の毛がさらりなびく様……すらりと背の高い体に纏う衣装までもが……白金色にはっきりと輝いて見えた。
そして弟の尾は3本光っている。
その尾の数にも驚いたが……私がそれよりも驚いたのは。
弟の隣にいる美しい小柄な男子の存在。
そう、彼こそはお嫁様……紹介などされずともすぐにわかった。
なぜなら彼の顔もまた、はっきりと私には見えたからだ。
やわらかな線の輪郭にきれいな形の目、そして小ぶりで形の良い鼻と口。
弟も美しいがまた違う美しさを持つその男子は、私に気づくと優し気に微笑んだ。
そして私は気づいたのだ。
彼のまなざしの優しさと暖かさは、他の誰とも違う黄金色をしていることに。
例えば罪人を見れば闇を更に暗く落ち込ませたような絶望が見え、私にしか分からない醜悪な匂いさえ発している。
だが普通に生きている者でさえも、その心に一時も悪を忍ばせずに生きられはしない。
人は皆少しずつ心にやましいものを抱え、日々誤魔化しているにすぎない。
嫉妬や疑惑など……ほんの些細な罪とも言えないような心の動きそれ自体が、私には苦しいのだ。
なぜならそのような時、彼らから灰色がかった咳き込みたくなるような粉っぽい気をふりまくのだ。
それが嫌で嫌でたまらなかった。
子供のころはそれが嫌いで、侍女さえも遠ざけたこともある。
だが、それが人というものなのだと、今では理解してからは、それらを許容できるようになった。
我とても人間の一人なのだ。
それと無縁では生きられぬと、今は知っている。
私の闇を唯一照らす弟であっても『必要以上にお嫁様を欲するな』との父の忠告を嫌悪し、火の粉が立つような激しい気を発することがあった。
その上、密かに森全体に自分の気を張り巡らせ、空間の乱れを読み取ろうとしていた。
そしてそのことに誰も気づかぬと知ると、結局は誰であれ自分のことは理解できぬであろうとあきらめ、悲しみの中に閉じこもろうとしていたことも、知っている。
蘭紗は側近たちを一切信用してなかったのだ。
そういうところが濁った色となり私を悲しませた。
しかし、あの頃の蘭紗は手負いの獣のように敏感で傍に置いた伴侶候補以外には本当の心を見せなかったが、姉の私には少しだけ心を許してくれるような気配があり、もっとそばにいれたなら、弟の役にも立てたかもと私なりに苦しんだ。
しかし……この黄金色に輝く穏やかで柔らかな心の人がそばにいるのなら。
私はもう、心配することはないだろう。
厳しい言葉で叱っていた父も、本心では魔力と能力の高すぎる蘭紗を心配していた。
かの『愚王・真湖紗』も蘭紗のように魔力が高すぎる上にあらゆる能力が高く……それがゆえに皆は付き従うことしか出来ず、真湖紗は愚行を推し進めることもできたのだと聞いている。
強い力は正しく使わねば、悲劇にしかならぬのだ。
だからこその言葉であったのも、私は知っている。
なぜなら叱る時に父は必ず白く美しく輝いていたからだ。
愛する我が子を思う親心は、あのように輝くのだなと……子を産めぬ私には眩しく思えた。
森の民は私を尊重し敬い丁重に扱ってくれるが、それは愛情とは違うのだ。
私には手に入らぬ本当の愛を……愛し愛されること……弟がそれを手にし心が安定したことに喜びを感じる。
そして、幼き頃に言い続けていた『我のお嫁様はいるのです、可愛らしい人なのです』というあの言葉を思い出す。
魂の片割れという不思議な繋がりを持つがゆえに相手のことがわかっていて、いずれこの地に降り立つことを予言していたかのような……その幼き蘭紗の言葉が、今になってみれば当たっていたのだが、あの当時は随分と周りを心配させたものだ。
「愚王再来」という不穏な言葉もささやかれていた。
幼い私の心はそういった誹謗に敏感に反応し、濃い灰色の覆われた城が恐ろしかった。
その中にあってでさえも、白く輝く弟を私は知っている。
あの子は他のものが何と言おうと、自分の信じた道を進む強さを持っている。
今、お嫁様を傍に置き完全体となった弟を目の当たりにして、その強さが悪しき方へ向かうことはもう誰も心配しないだろうと確信できる。
これほどの光を発していれば、常人でも感じ取れるはずだ。
温かく人の心を潤し、そして包み込む優しい光。
弟の人生が長きにわたり幸せなものであることを私は心より願う。
そして薫様……あなたを私はお待ちしていました、こちらへお渡り下さってありがとう。
弟と永遠とも思える年月を健やかにお過ごしになれるよう、私も天に願いましょう。
2人の良き世に心からの祝福を。
妹は魔力が平民ほどしかなく、心も体も弱くほぼ寝たきりの上……誰とも会いたくないと他人を拒否する子。
ゆえに、王族の集まりにも顔を出さない、つまり会ったことは人生で4度だけ。
妹が生まれた時と、妹が死にかけた時と、私が神殿長になった日と……それから父王が身罷った日。
私の力ではあの子の心は癒せない。
どうにもしてあげられない心の痛みと寂しさはあるが……そっとしておくのが最善だと理解はしている。
弟の蘭紗は光り輝く王子でまっすぐに私に向かって話してきてくれる子。
私の目は見えないが、魔力の強い者は輪郭や口の動きの少しはわかる。
私の闇の世界に白く輝くからだ。
今まで、私の闇の世界を照らすのは……弟蘭紗だけだった。
しかし
その弟に、あの伝説のお嫁様がいらしたというではないか。
私は気ばかり焦って早くお披露目にならぬものかと侍女にそればかり話して、窘められたりもしたものだ。
果たして、はじめて薫様と同席できて……本日王族の寄合で私は激しく動揺した。
動揺しすぎて皆が着席したのちも動けずに見入ったのだ。
……なぜなら……生まれて初めて、弟の顔がはっきりと見えたのだ。
今までのようなおぼろげな輪郭と唇の動きだけではなく、きちんとこちらを見やる美しい形の目鼻立ち、そして髪の毛がさらりなびく様……すらりと背の高い体に纏う衣装までもが……白金色にはっきりと輝いて見えた。
そして弟の尾は3本光っている。
その尾の数にも驚いたが……私がそれよりも驚いたのは。
弟の隣にいる美しい小柄な男子の存在。
そう、彼こそはお嫁様……紹介などされずともすぐにわかった。
なぜなら彼の顔もまた、はっきりと私には見えたからだ。
やわらかな線の輪郭にきれいな形の目、そして小ぶりで形の良い鼻と口。
弟も美しいがまた違う美しさを持つその男子は、私に気づくと優し気に微笑んだ。
そして私は気づいたのだ。
彼のまなざしの優しさと暖かさは、他の誰とも違う黄金色をしていることに。
例えば罪人を見れば闇を更に暗く落ち込ませたような絶望が見え、私にしか分からない醜悪な匂いさえ発している。
だが普通に生きている者でさえも、その心に一時も悪を忍ばせずに生きられはしない。
人は皆少しずつ心にやましいものを抱え、日々誤魔化しているにすぎない。
嫉妬や疑惑など……ほんの些細な罪とも言えないような心の動きそれ自体が、私には苦しいのだ。
なぜならそのような時、彼らから灰色がかった咳き込みたくなるような粉っぽい気をふりまくのだ。
それが嫌で嫌でたまらなかった。
子供のころはそれが嫌いで、侍女さえも遠ざけたこともある。
だが、それが人というものなのだと、今では理解してからは、それらを許容できるようになった。
我とても人間の一人なのだ。
それと無縁では生きられぬと、今は知っている。
私の闇を唯一照らす弟であっても『必要以上にお嫁様を欲するな』との父の忠告を嫌悪し、火の粉が立つような激しい気を発することがあった。
その上、密かに森全体に自分の気を張り巡らせ、空間の乱れを読み取ろうとしていた。
そしてそのことに誰も気づかぬと知ると、結局は誰であれ自分のことは理解できぬであろうとあきらめ、悲しみの中に閉じこもろうとしていたことも、知っている。
蘭紗は側近たちを一切信用してなかったのだ。
そういうところが濁った色となり私を悲しませた。
しかし、あの頃の蘭紗は手負いの獣のように敏感で傍に置いた伴侶候補以外には本当の心を見せなかったが、姉の私には少しだけ心を許してくれるような気配があり、もっとそばにいれたなら、弟の役にも立てたかもと私なりに苦しんだ。
しかし……この黄金色に輝く穏やかで柔らかな心の人がそばにいるのなら。
私はもう、心配することはないだろう。
厳しい言葉で叱っていた父も、本心では魔力と能力の高すぎる蘭紗を心配していた。
かの『愚王・真湖紗』も蘭紗のように魔力が高すぎる上にあらゆる能力が高く……それがゆえに皆は付き従うことしか出来ず、真湖紗は愚行を推し進めることもできたのだと聞いている。
強い力は正しく使わねば、悲劇にしかならぬのだ。
だからこその言葉であったのも、私は知っている。
なぜなら叱る時に父は必ず白く美しく輝いていたからだ。
愛する我が子を思う親心は、あのように輝くのだなと……子を産めぬ私には眩しく思えた。
森の民は私を尊重し敬い丁重に扱ってくれるが、それは愛情とは違うのだ。
私には手に入らぬ本当の愛を……愛し愛されること……弟がそれを手にし心が安定したことに喜びを感じる。
そして、幼き頃に言い続けていた『我のお嫁様はいるのです、可愛らしい人なのです』というあの言葉を思い出す。
魂の片割れという不思議な繋がりを持つがゆえに相手のことがわかっていて、いずれこの地に降り立つことを予言していたかのような……その幼き蘭紗の言葉が、今になってみれば当たっていたのだが、あの当時は随分と周りを心配させたものだ。
「愚王再来」という不穏な言葉もささやかれていた。
幼い私の心はそういった誹謗に敏感に反応し、濃い灰色の覆われた城が恐ろしかった。
その中にあってでさえも、白く輝く弟を私は知っている。
あの子は他のものが何と言おうと、自分の信じた道を進む強さを持っている。
今、お嫁様を傍に置き完全体となった弟を目の当たりにして、その強さが悪しき方へ向かうことはもう誰も心配しないだろうと確信できる。
これほどの光を発していれば、常人でも感じ取れるはずだ。
温かく人の心を潤し、そして包み込む優しい光。
弟の人生が長きにわたり幸せなものであることを私は心より願う。
そして薫様……あなたを私はお待ちしていました、こちらへお渡り下さってありがとう。
弟と永遠とも思える年月を健やかにお過ごしになれるよう、私も天に願いましょう。
2人の良き世に心からの祝福を。
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