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親の思い子知らず 涼鱗視点
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夏の夜は虫の声が涼やかに鳴り響き、月が美しくとても大きく見える。
夏に月は冴えた青、私の好きなその色は眺めてお酒の飲むのにとてもよいといつも思う。
この紗国に根を下ろすことを本格的に決め、紗国王の参謀となった私は今日、親友の蘭紗と薫の結婚式に出席した。
来賓席ではなく、紗国の重鎮たちと同じ位置に着席したときに……やけに実感を伴って感慨深く感じた。
「涼鱗……なかなかの式だったな、お前の主君は素晴らしい男だ、そして薫殿も」
「ええ、私も驚きましたよ……何といってもあの光り輝く姿……あれこそ神に近い存在の現れですね」
ワイングラスを揺らしながら研究所の中庭で語らっているのは、我が両親だ。
そして……
「私もこの度は本当に心から驚いた。紗国王はまだ年若いが……カジャルそなたと同じだったな?」
「いえ、伯父上、蘭紗様は俺より一つ下ですよ」
「なるほど、しかしあの落ち着きよう、そしてあの威厳、あの魔力……そして何より、式の荘厳さといったら、私はこれまで見てきた何よりも感銘を受けた」
そうやって結婚式の時の蘭紗をほめるのは、カジャルの伯父で瀬国の軍師マドゥ・サン殿だ。
サヌ羅殿もその横でにこやかに笑っている。
文官らしくほっそりとして背もそれほど高くないサヌ羅殿に比べ、マドゥ様はさすが瀬国の誇る軍師だけあって、素晴らしい体躯の獅子族だ。
サヌ羅殿が見上げるようにして話している。
このマドゥ殿はカジャルの母の兄なのだ。
カジャルも背が高い方で体も鍛えしっかりと筋肉を付けてはいるが、ここまでは大きくない。
どちらかというと紗国人の要素が多く出ているのか?と思う。
それにしてもカジャルの母君が外出できないくらいに病んでいるというのは初耳だった。
カジャル自身もごく幼い頃に家を出て母との接触があまりにもなかったために、聞いたことはあるしそれなりの心配もしたが、深く事情を知らずにいたらしい。
サヌ羅殿が言うには、カジャルが蘭紗の元に行った後体調を崩し、その後寝たり起きたりが続き毎日泣き暮らし果ては精神的に持たなくなり、今は薬でほとんど寝ている状態なのだという……
そこまでの母の嘆きを知らずにいたことは、カジャルにとってはあまりいいことではない。
このことが今後のカジャルの人生になんらかの影を落とさないとも限らない。
起きてしまったことは仕方ないが……これからは2人で根白川家にも頻繁に出向き母君の心を開いていかねばと私は密かに思う。
「マルマが元気であれば、明後日のそなたの婚儀にも出れたであろうがな」
「……母が、具合を悪くしていたは知ってましたが、そんな状態だなどと俺は知らずに過ごしていたので……」
「会っておらんらしいな、あれからずっと……マルマに会ってやってくれんか?私は妹が可哀想でならんのだ……兄として妹が外国に嫁ぐことになりずっと心配はしていたのだが、まさかこんなことになっておろうとは」
「面目ありませんマドゥ様、私の力不足ゆえに……」
「いや、サヌ羅殿……私は……あなたを責めているのではないのだよ……私は外国の者だ、この国の事情をすべて知っているわけではない……この歴史の長い国に敬意ももちろん払っている。しかしだな……強引なことよのう、年端もゆかぬ子を無理やり城に連れてゆくなど」
「無理にではなかったですよ、伯父上」
マドゥ殿はカジャルを優し気に見つめ、ワイングラスをテーブルに置いた。
我が両親も真剣な顔でカジャルを見つめる。
「始めは戸惑いましたし、両親が恋しかった。それは幼すぎたので仕方ない感情でしょうが……でも、やがて蘭紗様を支えられているという達成感の方が大きくなりました。あの方の魔力は普通ではないのです。人前に出るときはなんとか自制していても、一人になると……それはもう暴風雨のような激しさでお体の中を魔力が駆け巡り、一晩中苦しまれるのです」
皆が目を瞠り溜息をついた。
「ですが……乳母が申されるには、俺が傍に上がってからは……ほとんど無くなったと。傍に俺がいるだけで蘭紗様は楽になられ、益々勉学や鍛錬に励まれ、とても良い状態になられたと」
「……なんとまあ……伴侶というのは、あれか……実質魔力を鎮めるためのもの?なのかな」
マドゥ殿は苦しそうに呟いた。
「そうですね……恋人同士とか嫁のように床を共にするとかそういうことではないんです。俺たちは一つ違いの兄弟のようにして育ちました。俺にとっては今でもあの人は大事な弟なんです」
私はカジャルの手を取り優しく撫でた。
カジャルは私を見て、薄く微笑した。
こんな時のカジャルはとてもきれいに見える。
強くて脆くて、そして儚くて。
「そのようにしてやっと維持できるとは……だが今はお嫁様を得てそこは大事無いということか?」
カジャルは明るく声を出して笑った。
「伯父上も見たでしょう?あの光り輝く様を……蘭紗様は完璧な姿になられました。私では多すぎる魔力をなんとか宥める程度にしかお役に立ってなかったのですけどね、薫様は蘭紗様の力を更に向上させて完全にそれを御す力も授けたようです」
「それがあの現象となったのだな……なんとも……不思議なものよの」
サヌ羅が横に座るマドゥ殿を見上げ、うんうんと頷いた。
「カジャルが支えたからこそ蘭紗様は生き延びたのです、私はそう理解しています、だからマルマには悪いが……これで良かったと私は思っているのですよ、この国の為になったのですから」
そんなサヌ羅殿の背をマドゥ殿は優しくぽんぽんと叩き、ワイングラスをもう一度取り、皆の顔を見渡した。
私の両親はそれを見て頷いた。
「それぞれ国の事情を抱え、それを何とかせねばならない立場の人間だ……私情は挟めぬ、そういう場面は多くあろう……だが、親は子に対してそこまで薄情になり切れぬものだ。サヌ羅殿が子を城にやり妻が弱るのを傍で見てどれほど苦しまれたか、想像に難くない。本当によく我慢された」
「……もったいないお言葉でございます……私はこの国の外交担当として諸国と散々渡り合って参りました。ラハーム王国の方々の誠実さ心の優しさそして国の美しさは私にとっても大変好ましく……この度息子が第4王子と結婚が決まったとの報告に本当に……本当に……嬉しく思いましたぞ。マルマも話を聞き、力なくではありましたが、喜んでいる様子を見せてくれました」
「さようか……奥方には早く心晴れやかになれるよう願うぞ」
「ありがとう存じます」
サヌ羅殿は私の父の言葉に嬉しそうに笑顔を見せ、持っていたワインを一口飲んだ。
父はワインのおかわりを頼むと静かに私を見つめた。
「私はね……涼鱗には悪いことをしたと思っていたのだ、国に居場所を無くした我が子が紗国に出奔し戻ってこなくなったのも、私が涼鱗のことを大事にしなかったせいかと、そう責任を感じておってな」
「え?……そんなことございませんよ、父上……私が勝手にしたことです」
「……いや、まあ……そなたは第4王子だからな……生まれた時は政治利用しようと思ったこともあったが……私は実は末子のそなたが可愛くてな。傍にいてほしかったのだよ。……だが、そなたがこのように自分で居場所を見つけ伴侶を見つけ、ここで幸せに暮らせるのならばもう、何も言うまい」
「……父上」
私は初めて父の心の内を聞かされて戸惑った。
私が……可愛かった?
「そうですよ涼鱗、私たちがどれほどあなたを愛していたか……あなたの兄たちもですよ?あなたを忘れるときなどありませんでしたからね……でも、愛するが故に自由にさせてもやりたかった。兄たちのようにあなたは国に責任を感じなくていいように……そう陛下は考えていてくださっていたのですよ」
カジャルが私の顔を覗き込んできた。
「だから言ったじゃないか、お前が『私なんていてもいなくてもどっちでもいい存在だ』と言うたびに、そんなことあるわけないだろう?って」
そして大きく顔を崩して笑顔になった。
その愛しいひとの顔を見ながら、私はかつてない心の安寧を得られたことを感謝した。
父と母の気持ちが知れて……私は愛されていた……ことがわかり。
目の前には愛する人がいて。
これ以上のことがあるだろうか……
「これで、我らラハーム王国は紗国ならびに、瀬国とも親戚になれたわけだ。私の当初の「政治利用」という目論見も果たせたな」
父が軽口をたたき皆が一斉に笑った。
「さようでございますな、ラハーム王。我は瀬国の軍師だがそちらに何かあればいつでも駆けつけよう。我が甥の大事な義父のためならば」
豪快に笑い飛ばしながら軽く言うが、それは……大丈夫なのか……いろいろと。
侍女達が頃合いだと判断し、いろんな料理が運ばれてきた。
今日の料理は私がカジャルと見つけた市井の小さな料理店に特別に作らせた。
伝統的な紗国の料理だ。
嬉しそうに料理を見つめ、侍女が取り分けるのを指示する母の笑顔と、それを見つめる父の姿、早くもおかわりをしているマドゥ殿、笑顔でそれを見渡すサヌ羅殿……
私の胸はいっぱいになり、今まで味わったことのない時に身をゆだねた。
カジャルが私にもたらしてくれたこの幸せを、必ず守りぬこう。
私はこの国を……親友とともに正しく導こう。
侍女がもう一度新しいグラスに冷えた発泡ワインを入れて配ってくれた。
皆が一斉にそれを手に目の高さに上げる。
「涼鱗、カジャル、そなたら2人の門出を祝し……ん、式はまだなので……まあ一足早いが……とにかく乾杯だな」
皆の笑い声でにぎやかにその夜は更けていった。
夏に月は冴えた青、私の好きなその色は眺めてお酒の飲むのにとてもよいといつも思う。
この紗国に根を下ろすことを本格的に決め、紗国王の参謀となった私は今日、親友の蘭紗と薫の結婚式に出席した。
来賓席ではなく、紗国の重鎮たちと同じ位置に着席したときに……やけに実感を伴って感慨深く感じた。
「涼鱗……なかなかの式だったな、お前の主君は素晴らしい男だ、そして薫殿も」
「ええ、私も驚きましたよ……何といってもあの光り輝く姿……あれこそ神に近い存在の現れですね」
ワイングラスを揺らしながら研究所の中庭で語らっているのは、我が両親だ。
そして……
「私もこの度は本当に心から驚いた。紗国王はまだ年若いが……カジャルそなたと同じだったな?」
「いえ、伯父上、蘭紗様は俺より一つ下ですよ」
「なるほど、しかしあの落ち着きよう、そしてあの威厳、あの魔力……そして何より、式の荘厳さといったら、私はこれまで見てきた何よりも感銘を受けた」
そうやって結婚式の時の蘭紗をほめるのは、カジャルの伯父で瀬国の軍師マドゥ・サン殿だ。
サヌ羅殿もその横でにこやかに笑っている。
文官らしくほっそりとして背もそれほど高くないサヌ羅殿に比べ、マドゥ様はさすが瀬国の誇る軍師だけあって、素晴らしい体躯の獅子族だ。
サヌ羅殿が見上げるようにして話している。
このマドゥ殿はカジャルの母の兄なのだ。
カジャルも背が高い方で体も鍛えしっかりと筋肉を付けてはいるが、ここまでは大きくない。
どちらかというと紗国人の要素が多く出ているのか?と思う。
それにしてもカジャルの母君が外出できないくらいに病んでいるというのは初耳だった。
カジャル自身もごく幼い頃に家を出て母との接触があまりにもなかったために、聞いたことはあるしそれなりの心配もしたが、深く事情を知らずにいたらしい。
サヌ羅殿が言うには、カジャルが蘭紗の元に行った後体調を崩し、その後寝たり起きたりが続き毎日泣き暮らし果ては精神的に持たなくなり、今は薬でほとんど寝ている状態なのだという……
そこまでの母の嘆きを知らずにいたことは、カジャルにとってはあまりいいことではない。
このことが今後のカジャルの人生になんらかの影を落とさないとも限らない。
起きてしまったことは仕方ないが……これからは2人で根白川家にも頻繁に出向き母君の心を開いていかねばと私は密かに思う。
「マルマが元気であれば、明後日のそなたの婚儀にも出れたであろうがな」
「……母が、具合を悪くしていたは知ってましたが、そんな状態だなどと俺は知らずに過ごしていたので……」
「会っておらんらしいな、あれからずっと……マルマに会ってやってくれんか?私は妹が可哀想でならんのだ……兄として妹が外国に嫁ぐことになりずっと心配はしていたのだが、まさかこんなことになっておろうとは」
「面目ありませんマドゥ様、私の力不足ゆえに……」
「いや、サヌ羅殿……私は……あなたを責めているのではないのだよ……私は外国の者だ、この国の事情をすべて知っているわけではない……この歴史の長い国に敬意ももちろん払っている。しかしだな……強引なことよのう、年端もゆかぬ子を無理やり城に連れてゆくなど」
「無理にではなかったですよ、伯父上」
マドゥ殿はカジャルを優し気に見つめ、ワイングラスをテーブルに置いた。
我が両親も真剣な顔でカジャルを見つめる。
「始めは戸惑いましたし、両親が恋しかった。それは幼すぎたので仕方ない感情でしょうが……でも、やがて蘭紗様を支えられているという達成感の方が大きくなりました。あの方の魔力は普通ではないのです。人前に出るときはなんとか自制していても、一人になると……それはもう暴風雨のような激しさでお体の中を魔力が駆け巡り、一晩中苦しまれるのです」
皆が目を瞠り溜息をついた。
「ですが……乳母が申されるには、俺が傍に上がってからは……ほとんど無くなったと。傍に俺がいるだけで蘭紗様は楽になられ、益々勉学や鍛錬に励まれ、とても良い状態になられたと」
「……なんとまあ……伴侶というのは、あれか……実質魔力を鎮めるためのもの?なのかな」
マドゥ殿は苦しそうに呟いた。
「そうですね……恋人同士とか嫁のように床を共にするとかそういうことではないんです。俺たちは一つ違いの兄弟のようにして育ちました。俺にとっては今でもあの人は大事な弟なんです」
私はカジャルの手を取り優しく撫でた。
カジャルは私を見て、薄く微笑した。
こんな時のカジャルはとてもきれいに見える。
強くて脆くて、そして儚くて。
「そのようにしてやっと維持できるとは……だが今はお嫁様を得てそこは大事無いということか?」
カジャルは明るく声を出して笑った。
「伯父上も見たでしょう?あの光り輝く様を……蘭紗様は完璧な姿になられました。私では多すぎる魔力をなんとか宥める程度にしかお役に立ってなかったのですけどね、薫様は蘭紗様の力を更に向上させて完全にそれを御す力も授けたようです」
「それがあの現象となったのだな……なんとも……不思議なものよの」
サヌ羅が横に座るマドゥ殿を見上げ、うんうんと頷いた。
「カジャルが支えたからこそ蘭紗様は生き延びたのです、私はそう理解しています、だからマルマには悪いが……これで良かったと私は思っているのですよ、この国の為になったのですから」
そんなサヌ羅殿の背をマドゥ殿は優しくぽんぽんと叩き、ワイングラスをもう一度取り、皆の顔を見渡した。
私の両親はそれを見て頷いた。
「それぞれ国の事情を抱え、それを何とかせねばならない立場の人間だ……私情は挟めぬ、そういう場面は多くあろう……だが、親は子に対してそこまで薄情になり切れぬものだ。サヌ羅殿が子を城にやり妻が弱るのを傍で見てどれほど苦しまれたか、想像に難くない。本当によく我慢された」
「……もったいないお言葉でございます……私はこの国の外交担当として諸国と散々渡り合って参りました。ラハーム王国の方々の誠実さ心の優しさそして国の美しさは私にとっても大変好ましく……この度息子が第4王子と結婚が決まったとの報告に本当に……本当に……嬉しく思いましたぞ。マルマも話を聞き、力なくではありましたが、喜んでいる様子を見せてくれました」
「さようか……奥方には早く心晴れやかになれるよう願うぞ」
「ありがとう存じます」
サヌ羅殿は私の父の言葉に嬉しそうに笑顔を見せ、持っていたワインを一口飲んだ。
父はワインのおかわりを頼むと静かに私を見つめた。
「私はね……涼鱗には悪いことをしたと思っていたのだ、国に居場所を無くした我が子が紗国に出奔し戻ってこなくなったのも、私が涼鱗のことを大事にしなかったせいかと、そう責任を感じておってな」
「え?……そんなことございませんよ、父上……私が勝手にしたことです」
「……いや、まあ……そなたは第4王子だからな……生まれた時は政治利用しようと思ったこともあったが……私は実は末子のそなたが可愛くてな。傍にいてほしかったのだよ。……だが、そなたがこのように自分で居場所を見つけ伴侶を見つけ、ここで幸せに暮らせるのならばもう、何も言うまい」
「……父上」
私は初めて父の心の内を聞かされて戸惑った。
私が……可愛かった?
「そうですよ涼鱗、私たちがどれほどあなたを愛していたか……あなたの兄たちもですよ?あなたを忘れるときなどありませんでしたからね……でも、愛するが故に自由にさせてもやりたかった。兄たちのようにあなたは国に責任を感じなくていいように……そう陛下は考えていてくださっていたのですよ」
カジャルが私の顔を覗き込んできた。
「だから言ったじゃないか、お前が『私なんていてもいなくてもどっちでもいい存在だ』と言うたびに、そんなことあるわけないだろう?って」
そして大きく顔を崩して笑顔になった。
その愛しいひとの顔を見ながら、私はかつてない心の安寧を得られたことを感謝した。
父と母の気持ちが知れて……私は愛されていた……ことがわかり。
目の前には愛する人がいて。
これ以上のことがあるだろうか……
「これで、我らラハーム王国は紗国ならびに、瀬国とも親戚になれたわけだ。私の当初の「政治利用」という目論見も果たせたな」
父が軽口をたたき皆が一斉に笑った。
「さようでございますな、ラハーム王。我は瀬国の軍師だがそちらに何かあればいつでも駆けつけよう。我が甥の大事な義父のためならば」
豪快に笑い飛ばしながら軽く言うが、それは……大丈夫なのか……いろいろと。
侍女達が頃合いだと判断し、いろんな料理が運ばれてきた。
今日の料理は私がカジャルと見つけた市井の小さな料理店に特別に作らせた。
伝統的な紗国の料理だ。
嬉しそうに料理を見つめ、侍女が取り分けるのを指示する母の笑顔と、それを見つめる父の姿、早くもおかわりをしているマドゥ殿、笑顔でそれを見渡すサヌ羅殿……
私の胸はいっぱいになり、今まで味わったことのない時に身をゆだねた。
カジャルが私にもたらしてくれたこの幸せを、必ず守りぬこう。
私はこの国を……親友とともに正しく導こう。
侍女がもう一度新しいグラスに冷えた発泡ワインを入れて配ってくれた。
皆が一斉にそれを手に目の高さに上げる。
「涼鱗、カジャル、そなたら2人の門出を祝し……ん、式はまだなので……まあ一足早いが……とにかく乾杯だな」
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