狐の国のお嫁様 ~紗国の愛の物語~

真白 桐羽

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アオアイの町12 お嫁様の守護・蘭紗視点

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 美しいその鳥は、華奢な体の倍ほどもある長く素晴らしい色彩の尾を持ち、きちんと翼をたたんで気品を漂わせてゆったりとベッドに鎮座していた。

伝説の鳳凰の絵姿に似てはいるが……
まさかそんなわけはない……

ということは、アオアイに住む鳥ということか?しかし、このような鳥が生息してたかな?
などと……涼鱗と我は何も言えずに頭の中でぐるぐると色々なことが駆け抜けた。

「おかえりなさいませ! お二人とも……ずっとお忙しくてお疲れでしょう?お茶にしましょうか、それとも早めのお夕食を」
「ちょっとまて薫……そなた……大丈夫なのか?」
「え?」
「いや……あれだ……サスラスがこの館に押し入って……」
「怪我などは無かったんだよねえ?」

薫は一瞬ポケッとした顔をしてから……「あ!」っと口元に手をやってからにっこり微笑んだ。

「そうでした! ちょっと怖かったですよ、いきなり入ってきてこうやって抱き上げられたんです!でも、近衛たちやカジャルさんがちゃんと守ってくれましたから、大丈夫でしたよ!」

薫はベッドにいた鳥を抱えて抱き抱えるポーズをした。
まさかとは思うが……サスラスの件を忘れていたなんてことは……

「……なんというか……」
「まあ、無事ならばいい……のだがな……」
「あ……ああ、もちろんそうだよねぇ……」

きっと薫は怖がって震えているのでは?と我ら二人は思っていたので、薫の様子に素直に驚く。

「それよりこれ、この子!現れてくれたんです。僕の心にずっと住んでいた鳥さんですよ」
「クルゥ」

そしてそのまさかの説明に衝撃を受けまたもや言葉を失う。

……心にずっと住んでいた?

思わず涼鱗を見やるが、涼鱗も我を何とも言えない顔で見ていた。

「ちょっと……話を整理しよう……薫」
「ああ、えっと……」

その時カジャルが遠慮がちに話し出した。

「俺から説明しようか……」
「そうだなカジャル」
「その方がよさそうだ」
「では……まず、サスラス王子の押し入りの後、無事帰ってもらって……えっと、もちろん玄関から……そして薫様はベッドで休むことになった。その後、約一時間ほどたった頃、ベッドに突如この鳥が現れた……ちなみに現れた瞬間を近衛隊長含め4名が目撃している……以上!」

カジャルはフフと不敵な笑みを浮かべている。
もうどうにでもなれという顔だ。

「で……この鳥は野生なのだろうか?なにか病気を持ってはいまいか?薫に近づけてよいのか?」
「いや……蘭紗様さすがに俺、そんなこと聞かれても……それから、現れたってのは飛んできたんじゃないんですからね?」

カジャルは困った顔で涼鱗に助けを求めたが、涼鱗も難しい顔で薫の腕の中の鳥を見やるだけだ。

「薫、私が触っても大丈夫?その鳥」
「はい、もちろん!」

涼鱗に良い笑顔でそう答えた薫は、差し出すように鳥を膝の上に置いた。
鳥はきょとんとした顔で涼鱗を見ている。
涼鱗は恐る恐るといった感じで手を伸ばして、頭の先をつんつんしているが、おとなしくされるがままになっている。
そして、鳥は首を傾げて薫を見た。

「不安なの?大丈夫だよ、涼鱗さんは僕のお友達。そしてここにいる人たちはみんな僕の大事な人だからね。覚えておいて」
「クルゥ」
「あ、それからね、この銀色の髪の人が僕の愛する旦那様だよ」
「クルゥクルゥ」

我の顔をきちんと見て何度もまばたきをしてから一言鳴いた。

「言葉を……理解しているのか……」
「……のようだねえ」
「しかし……なんというか……こんなことあるだろうか?」
「鳳凰?だよな……」
「あ、こちらでも鳳凰はわかりますか?」

薫は明るい声で聞いてきた。

「ああ、そうだな……想像上の鳥で瑞兆として現れると言い伝えられておるが」
「一緒ですね……日本にもそういうのが……あ、そうか元々中国だったっけ?」
「で、心に住んでいたというのは?」
「そうそうそれだよ、もっと詳しく話して」

その時扉をノックされ、侍女が僑の訪れを告げた。
急ぎの用事だという。

我はすぐに通すように命じると、話はまた後にするとして、薫にこのまま休むよう伝え部屋を出ることにした。

が、カジャルと薫はアーメ王子の件なら一緒に聞きたいと言い張り、皆で応接間に移動することになった。

鳳凰は翼を広げると薫と同じぐらいの大きさがあるようだったが、「大きすぎるかな?」という薫の一言で、小鳥ほどの大きさとなりその姿で薫の肩に停まった。

「……なんとも便利な……」
「便利?……だねえ……」
「うむ」

複雑な気持ちを抱え皆で応接間に到着すると、僑は助手二名を連れて薬品をテーブルに並べているところだった。

「何を出している?」
「実験か?」

僑は我らに気づき、挨拶と礼をしながら早口で話しだした。

「結論から言いますが……薬を盛られたことは確実となりました。盛られたものはこの薬品のうちのどれかです。それを確定し次第、アオアイの部隊と合流し犯人と思われるものの捕獲に向かいます」
「なんだと……」
「どういう種類のものだ」
「なんてことない眠り薬です、しかし分量が多ければ人間である薫様には命の危険もあったかもしれません。しかし致死量は入れられておらず……というかたぶん一滴ほどだったのでは?と思われるのですが……それはアオアイの沈滞石のおかげだったと言えるでしょう」
「どういう意味だ」

我は衝撃を受けて体を震わせた薫を軽く抱きしめ、ソファから身を乗り出した。

「ええ、ご説明を続けさせていただきますね……その薬の入った茶葉をアーメ王子宅に届けたのは、10年ほど前から館に務めるメイドの夫でございました。その夫というのがですね……遡って詳しく調べましたら阿羅の者だったのですよ……うまく身を隠して一度瀬国で暮らした上、瀬国の民としてアオアイ入国していたことまで、わかっております」
「なんだって、瀬国?」

カジャルが顔をしかめる。
母の故郷なのだ、聞き捨てならないだろう。

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