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アオアイの町14 ビーチ
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昨夜はなんだか久しぶりにえーっと……うふふ。
「何わらってんだ……」
紅茶のカップを持ったまま怪訝な顔でこちらを見るカジャルさん。
「ふふ、昨夜のこと思い出しちゃって」
「昨夜?」
「えっと久しぶりに蘭紗様と……えへ」
「おまっ!」
カジャルさんの顔がパーッとみるみるうちに赤くなっていく。
「あはは! カジャルさんってなんだか純粋でかわいいですね」
「やめろ!」
カジャルさんはアオアイの町の景色の方に目を移し、僕を見てくれなくなった。
その横顔は初めて会ったときとまるで違う落ち着いたもので、手負いの獣じみたあの猛々しさはまるでない。
涼鱗さんに愛されて、きっと幸せを感じているんだろうな……
「今頃、皆様お集まりなのでしょうけど、どんな風に進むんでしょうねえ」
「さあな……俺は外務の責任者を親父に持ってる割に、そういう事全く教えてもらってないからな……全然わからん」
「僑先生の方も、医師らが集まる会で発表されているとか言ってましたしね、みんな忙しいなあ」
「ああ……海にでも行きたいけどなあ……護衛を連れて行くなら良いとは言われているが、どうする?」
僕はトロピカルなピンクのフルーツを口に入れようとして、固まった。
「え?良いって言われてるって本当に?」
「ああ、せっかくの旅行なんだからって、でも、あんなことがあったしなあ」
「行くとしたらどこなのかな?」
「あっちの方だが」
カジャルさんが指差す方は、アオアイ本島の港より南側の方だ、森に囲まれていてビーチは見えない。
「王族専用の海水浴場があって、こういうときには各国の王族がそこを使うのだ、なかなかきれいなところだぞ、料理長に軽食を作らせて持っていくのも良いが、ビーチには一流レストランの出店もある」
「……他の王族……」
僕には他の王族にはトラウマがあるので、なんとも言えない気持ちになった。
「いやいや……サスラス王子みたいなのはいないよさすがに……それに砂浜は広いからな、余裕を持って各国別々の天幕を使うんだ。一緒に泳ぐわけではないぞ」
……なるほど……僕の頭には江ノ島とかの……芋の子を洗うみたいなのが浮かんでましたよね……
「じゃあ、行ってみましょうか?近衛隊と侍女たちも連れて」
「そうだな」
僕もカジャルさんもそうと決まれば乗り気だ、早く早くと荷物を用意してもらって、馬車で出発となった。
馬車は迎賓館の紋章がついている。
国賓の目印だそうだ。
「なんだかあれですよね、国賓って……」
僕は微妙な顔をして笑った。
「しかし、薫様は王妃だろうが」
「まあそうなんですけどねえ、でもカジャルさんだって宰相夫人じゃないですか……」
「やめてくれ……」
「っていうか……僕海で泳ぐっていうのは、実は初めてなんですよ、海に入るなんてとんでもないって家族に止められていたので」
「えー?」
カジャルさんは驚いたが、なるほどと唸った。
「まあ、こちらへ来る前は相当体が弱かったみたいだしなあ……今でもヒョロいが」
「その、ヒョロいってやめてもらえます?」
フフッと意地悪そうに笑ったカジャルさんを、僕は思いっきり睨んでやった。
馬車の外をふと見ると、迎賓館が立ち並ぶ美しい林を抜けたところで、大きく道を曲がって大通りに出た。
近衛隊に守られた僕たちの豪華な馬車に町の人達はすっと避けて道を開けてくれる。
そして気軽に手を振って僕たちを歓迎してくれるのが嬉しい。
僕は笑顔で手を振り返してみた。
とたんに上がる黄色い悲鳴に少し驚く。
「はは! そりゃそうだろ……王妃が直々に手を振れば誰だって喜ぶさ」
「そ、そうかな……」
「あ、そういえば、ここからは遠いんですか?お城……今日の会議が開かれているところ」
「んーっと、もうすぐ見えてくるかな……ああ、あれだあれ、あの白い建物だよ」
見えてきたのは南国風の大きなお城で、なんとも優雅でゆったりとしているお城だ。
あの白さは……
「もしかしてあのお城の材質は……」
「ああ、沈滞石だ」
「うそ、全部?」
「外壁と、廊下の材質はそうだと聞いている。あと謁見の間などは壁も天井もすべてだそうだが……もともと沈滞石は加工がしやすいやわらかい素材だから、外壁などは100年に一回は貼り直しなんだぞ」
「えええええ……大変すぎる……保存魔法とか聞かないんです?」
「そもそも魔法を吸い取るんだから、そんなの効くわけないだろ……」
「というかさすが詳しいですね」
「この程度はアオアイ学園時代に教科書に載ってるからな」
「なるほど……ってカジャルさんて意外にお勉強できる方?」
じろりと睨まれた。
「失礼な……まあ普通だよ……お!見えてきたな!」
カジャルさんの指差す方を見ると、視界が開けて海が見えてきた。
大型船が停泊する港ではなく、南国ビーチだ!
ああ、憧れの海リゾート!蘭紗様がいないのが寂しいけど。
「すごい……」
ヤシの木の合間に見える白い砂浜には、立派な天幕がいくつも建てられている。
いくつかの天幕には衛兵の姿が見えるので、そこにはどこかの王族が夏の海を楽しみに来ているわけだ……
「あの天幕に入れるのは王族とその使用人だけだ。ちなみに支柱に沈滞石が使われているし、中のテーブルなんかにも仕込まれているから、安心だ」
僕はウンウンと言いながら馬車から降りた。
「何わらってんだ……」
紅茶のカップを持ったまま怪訝な顔でこちらを見るカジャルさん。
「ふふ、昨夜のこと思い出しちゃって」
「昨夜?」
「えっと久しぶりに蘭紗様と……えへ」
「おまっ!」
カジャルさんの顔がパーッとみるみるうちに赤くなっていく。
「あはは! カジャルさんってなんだか純粋でかわいいですね」
「やめろ!」
カジャルさんはアオアイの町の景色の方に目を移し、僕を見てくれなくなった。
その横顔は初めて会ったときとまるで違う落ち着いたもので、手負いの獣じみたあの猛々しさはまるでない。
涼鱗さんに愛されて、きっと幸せを感じているんだろうな……
「今頃、皆様お集まりなのでしょうけど、どんな風に進むんでしょうねえ」
「さあな……俺は外務の責任者を親父に持ってる割に、そういう事全く教えてもらってないからな……全然わからん」
「僑先生の方も、医師らが集まる会で発表されているとか言ってましたしね、みんな忙しいなあ」
「ああ……海にでも行きたいけどなあ……護衛を連れて行くなら良いとは言われているが、どうする?」
僕はトロピカルなピンクのフルーツを口に入れようとして、固まった。
「え?良いって言われてるって本当に?」
「ああ、せっかくの旅行なんだからって、でも、あんなことがあったしなあ」
「行くとしたらどこなのかな?」
「あっちの方だが」
カジャルさんが指差す方は、アオアイ本島の港より南側の方だ、森に囲まれていてビーチは見えない。
「王族専用の海水浴場があって、こういうときには各国の王族がそこを使うのだ、なかなかきれいなところだぞ、料理長に軽食を作らせて持っていくのも良いが、ビーチには一流レストランの出店もある」
「……他の王族……」
僕には他の王族にはトラウマがあるので、なんとも言えない気持ちになった。
「いやいや……サスラス王子みたいなのはいないよさすがに……それに砂浜は広いからな、余裕を持って各国別々の天幕を使うんだ。一緒に泳ぐわけではないぞ」
……なるほど……僕の頭には江ノ島とかの……芋の子を洗うみたいなのが浮かんでましたよね……
「じゃあ、行ってみましょうか?近衛隊と侍女たちも連れて」
「そうだな」
僕もカジャルさんもそうと決まれば乗り気だ、早く早くと荷物を用意してもらって、馬車で出発となった。
馬車は迎賓館の紋章がついている。
国賓の目印だそうだ。
「なんだかあれですよね、国賓って……」
僕は微妙な顔をして笑った。
「しかし、薫様は王妃だろうが」
「まあそうなんですけどねえ、でもカジャルさんだって宰相夫人じゃないですか……」
「やめてくれ……」
「っていうか……僕海で泳ぐっていうのは、実は初めてなんですよ、海に入るなんてとんでもないって家族に止められていたので」
「えー?」
カジャルさんは驚いたが、なるほどと唸った。
「まあ、こちらへ来る前は相当体が弱かったみたいだしなあ……今でもヒョロいが」
「その、ヒョロいってやめてもらえます?」
フフッと意地悪そうに笑ったカジャルさんを、僕は思いっきり睨んでやった。
馬車の外をふと見ると、迎賓館が立ち並ぶ美しい林を抜けたところで、大きく道を曲がって大通りに出た。
近衛隊に守られた僕たちの豪華な馬車に町の人達はすっと避けて道を開けてくれる。
そして気軽に手を振って僕たちを歓迎してくれるのが嬉しい。
僕は笑顔で手を振り返してみた。
とたんに上がる黄色い悲鳴に少し驚く。
「はは! そりゃそうだろ……王妃が直々に手を振れば誰だって喜ぶさ」
「そ、そうかな……」
「あ、そういえば、ここからは遠いんですか?お城……今日の会議が開かれているところ」
「んーっと、もうすぐ見えてくるかな……ああ、あれだあれ、あの白い建物だよ」
見えてきたのは南国風の大きなお城で、なんとも優雅でゆったりとしているお城だ。
あの白さは……
「もしかしてあのお城の材質は……」
「ああ、沈滞石だ」
「うそ、全部?」
「外壁と、廊下の材質はそうだと聞いている。あと謁見の間などは壁も天井もすべてだそうだが……もともと沈滞石は加工がしやすいやわらかい素材だから、外壁などは100年に一回は貼り直しなんだぞ」
「えええええ……大変すぎる……保存魔法とか聞かないんです?」
「そもそも魔法を吸い取るんだから、そんなの効くわけないだろ……」
「というかさすが詳しいですね」
「この程度はアオアイ学園時代に教科書に載ってるからな」
「なるほど……ってカジャルさんて意外にお勉強できる方?」
じろりと睨まれた。
「失礼な……まあ普通だよ……お!見えてきたな!」
カジャルさんの指差す方を見ると、視界が開けて海が見えてきた。
大型船が停泊する港ではなく、南国ビーチだ!
ああ、憧れの海リゾート!蘭紗様がいないのが寂しいけど。
「すごい……」
ヤシの木の合間に見える白い砂浜には、立派な天幕がいくつも建てられている。
いくつかの天幕には衛兵の姿が見えるので、そこにはどこかの王族が夏の海を楽しみに来ているわけだ……
「あの天幕に入れるのは王族とその使用人だけだ。ちなみに支柱に沈滞石が使われているし、中のテーブルなんかにも仕込まれているから、安心だ」
僕はウンウンと言いながら馬車から降りた。
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