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アオアイの町16 ビーチ
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昼前になってどんどん日差しが真上になってきたので、一時休憩となった。
僕達は、侍女たちに瀬国の天幕にお招きを受けたことを知らせ、先触れとお土産をお願いした。
用意ができたら午後のお茶の時間に伺うこととして、早めのランチなのだ。
……のだけど……驚く出来事が起こっていた。
今朝、お部屋で寝ていたのでそのまま宿り木に置いてきたはずの鳳凰が、天幕の中に現れていたのだ。
「え……来たの?飛んで?」
「いえ……それが……気がついたらそこに止まっていたのです」
「飛んできた様子はございませんでした」
天幕の中に控えていた皆が困惑の色を浮かべていて、鳳凰を遠巻きにしている。
本人(本鳥?)は「ん?」とでも言いたげな表情で(表情が他の人にわかるかは疑問だけど!)きょとんとして僕の衣装のかかった衣紋掛けに止まっている。
「おいで」
僕は追いかけてきてくれたことが単純に嬉しくて、手を広げて呼んでみた。
「クルゥ」
きれいな声で鳴いて僕の肩に飛んできた。
飛んでいる時、羽を広げた様子は美しすぎて幻想的なんだけど……なんというか大きすぎて周囲がざわつく。
「クーちゃん、ちょっと小さくなろっか小鳥ぐらいにね」
僕が静かに伝えると、シューッとインコとか文鳥ぐらいの手乗りサイズになる。
「くーちゃんだって?」
「んーっと……なんとなく……」
「名前それでいいのか?俺たちもそれで呼んで良いのか?」
「クーちゃん、それでいい?」
クーちゃんは「クルルぅ」と甘えた声で鳴いて僕の顔にひっついてきた。
なにこれかわいい。
「……鳳凰の名前がクーちゃんとは……」
「しかし、薫様がおっしゃるのですから」
「まあ、そうだな……」
カジャルさんは近衛隊とごちょごちょ話している。
「ああーそれにしてもお腹すいた!すっごくすいた!」
「だな!あんなに動いたからな」
カジャルさんもニコニコでササッと上着を羽織り、天幕横の日除けタープの下にあるテーブルに付いた。
景色が見えるお外でのお食事は本当に気持ち良い、しかもこの風光明媚なビーチリゾートなのだ。
本当にめちゃくちゃ贅沢!
「うわ、おいしそう!」
運ばれてきたのはお腹いっぱいになりすぎないようにとの配慮から、軽めの品が4種類。
きれいな飾りのついたピンで色々差してあるもの、これピンチョスだ。
お祖父様のパーティーで良くみかけたよね……
それから、さいの目に切られたお野菜がコロコロ入ったコンソメスープのゼリー寄せ、サーモンっぽいピンクのお魚の新鮮なサラダと、薄く切られたお肉が巻かれたクレープ。
どちらも美しい色合いのお野菜で彩られて、すごくきれい。
どれもビーチに合わせてほどよく冷やしてある。
「これ、料理長さん迎賓館からきてくれてるの?」
「いえ、これはあちらのレストランに注文して届けていただきました」
仙が言う方を見ると、なるほどビーチっぽくない豪華な出店があって、高級リゾート感がマシマシです。
「お飲み物はどうなさいます?お酒もありますが」
「んー、お呼ばれもしているし僕はアイスティーで」
「俺は少しもらうよ、発泡酒をお願いする」
カジャルさんは見た目通りお酒に強くてこういう時かっこよく決められてうらやましい。
僕ってなんだかお子様が抜けてないよね……
「そういえば、カレドゥ様だけど、何がお好き?あんまり何も考えずに甘いものをお願いしちゃったね」
「甘いものが嫌いな女子なんていないだろ?」
「そう?」
「ああいったものは形だけだ、気に入る気に入らないじゃないから、なんでもいいんだよ」
「へぇ……」
カジャルさんから目を離して、遠くの他国の王族の姿をチラ見する。
結構遠くだけど他に遮るものがないので、誰かまではわからないけど、しっかり姿が見える。
「お隣が瀬国でしょうか?」
「んー」
カジャルさんも振り向いて観察している。
「たぶんそうかな……よくわかんないな」
「だとしたら、4人いらっしゃいますね」
「女性と子供のようだし、王妃と王女達だろうな」
「そうですか……女性王族の方とはどんなこと話したらいいんでしょうね……なんだか緊張します」
「……俺に聞くなよ……苦手分野だ」
「ですよね」
「まあ、女は基本おしゃべりだ、適当に相槌うって、適当に帰ってこようぜ、ああ気をつけなきゃならないのは、あれだ……変な約束を勝手にしないことだな」
僕はコンソメのゼリー寄せをスプーンに入れたまま固まった。
「変な約束って……」
「例えば、交易のこととかさ、こういう場で探りを入れてくる王族もいるぞ」
「……交易ですって?」
「ああ、例えばだ、『このお茶おいしいですね』って言うと、『そうですか?お好みならばうちからそちらの国にも手に入るよう手配いたしましょう』なんてな、それで交易品が増えたりするんだ、これは侍従組が必ず習うんだが……こうやって小さいことで恩を売りつけておいて大きなことを要求されたりなんかも、無いことはないんだ」
「……」
僕は言葉にならなかった。
えっと、そんな教育受けていませんよ?
「でも、相手を褒めずに会話を進めるなんて……」
「確かにな……だが、薫様は王妃だしこういった他国の王族たちとの会話は慣れておくしかないぞ、今回は蘭紗様はわざと社交を予定にいれなかったらしいが……今後はそうはいかない、王妃って立場は軽くないんだ、気をつけなきゃな」
「うん……なんだか怖くなってきちゃった」
カジャルさんは盛大に溜息をつきながら発泡酒をあおった。
「なんのために俺が一緒にいると思ってんだ。俺ができるだけフォローするから大丈夫だ」
「んふ」
「なんだよ」
思わず漏れた僕の微かな笑い声に敏感に反応するカジャルさん。
「なんていうかほんとに、カジャルさんって頼りになる大事なお友達で、そして夫を持つ男性として同士でもあるし、得難い存在だなって思って……カジャルさんがいてくれてよかった」
カジャルさんはしかめっ面をして「やめろ」と言ってそっぽを向いた。
ほんとにこの人は照れ屋さんなのです……
食事後は少し休んでから、もう一度海で波でぐるぐる回って遊んで、きちんと湯浴みをして準備を整えた。
なんと天幕の裏側にヤシの木とブーゲンビリアっぽい花に囲まれた素敵な湯船があってぬるめのお湯が張られていたのだ。
日焼けをした肌でも痛くならないように、薬湯なのだというけど、爽やかな柑橘系の香りがしてとても気持ちよかった。
そこで潮でベトベトになった髪の毛もきれいに洗って侍女さんたちにきれいにお支度してもらったのだ。
すっかり僕カラーになった水色の紗の着物は下に着込んだ葉の模様の着物が透けていて、とてもきれいだ。
袴は白くしてリゾート感を出してみたよ。
肩には金色で豪華な刺繍がしてあり、それと同じデザインの首飾りを下げた。
髪の毛もきれいに整えて後で一つに結び、長い青い鳥の尾を付けまるでロングヘアみたいにした、その結び目には金色の精巧な細工のバレッタが付けられた。
僕達は、侍女たちに瀬国の天幕にお招きを受けたことを知らせ、先触れとお土産をお願いした。
用意ができたら午後のお茶の時間に伺うこととして、早めのランチなのだ。
……のだけど……驚く出来事が起こっていた。
今朝、お部屋で寝ていたのでそのまま宿り木に置いてきたはずの鳳凰が、天幕の中に現れていたのだ。
「え……来たの?飛んで?」
「いえ……それが……気がついたらそこに止まっていたのです」
「飛んできた様子はございませんでした」
天幕の中に控えていた皆が困惑の色を浮かべていて、鳳凰を遠巻きにしている。
本人(本鳥?)は「ん?」とでも言いたげな表情で(表情が他の人にわかるかは疑問だけど!)きょとんとして僕の衣装のかかった衣紋掛けに止まっている。
「おいで」
僕は追いかけてきてくれたことが単純に嬉しくて、手を広げて呼んでみた。
「クルゥ」
きれいな声で鳴いて僕の肩に飛んできた。
飛んでいる時、羽を広げた様子は美しすぎて幻想的なんだけど……なんというか大きすぎて周囲がざわつく。
「クーちゃん、ちょっと小さくなろっか小鳥ぐらいにね」
僕が静かに伝えると、シューッとインコとか文鳥ぐらいの手乗りサイズになる。
「くーちゃんだって?」
「んーっと……なんとなく……」
「名前それでいいのか?俺たちもそれで呼んで良いのか?」
「クーちゃん、それでいい?」
クーちゃんは「クルルぅ」と甘えた声で鳴いて僕の顔にひっついてきた。
なにこれかわいい。
「……鳳凰の名前がクーちゃんとは……」
「しかし、薫様がおっしゃるのですから」
「まあ、そうだな……」
カジャルさんは近衛隊とごちょごちょ話している。
「ああーそれにしてもお腹すいた!すっごくすいた!」
「だな!あんなに動いたからな」
カジャルさんもニコニコでササッと上着を羽織り、天幕横の日除けタープの下にあるテーブルに付いた。
景色が見えるお外でのお食事は本当に気持ち良い、しかもこの風光明媚なビーチリゾートなのだ。
本当にめちゃくちゃ贅沢!
「うわ、おいしそう!」
運ばれてきたのはお腹いっぱいになりすぎないようにとの配慮から、軽めの品が4種類。
きれいな飾りのついたピンで色々差してあるもの、これピンチョスだ。
お祖父様のパーティーで良くみかけたよね……
それから、さいの目に切られたお野菜がコロコロ入ったコンソメスープのゼリー寄せ、サーモンっぽいピンクのお魚の新鮮なサラダと、薄く切られたお肉が巻かれたクレープ。
どちらも美しい色合いのお野菜で彩られて、すごくきれい。
どれもビーチに合わせてほどよく冷やしてある。
「これ、料理長さん迎賓館からきてくれてるの?」
「いえ、これはあちらのレストランに注文して届けていただきました」
仙が言う方を見ると、なるほどビーチっぽくない豪華な出店があって、高級リゾート感がマシマシです。
「お飲み物はどうなさいます?お酒もありますが」
「んー、お呼ばれもしているし僕はアイスティーで」
「俺は少しもらうよ、発泡酒をお願いする」
カジャルさんは見た目通りお酒に強くてこういう時かっこよく決められてうらやましい。
僕ってなんだかお子様が抜けてないよね……
「そういえば、カレドゥ様だけど、何がお好き?あんまり何も考えずに甘いものをお願いしちゃったね」
「甘いものが嫌いな女子なんていないだろ?」
「そう?」
「ああいったものは形だけだ、気に入る気に入らないじゃないから、なんでもいいんだよ」
「へぇ……」
カジャルさんから目を離して、遠くの他国の王族の姿をチラ見する。
結構遠くだけど他に遮るものがないので、誰かまではわからないけど、しっかり姿が見える。
「お隣が瀬国でしょうか?」
「んー」
カジャルさんも振り向いて観察している。
「たぶんそうかな……よくわかんないな」
「だとしたら、4人いらっしゃいますね」
「女性と子供のようだし、王妃と王女達だろうな」
「そうですか……女性王族の方とはどんなこと話したらいいんでしょうね……なんだか緊張します」
「……俺に聞くなよ……苦手分野だ」
「ですよね」
「まあ、女は基本おしゃべりだ、適当に相槌うって、適当に帰ってこようぜ、ああ気をつけなきゃならないのは、あれだ……変な約束を勝手にしないことだな」
僕はコンソメのゼリー寄せをスプーンに入れたまま固まった。
「変な約束って……」
「例えば、交易のこととかさ、こういう場で探りを入れてくる王族もいるぞ」
「……交易ですって?」
「ああ、例えばだ、『このお茶おいしいですね』って言うと、『そうですか?お好みならばうちからそちらの国にも手に入るよう手配いたしましょう』なんてな、それで交易品が増えたりするんだ、これは侍従組が必ず習うんだが……こうやって小さいことで恩を売りつけておいて大きなことを要求されたりなんかも、無いことはないんだ」
「……」
僕は言葉にならなかった。
えっと、そんな教育受けていませんよ?
「でも、相手を褒めずに会話を進めるなんて……」
「確かにな……だが、薫様は王妃だしこういった他国の王族たちとの会話は慣れておくしかないぞ、今回は蘭紗様はわざと社交を予定にいれなかったらしいが……今後はそうはいかない、王妃って立場は軽くないんだ、気をつけなきゃな」
「うん……なんだか怖くなってきちゃった」
カジャルさんは盛大に溜息をつきながら発泡酒をあおった。
「なんのために俺が一緒にいると思ってんだ。俺ができるだけフォローするから大丈夫だ」
「んふ」
「なんだよ」
思わず漏れた僕の微かな笑い声に敏感に反応するカジャルさん。
「なんていうかほんとに、カジャルさんって頼りになる大事なお友達で、そして夫を持つ男性として同士でもあるし、得難い存在だなって思って……カジャルさんがいてくれてよかった」
カジャルさんはしかめっ面をして「やめろ」と言ってそっぽを向いた。
ほんとにこの人は照れ屋さんなのです……
食事後は少し休んでから、もう一度海で波でぐるぐる回って遊んで、きちんと湯浴みをして準備を整えた。
なんと天幕の裏側にヤシの木とブーゲンビリアっぽい花に囲まれた素敵な湯船があってぬるめのお湯が張られていたのだ。
日焼けをした肌でも痛くならないように、薬湯なのだというけど、爽やかな柑橘系の香りがしてとても気持ちよかった。
そこで潮でベトベトになった髪の毛もきれいに洗って侍女さんたちにきれいにお支度してもらったのだ。
すっかり僕カラーになった水色の紗の着物は下に着込んだ葉の模様の着物が透けていて、とてもきれいだ。
袴は白くしてリゾート感を出してみたよ。
肩には金色で豪華な刺繍がしてあり、それと同じデザインの首飾りを下げた。
髪の毛もきれいに整えて後で一つに結び、長い青い鳥の尾を付けまるでロングヘアみたいにした、その結び目には金色の精巧な細工のバレッタが付けられた。
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