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出会い3
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僕の出迎えをするために立たされている子どもたちに近づき、一番前にいた子に話しかけてみた。
「君のお名前は?」
とても痩せているが8歳ぐらいに見える。
その子は突然僕に話しかけられ、一瞬ビクッとしてから目を逸した。
言葉は……通じてると思うけど、怖がってる?
「あの、怖がらないでね、僕はあなた達が必要なものが何なのか見に来たんだよ」
「王妃様っ! どうぞ応接間に……子どもたちに貴方様とお話できるような躾はしておりませんのでっ!」
院長が大げさに叫んだのでびっくりして振り向いた。
カジャルさんは溜息をついてその院長を制した。
「子供に話しかけてはいけないとは聞いていないぞ?この方のなさることに注文をつけようというのか?」
「……そ、そんな!……ただ、失礼があってはと……」
「失礼もなにもありませんよ、もし何かあっても子供のすることなんです、そんなこと気にしません。それに僕は今日、子供の話を聞きに来ました、あなたとお茶を飲みに来たのではありません。それとも、応接間に子供を集めるんですか?全員入れます?」
「……いえ……」
院長は頭を下げたままこちらを見ずに言葉を述べる。
これって普通なの?やりにくい……
「では、君達が普段いるお部屋に案内してもらっていいかな?」
子供たちはビクビクした様子でお互いを顔を見合って何も言わない。
そのうちこちらをじっと見ている一番後にいた子と目があった。
「大丈夫、怒ったりしないよ?ね?」
その子は顔を真赤にして恥ずかしそうに頷いて指を差した。
表玄関とは違うその方向だ。
「じゃあ、行こうか、中を見せてくれる?」
僕が子供らと歩き出すと、もう一度院長が抵抗しようとしたので、今度は近衛がガッチリとガードしてくれた。
院長は「あうあう」と言葉にならない声を発してなおも案内させまいとした。
その様子の奇妙さにカジャルさんも近衛も顔をしかめた。
ますますこれはおかしい……何なのこの態度。
「王妃様!」
今度は、後ろに控えていた管轄の役人だ、焦った声をかけてくる。
「あなたも一緒に来てください、現状を把握してください」
僕はその役人に厳しく言いつけた。
役人はごくりと唾を飲み込み、顔面蒼白となった。
この人は、何か知ってるのかな……
子供らに囲まれて暫く歩くと、石造りの館の横から粗末な木で作られたドアが見えてきた。
補修はされているがこれでは暴風雨に耐えられないだろう……
僕は何も言わず案内されるがまま笑顔を絶やさずに子どもたちを観察していた。
子供達は、僕が怒ったりしない様子に少し安心したのか、ほっとしたような表情でそのドアを開ける。
キーキーと油を差したほうが良さそうな音がしてドアが開くと、長く薄暗い廊下が見えた。
石造りの上に元々何の目的で建てられたのか、廊下には全く採光がないのだ。
ちょっとお化け屋敷風味なそれに一瞬たじろぐが、子供たちは皆さっさと入って部屋に向かおうとするので、意を決してその後を追う。
「明かりを用意しろ」
後ろでカジャルさんが院長に命じているのが聞こえる。
「十分が油がありませんので、こんな昼間に明かりをつけるような余裕は……」
「……後から補充してやるから、いますぐつけるんだ」
役人の焦った声も聞こえる。
僕は明かりも灯されていない暗い廊下をおっかなびっくり進んでいたが、やがて悪臭に気づき始めた。
これは……洗っていない人の臭い……
日本にも路上で寝ている人が時々いた。
そんな人が漂わせるあの臭いは強烈かつ不快で、すぐさまの場から移動したものだが……
ここではそんな態度はできない。
外の温かい日差しが嘘のような、湿ったひんやりした空気に……この臭い……
嫌な予感しかしない。
「あの……ここ」
子供らの誰かが目の前のドアに手をかけるのが薄っすらと見えた。
そのドアは……とても頑丈で、もしかして裏口めいた木のドアよりも頑丈かもしれない、というかそうだろう、だって、触って気がついたのだが、鉄製だった。
「……」
ギイイと嫌な音を立てながらその扉を子供が3人がかりで開ける。
見かねた近衛がそれを手伝うと、重いドアはもっと激しくギギギとなってついに開いた。
そしてその部屋の全貌が見えた。
思いがけず明るくて一瞬目がチカチカしたが、なんのことはない普通に窓があるから外の日差しが届いているだけだ。
それだけ廊下の暗さが異常だったことがわかる。
そして、臭いはますますキツくなるが、僕は必死に堪えた。
ここで僕が手を鼻にやるような仕草をしようものなら、子供がどう思うか……きっと傷つくだろう……
そして部屋の惨めさにめまいを感じた。
窓にかかるカーテンはビリビリに破け、もはやボロ布……
壊れかけの2段ベッドが壁沿いにズラッと並ぶが、そこに用意されているだろう布団がまず見えない……木がむき出しなのだ。
この子達は掛け布もなしに寝るというのか……
そしてこの臭い……
床がもので溢れているゴミ屋敷とかそういうのではない……床にはホコリしかない。
あふれる物さえないのだ、本当になにもない部屋。
各人の着替えなども見当たらない。
ならばこの臭いの正体は何なのか……
僕は部屋を見渡しその正体を探す。
だけど……その臭いの元凶は何もないと知って、そうかと思う……これは……普段お風呂もなしに過ごすこの子らの日常の臭いなんだ……
頭を殴られたような衝撃を受けた。
この子らは……こんな生活を強いられていたの?
どうして……
近衛とカジャルさんがさっと部屋に入り、窓に手をかける。
換気をしてくれるようだ。
大人3人がかりでようやく開いたその窓は、なんと釘で打たれていた。
逃走防止?なの?……
子供の一人が僕の手をそっと触ってきた。
僕はハッとして目線を下に向けてその子を見ると、僕の手をそっと触れてはいけないものに触るようにして嬉しそうな笑みを浮かべている。
「どうしたの?」
僕は座って目線を同じにして、話しかけてみた。
その子の瞳はキレイな水色で、よく見ると顔立ちもきれいだ。
女の子かもしれない。
「おうひさま……きれい」
かわいらしい声で一言そっと囁くように話したその子を、僕は何も言えないまま見つめるだけしかできない。
「ここは……あまり物が無いようだね……色々と困っているのでは?」
「?」
子どもたちは皆不思議そうな顔をして見つめてくる。
最初の警戒心は無くなったのでまだいいけど、うまく話ができていない感じがもどかしい。
「ここで着るものや、食べ物……それからお風呂……きちんとしてもらってる?一日どんな風に活動しているか教えてくれる?」
僕の手を握ったままの子は「えーっと」と言って話し出す。
「まず、朝起きたら畑いって、うまくできた子にはごほうびでパンもらえて……えとそれから、家畜の世話と……それから院の庭掃除と、おわったら夜で、寝る前に祈って寝ます」
「ちょっとまって、ご飯は……うまくできた子が朝にパンもらえるだけなの?」
「そうだよ」
「掃除もうまくできたらパンもらえる」
「でも……それでは、ずっともらえない子もいるんじゃ?……」
僕は胸がだんだん苦しくなってきて、必死に聞き出す。
「うん、もらえない子は弱って役に立たなくなるから、少しはもらえるよ」
「えっと時々スープももらえるよ!」
「そ……うなんだね……」
「でも昨日は、おうひさま来るからって皆パンもらえて体洗って寝たんだよ」
カジャルさんが僕の肩に手を置いた。
見上げると、悔しそうな顔で「すまない」と呟いた。
「俺は……数年前に一度ここに来ている。それなのに中は見なかった。外で院長の挨拶を受けてそれで戻ったんだ。視察なんてそんなものだと勝手に思っていて」
「カジャルさん……」
「とにかく、これは異常だ。近衛が院長を捕縛している。あと……まだなにか隠しているかもしれないから、俺と近衛が中を改めるから、薫様はどうか外へ」
カジャルさんは僕を悲し気に見つめた。
「君のお名前は?」
とても痩せているが8歳ぐらいに見える。
その子は突然僕に話しかけられ、一瞬ビクッとしてから目を逸した。
言葉は……通じてると思うけど、怖がってる?
「あの、怖がらないでね、僕はあなた達が必要なものが何なのか見に来たんだよ」
「王妃様っ! どうぞ応接間に……子どもたちに貴方様とお話できるような躾はしておりませんのでっ!」
院長が大げさに叫んだのでびっくりして振り向いた。
カジャルさんは溜息をついてその院長を制した。
「子供に話しかけてはいけないとは聞いていないぞ?この方のなさることに注文をつけようというのか?」
「……そ、そんな!……ただ、失礼があってはと……」
「失礼もなにもありませんよ、もし何かあっても子供のすることなんです、そんなこと気にしません。それに僕は今日、子供の話を聞きに来ました、あなたとお茶を飲みに来たのではありません。それとも、応接間に子供を集めるんですか?全員入れます?」
「……いえ……」
院長は頭を下げたままこちらを見ずに言葉を述べる。
これって普通なの?やりにくい……
「では、君達が普段いるお部屋に案内してもらっていいかな?」
子供たちはビクビクした様子でお互いを顔を見合って何も言わない。
そのうちこちらをじっと見ている一番後にいた子と目があった。
「大丈夫、怒ったりしないよ?ね?」
その子は顔を真赤にして恥ずかしそうに頷いて指を差した。
表玄関とは違うその方向だ。
「じゃあ、行こうか、中を見せてくれる?」
僕が子供らと歩き出すと、もう一度院長が抵抗しようとしたので、今度は近衛がガッチリとガードしてくれた。
院長は「あうあう」と言葉にならない声を発してなおも案内させまいとした。
その様子の奇妙さにカジャルさんも近衛も顔をしかめた。
ますますこれはおかしい……何なのこの態度。
「王妃様!」
今度は、後ろに控えていた管轄の役人だ、焦った声をかけてくる。
「あなたも一緒に来てください、現状を把握してください」
僕はその役人に厳しく言いつけた。
役人はごくりと唾を飲み込み、顔面蒼白となった。
この人は、何か知ってるのかな……
子供らに囲まれて暫く歩くと、石造りの館の横から粗末な木で作られたドアが見えてきた。
補修はされているがこれでは暴風雨に耐えられないだろう……
僕は何も言わず案内されるがまま笑顔を絶やさずに子どもたちを観察していた。
子供達は、僕が怒ったりしない様子に少し安心したのか、ほっとしたような表情でそのドアを開ける。
キーキーと油を差したほうが良さそうな音がしてドアが開くと、長く薄暗い廊下が見えた。
石造りの上に元々何の目的で建てられたのか、廊下には全く採光がないのだ。
ちょっとお化け屋敷風味なそれに一瞬たじろぐが、子供たちは皆さっさと入って部屋に向かおうとするので、意を決してその後を追う。
「明かりを用意しろ」
後ろでカジャルさんが院長に命じているのが聞こえる。
「十分が油がありませんので、こんな昼間に明かりをつけるような余裕は……」
「……後から補充してやるから、いますぐつけるんだ」
役人の焦った声も聞こえる。
僕は明かりも灯されていない暗い廊下をおっかなびっくり進んでいたが、やがて悪臭に気づき始めた。
これは……洗っていない人の臭い……
日本にも路上で寝ている人が時々いた。
そんな人が漂わせるあの臭いは強烈かつ不快で、すぐさまの場から移動したものだが……
ここではそんな態度はできない。
外の温かい日差しが嘘のような、湿ったひんやりした空気に……この臭い……
嫌な予感しかしない。
「あの……ここ」
子供らの誰かが目の前のドアに手をかけるのが薄っすらと見えた。
そのドアは……とても頑丈で、もしかして裏口めいた木のドアよりも頑丈かもしれない、というかそうだろう、だって、触って気がついたのだが、鉄製だった。
「……」
ギイイと嫌な音を立てながらその扉を子供が3人がかりで開ける。
見かねた近衛がそれを手伝うと、重いドアはもっと激しくギギギとなってついに開いた。
そしてその部屋の全貌が見えた。
思いがけず明るくて一瞬目がチカチカしたが、なんのことはない普通に窓があるから外の日差しが届いているだけだ。
それだけ廊下の暗さが異常だったことがわかる。
そして、臭いはますますキツくなるが、僕は必死に堪えた。
ここで僕が手を鼻にやるような仕草をしようものなら、子供がどう思うか……きっと傷つくだろう……
そして部屋の惨めさにめまいを感じた。
窓にかかるカーテンはビリビリに破け、もはやボロ布……
壊れかけの2段ベッドが壁沿いにズラッと並ぶが、そこに用意されているだろう布団がまず見えない……木がむき出しなのだ。
この子達は掛け布もなしに寝るというのか……
そしてこの臭い……
床がもので溢れているゴミ屋敷とかそういうのではない……床にはホコリしかない。
あふれる物さえないのだ、本当になにもない部屋。
各人の着替えなども見当たらない。
ならばこの臭いの正体は何なのか……
僕は部屋を見渡しその正体を探す。
だけど……その臭いの元凶は何もないと知って、そうかと思う……これは……普段お風呂もなしに過ごすこの子らの日常の臭いなんだ……
頭を殴られたような衝撃を受けた。
この子らは……こんな生活を強いられていたの?
どうして……
近衛とカジャルさんがさっと部屋に入り、窓に手をかける。
換気をしてくれるようだ。
大人3人がかりでようやく開いたその窓は、なんと釘で打たれていた。
逃走防止?なの?……
子供の一人が僕の手をそっと触ってきた。
僕はハッとして目線を下に向けてその子を見ると、僕の手をそっと触れてはいけないものに触るようにして嬉しそうな笑みを浮かべている。
「どうしたの?」
僕は座って目線を同じにして、話しかけてみた。
その子の瞳はキレイな水色で、よく見ると顔立ちもきれいだ。
女の子かもしれない。
「おうひさま……きれい」
かわいらしい声で一言そっと囁くように話したその子を、僕は何も言えないまま見つめるだけしかできない。
「ここは……あまり物が無いようだね……色々と困っているのでは?」
「?」
子どもたちは皆不思議そうな顔をして見つめてくる。
最初の警戒心は無くなったのでまだいいけど、うまく話ができていない感じがもどかしい。
「ここで着るものや、食べ物……それからお風呂……きちんとしてもらってる?一日どんな風に活動しているか教えてくれる?」
僕の手を握ったままの子は「えーっと」と言って話し出す。
「まず、朝起きたら畑いって、うまくできた子にはごほうびでパンもらえて……えとそれから、家畜の世話と……それから院の庭掃除と、おわったら夜で、寝る前に祈って寝ます」
「ちょっとまって、ご飯は……うまくできた子が朝にパンもらえるだけなの?」
「そうだよ」
「掃除もうまくできたらパンもらえる」
「でも……それでは、ずっともらえない子もいるんじゃ?……」
僕は胸がだんだん苦しくなってきて、必死に聞き出す。
「うん、もらえない子は弱って役に立たなくなるから、少しはもらえるよ」
「えっと時々スープももらえるよ!」
「そ……うなんだね……」
「でも昨日は、おうひさま来るからって皆パンもらえて体洗って寝たんだよ」
カジャルさんが僕の肩に手を置いた。
見上げると、悔しそうな顔で「すまない」と呟いた。
「俺は……数年前に一度ここに来ている。それなのに中は見なかった。外で院長の挨拶を受けてそれで戻ったんだ。視察なんてそんなものだと勝手に思っていて」
「カジャルさん……」
「とにかく、これは異常だ。近衛が院長を捕縛している。あと……まだなにか隠しているかもしれないから、俺と近衛が中を改めるから、薫様はどうか外へ」
カジャルさんは僕を悲し気に見つめた。
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