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出会い6
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僕は自室の窓からボーっと城下町を眺めた。
キレイに並ぶ並木通りには人々が歩いているのが小さく見えるし、馬車が行き交うのも見える。
発展していて活気もあって……でもその影でこんな風に虐げられている人がいたんだと言う事実に打ちのめされる。
元いた世界にだって、差別や戦争、紛争地帯など……いろんな事情があった。
そのたびに心が傷ついたりしなかったのは、それはそういうものだからと勝手に思っていたからではないか。
僕が今この世界の裏事情にこれほど傷ついているのは、この世界がきれいなことだらけだと、勝手に思っていたからに過ぎないんだ……
甘いよね……
「薫様、留紗様がお見えですが」
「ああ、通して」
今日はお茶の約束をしていたのだ。
久しぶりに合う留紗の姿に僕の心は溶かされていくようだ。
「留紗、久しぶりだね、お勉強は進んでいる?」
「はい、薫様!」
ふくふくした丸い頬を触ってみてその手触りの良さに切なくなる。
大切にされて育つ留紗には傷一つない。
子供はこれが当たり前なのだけど。
「これは、今朝杷流と一緒に摘んだのですが、薫様はお花がお好きなのでお喜びになるかなと思って」
ニコニコ笑顔の留紗が可愛らしい手で持った花束を僕にくれた。
この子はいつもお庭の花を摘んできてくれるのだ。
僕が花の香りが好きだと知っているようで。
「杷流は元気ですか?」
「はい、杷流もこの夏から伴侶候補の勉強が始まって、二人の時間があまり取れないのですが。あ、それから僕が15になったら正式に結婚することが決まりました」
「ええ?決まったの!おめでとう!」
顔を真赤にしてはにかむ留紗の柔らかな手を握った。
あの子の骨ばった傷だらけのザラザラした手を思い出して悲しくなる……
「はい、ありがとうございます」
「さあ座って!今日は留紗の好きなケーキがあるよ」
「わあ!きれいな飾り付けですね」
「でしょ?城下町のケーキ屋さんから取り寄せたんだよ」
「薫様は城下町が好きですか?僕も行ってみたいです」
「そう……護衛の方の負担もあるからね、自分で決めないで計画的に話を進めてね、そしてもし蘭紗様のお許しが出たら、僕も一緒に行きましょう」
「わあ!」
留紗は満面の笑みを浮かべて嬉しそうだ。
最初に見たときはいかにも王族といった口調で、幼子なのに偉そうな態度と言葉使いで……まあそこも可愛らしかったけど……
でも今は年相応に振る舞えるようになっている。
これは留紗が王位継承権を放棄したことによるらしい。
王になることがないので教育の科目も、普段の振る舞いも変えたということだ。
まあ、まだ幼くて逆に良かったのかもしれないな……
「今日はね、実は孤児院に行ってきたのですよ」
「慰問ですか?」
「視察ですね、どちらかというと」
「視察ですか……どうでしたか?孤児院というのは親のない子が集められて育てられる場所ですよね?」
「そうだね……ひどかったよ。食べ物も一日にパン一つ程度で、お風呂もたまにしか入れないし、お布団もなかった」
「え?」
留紗はポカンとした顔でじっと僕を見つめた。
「どういう状況でしょうか?パン一つというのは庶民の普通でしょうか?」
「……そんなわけないよ……孤児院には十分にお金が渡されていたのに、誰かがそのお金を自分の為に使って子供に使ってくれなかったんだね、きっと」
「そんな……では、お腹をすかせている子に、これを届けては!」
留紗が目の前の美しく設えられたテーブルを指差す。
「急にこんなものを食べたらお腹を壊すだろうね……それに、彼らに必要なのは施しもだけど、人間らしい生活習慣を身につけることなんだよ、今そういう人を手配してもらっていて」
「そうでしたか……」
しょんぼりした留紗が小さな可愛らしい手をきちんと揃えてテーブルの上に置いた。
「僕はなにも知らずに、だめな王族です」
「そんなことはないよ留紗……僕もしらなかったんだからね……これからはできることをしていこうと思ってるんだ、それでね、そこで……更にかわいそうな状況の子を連れ帰ったんだよ、その子は今地下で入院しているんだ」
「僑先生が診ておられるなら、もう大丈夫ですね!」
「……それはどうかな……その子は部屋も与えられずに、馬や牛と一緒に家畜小屋に寝泊まりしていたらしくて、そして毎日朝から晩まで働かされてとても痩せていてね……」
「そんな……」
「その子が留紗と同じ年ぐらいじゃないかと思うんだ」
「え!」
「だから今度、一緒にお見舞いをしてあげてほしいんだけどどうかな?」
留紗の顔が輝いた。
「はい!ぜひ、一緒に行きます!」
僕は留紗の笑顔に救われた気持ちになって、少し心が軽くなった。
キレイに並ぶ並木通りには人々が歩いているのが小さく見えるし、馬車が行き交うのも見える。
発展していて活気もあって……でもその影でこんな風に虐げられている人がいたんだと言う事実に打ちのめされる。
元いた世界にだって、差別や戦争、紛争地帯など……いろんな事情があった。
そのたびに心が傷ついたりしなかったのは、それはそういうものだからと勝手に思っていたからではないか。
僕が今この世界の裏事情にこれほど傷ついているのは、この世界がきれいなことだらけだと、勝手に思っていたからに過ぎないんだ……
甘いよね……
「薫様、留紗様がお見えですが」
「ああ、通して」
今日はお茶の約束をしていたのだ。
久しぶりに合う留紗の姿に僕の心は溶かされていくようだ。
「留紗、久しぶりだね、お勉強は進んでいる?」
「はい、薫様!」
ふくふくした丸い頬を触ってみてその手触りの良さに切なくなる。
大切にされて育つ留紗には傷一つない。
子供はこれが当たり前なのだけど。
「これは、今朝杷流と一緒に摘んだのですが、薫様はお花がお好きなのでお喜びになるかなと思って」
ニコニコ笑顔の留紗が可愛らしい手で持った花束を僕にくれた。
この子はいつもお庭の花を摘んできてくれるのだ。
僕が花の香りが好きだと知っているようで。
「杷流は元気ですか?」
「はい、杷流もこの夏から伴侶候補の勉強が始まって、二人の時間があまり取れないのですが。あ、それから僕が15になったら正式に結婚することが決まりました」
「ええ?決まったの!おめでとう!」
顔を真赤にしてはにかむ留紗の柔らかな手を握った。
あの子の骨ばった傷だらけのザラザラした手を思い出して悲しくなる……
「はい、ありがとうございます」
「さあ座って!今日は留紗の好きなケーキがあるよ」
「わあ!きれいな飾り付けですね」
「でしょ?城下町のケーキ屋さんから取り寄せたんだよ」
「薫様は城下町が好きですか?僕も行ってみたいです」
「そう……護衛の方の負担もあるからね、自分で決めないで計画的に話を進めてね、そしてもし蘭紗様のお許しが出たら、僕も一緒に行きましょう」
「わあ!」
留紗は満面の笑みを浮かべて嬉しそうだ。
最初に見たときはいかにも王族といった口調で、幼子なのに偉そうな態度と言葉使いで……まあそこも可愛らしかったけど……
でも今は年相応に振る舞えるようになっている。
これは留紗が王位継承権を放棄したことによるらしい。
王になることがないので教育の科目も、普段の振る舞いも変えたということだ。
まあ、まだ幼くて逆に良かったのかもしれないな……
「今日はね、実は孤児院に行ってきたのですよ」
「慰問ですか?」
「視察ですね、どちらかというと」
「視察ですか……どうでしたか?孤児院というのは親のない子が集められて育てられる場所ですよね?」
「そうだね……ひどかったよ。食べ物も一日にパン一つ程度で、お風呂もたまにしか入れないし、お布団もなかった」
「え?」
留紗はポカンとした顔でじっと僕を見つめた。
「どういう状況でしょうか?パン一つというのは庶民の普通でしょうか?」
「……そんなわけないよ……孤児院には十分にお金が渡されていたのに、誰かがそのお金を自分の為に使って子供に使ってくれなかったんだね、きっと」
「そんな……では、お腹をすかせている子に、これを届けては!」
留紗が目の前の美しく設えられたテーブルを指差す。
「急にこんなものを食べたらお腹を壊すだろうね……それに、彼らに必要なのは施しもだけど、人間らしい生活習慣を身につけることなんだよ、今そういう人を手配してもらっていて」
「そうでしたか……」
しょんぼりした留紗が小さな可愛らしい手をきちんと揃えてテーブルの上に置いた。
「僕はなにも知らずに、だめな王族です」
「そんなことはないよ留紗……僕もしらなかったんだからね……これからはできることをしていこうと思ってるんだ、それでね、そこで……更にかわいそうな状況の子を連れ帰ったんだよ、その子は今地下で入院しているんだ」
「僑先生が診ておられるなら、もう大丈夫ですね!」
「……それはどうかな……その子は部屋も与えられずに、馬や牛と一緒に家畜小屋に寝泊まりしていたらしくて、そして毎日朝から晩まで働かされてとても痩せていてね……」
「そんな……」
「その子が留紗と同じ年ぐらいじゃないかと思うんだ」
「え!」
「だから今度、一緒にお見舞いをしてあげてほしいんだけどどうかな?」
留紗の顔が輝いた。
「はい!ぜひ、一緒に行きます!」
僕は留紗の笑顔に救われた気持ちになって、少し心が軽くなった。
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