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雷と雨とクーちゃん
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秋になろうとしている紗国の天気は気まぐれだ。
なんだかもくもくと雲が出てきたなと窓の外を眺めていたら、いきなり雷が鳴ってドガーンとすごい地響きが起きた。
その衝撃で、辺りが揺れたかのように感じたほどだ。
「……っ!」
僕が目を見開いて固まったまま外を見続けていると、今度はバラバラっと雨が振ってきて、それはどんどん横殴りになっていく。
「うへ……降ってきやがったな……」
「うん、朝からおかしな気配がしたものねえ」
カジャルさんも涼鱗さんも慣れた様子で窓の外を見やる。
「ゲリラ豪雨ですね……」
「ゲリラ?」
「あ……」
2人が不思議そうな顔をしているのを見るまで、これが日本の言葉だったことを忘れていた……
「い、いえ……日本ではこういう急に大雨が降る事をそんなふうに言ったりしていましたね」
「なるほど……ゲリラとはどういう意味だ?」
「んーと確か、正規の軍でない部隊が、奇襲したりして……こう、敵を翻弄するというか……そういう動きをする一団のことですね、一部分にだけ急に大量の雨が降ってくる様が、その突然降って湧いたような攻撃のようだということで、日本ではそう呼び始めたんだと思いますが……」
真面目に聞かれると答えるのも大変なのだ……
「へぇ戦法から天気の名付けを?……面白いな……日本はこういう雨が降る地域だったのだな」
「初夏にもあるんですよ、梅雨といってずっと雨が降り続く時期が、でもそれはシトシト降り続く感じで……」
僕はフフッと笑った。
なんとなく日本に住んでいた頃のことを思い出して。
「あ、ちょっとまっててください」
僕は机からスマホを取り出して、アルバムから一枚の写真を選び出し、それを見せた。
「これを見てください」
その写真は、新人くんと僕が公園の東屋で2人で爆笑しながら並んで撮ってる写真だ。
「懐かしい!これこれ……」
「これがどうかしたのか?」
「ん?これは友達か?」
僕はその写真をじっと見つめて静かに伝えた。
「これはね新人くん。僕の友達だった頃の。僕にとってはたった数年前なのにね」
2人は顔を見合わせて息を呑んだ。
そして、ゆっくりと笑顔になって頷いた。
「そうなんだね……薫がその写真を見せる気になったのは、少しは心が落ち着いてきたからなの?」
「薫様のことだから、絶対写真持ってるとは思ってたんだよな」
新しいスマホにした時に、前のスマホからわざわざ移していたのだ。
行方不明のまま会えなくなった友の写真だから。
「新人くんは、僕の中でこの姿で……今でも阿羅国での出来事が嘘みたいに感じるんだよね……でも、そろそろちゃんと向き合わないと……」
「まあ、無理しないで、ね?」
「そうだ。話なら聞くから」
二人共すっかり僕を甘やかす天才になっています。
「で、この雨の感じわかります?」
「ああ、わかるぞ、確かにシトシト降ってる感じだねえ、この周りの花は何?美しい色だね」
「これは紫陽花です、梅雨時期に咲く花ですよ」
「なるほどねえ」
涼鱗さんもお花が好きなのかな……
「……こんなこと言っちゃなんだが……やっぱり波羽彦王に似てるよな……」
「僕もはじめは全然思っていなかったんですが、そう思いますよね」
「それに、薫様の横に並ぶとかなり体も大きいし、たくましい……かなり鍛えていたのだろうな……波羽彦よりもでかく思えるが……」
「サッカーという競技に打ち込んでいて」
「そういえばサッカーね、阿羅国から新しい遊びとして輸出するらしいよ?」
「輸出?!」
僕は驚いて目がまんまるだ……
「そうそう、審判の資格を持つ手練が、お金を出してくれた所に教えに行くんだそうだ。サッカー独自の毬をサッカーボールと言うらしいんだが、それも同時に輸出だとさ」
「バイオリンもそのうちと考えているらしいぜ」
「バイオリンもとなれば、うちの王妃の出番もありそうだよねえ」
「そりゃね、この世界で一番の弾き手だろうから」
「ちょっとやめてくださいよ!」
からかい顔の2人に僕は焦って手をブンブン振った。
作られているのは阿羅国なんだから、阿羅国にきっと素晴らしい弾き手がいるはず!
「そうだ、波羽彦から正式に返事があってね、あっちの建国記の写しを見せてもらえることになったんだ」
「え、そうなんですか?」
「それで、日本での名前は「アラト」だろう?字は確か、「新しいに人」だったな」
「ええ、そうですね」
「自分の国を作るにあたって、なぜ字を変え、阿羅彦と名乗って阿羅国としたのだろう?とまあ、ちょっとした疑問がねえ」
僕はたまらなくなって声を出して笑った。
「なんなんだよ!」
カジャルさんが腕をつついてくる。
「いえ……実はね……日本にいる頃に、そうですね……小学生の頃から僕たちのような男子はだいたいゲームをするんですよ」
「ゲーム」
「はい、遊びなんですけどね、その中で国を作るゲームがあって、僕は自分の国に『カオルー』って付けていて、新人くんは「阿羅国」と付けたんですよね、この字がカッコイイ!って理由だったと思いますよ。まあ、お互い自分の名前をもじって、付けて遊んでいたんです」
「国を作る遊びだと……」
「それはなにか……帝王学のようなものを学ぶためだったのだろうか」
「いえいえ……そんな真面目なものじゃなくて本当に単なる遊びなんですよね、でもなんとなくですが……その中でここに木を植えようとかここに役所を作ろうとか、ここに公園を作ろうとか、そういう……今思えばそうですね、あれが阿羅国の元になったのかもしれませんよね」
「では、薫は阿羅国と聞いてピンときていたのか?」
「いいえ、それは正直全然ありませんでした……だって子供の頃の話ですし、まさか新人くんが関係しているなんて思うわけがありません」
「そうか……」
涼鱗さんが難しい顔でスマホの画面を見つめている。
「この写真を見ていると、本当に普通の青年だな」
「全くだ」
2人はしんみりしてしまった。
「おうひさま」
可愛い声が聞こえてふと振り向くと、設えたばかりのかわいらしいベッドの中で翠がぱっちりとお目々を開けてこっちを見ていた。
「起きちゃったの?ごめんねうるさかったかな?」
「ううん」
翠は不思議そうな顔で僕を覗き込んで、小さな手で頬をつついてきた。
「ほんとうに夢じゃなくて、おうひさまいる」
「あはは! いるよー! ほら、涼鱗おじさんとカジャルおじさんも」
「「おい」」
二人のツッコミは無視である。
「ちょっと待て、俺も涼鱗もお兄さんでお願いしたい」
「まったくそのとおりだよ、薫」
僕は2人には目をやらず、翠を見つめた。
不安と安心がないまぜになったような、複雑な表情だ。
「どうしたの?」
「僕、ずっとほんとうにここに住むの?」
「そうだぞー!ずっとここにいるんだ、おまえは王子になったんだからな!」
カジャルさんが子供に話しかける時って、こういうテンションなんだなあ……となんとなく面白く思った。
「そうだよ、心配いらない。何回目が覚めても、君があそこへ戻ることはないよ」
涼鱗さんは静かに子供にわかるように話す。
うまいなあと思った……
ああそうか、小さな妹さんがいたからかな。
「でもここから園はとおい?あるいていけるかな」
「……翠……もう働きに行かなくていいんだよ?君はまだこんなに小さいんだし、そして体も弱っているし、ね?」
「でも、僕が園に行かないと、お兄さんたちの食べるものを買えなくて、みんなにおこられる」
「え?」
僕は急に心臓が痛くなったように感じる。
これは怒りというのかもしれない……
「翠、君が怒られることはない。だいたい君が園にいかなくてもご飯が食べられるように、王様は君たちにお金をあげていたんだよ、それを院長は自分のためだけに使ってしまっていたんだよ」
「え?おかねを?……いんちょうせんせい……」
「そうだ、王様は君のお父さんになる、わかるね?」
涼鱗さんは落ち着いて翠に話してくれる。
翠は最初は涼鱗さんに警戒心を持っていたようだが、徐々にその美しい白い肌や白い髪に視線をあちこちさせて興味深く見つめたりして慣れてきたようだ。
……うまい、涼鱗さんうまい……
「君のお父さんは、この国で一番えらい人だ、その人が父なんだから、君をもう働かせたりしない、誰もね。だから安心して体を治すんだよ」
「うん……」
「よし、いい子だ。そうだな……今の君の仕事は、早く体を治してお父さんとお母さんを安心させることだ、わかったね」
「うん!」
翠はキラキラ輝くように微笑んで僕の目を見つめてきた。
「おうひさま」
「……なに?」
あんまりキレイでかわいくて、声が詰まってしまった。
「ずっといっしょにいてね」
「うん、そうだね」
「クルゥ」
羽音もなく静かに僕の肩に止まったクーちゃんは首を傾げて翠を見つめる。
「クーちゃんっていうんだよ、僕の鳥なんだ、かわいいでしょ?仲良くできるかな?」
「くーちゃん……」
翠はまっすぐ手を伸ばしてクーちゃんに触れようとした。
そしてその指がクーちゃんに触れたとき、パーッと辺りが白く輝き翠がふわっと浮き上がった。
部屋はどんどん真っ白になり、とうとう白いだけの空間になった。
焦った僕たちは翠に手を伸ばしたけど、なぜか触れない……
「ん!」
翠の我慢するような声が聞こえてきて……次の瞬間さーっと波が引くように元通りの雨音のする部屋に戻った。
「な……なに……」
「クーちゃん今のなに!」
「クルクルゥ!」
その場の皆は、自慢気に部屋を飛び回るクーちゃんにあっけにとられたが、小さな声に呼び戻された。
「おうひさま、僕、痛いのなおった」
「え?!」
僕たち3人は翠の言葉がすぐに理解できなかった。
でも視線を戻して理解したんだ。
ベッドの中の翠は血色もよく、あきらかに元気そうになっていた……
「うそ……」
クーちゃんの奇跡です!
なんだかもくもくと雲が出てきたなと窓の外を眺めていたら、いきなり雷が鳴ってドガーンとすごい地響きが起きた。
その衝撃で、辺りが揺れたかのように感じたほどだ。
「……っ!」
僕が目を見開いて固まったまま外を見続けていると、今度はバラバラっと雨が振ってきて、それはどんどん横殴りになっていく。
「うへ……降ってきやがったな……」
「うん、朝からおかしな気配がしたものねえ」
カジャルさんも涼鱗さんも慣れた様子で窓の外を見やる。
「ゲリラ豪雨ですね……」
「ゲリラ?」
「あ……」
2人が不思議そうな顔をしているのを見るまで、これが日本の言葉だったことを忘れていた……
「い、いえ……日本ではこういう急に大雨が降る事をそんなふうに言ったりしていましたね」
「なるほど……ゲリラとはどういう意味だ?」
「んーと確か、正規の軍でない部隊が、奇襲したりして……こう、敵を翻弄するというか……そういう動きをする一団のことですね、一部分にだけ急に大量の雨が降ってくる様が、その突然降って湧いたような攻撃のようだということで、日本ではそう呼び始めたんだと思いますが……」
真面目に聞かれると答えるのも大変なのだ……
「へぇ戦法から天気の名付けを?……面白いな……日本はこういう雨が降る地域だったのだな」
「初夏にもあるんですよ、梅雨といってずっと雨が降り続く時期が、でもそれはシトシト降り続く感じで……」
僕はフフッと笑った。
なんとなく日本に住んでいた頃のことを思い出して。
「あ、ちょっとまっててください」
僕は机からスマホを取り出して、アルバムから一枚の写真を選び出し、それを見せた。
「これを見てください」
その写真は、新人くんと僕が公園の東屋で2人で爆笑しながら並んで撮ってる写真だ。
「懐かしい!これこれ……」
「これがどうかしたのか?」
「ん?これは友達か?」
僕はその写真をじっと見つめて静かに伝えた。
「これはね新人くん。僕の友達だった頃の。僕にとってはたった数年前なのにね」
2人は顔を見合わせて息を呑んだ。
そして、ゆっくりと笑顔になって頷いた。
「そうなんだね……薫がその写真を見せる気になったのは、少しは心が落ち着いてきたからなの?」
「薫様のことだから、絶対写真持ってるとは思ってたんだよな」
新しいスマホにした時に、前のスマホからわざわざ移していたのだ。
行方不明のまま会えなくなった友の写真だから。
「新人くんは、僕の中でこの姿で……今でも阿羅国での出来事が嘘みたいに感じるんだよね……でも、そろそろちゃんと向き合わないと……」
「まあ、無理しないで、ね?」
「そうだ。話なら聞くから」
二人共すっかり僕を甘やかす天才になっています。
「で、この雨の感じわかります?」
「ああ、わかるぞ、確かにシトシト降ってる感じだねえ、この周りの花は何?美しい色だね」
「これは紫陽花です、梅雨時期に咲く花ですよ」
「なるほどねえ」
涼鱗さんもお花が好きなのかな……
「……こんなこと言っちゃなんだが……やっぱり波羽彦王に似てるよな……」
「僕もはじめは全然思っていなかったんですが、そう思いますよね」
「それに、薫様の横に並ぶとかなり体も大きいし、たくましい……かなり鍛えていたのだろうな……波羽彦よりもでかく思えるが……」
「サッカーという競技に打ち込んでいて」
「そういえばサッカーね、阿羅国から新しい遊びとして輸出するらしいよ?」
「輸出?!」
僕は驚いて目がまんまるだ……
「そうそう、審判の資格を持つ手練が、お金を出してくれた所に教えに行くんだそうだ。サッカー独自の毬をサッカーボールと言うらしいんだが、それも同時に輸出だとさ」
「バイオリンもそのうちと考えているらしいぜ」
「バイオリンもとなれば、うちの王妃の出番もありそうだよねえ」
「そりゃね、この世界で一番の弾き手だろうから」
「ちょっとやめてくださいよ!」
からかい顔の2人に僕は焦って手をブンブン振った。
作られているのは阿羅国なんだから、阿羅国にきっと素晴らしい弾き手がいるはず!
「そうだ、波羽彦から正式に返事があってね、あっちの建国記の写しを見せてもらえることになったんだ」
「え、そうなんですか?」
「それで、日本での名前は「アラト」だろう?字は確か、「新しいに人」だったな」
「ええ、そうですね」
「自分の国を作るにあたって、なぜ字を変え、阿羅彦と名乗って阿羅国としたのだろう?とまあ、ちょっとした疑問がねえ」
僕はたまらなくなって声を出して笑った。
「なんなんだよ!」
カジャルさんが腕をつついてくる。
「いえ……実はね……日本にいる頃に、そうですね……小学生の頃から僕たちのような男子はだいたいゲームをするんですよ」
「ゲーム」
「はい、遊びなんですけどね、その中で国を作るゲームがあって、僕は自分の国に『カオルー』って付けていて、新人くんは「阿羅国」と付けたんですよね、この字がカッコイイ!って理由だったと思いますよ。まあ、お互い自分の名前をもじって、付けて遊んでいたんです」
「国を作る遊びだと……」
「それはなにか……帝王学のようなものを学ぶためだったのだろうか」
「いえいえ……そんな真面目なものじゃなくて本当に単なる遊びなんですよね、でもなんとなくですが……その中でここに木を植えようとかここに役所を作ろうとか、ここに公園を作ろうとか、そういう……今思えばそうですね、あれが阿羅国の元になったのかもしれませんよね」
「では、薫は阿羅国と聞いてピンときていたのか?」
「いいえ、それは正直全然ありませんでした……だって子供の頃の話ですし、まさか新人くんが関係しているなんて思うわけがありません」
「そうか……」
涼鱗さんが難しい顔でスマホの画面を見つめている。
「この写真を見ていると、本当に普通の青年だな」
「全くだ」
2人はしんみりしてしまった。
「おうひさま」
可愛い声が聞こえてふと振り向くと、設えたばかりのかわいらしいベッドの中で翠がぱっちりとお目々を開けてこっちを見ていた。
「起きちゃったの?ごめんねうるさかったかな?」
「ううん」
翠は不思議そうな顔で僕を覗き込んで、小さな手で頬をつついてきた。
「ほんとうに夢じゃなくて、おうひさまいる」
「あはは! いるよー! ほら、涼鱗おじさんとカジャルおじさんも」
「「おい」」
二人のツッコミは無視である。
「ちょっと待て、俺も涼鱗もお兄さんでお願いしたい」
「まったくそのとおりだよ、薫」
僕は2人には目をやらず、翠を見つめた。
不安と安心がないまぜになったような、複雑な表情だ。
「どうしたの?」
「僕、ずっとほんとうにここに住むの?」
「そうだぞー!ずっとここにいるんだ、おまえは王子になったんだからな!」
カジャルさんが子供に話しかける時って、こういうテンションなんだなあ……となんとなく面白く思った。
「そうだよ、心配いらない。何回目が覚めても、君があそこへ戻ることはないよ」
涼鱗さんは静かに子供にわかるように話す。
うまいなあと思った……
ああそうか、小さな妹さんがいたからかな。
「でもここから園はとおい?あるいていけるかな」
「……翠……もう働きに行かなくていいんだよ?君はまだこんなに小さいんだし、そして体も弱っているし、ね?」
「でも、僕が園に行かないと、お兄さんたちの食べるものを買えなくて、みんなにおこられる」
「え?」
僕は急に心臓が痛くなったように感じる。
これは怒りというのかもしれない……
「翠、君が怒られることはない。だいたい君が園にいかなくてもご飯が食べられるように、王様は君たちにお金をあげていたんだよ、それを院長は自分のためだけに使ってしまっていたんだよ」
「え?おかねを?……いんちょうせんせい……」
「そうだ、王様は君のお父さんになる、わかるね?」
涼鱗さんは落ち着いて翠に話してくれる。
翠は最初は涼鱗さんに警戒心を持っていたようだが、徐々にその美しい白い肌や白い髪に視線をあちこちさせて興味深く見つめたりして慣れてきたようだ。
……うまい、涼鱗さんうまい……
「君のお父さんは、この国で一番えらい人だ、その人が父なんだから、君をもう働かせたりしない、誰もね。だから安心して体を治すんだよ」
「うん……」
「よし、いい子だ。そうだな……今の君の仕事は、早く体を治してお父さんとお母さんを安心させることだ、わかったね」
「うん!」
翠はキラキラ輝くように微笑んで僕の目を見つめてきた。
「おうひさま」
「……なに?」
あんまりキレイでかわいくて、声が詰まってしまった。
「ずっといっしょにいてね」
「うん、そうだね」
「クルゥ」
羽音もなく静かに僕の肩に止まったクーちゃんは首を傾げて翠を見つめる。
「クーちゃんっていうんだよ、僕の鳥なんだ、かわいいでしょ?仲良くできるかな?」
「くーちゃん……」
翠はまっすぐ手を伸ばしてクーちゃんに触れようとした。
そしてその指がクーちゃんに触れたとき、パーッと辺りが白く輝き翠がふわっと浮き上がった。
部屋はどんどん真っ白になり、とうとう白いだけの空間になった。
焦った僕たちは翠に手を伸ばしたけど、なぜか触れない……
「ん!」
翠の我慢するような声が聞こえてきて……次の瞬間さーっと波が引くように元通りの雨音のする部屋に戻った。
「な……なに……」
「クーちゃん今のなに!」
「クルクルゥ!」
その場の皆は、自慢気に部屋を飛び回るクーちゃんにあっけにとられたが、小さな声に呼び戻された。
「おうひさま、僕、痛いのなおった」
「え?!」
僕たち3人は翠の言葉がすぐに理解できなかった。
でも視線を戻して理解したんだ。
ベッドの中の翠は血色もよく、あきらかに元気そうになっていた……
「うそ……」
クーちゃんの奇跡です!
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